GAMEPLAY |
ゲームは全部で9ミッションに分かれており、それぞれが複数個のマップで構成されている。最初の3つは短いのだが後半に行くに連れて長い物が多くなり、全体としては15-18時間程度の長さといった所。ミッション単位でちゃんとグラフィックスの雰囲気は変えられているが、全てが異なったロケーションという訳ではない。マニュアルに最初からラストのミッションまでストーリーの展開が詳しく記載されてしまっているのは、映画のファンだがゲームは普段やらないという初心者層への配慮なのだろうか? もっともストーリーは単に「悪者をボンドが倒す」というだけで、特に面白味は無いのであるが。 各ミッション毎に最後には成績を表示する機能も付いており、ここではクリアまでの時間、敵を倒した数や命中率で点数が入って採点される。ステルスで切り抜けた数や気付かれずに倒した数等も関係しており、また見つけたSecretの数やBond Moveと呼ばれる特殊な動き(ルートを発見)を行うと点が追加される仕組み。これによって同じミッションのリプレイ性を高めるという狙いである。ミッション毎のリプレイはゲームのクリア後に一括でUnlockされる方式。 ゲーム全体のイメージは映画風のスパイ物という事でNo One Lives Foreverに非常に近く、やはり影響を受けているのではないかと思わせる。イベント的な戦闘(ある種のシチュエーション)も多く取り入れてアクセントを付けており、ミッションの最後はボス戦(ヘリ等も有り)で区切るというケースが多い。NOLF1が好きという人にはその雰囲気は気に入ってもらえるゲームだろう(あれほどユーモラスでは無いが)。 基本の動きはHalf-Lifeでお馴染みのやや慣性が付いた物なのだが、HLよりも強めに効いている感じで慣れるまではちょっとやり難い。特に自分の体の周囲のオブジェクトへの当り判定が大きいのもあって、感覚として通れそうな場所で引っ掛かったりするので狭い場所を速く動くには不便である。Leanもこの当り判定が大きいので出来る場所が限られる上に可能な場所が分かり難いし、動作を終了しないと出来ないのも面倒(Leanが戻るまで動けないし、動いている時は完全に止まらないとLean出来ない)。リアリティと言えばそうだが、そこまでする必要が有ったのか非常に疑問である。 I/F系は洗練されていないという印象で、まずは武器やGadgetsの選択がホイール以外では行えないのは非常に不便。それと開けられる個所にアイコンが出ないので、ドアとかならともかくアイテムの入ったロッカーとかを見逃し易い。また武器には所持数制限が有るが、この「もう持てない」メッセージが頻繁に表示されて煩い。他にもTime Attackなのに時間表示が出ないとか、Saveゲームの整理の仕方が分かりにくいとかも気になる。 やるべき事は一覧にリストで出るので分かり易い方だが、その為のヒントが一瞬だけ表示されて参照出来なくなる場合が有るのは問題かも。例えばその目標を達成したと判定されるには何をすれば良いのかとか。 ![]() ![]() ![]() このゲームは概要の項に書いたように全般的には高い評価は受けられなかったが、「ほとんどの要素において平均かそれ以下で見るべき所が無く凡庸」といったゲームとは違い、面白い要素を幾つか持っている。 まずスパイ物には付きものの各種Gadget(スパイ小道具)が挙げられる。錠を焼き切るレーザー内蔵の腕時計や、キー式のスタンガン、麻酔薬入りのDartPen、PDA型のCodeBreakerといった一般的な物は一通り揃っている。中でも面白い物では携帯電話型のグラップラーが用意されており、これはマップ内に用意されたフックに引っ掛けてショートカットをしたりが可能な装置。これで通常ではアクセス出来ない個所に行けたりとか、敵のいる場所を迂回して別ルートを通ったりも可能で、そこそこ用意されているので使える機会は結構ある。またスーツケース型の自動小銃というアイテムが有り、これは置いておくと接近した敵に反応して攻撃してくれる優れ物。 中でも専用の特殊アイテムとして用意されているQ-Specs(機能切り替え特殊サングラス)はユニークで、ゲーム性に面白さを加えている。特に透視機能は開発側も最大のお気に入りとして挙げている物で、壁を通して中の敵の状態を探ったり出来る。中の配置を見て突入後の攻撃パターンを考えるという手も有るし、ステルスであれば敵の配置を事前に知る事も可能だ。また謎解きに使ったりするケースまである。それとこれで人間を見ると服が透けて見える(女性の場合下着が見えて、男だと骸骨というのが笑える)。更に熱探知機能に切り替える事で背景に溶け込んで分かり難い敵の位置を正確に掴む事が出来るし、暗視機能も同様。これを装着したまま戦う事が出来るのもポイントが高い(リチャージ式なので使用時間制限はある)。 