OPERATION NA PALI

                                  02/09/12



  公式サイト

  SCREENSHOTS

  HINT集



<概要>

 コンセプトのアナウンス時から非常に期待されていたUTのシングルプレイ用mod(Coop可能)。開発期間2年半というのも長いが、シナリオ自体の長さもファンメイドの物としては最大級と言えるだろう。UTさえあれば無料でDownloadして遊ぶ事が出来る。

 この企画のそもそもの発端は、Unreal用にリリースされた公式追加シナリオであるReturn to Na Paliの出来に納得出来なかったという所にある。RTNPについて詳しくは別にあるレビューの方を参照してもらうとして、一般的にはファンの受けがあまり良く無かった作品である。「map数が本編に比べて半分と全体的に短く壮大さに欠ける」、「ストーリーが本編とリンクしていない」、「Coopが出来ない」といった点が主な原因である。そこで「それならば我々の手で続編に相応しい作品を新たに作ってしまおうではないか!」というのがコンセプトのmodとなる。
 ただこのONPはアナウンス時こそ有名なMapperが顔を揃えて凄い物になりそうだと言う期待を持たせたものの、かなり長い間本当に出るのか(完成するのか)については疑問の多かったmodである。2年半の開発期間と書いたが、その内最初の1年半位の間にサイトの情報が更新されたのは本当に数回程度しか無かったのではないか。スクリプトの拡張性等の限界からUnreal用では無くUT専用としてリリースされる事、UTのTranslocatorを大きくフィーチャーして使う事がアナウンスされて、ある程度のSS公開と見本mapがDownload出来た位。やっと実際に「どうやら出そうだ」という感じになったのは2001年の末にプレイ出来るデモが出た頃からだろう。その後も何度か予定変更を繰り返したが、最終的には2002/06に遂にリリースされた。

 開発チームの名はTeam Vortexでこれには多数の人間が関わっているが、中心となったのは以下の2人。

*David ’DavidM’ Munnich (19)
 プロジェクトリーダーのドイツ人。Unreal用のシングルプレイmapを多数リリースしており、中でも有数の傑作として知られるStrange Worldは有名だろう(Unrealのユーザーmapの項にレビュー有り)。またUTに関しても質の高いmapを提供しており、数いるmapperの中でも有名な人物である。
*Aaron ’Usaar33’ Staley(16)
 modのプログラム部門担当のアメリカ人。modオリジナルの機能として追加されたシステム面での変更は彼が担当している。UTのOldskoolの作者として有名だが、その外にもDemo ManagerやValhala Avatar等幾つかのmodを作成している。

 その外のメンバーで有名な人物としては、UnrealのShameQuest、UTではCTF-AquaMarineX32等で有名な’Chico Verde’辺りか。ほとんどのメンバーが10代で構成されており、ドイツ人中心のプロジェクトでもある。当初のメンバーとは結構入れ替わっているが、David自身今回のプロジェクトで一番大変だったのはマネージメント面と語っており、メンバーに連絡が取れなくなったり予定のmapが完成しなかったりで製作が思うように進まず、結局身近の人間を新たにスカウトして完成までこぎ着けたという事だ。


<VERSION>

 現在のバージョンは1.30でフルパッケージは存在しない。1.20フルパッケージ(158MB)をインストールしてから、1.20−1.30パッチを適用する事になる。公式サイトに多数のリンク先が有りNoUmod版も存在している。動作にはUT本体とPatch436だけがあればOKであり、Unrealでは動作しないUT専用のmodなので注意。
 解凍して出来るumodを実行し、その後無ければ同梱されているoldskool239もインストールする必要がある。本体のサイズが非常に大きいので、遅いマシンだとインストールには結構時間が掛かるようだ。umodが実行出来ないという場合はTop頁からumodの項を参照してもらいたい。

 起動はmodメニューからoldskoolをEnableにして、新しくメニューに出てくるSingleplayを選択してONPを起動するだけである。難易度設定にも対応している。UTのHelpフォルダにもONPというフォルダが作成されているはずで、ここにあるReadmeも読んでおいた方が良いだろう。多くのバグは1.30にて解消されているが、幾つかFAQにある問題点を挙げておく。

