GAMEPLAY |
まずは基本的な点として、このゲームでは難易度設定が複数有るのだが最初はNormal(Fugitive)しか選ぶ事が出来ない。これをクリアすると残る3つの難易度がUnlockされる仕組みである。その3つとはHardに当るHard-Boiled、更に上の難易度で回数限定SaveにAuto-Aimが不可になったDead
on Arrival、クリアに時間制限が加わったNew York Minute。 内容は3ブロック全22章からなっており、それぞれのブロック巻頭には幕間という位置付けの特殊なマップが挿入されている。特に2,3ブロックのプロローグは非常に変わっており(Maxの精神世界とでも言うのか)賛否両論有り(個人的には面白いと感じた)。10-12時間程度でクリア可能と聞いていたのだが、普通にプレイすれば15時間前後は楽しめのではないかと思われる(ストーリー説明の部分の理解に現地人よりは時間が掛かるというのを含めて)。 開発段階ではゲーム性よりもグラフィックスの方に話題が集中し、いざゲーム内容が公開されてみると三人称視点固定で一回のプレイ時間も短いコンソール寄りのゲーム性という噂から、個人的には発売時にはやや興味を失っていたゲーム。しかし実際にプレイしてみると、想像していたのとは”良い方に”大きく異なっていたゲームである。 全般的にはゲームの流れは単調であるが、ただ単調に感じるまでにはゲーム自体が長くないとも言える。クリア後にUnlockされる別の難易度やゲームモードに関しては、個人的にはそれほど魅力は感じられずにプレイしていない。謎解き及びルート探しについては数箇所分かりにくい場所が有って、ノーヒントでは詰まり易いゲームと感じる。 このゲームの一番の特徴は、既に他の多くのゲームにも採用されており代名詞の様になったBullet Timeこと「時間をスローダウンさせる事が出来る」能力である。ゲーム上ではMaxの集中力が高まってその様に見えるという風に設定されており、これには2種類の能力が有る。使用には画面上砂時計で示されるエネルギー?が必要で、使う度にこれが減少して行き、逆に敵を倒す事で徐々に補充されていく。 ◎Bullet Time ゲーム内の時間をスローダウンさせる能力でMax自身の速度も遅くなるが、その間Maxの武器に関しては発射速度の変化は無く照準も通常時と同じ速度で狙いを付ける事が可能。それ故高速で発射出来る武器(Dual Ingram等)との組み合わせで絶大な威力を発揮する。発動と終了を自分でコントロール可能だが、砂時計の消費量が非常に早く「ここぞ!」という時以外は使えない必殺技。スナイパー・ライフルと組み合わせる事で照準の揺れを無くす事も出来る。 ◎Shoot Dodging 同じく時間をスローダウンさせる能力だが、Bullet Timeとは以下の様な違いがある。 *方向キーとの組み合わせでのみ発動可能で、使用中はその方向に飛んで宙を舞って移動しながら狙いを付けないとならない *発動後に一定時間(数秒)しか持続せず、持続時間を自分ではコントロール出来ない *一回の使用量は砂時計の1/10程度で連続して使う事も可能 *発動中でもダメージは受けるが死ぬ事は無い。最大ダメージになっても解除後徐々に15%程度は回復する。 *終了後に起き上がるまでの間の1,2秒間はキー入力が効かず、敵の攻撃から完全に無防備になってしまう 私がプレイ前に大きく誤解していた点は、このゲームは普通の銃撃戦を行うシューティングであり、それに加えてピンチになったら上記特殊能力を発動させて対処すると考えていた事。ところが実際は武器のダメージは大きいし敵の射撃精度は高いしで、Normal難易度であってもダメージバランスが相当厳しく、普通に銃撃戦を行うという事自体が厳しいゲームであった。 つまりゲームの基本は上記の特殊能力であるShootdodgeを発動させて戦うという風になり、実際の所ゲーム全体と通すと普通に撃ち合うよりもShootdodgeを使う方が断然多いというゲームとなっている。ピンチになったらShootdodgeでは無く、戦闘では出来る限り常にShootdodge(Bullet Time)を使って、それが出来ない時のみ普通に撃ち合うゲームという意味。なおNormalではSD一回の消費分を敵一人で相殺出来る程度なので、使用は気軽に可能なバランスとなっている。 この様にゲームのメインはShootdodge(SD)であり、そしてこのゲームの面白さの大部分はそのSDのカッコ良さに有ると言っても過言ではない。