<GRAPHICS>

 これは同時代の作品との比較という意味では一級品である。Quake 2エンジンを大きく改造しているという話だが、とてもQ2エンジンとは思えないような綺麗さであって満点に近い。Q2エンジン使用(改造)のゲームは数あれど、一番綺麗なゲームといったらこのKingpinではないだろうか。

 明るい場面はほとんど無く暗い場面中心の造りではあるが、薄汚れたスラムの雰囲気が非常に良く再現されていて素晴らしい臨場感である。その後のゲームと比較するとテクスチャの精度に関しては劣る面もあるが、ライティングはかなり綺麗であるし影の精度も高い。何よりも良いのがゲームのイメージに合ったグラフィックスの再現性である。ゲームの設定と如何に合った画を作り出すかというのは非常に重要な点だが、このゲームではそれが完璧と言って良いようなレベルで達成されている。路地裏や便所の汚さ、壁の落書き、寂れた廃墟風の建物、いかがわしさの漂うバー、人通りの無い寂れた街並み等全てにおいて完成度が高い。

 登場する人間のモデルに関してもレベルが高く、特に顔つきは相当リアルに作り込まれている。しゃべる時にリップシンクで動くとまでは行かないが、一応戦闘時の表情スキンは数種類用意されているようだ。動作アニメーションはやや誇張された部分があるものの、非常にリアルな動き方で人間らしさが充分に感じ取れるしモーションパターンも多彩である。
 高度なグラフィックスを使っていた分重い部類に入っていたゲームであるが、発売から年月が経過した現在では普通のマシンでも問題なく動くレベルになっている。

 問題の残虐系表現についても凝っており、体の各部分を細かく分けた部位別出血スキンが用意されている。死ぬと体が肉隗となってバラバラになるというのが通常のゲームの死に方の表現だが、このゲームではちゃんと?部位別に体が吹っ飛ぶようになっており、首や手足がもげた死体がゴロゴロということに。特に出血の描写が凄くて大規模な戦闘が終わると辺りは血の海になるし、味方も怪我をすると血を流しながら歩くのでそこら中が血だらけになり相当ドギツイ感じになる。





<SOUND>

 まずBGMはラップグループCypress Hillが担当しており、ゲームの雰囲気に合った重く低いダークな音楽を聞かせてくれる。これ自体の出来は悪く無いのだが曲数が少なくので後半飽きてくるという面は否めない。

 一般的なサウンドについては水準以上のクオリティで、リアルに作り込まれた環境音を聞く事が出来る。それほど押し付けがましい感じではなく音数は少ないのであるが、街中のノイズが臨場感タップリに再現されている。音質に関しては標準的だがそれもまたゲームの雰囲気と合っているとも言えるだろう。武器の発射音はそれほどリアルには聞こえないのだが低音が聞いていて迫力がある。なお3Dサウンドには未対応。

 会話については割と発音は聞き取りやすいのだが、これでもかというくらいに"shit"や"fuck", "Motherfuker"といった言葉が挟み込まれるので聞きづらいのは確か。これらの言葉が汚いというのは分かるのだが、残念ながら私の能力ではどの程度の物なのかまでは判らない。確かに日本語に訳せる事は訳せるが、shit一つ取っても実際にその国で暮らしている者でないとこの会話の場合のshitにはどの程度の際どさや攻撃性があるのかという微妙な所までは把握出来ないだろう。取りあえず向うのレビューでこの辺に言及している物を読んだ限りでは恐ろしく酷い言葉使いというか表現だそうで、到底一般の場で使えるようなものでもないし、決して子供には聞かせられないレベルとの事。死角的な残虐表現などよりもこっちの方が問題という意見もあった位である。


<MULTIPLAY>

 発売から3年以上経過してもサーバーが稼動しており人気が高かったゲームだが、さすがに現在ではプレイは難しいようだ。製品版にはそれほど多くのマップは添付されていないのであるが、ユーザー作成のマップがが数多くリリースされており総合的には結構な数のマップが流通している。戦闘に関してはアクション寄りだが使用するのは実銃系の武器だけという設定の為に、当時としては珍しいゲーム性だったのも人気が出た理由の一つだろう。
 ゲームモードは通常のデスマッチの他に、このゲームならではと言えるBagmanというモードが追加されている。これは言わばCapture the FlagならぬCapture the Moneyとでも言う物で、敵の金庫や死体から奪った金を自軍の金庫まで運ぶと得点が入るというモード。ゲームのテイストにピッタリの内容であり人気が高かった。またキャラクタ選択も凝っていて帽子やタバコを基本モデルに追加して変化を加える事が可能。

 ネットコードに関しては普通の部類で、最新のパッチを適用する事によりかなり改善される印象である(ISDNレベルでの話)。ただ問題はこれはあくまでもPingが良ければという話。このゲームのマルチの”弱点”は武器が実銃系でダメージがリアル寄りの為に、ある程度のPingを確保しないと遊びにくいという点にある。他のゲームではマルチプレイでPingが悪ければ散弾系や爆風ダメージといったある程度の広がりを持ったダメージを与えられる武器で対抗という手段があるが、このゲームでは点で狙うイメージの銃が大半なのでPingが悪いと非常に不利である。移動速度も結構速いので動き回られると相当やりにくい。

 botについてはKraze Botというものが有名で、まあ一応遊べるというレベル。使い方も簡単なので興味のある人は落としてみるといいだろう。またCoopをサポートするMODが作成されており、これに関してはCOOP道場の方を参照してもらいたい。



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