*空が幾つかのmapで点滅する > DetailTextures and Volumetric LightingをOnにしてUTを再起動
*レーザーのTrapが見えない > Dynamic LightingをOn
*Map3のShipにてフリーズ > TABでコンソールを出してReconnect


<STORY>

 Vortex Rikers(Unrealにて主人公の囚人を乗せていた護送船)が事故によって墜落してから3ヶ月後、宇宙船Vortex Rikers2号は惑星Na Paliより救助信号を受け取る。発信元は墜落したVR自身からであり、3人の生存者がいる事を確認。このゲームの主人公はNa Paliに単身赴きVR号を発見して3人の救出を命ぜられるが、敵に捕らえられて牢獄に閉じ込められてしまう。プレイヤーは自らも脱出してNa Paliを生き延び、VRまで辿り付いて救助信号を送らないとならない羽目に陥った。


<GAMEPLAY>

 全体で40個程度のmapからなり、ボリュームとしてもかなりの物である。本編ほど長くは無いが、最近のFPSゲーム並の10時間程度は優に遊べるだろう(よっぽど先を急がなければ)。基本コンセプトとしてアナウンスされていた通りにプレイヤーが旅する地域には本編と関連する場所が含まれており、NaliのWaterGod Templeに対するFireGod Templeや、Rrajigar Mine・SkyTown(Na Pali Haven)と言った個所の別パートが登場する。一方ではONPオリジナルの景観を持った美しい場所も多数存在しており、Unrealの持つ壮大さをうまく表現していると言える。
 ゲームは全体的にゆったりしているという感じで、長い事もあってあまり戦闘面では頻繁で激しいという印象では無い。大抵のシングルプレイmapはそれほどボリューム的に長い訳では無いのでプレイ時間を長引かせる為にモンスターの登場比率が高いし、本編をクリアした人が遊ぶという事から難易度も高目の設定である事が多いのだが、このONPは世界観の表現重視で戦闘面に付いては結構アッサリしている。本編ではある程度の区切りで多数の強敵による激しい戦闘が繰り広げられたものだが、ONPではそういったシーンはあまり用意されていない。Unrealに比較するとかなり簡単なバランスである。この点は好みが分かれる所かも。Unrealをやった事が無い人ならばSkaarjには苦戦するだろうしNormalでも良いと思うが、既にクリアした人であればNormalでは簡単過ぎると思う。たださすがにUnrealレベルは難しいのでHardが一番適当では無いかと。なお難易度によってクリアするとBonusのゲームモードがUnlockされる仕様。

 このゲームのユニークな点は仲間を引き連れての共同戦闘が楽しめるという所だろう。基本設定としてStrange Worldと同じシチュエーションを持ち込んでおり、すなわちSkaarj vs Mercenariesの戦争が行われているという状況である。SWではその間を突いて両者との戦闘を行うという物だったが、ONPではMercenaryは全面的にプレイヤーの味方という設定になっており、一緒に仲間としてプレイヤーと戦ってくれる存在である。またNaliも一緒に戦ってくれる仲間である。
 仲間にする事が出来るNPCは決まっており、命令はHoldとFollowの2種類と言う簡単操作。うまく殺さずに引き連れる事が出来れば同時に10人以上と言うのも可能である。武器は最初から持っている物固定で回復も不可。Map切り替えでも付いて来れるが、設計上不可能になっている個所では無理だし、Spawn箇所の関係からか少なくなってしまう所もある(Reloadする度に人数が変ったりするが、ある一定数以上は増えないようだ)。
 戦闘に関しては自分の意思で戦ってくれるが、FFの意識が無いので自分が前に出て後方から援護させると危険である。移動のパスについては概ね問題は無いが、やはり複雑なルートではちゃんと辿ってくれない個所も存在している。mapによってはプレイヤーが切り替えると付いて来た事になってくれる物があるので、こういうケースでは無理に引き連れる必要は無い。後は個人に命令は出せないので多人数になるとちょっと管理が難しくなるし、迂闊に崖の様な場所の近くにFollowさせると落ちてしまったりも.....。しかし総合的に見て新しい感覚で遊ぶ事が出来る為に、ゲームの面白さに一役買っていると言える。