その効果音も含めて単純に使っていて気持ち良いし、どんな風に飛ぶかというテクニックも必要とされる点も面白い。一方でBullet Timeは爽快感は確かに有るが滅多には使えないし、使って面白いという感じの技ではない。 SDの使い方はなかなか奥が深く、この使い方を考えながらの戦闘がこのゲームを面白くしている要因である。使用する際に飛びながら発動させる必要があって、この場合8方向を選択出来る事になる。敵からの被弾を考慮した場合、最も理想的なのは後方へ飛ぶ事である。弾からの被弾面積が最も小さくなるし(足の裏だけになる)距離が遠くなるのでショットガンの様な武器からのダメージも減少する。また後ろへ動いているので敵と一直線であれば照準が付け易いという利点もある。 しかし逆にショットガンの様な武器はこちらからも効果が薄くなるし、何より発動前に一旦敵の視界内に出てから後へ飛ばないとならない(それと後方にスペースが無いとならない)。また終了後に敵が生き残ったら攻撃から無防備になるという欠点がある。これとは反対に敵に向かって前方へ飛ぶのはショットガンの威力を最大限に発揮出来る反面、敵の攻撃も当り易いし倒せなかった場合にその目の前で起き上がるまでの間が無防備状態になってしまい危険である。 一番多用するのは左右へと平行に飛ぶスタイルで、これは壁等の隠れた状態から発動させる事が可能であり、また飛んだ先に障害物が有ればその陰に着地して無防備状態で攻撃を受けるのを防げるという大きな利点がある。ただし横方向へ動きながらなので敵に照準を合わせるのは難しくなるという欠点を持っている。 瞬間的な判断での連続攻撃も重要であり、前に飛んだが倒し切れずに敵が残ったのですぐさま後方へ連続して飛んで距離を取ったり、狭い廊下から横に飛んで攻撃しながら広間に出た後に、連続して後方に出来たスペースを利用して後ろへ飛んだりとか。その他テクニックとしては、柱の陰に隠れた状態から斜め後ろに飛んで距離を取りつつ照準を合わせ易くしたり、大きなダメージを負っている際に発動中は死なない事を利用して、M79を持って複数の敵のいる前方へ飛んでGrenadeを撃って自爆するといった裏技?もある。 いずれにしろ状況に応じた咄嗟の使い分けや、発動中でも照準を合わせるという能力は必要とされるという面から、立派に反射神経を要求されるアクションゲームとしても成立している。特殊能力で時間を遅くするというのは誰でも思い付くと思うが、それをこういった形で上手くゲームに取り込んだアイディアは実に素晴らしく、高い評価に値する部分である。 |
戦 闘 |
このゲームは憶えゲーの要素が相当に強いという作りで、SDを使おうがとにかくよく死ぬ設定となっている。どうなるか知らないでは突破が無理という箇所も多く、一度死んでこの場面では敵がどう来るかを憶えてから、それに対応する手段を考えるゲームと言ってもいいと思う。ただ”憶えゲー”というのは悪い意味に使われがちだが、このゲームではそれを逆手に取っているというか、わざとそういう風にデザインしているという印象。 敵がどういう風に来るのかをまず示しておいて、それに対して「あなたならここでどうやって倒しますか?」というのを提示するスタイルのゲームと感じた。シューティングとしての面白さよりも、行うアクションのカッコ良さによる爽快感を優先するゲームデザインという意味で、こういう確信犯的な使い方というのはユニークで面白い。シンプルな撃ち合いのゲームだったら問題となる所だが、SDをどう使うかを工夫出来るので繰り返しが苦にならないとも言える。 それと確かに死にまくるのだが、何回やってもクリア出来ない様な難易度では無いし、死んでもLoadが一瞬なのでストレスは無い。その代わりに死への緊張感といった要素はあまり無く、ここはちょっと意見が分かれる所かも知れない。死ぬと10秒以上のLoad時間が有るならその間に今のプレイへの反省や死の重み等を感じる事も起きるのだろうが、待ち時間無しですぐに再開出来るのであまり気にする事も無くなってしまう。退廃的でダークな雰囲気作りには力を入れるが、ゲームとしてはリアリティよりもアクション性重視という設定と言えよう。個人的にはその死ぬ回数の多さを考えると、ストレス軽減という意味からは現在の設定の方が良いと感じる。 現にPC及びXboxとゲーム内容はほぼ同じでありながらPS2版はその評価が低くなっているのだが、その大きな原因としてゲーム中に自由にSaveをする事が出来ずに(ロケーション自動式)、また一度死ぬとそのマップを最初からその都度Loadするというシステムが挙げられている。