ゲーム性はステルスでも戦闘でもOKという流行のスタイルだが、全ての面でそれが通用するという形式ではなく、そのミッションによってパターンは制限されるという方式。それでも複数の突破ルートが有ったりとか、ステルスでやり過ごせる個所とかもそこそこ有って、ある程度の自由度は存在しているゲームである。マップデザインも悪くなく幾つかは面白い物が用意されており、特に高層ビルをそのまま丸ごと入れてしまったHigh Treasonなんかはユニーク。イベントシーンも多彩であり、スナイパーライフルで味方の作業を援護したりとか、徐々に落下するエレベーターに乗っての戦闘、ケーブルカーに乗ってのヘリとの一騎打ち、ビルの壁面を攀じ登るステルスミッション等が、アクセントとしてゲーム中に盛り込まれている。アクセントと言えば仲間と一緒に戦うシーンも少ないが存在している。 敵のRespawnといった要素はごく一部を除いて無い。ステルスでは眠らせた敵は時間が経つと起きてしまうというシステムで、相手を担いで移動したりとかは出来ない。 純粋な謎解き要素に付いてはそれほど盛り込まれていないが、次へのルート探しを含めて数箇所難しい部分が有った。このゲームでは結構いろいろなオブジェクトが破壊可能になっているのだが、その壊せる場所に気が付かないとかで詰まり易い。それとマップ内で次にどこへ行ったら良いのかが分からなくなるというトラブル多し。Forumでは詰まったのでヒントをくれというスレッドが、ゲーム全般に渡って非常に多く建てられている状態。 |
問 題 点 |
純粋に戦闘そのものに関してだが、ここはこのゲームの弱い部分である。このゲームは万人向けという事でBloodを一切表示しないような仕様になっている(もちろんGoreも無い)。そうなると当然敵に攻撃が当たっているという感覚が薄れる事になり、これはFPSゲームでは致命的な欠陥となりうる要素だ。これをカバーするには「銃を撃っているという感覚(主にサウンド面)の強化」と「敵の被弾アニメーション(リアクション)を細かくしてやる」という手法が考えられる。 しかしNightfireではその点では満足する域には達しておらず、ショボいとまでは行かないが寂しい感じがするのは確か。武器に関してはPDW90やAnnihilator(Minigun)、Magnum等迫力のある音の武器も有るのだが、一方で軽い感じの武器も多いとなっている。ロケットランチャーやグレネードランチャーといった派手な武器も用意しており、これは弾数も有って結構派手に撃てるのは良いのだが、その爆発音等の出来には不満が残る。敵の被弾アニメーションも若干単調で、撃たれるとその都度反応してくれるキャラは良いのだが、ただ撃たれるのみで死ぬまでそのままという者もいて問題有り。武器によるが当っている個所が分かるようなエフェクトも無いし、倒れる時のアニメーションパターンもそれほど用意されていない。この辺はムービーで確認する限りはコンソール版では相当良く出来ており、このレベルであれば問題は無かったと感じる。 このゲームの最大の問題はAIで、これが全てを台無しにしていると言っても過言ではない。この点は担当しているGearboxがこのゲームをHLエンジンをモディファイした物を使用していて、基本的にはHalf-LifeのAIスクリプトを使用しているという事前情報からは、非常に意外な結果とも言える。 HLのAIは登場時(1998)より非常に優れた物として著名であり、さすがに現在ではそれを抜く様な物が幾つもあるが、まだ実用に耐え得る物である。ゲーム中のAIの基本の動き自体はMarinesにほぼそっくりであり、それに加えて壁に隠れて体を一時的に出しながら撃ったりとか(ただし固定された場所でのみ)、床を回転して避けたりしてくるとかが加わっている。それと一度逃げたりとかGrenadeを蹴り返したりとかも可能。しかし全体的に動きや反応がスローであり、倒しても手応えを感じないし緊張感も無い。これにはHLでは脅威だった敵のGrenadeが投げにくくて遠くへ飛ばないのと(これは自分もそうなのだが)、グレネード・ランチャーを持っていないという面も関係している。更にそれ以外にも相当に問題が残っている。 *近くで味方がライフルで倒されても気が付かない *死体を発見出来るが、そうすると辺りを見回してその場から動かなくなってしまう *戦闘中でも突っ立ったままになる事がある *一度戦闘から逃げた後、それを忘れたかのように逃げた場所で突っ立っている *こちらを追跡して追って来る能力が低い *スクリプトとして動くルートにプレイヤーが立ち塞がると、それを認識出来ないで止まってしまう事がある 以上は変な点の一例だが、どうも原因は「HLのAIをそのままステルス系に使っている」のと「スクリプトとして置かれているAIが多過ぎる」の2点に集約出来るようだ。HLのAIは優れているとは言っても戦闘用であって、ステルスであればまた別の話。