<MULTIPLAY>
Quakeの事を語るとなると、やはりマルチプレイ(ネットワークゲーム)の事は外せない。idの前作DoomはLANでのネットワーク対戦ブームに火を点けた存在であったが、その後のインターネットの普及というネットワークの広がりが進む時代にちょうど発売されたのがこのQuakeとなる。そのネット対戦は異常な程の盛り上がりをみせ、Quakeはこのジャンルのパイオニアとして次々に新しいシステムやルールを作りだしていった。現在のほとんどのネット対戦FPSゲームの内容は、このゲームをベースにしているといっても過言ではない。ここでは少しQuakeの生み出したと言えるネットワーク対戦での仕様について書いてみよう。
1.インターネットへの対応
それまでのLAN中心だったネットワーク対戦から、インターネットでのTCP/IPプロトコルに対応してネットワーク対戦を身近な物にした。それまではインターネットでの対戦を可能にする為には、別にKaliの様なソフトを購入するか有料の接続サービスを行なっている会社と契約しなければならなかった。
2.Modの開発
Modというのはゲームのシステム自体を変更してしまう追加プログラムのことである。主に新しい武器やアイテムを追加したりするのだが、中には大きくゲーム内容を変更したりという物(Total Conversion)もある。例えば武器を銃器類から刀に変えての対決とか、よりリアルな現実的な武器のみでのデスマッチとか。或いはジョーク的なModも数々存在する。カーレース、バスケットボール、サッカー、格闘ゲー...等々をQuakeのシステムで作り出してしまった物が流通していた。
それまでのゲームでもユーザー製作のマップを中心にゲームの改造を行なうコミュニティは存在していたのだが、メーカーサイドからの積極的な内部資料やツールの公開によりカスタムの幅も広がり、やがては多数のプレイヤーに支持される高い人気を誇るMod(Team
Fortress,Capture the Flag,Rocket Arena等)といった物まで登場している。Modが高い人気を得てそれがゲーム自体の売り上げにまで関わるレベルとなるので、それを考えてメーカー側ではゲームをMod
Friendlyな構造にして製作するという基本図式はこのQuakeによって確立したと言える。
3.団体戦の発展
個人同士のデスマッチから、より高度な戦術を必要とする団体戦を発展・普及させたのもQuakeの功績といえる。もちろんこれにはネットワークの発展による大人数でのプレイが可能になったという側面も大きい(大人数でのプレイにQuakeは対応していた)。特に上記Mod系のゲームでのチーム戦というのが発展して、マルチプレイの持つ可能性を大きく広げていく事となった。
3.CLANの発生
チーム戦が発展して高度な連携プレイを必要としてくれば、必然的にチームワークをより磨くという意味で固定されたメンバーでのプレイという要素も強調され、そこからCLANが続々と誕生した。その内容についてはチームプレイに限らず普段遊んでいるもの同士で結成されたりする気軽なものから、戦法・主義により結成される物まで多種多様であり、自分達のサイトを持って主義主張を展開したり人員を募集したりという活動も行うようにもなった。もちろんCLAN同士での対戦も行われたりして、ネット対戦をより熱くする一因となったのである。
私としても初めて対戦にハマったのがこのゲーム。それまでは回線の問題や料金の事とかがあってそれほど対戦という行為には積極的な気持ちが起きなかった。そもそもこの頃は対戦と言えばLANというイメージで、アメリカでは昼休みに社内でDoomやDukeをやって遊んでいるというのを羨ましく思っていた時代である。しかしISDNが出てきた事とテレホーダイの登場により、高速で安定した速度とある程度のコストでマルチプレイが出来るようになり、その環境を導入してからはそれなりの時間プレイする事となった。このタイミングが合わなければネット対戦に嵌るのは別のゲームになっていたかも。
ゲーム自体の仕様としては、当時では大人数の16人までの対戦をサポート。当時は当たり前だったCoopも搭載。対戦用のマップについては標準では10個程度と今の基準からするとそれほど多くはなかった。Skinについてもモデルは一つだけで色を変更出来るのみというシンプルな物。
このQuakeを通してマルチプレイの面白さを知った訳だが、現時点でQuakeのマルチプレイがどうなのかというと、これはちょっと万人にお勧め出来る物では無いように思える。久し振りにやってみたりしたが、今となってはプレイにはかなりの違和感がある。Quakeの特徴というのは何と言ってもそのスピード感。特にDM系のゲームでは物凄い反射神経を必要とする。プレイヤーの移動スピードが非常に速く、その上基本的にマップは狭い方なので凄まじい撃ち合いになるのがほとんど。Respawn
Killとかもしばしばだし、10,20とあっという間に強い人はFragを上げていくという展開になりがちである。当時は並び立つゲームが少なくて違和感といった物は無かったし、このスピード感こそがQuakeの魅力であったのだが、現在のゲームに比較するとあまりにも速過ぎるといった感想を持つ人が多いのでは無いだろうか。
現在ではQuake3Arenaが販売されており、これは1の正当な発展系と言った感じでプレイ感覚にはやや近いものがある。Quake2の頃はそのまどろっこしさに依然として1でプレイを続ける人も多かったが、現在では大部分がQ3に移行しておりプレイヤーの数も大分減ったようだ。それでもサーバーには300人前後のプレイヤーは常時存在しているようで、プレイする相手を探すには支障は無い状態はいまだに保っている。発売当時から遊んでいた人はともかく、今両方やった事の無い人にやらせたら大部分の人はQ3の方をバランスが取れていて面白いと感じると思うし、当時大人気だったから今やっても面白いはずという考えは通用しない位に時が過ぎたとも言える。Quake時代のModも大半がQ3版へと移行もされているのでQuakeで無いとという物は少ない(必ずしも新しい方が面白くなる訳では無いが)。