確かにこのゲームがQuicksave不可で、一度死ぬ毎に数十秒間Loadingする形式であったなら相当評価は落とさないとならないだろう。 戦闘に付いては被弾ダメージが大きい点やPainkiller(回復薬)の適用には時間が掛かるといった点はリアルであるが、その他は結構アバウトという感もある。当り判定が曖昧で画面で感じるのとズレがあるような気がするし、敵にもReloadモーションは有るのだが攻撃を受けるとそれが一瞬でキャンセルされてしまう。またゲーム内でのムービー終了後に突然ゲームが再開される個所が幾つか有るのは非常に気になった部分(例えば敵が目の前に出現するムービーの後にいきなり始まるので攻撃されてしまう)。 AIについてはこちらを追ってやって来るのが基本で、さほど頭がよろしいという印象ではない。物陰に隠れたりもするが、そのままそこから動かなくなったり、こちらが動いてもそのまま反応が無かったり。一度銃撃を受けてもしばらくすると何事も無かったかの様に元の巡回に戻ってしまうし、手榴弾に関しては認識する事が出来ない様だ。スクリプトによって動かされている部分も多く、AIの出来に関してはあまり期待しない方が良いだろう。ただしゲームとしてはそこに面白さが有る訳ではないので、この点はそれほどのマイナスとはなっていない。 |
問 題 点 |
このゲームの欠点と感じるのは、難易度の自動調整機構を搭載している点にある。おそらくは常に緊張感を持ってプレイ出来るようにという事なのだろうが、ゲーム進行中のプレイヤーのパフォーマンスや現在の状況を分析して、それに合わせてゲーム側で難易度を自動的に調整してくれるシステムである。ちょっと聞くと良いシステムにも見えるのだが、実はこれが面白さを損なう原因となっている。ゲームの種類(RPG等)やそのやり方によっては効果を発揮するシステムとは思うのだが、こういったシューティング・ゲームにおいては向いていない機能と思える。例えば自分が弱っている時に、自動調整が効いて来ると以下の様な変化が生じる。 *敵を倒した時にPainkillerを落とす確率が高くなる *敵の反応が遅くなり、命中率も低下する *Auto-AimをOnにしている場合に、SD中に照準が合い易くなる(と思う) *壊した箱等からのアイテム出現率が高まる 私の考えでは、そうしたいならばゲーム中に任意に難易度を変更出来るといった風にするべきであり、ゲーム側で勝手に難易度を調整するという方式は気に入らない。或るプレイヤーが計画性を持たずに適当にプレイして進んだ為に後半クリアが不可になって、ある程度戻ってやり直すというのは自業自得であって、別にゲーム側がそれを救済する手段を持つ必要性は無い。一方上手いプレイヤーが弾薬やヘルス等を温存して進めば、その分後半有利になってもそれは当然の事である。 ところがこのゲームでは上手く倒せば倒すほど敵は強くなって行き、自分が危なくなる程に敵のパフォーマンスは落ちて行く。全く同じ外見と武器を持った敵が、或る時は異様な正確性を持って遠距離から当ててくるかと思えば、自分の目の前の近距離で外しまくるといった事が起きるのである。要するに”適度に下手”なプレイヤーほどゲームをスムースに進める事が可能であり、これはアクションゲームのデザインとしては大きな欠陥と思う。 幾らアクションとはいえ或る程度の計画性(弾薬やヘルスの管理)は必要と思うのだが、このゲームでは死んだりしても繰り返しやっていれば、ゲーム側それでも進める様に難易度を下げて面倒を見てくれる訳で、それではやはり問題が起きる。例えば予備ヘルスも無くなって危なくなったら、戦闘時にわざと無駄弾を大量に(敵を倒さないようにして)撃つ事で命中率が悪いと認識させて簡単な方向へと調整を動かす事が可能だとか、逆に非常に上手く進んで行くと敵が異様に強くなって来るので、意図的に無駄弾を撃ったりとか当てられたりとかしてヘルスを使い、やや設定を元に戻す様にしないと辛くなるとか。 上手く立ち回れば敵が強くなるので後にその分自分が削られる為に、それほど慎重に行動せずに適当に苦戦して敵を強くしないで進んだ場合と結果的には同じ事になる、といった設定は正直な所プレイしていて白ける要素だ。同一設定の敵の強さ(反応速度や命中率)は同じであるべきで、そうしないと戦闘時の作戦の立てようが無い。全く同じ外見の敵がいざ戦ってみないとその強さが分からないというのは、現実風のリアリティは有ってもアクションゲームとしては詰まらなくなってしまう。 |