しかしこのゲームでは2つを統合して対応するタイプのAIを作れなかったという事なのか、ほぼそのまま戦闘用のAIをステルスへと流用せざるを得なかった様でこれが問題を大きくしている。 第一にステルスに適応したAIが無いという点を強引に”配置固定”で解決しているケースが非常に多い。例えばある方向だけを見ていてそこから一切動かないし周囲も見ないというAI、固定された巡回ルートから外に出ないAI等。戦闘用のAIの能力をそのままにして、プレイヤーがステルスでやり過ごして進めるようにという意図なのだろうが、これらのケースでは背後から撃ってもそのままであるし、一度こちらが身を隠すと追っても来ないで撃たれた事を忘れて元の状態に戻ってしまったりもする。或いは敵発見とばかりに自分の動けるルートを出ずにただその間を往復して走り回っている事も。 ![]() ![]() ![]() 視覚と聴覚に関しても適当な調整が出来なかったようで、音にも鈍いし視覚範囲も敵によって異なっているといい加減である。こう来たらこう動けと指定されているAIが多い様で、それに反するような行為をプレイヤーが取ると自然に反応出来ない。これら固定型AIは通常型AIとは分離した存在らしく、片方をもう片方の目の前で倒しても気が付かないケースが多い。或いは同じ部屋で一人を倒したら、もう一人がプレイヤーの目の前で死体に駆け寄って敵はどこだとキョロキョロするとか変な事も起きる。 ある程度の固定された動きのAIはイベント的な戦闘では仕方の無い事であり、これは許容範囲(イベント中ある場所から動かずに撃ってくるとか)。しかしマップ上に配置されているAIにこういうのが多いと人形相手の様でかなり白ける。なお悪い事にこちらのLeanを認識出来ないし(一方的に撃てる)、壁等の透過認識処理(壁があるのに撃ってくる)にもバグがある。 私の想像では、「ボンドのゲームである以上はプレイヤーがステルスによって敵を仕留めて行く要素は重要。しかしHLのAIを普通に置いてしまうとすぐに気が付かれてしまうし、それに代わる適当な知覚をもったAIも(現時点では)作れていない。となると固定して置いておき、よっぽど目立った行為をしない限りはこちらに気が付かないといった風にするしかない」といった発想による産物では無いかと思うのだが.....。 確かにこのゲームがメインのターゲットと表明しているカジュアルな層、ボンドのファンだがゲームはあまりやらない(或いは3DFPSは普段やらない)人達に取っては、この位のレベル(動かないので倒し易い、かなり適当なステルスでも気が付かれない)の方が自分がボンド気分でプレイするのには適しているのかも知れない(ボンドはスーパーヒーローなので苦戦するのは似合わないとも言えるし)。しかし普段3DFPSをやっているゲーマーからすると、このゲームのAIは戦闘・ステルスのどちらを取っても不完全と見られて仕方の無いレベルである。もしもホリデーシーズン中に発売するのが最優先というMGMやEAの意向で、AIのグレードアップ前に発売時期が早められたのだとすれば残念な事だ。 最後の大きな欠点はドライビング系ミッションが入っていない事。コンソール版との評価の違いにはこれが非常に大きく響いているのでないかという気がする。コンソールでは市街でのカーチェイスの他、スノーモービルやアストンマーチンが空を飛んだり水に潜ったりのミッションが計5つ含まれており、スパイ映画のゲームとしてこれらを外したのはPC版の大きな失敗だったと思える。PCファンにはFPSが一番という理由から独立して作成された訳だが、それを感じさせるレベルには至っていない。 |
MULTIPLAY |
マルチプレイの売りはボンドの映画の人気キャラクタを使用出来る点と、一部キャラは映画での特殊攻撃が使える点。またマップにも一部映画の舞台(Fort
Knox)を入れている。その一方で用意されているモードはTDMやCTFと非常にオーソドックスで捻りが無い。よって映画自体のファンで無い人には魅力の薄い物となる。Gadgetsを使える点は唯一魅力的だが、それほどマップには活かされていない印象。Botを入れてプレイする事は可能だが、このAIも基本動作が非常に単純な上に、Waypointも決まり切ったパターンでしか通らない感じで面白味は無い。 Serverはゲーム内ブラウザで検索出来る。マルチプレイのブラウザソフト提供サイト等でStatusを見ると人はそこそこいるように見えるのだが、実は人数としてBotもカウントされてしまうので一見人はいるように見えて実はほとんどいないと言った状態。Dedicated Serverが非常に少ない点、マルチプレイをするにはネットに接続していないと起動が出来ない点からして、Botを入れてプレイしている人のマシンが(意図的ではなしに)Serverとして見えてしまっている状態が多いのではないかと推測される。 |