<QUAKEWORLD>
「QuakeWorldとは何か?」というと、これはマルチプレイ専用の公式追加プログラムである。96年当時はまだインターネットでのマルチプレイというスタイルが確立されておらず、DOSで作成されたプログラムはLANにて動作するのが普通だった。しかしQuakeではTCP/IPプロトコルも併せて採用して、無料でインターネットを通じてプレイ出来るようなスタンスを取ったのである。しかし大きな問題として、インターネットの通信はLANに比べると低速な上に不安定な要素が大きく、瞬間的な判断を要求されるQuakeの様な激しいアクションゲームには辛い環境であった。特に低速なモデムユーザーにとってはラグやパケットロスが酷くてゲームに支障が出るという感じで、プレイヤーのPingがゲームの勝敗に大きな影響を与えるという点が問題視されていた。また予想以上にインターネットでのプレイ希望者が多かった事から、こういった問題点を解決する何かを必要としていたのである。
QuakeWorld(QW)はそういった観点から作成されたインターネット専用のプログラムであり、パッチという形ではなくて一つの別のプログラムとして動作する。ノーマルのQuakeならばノーマルの仕様で建てられたサーバーへ、QWを使うならばQWサーバーへという様に完全に分かれているという意味である。主にモデムクラスのユーザーのプレイアビリティを改善する為のプログラムで、インターネットという速度変動が激しく帯域保証の無い通信回線での動作を考えて作成されているのが特徴である。筋から言えばQWは追加プログラムなのだが、Quake2を初めとするその後のQuakeエンジンのネットコードはこのQWを元にして作成されており、その意味で現在のネットコードの元祖はQuakeオリジナルの方ではなくてQWの方と言える。
QWでは通信量最適化の為のRateや、Ping差を予測によって軽減するPushLatencyといった現在ではポピュラーとなった要素が取り入れられており、ユーザーサイドでコンソール等から細かく調整出来るのも新しい面であった。他のプレイヤーの先の動きを予測して画面に表示し、実際にデータを受け取った時点で差異が生じたら変更するというクライアント側でのPrediction(予測)の元祖であり、これによって実際のデータが来るまで描画されないのでプレイにてラグが感じられるという要素が軽減されるようになった。
ただし予測という要素を使う事からプレイ感覚が直感的な物からずれるといった感想もあって、当時は全面的に受け入れられていた訳ではなかった(これには当時のモデムではPing値自体が今よりもかなり高目という事で、感覚的なズレが大きかったというのもある)。しかし現在ではこのQWのシステムがFPS界では標準となっており、それに合わせて現在のQuakeの公開されているサーバーへ遊びに行くならばQWは必須と考えておいた方が良い。ノーマルに対してのゲーム面での主な変更点は以下の通り。
*最大で32人までの対戦が可能
*画面のステータス表示部分を透明化して視野が広がっている
*各参加者のping表示可能
それでは簡単に使い方を解説。まずはどこからでも良いがQWのクライアントシステムをDownload。最新(最終)版はV230となる。これは指示通りに解凍すれば良いのだが、注意点としてopengl32.dllをも解凍してしまうので、これを動作環境の欄で解説したように除かないと起動しなくなるので気を付けよう(Voodoo1,2ユーザーのみこれが必要)。QWを解凍するとノーマル(qwcl)版とGLQuake版(qlqwcl)が作成されるので、好みに応じて使えば良い。現在ではGL版を使ってもマシン的に重いという事はほぼ無いだろうから、GL版の方をお勧めする。
Quakeは自身にサーバー検索機能を持っていない為に、サーバーを探すにはGamespyArcadeやAll−Seeing Eyeといった検索ソフトが必要となる。双方ともにQuakeWorldという項目でサーバー検索が可能。起動スイッチに関してはGamespyは別に指定が可能で、ASEではゲームの実行パスに直接追加してやる(GLモードでの解像度等)。ちょっと問題なのは昔のQspyの頃はそこからプレイヤーカラー等の指定が出来たのだが、現在のGamespyもASEもこれはもう出来ないようだ。そこでqwフォルダ内にあるconfigを設定してやる必要がある。
bottomcolor "x"
topcolor "x"
0 = white
1 = brown
2 = cyan
3 = green
4 = red
5 = beige
6 = pink
7 = gold
8 = magenta
9 = violett
10 = light brown
11 = blue-green
12 = yellow
13 = blue
シャツの色(Top)とパンツの色(Bottom)を指定出来る。デフォルトは白。後はRateの値を適当に指定しておいてやれば良い。その後の接続は他のゲームと変わらない。ただゲーム中にサーバーのルール関連を参照したりとかは出来ないので、勝利条件等には注意する必要がある。入る前に見ておくのが良いだろう。
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