 戦闘関連は先に述べたようにONPではあまり激しく無い。特に前半15map程度は広さの割にはかなり少ない感じだ。全体でも非常に多くの敵が襲ってくると言うのは稀であるし、また味方が一緒にいるケースも多いので尚更バランス的に簡単になるという事もある。武器は比較的早くから揃うし弾薬も結構あり、Armor系も重ねて取れるので結構防御力も上げられる。
 ボス的な敵もあまり登場しない。これには中盤以降Translocatorを使えるようになる一連のmapがあって、そこではTelefragが可能なので出せないという意味合いもあると思われる。ゲーム終盤も特に大激戦があるという訳でも無く淡々と終るという感じであり、これには若干物足りなさが残った。

 謎解き系は比較的簡単ではある。これはUnrealには不必要に難しいスイッチ探しが多過ぎるという考えからの改善という事だ。通るルートは本編に比べると分かり易くスッキリしており、道順で迷うというケースはかなり減るだろう。ただちょっと謎解きが分かりにくい個所というのはやはり存在してはいるが。後はコードを入れないと通れない個所が有り、その都度ランダムに生成される番号を探して来て直接入力してやるといった新タイプも存在する。途中Translocatorを使わないと解けない個所が幾つか出て来たりするが、これの出来は今一つか。
 後は数カ所飛行してクリアするミニゲーム風のmapがある事も書き添えておこう。個人的にはあまり気に入らなかったのだが、Saveも出来るしそれほどのストレスにはならなかった。


<INTERFACE>

 システム面での新規&変更点は、照準を含めた新しいHUDの提供、また箱や樽をわざわざ撃たなくても近寄れば壊れるといった簡易化がある。Translatorのメッセージも履歴を見れるようになっており便利。それとONPではスクリプトや台詞のシーンが非常に多くなっている為に、プレイヤーの選べるキャラクタはMalcomに固定されている

 昔ながらのScoreシステム、Secret、SpeedRunも導入されている。まず常にStatusが見れるようになっており、そこで現在のScoreを確認出来る。これは倒した敵の数やSecretの発見数、またmap毎に設定されたクリアまでの時間を切る事でのBonus等により加算され、最後までクリアすると登録されるのでHighScore争いとしても楽しめるという仕様。Secretはかなりの数が用意されており、これらは結構探すのが難しくて7割以上見付けるとなると大変だろう。これもまた全部発見してのクリアというReplay性を高める狙い。SpeenRunはQuake等にて盛んだった遊びだが(コンソール系ではポピュラーだろう)、クリアまで最小時間で達する方法を探す物である(時には全モンスター倒してSecret全クリアとか条件を変えて)。既に自分の記録を掲載している人も出て来ている。最後にCheatは可能だがやっている時間の間Scoreが下がるので注意。


<GRAPHIC&SOUND

 オリジナルのTextureを結構使ったりとかもしているし、デザインも秀逸な感じのmapが多い。景観的にも綺麗で高いレベルにあると言える。ただ地形が複雑なせいか、探索に行くと嵌って動けなくなってしまう個所が幾つかあるのには参った(CheatのFlyを使ってやるしか脱出出来なくなる)。Sound面ではかなりオリジナルのBGMが導入されており、作り込みの細かさが窺える。逆に主人公のボイスアクティングに関してはちょっと耳障りな感じがするが。バグとしてはジャンプ時に何か変な音が入るという問題が有った。

  フルサイズ画像                     



<BOTTOMLINE>

 総合的に見て高レベルで完成された、UTのシングルプレイ用mapとしては現状最高の物だろう。新規な要素を多数取り入れた大作として高い評価を受けている物としては他にLegacyがあるが、個人的には王道に近いONPの方が好みである。戦闘面が淡白な点が残念だが、それでもRTNPに比べるとより正当な続編に相応しいという印象だ。またこれはCoop道場の方に掲載するつもりだが、全編を通してCoopが出来る事も大きなポイントである(Coopで遊ぶ事を前提として作成されている)。
 いずれにしろこれだけの物が無料でDownload可能というのは考えてみれば凄い事であると言えよう。UTも最近では安く手に入るし、シングルプレイ用に購入するというのも悪く無いかも(別にLegacyやXidiaもあるし)。UTを持っている人には是非遊んでもらいたい作品である。


  目次