WILL ROCK

                                 05/05/16

  公式サイト


<概要>

 米・ロシアに拠点を持つSaber Interactiveからの3DFSP。Ubiから2003年に廉価版価格での発売となっている。現時点でも販売は継続されているが、サポートは既に休止状態。公式Forumにおいても開発側からのレスポンスは途絶えている。

 デモは存在するが、これはシングルプレイ専用でマルチプレイは出来ない仕様。


 主人公William Rockwellは遺跡探索グループの一員として発掘に参加していたのだが、一行は封印された地に足を踏み入れてしまい、邪悪な教団にリーダーの教授は殺された上にその娘が連れ去られてしまう。一方でその際同時に封印を解かれた、教団と敵対する巨人プロメテウスの聖霊は形を持った肉体であるRockwellに乗り移り、娘を助けに行くRockwellと協力して古代ギリシア世界へとタイムトラベルをするというストーリー。


<VERSION>

 最終バージョンはV1.2となっているが、ここに大きな問題が潜んでいる。このゲームがマルチプレイにおいて失敗した原因の一つに、バンドルソフトとして配布されたというのが挙げられる。

 ハードウェアのオマケとしてゲームが添付される事は珍しくなく、完全に最後までプレイ可能なフル版が付くのも当たり前になって来ている(昔は途中までというのが結構有った)。このWRもATIの公認ゲームという事も有り、結構多くのハードに添付されている。しかしこういった添付ゲームは最後までプレイ可能であってもあくまでオマケであり、サポートの対象外とされているのが普通である。よってパッチによるサポートも保障されていない。それ故にこういったゲームはほとんどがシングルプレイ専用のゲームとなっている。
 WRの添付版も実はパッチには対応していない。こういう場合の理由としては、添付版までサポートするという姿勢を示してしまうと後で面倒が増える可能性が有る(実際には一本に付き幾らという金は普通入っている訳だが)というのも当然存在するが、パッチがレジストリを認識して自動適用されるタイプなので適用出来ないというのも多い(製品版のCDとは異なった物なので、レジストリ上で登録される場所が異なる)。複数存在する場合に添付版専用に別々のパッチを作成して配布するというのは面倒という意味。

 WRはV1.2によってネットコード系も改善されているので、当然製品版を持っている参加者はV1.2にしておかないとならない。しかし添付版を持っている人はV1.2を適用する事が出来ないのでこれには参加が出来ないのである。もちろんマルチに製品版を買い直すほどの面白さがあればそうすれば良いのだが、そこまででは無いとなると、最後までプレイ出来る添付版を持っているのに改めて買い直す人は少なくなる。製品版は安かっただけに、もし添付版として配布されなければもっと売れた可能性はあると思うのだが、これがマルチ人口の減少に影響してしまったというのは確か(なおGigabyte版のみは勝手に作成した差分パッチを配布している人がいる)。

 それとこのゲームはシングルプレイにおいても大きな問題のあるバグが存在している。これ等はV1.2においても完全に直っているのか定かではない。

*タイミングを合わせて刃をくぐり抜けるトラップにて透明な壁で進む事が出来なくなる。これはAthlon系のCPUでのみ起きる現象。
*Radeon系のカードにて、Textureが滅茶苦茶に表示されたり、壁を透過して先が見えてしまう
*敵を全て倒し切るとドアが開く場所にて、敵が変な場所に引っ掛かってしまい先に進めなくなる
*マウスの感度が場所によって変化してしまう(突然遅くなる事がある)



<ゲーム解説>

 濃密なストーリーは別に無く、製作側も出てくる敵をひたすら倒すだけのゲームと明言している。ゲームの舞台となるのは古代のギリシャで全10レベル。ただしギリシャのみとはいえ、ロケーションはそこそこバラエティに富んでいる。
 敵の数は25種類ほどでAIにはそれほど力を入れていない(Samのように単純である)。こちらに向かって突進してくるのみで、障害物に引っ掛かったりもする。プレイヤーの進行に応じてトリガーで敵が空間に突然出現してくるスタイルはSamと同じ。

 またゲームは正確なObjectの破壊計算を特徴の一つとしており、壊すことが出来るObjectはその攻撃が当った個所・角度・威力によって正確に計算されて破壊される。つまり同じ形状で破壊される事は2回として無い。飛び散った破片の一つ一つにも物理計算が適用される。非常にシンプルな物ではあるが、物理エンジンを早期に採用したFPSゲームである。
 グラフィック的に目立つ点としてはReal-time Procedural Morphing(Procedural Texture効果)を導入しており、敵の形状を攻撃によって変形させることが出来る。例えばMedusa Gunは敵を石に変えて粉々にする事が出来る武器で、この効果をDX8にてサポートされているProcedural Textureにてリアルタイムに敵のグラフィックに適用している。或いはAtomic Gunは放射能弾を発射して周囲の敵をドロドロと溶かし、Acid Gunは敵を風船の様に膨らませて破裂させてしまうという表現を行っている。


<仕様>

*参加は最大で6人まで
*アイテムの取得は全員か一回のみの指定可能
*使用キャラクタモデルは女性も含めて6種用意
*開始マップは指定可能(ただしちょっと分かり難い)
*死亡した場合の復活はスタート地点。ただしShift + Enter + USEキーにてその場に復活可能(溶岩地帯や落下死では意味が無い)。これはパッチにて対応された機能であり、付属版同士でのCoopでは有効にならないかも知れない。

 問題としてUbiのゲームという事で自社で管理をしているのだが、Ubi.comのブラウザソフトには対応しておらず、それ以外のサーバー・ブラウザにも対応していない。その為現在Coopが開催されているのかを確認するのがやや面倒である。



<GAMEPLAY>

 Coopそのものの出来についてだが、これは残念ながらネットコードがダメとしか言いようが無い。人数が2人で敵が少ない時であればPingが悪くても結構まともに動く。しかし敵が多くなると見えている位置には実際にはいなかったり(弾を撃っても反応が無くなる)、敵が空へ上っていくような描画になったりとプレイが出来なくなる。これはPingが低いほど発生確率は低くなるが完全に消えるとは言えないようだ。ただし敵が少なくなればちゃんと元に戻り、再度接続をしないとならないといった程には酷くない。
 しかし3人以上になると途端にゲームにならなくなる。多数の敵との戦闘になると、銃を撃ったのが10秒以上経たないと反映されない、アイテムや弾薬が取れない(反応が遅い)、敵も味方も位置が分からなくなる(空に上ったり壁に消えたり)、とプレイ不可の状態に。2人では大丈夫なのだが3人以上になるとデータのシンクロが出来なくなるというゲームは他にも有るが、WRもその例に漏れないようだ。

 国内の人同士で3人以上というのは試した事が無いが、おそらく快適なプレイは困難と思われる。2人であればプレイは何とか可能といったレベル。LANでのプレイについては未検証。更には公式のサーバーは現在一つも存在しないし、Dedicated Serverを建てている人もいない。よって現在では安いとは言え、Coop目的で買うにしては問題ありなタイトルである。一緒にプレイしてくれる仲間がいなければ相手を見つける事自体が難しい。

 マップ上の問題点としては、最後のセクション(オリンポス)の最初のマップはジャンプパズルが中心となっており、落下死すると最初からなのでクリアが困難。出来ればサーバー役の人間はここを飛ばした方がいい。


 次にゲーム自体の問題についてだが、このゲームは様々な箇所のバランスが悪い。第一に敵の耐久力が低く設定されており、中位のレベルの敵というのがほとんど存在しない。ボス以外の大半はかなり簡単に倒せる物で占められている。Serious Samにおいては大体耐久力が有る強い敵ほど大きいという図式になっており、また弱い物から強い物への存在比率は綺麗なカーブを描いて減少して行くようになっているのだが、WRにおいては下層の部類に属する敵の比率が非常に高い。言ってみればロケット5発で倒せる強い敵を出すよりは、一発で倒せる敵を同時に5体出すという発想で作成されているように見える。敵のサイズも全体的に小さ目であり、それも含めて強い敵を倒すという意味での爽快感が薄い。

 それと武器の弾薬が一体何の為にこんなに置いてあるのかと疑問に感じる位に多い。しかも武器が非常に強力である上に装弾可能数が多いときている。最強武器のAtomic Gunの様に、放物線を描いて飛ぶので当てにくい・発射感覚が長い・装填可能数が少ない、ならば話は分かる。しかしFireball Launcher, Acid Gun, Medusa Gunという大半の敵を一発で倒せる武器の弾薬が50発・100発と装填可能で且つ弾は山のように存在しており、それに加えて強力な連射機能を持つMinigunも1000発装備と弾が多い。更に一般的な武器であるShotgunも遠方まで射撃可能で多くの敵を一発で殺せるとなっている。確かに撃ちまくりの爽快感はあるが明らかにオーバーパワー
 パワーアップも機能していない。マップ内のSecret等に有るGoldを集めると祭壇にて無敵・4倍ダメージといったパワーを購入して好きな時に作動させられるのだが、難易度Normalにおいてはラスボス戦以外は全く無用という印象。Painkillerの同難易度の場合は無くてもOKといったバランスだが、こちらは必要性が感じられないというレベル。

 結論として敵が弱い上に自分の武器が強過ぎるという困ったバランスになってしまっている。シングルにおいてはHardを選ぶ事で一応バランスは取れるが、Coopにおいては特に敵の数や強さに修正がはいる訳ではないので、Hardにしても2人いるとそれ程の手応えは感じられなくなる。仮にネットコードが良かったとしても多人数ではプレイ出来ないだろう。

 一応プラス点を挙げておくと、敵が変形して崩れ落ちるという演出は良く出来ている。例えば火矢では燃えてやせ細り、Medusa Gunでは石化して粉々に砕け散るという風に武器によって敵が変形してやられるのだが、崩れるまではそのまま攻撃して来たりと油断は出来ないようになっている。特に体が膨れて最後には弾け飛ぶというAcid Gunは、FPSの歴史上でも上位に入るユニークで面白い武器と言える。



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