☆ AFTERFALL: INSANITY ☆
                                                                                11/11/19

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製作/販売 Intoxicate Studios / Nicolas Games        公式サイト 
デモ仕様 1.83GB    シングルプレイ  チャプターを二つ収録
概  要  元々はポーランドのアマチュアグループが制作していたBourgeoisie: Pearl of the Wastelandsというゲームが始まり。これは名作として名高いRPGであるFallout(1&2)に影響を受けた物で、そのポストアポカリプスの世界設定の舞台を欧州に移した見下ろし視点のターン制RPGである。一方でNicolas Gamesはポーランドの販売代理店で、西欧のゲームを国内に向けて販売していたのだが、より利益を上げる為にゲームの製作会社へと転身。その彼等が目に付けたのがこのゲームであり、2008年に制作チームを雇い入れて公式なプロジェクトとしてスタートさせている。

 ところがあまりにも壮大な世界観と複雑な要素を盛り込んだ結果、内容が膨れ上がり過ぎて収集が付かなくなってしまう(製作予算, 人員, 開発期間の意味だと思われる)。そこで方針を大きく転換し、Afterfallと呼ばれるその世界観をベースにして、ジャンルにこだわらずに何本かのゲームを順次制作していこうという話になった。その第一弾となるのがTPSホラーアクションであるこのAfterfall: InSanityである。今後は本元のRPGの他にRTSゲームも予定されている。

 要するに大きな会社ではないので、段階的にゲームを出していって利益を出して繋ぎ、オリジナルのRPGの発売まで何とか持って行こうという考えなのだろう。よってこのゲームの結果次第では続編がキャンセルされる可能性もある。

 シングルプレイのみでPC版が11/25に先行発売。今後Xbox 360, PS3等の他のプラットフォームでも順次発売予定。現時点では自社サイトからのダウンロード販売のみで価格は$34.95。自社で太い回線を持っている訳ではないので、データファイルはP2P等でも流して容易に入手出来る様にし、登録メアドに送信するアンロックコードを使ったオンライン認証を採用。


 予約するとゲームが$1で買える(かもしれない)というキャンペーンを実施中。もし発売日までに予約が一千万本以上集まった場合、その一割をチャリティに寄付し、予約していた人は実際に$1でゲームを購入する事が出来る。このケースでは一割を寄付しても900万ドルが利益となるので、会社側としては$1で売っても問題は無い(一千万本を超えた分については五割を寄付)。予約数が目標に届かなかった場合にはその全額を寄付。予約者は定価から先に支払っていた$1を引いた$33.95でゲームを購入するという規約になっている。

 なおこれはインディーズ会社による「金を掛けない方法による宣伝」というアイディアから生まれた物であり、「このキャンペーンが各種ゲームサイトのニュース等で採り上げられる事で、それまで存在すら知らなかったこのゲームの事を多数のゲーマーに知らしめる事が出来る」というのが大きな狙いだそうだ。会社側が実際に一千万本の予約を達成出来ると見込んでいる訳では無い(可能性がゼロとは思っていないそうだが)。


 ゲームの背景世界設定は歴史のIF物。第二次世界大戦の終盤にナチスドイツが原爆を完成させ、自国に向けて侵攻するソ連軍に対して使用。その後戦争は膠着状態となり、米国, ソ連, ドイツの三国による睨み合いの冷戦状態へと移行する。その中で境界線に位置するポーランドは紛争地域となり、米国軍が駐留する状態となっていた。そして2011年にドイツが新型の謎の爆弾“Entropy”を開発。しかしこれが翌年に意図的か事故なのか爆発してしまい、それに誘導されて各国の核ミサイルが発射されるという事態となり、全世界は核爆弾によって壊滅状態へと陥ってしまう(第三次世界大戦)。

 そんな中ポーランドでは緊張する世界状況を意識して、以前より“Afterfall”というプロジェクトがスタートしていた。これは各地に限定された人間だけが入る事が出来る巨大なシェルター(地下都市)を建造するというもので、この大戦の発動によって実際に使用される事となった。

 ゲームの舞台となるのはそのシェルターの中の一つである“Glory”。大戦から20年後の2035年、その地下世界では住民の間に“confinement syndrome”(正確には解らないが四肢が麻痺したりする精神的な疾患)が蔓延しており、内部は快適な状態とは言えなかった。主人公のAlbert Tokajは精神科医&薬理学者であり、この病気の治療法の確立に尽力していたのだが、更に謎のウイルスの感染によって住民が正気を失いシェルター内部は混沌とした状態に陥ってしまう。医者としてその事態の解決に臨んだトーカイだったが、探索するにつれてウイルス拡散の裏に潜む数々の謎に遭遇する事になるというストーリー。

動作環境
HARDWARE 必要環境 推奨環境
CPU Core 2 Duo 2Ghz, Athlon 64 x2 2Ghz -
MEMORY 2GB for Windows XP
3GB for Windows Vista or Windows 7
-
VIDEO VRAM 256MB, Shader 3.0
GeForce 8600GT以上
-
SOUND - -
対応OS  XP / Vista / Windows 7
DirectX 9.0c以上要


 このデモはプレイ中以外のチェックポイントセーブが働かない様で、一度ゲームを終わらせてしまうとチャプター単位での選択しか出来なくなる(Continueがグレーアウト状態)。特に最初のチャプターは相当に長いので注意が必要。

 私の環境ではカットシーンの場面でコマ送りの様に重くなる事が多かった。遭遇した障害は以下の通り。

1.カットシーン中にクラッシュ(一度)
2.床に体が埋まってしまって抜け出せず(一度)
3.床に落ちた打撃武器が消えてしまう(二度)


GAMEPLAY  このデモはかなりの分量があり、1時間程度は遊べると思う。始めのチャプターはチュートリアルを兼ねており、地下施設内を探索するという構成。二番目は時間的に連続しておらず、もっと後のセクションを選択したと思われる地上のチャプターでこちらは短い。

 発表以来Dead SpaceMetro 2033と比較される事が多いが、ゲーム性や背景設定は異なる物だと開発側では話している。詳細は不明だがインタビューでの説明からすると、Dead Spaceとの違いは「戦闘はあれ程派手でアクション性の高い物では無い」, 「主人公は単なる医師であって兵士の様には強くない(それを言うならアイザックも単なるエンジニアではあるが)」, 「近接打撃戦を重視している」といったところ。ロケットランチャーやプラズマガンの様な武器は登場せず、一般人が扱える程度の銃器しか出て来ないそうだ。


・難易度は4種類だが、デモはMediumしか選べない
・チェックポイントセーブ
・字幕とゴアをオンオフ可能

*カメラは360度回転方式
*通常はショルダービューで、オブジェクトに背中が近付くと一人称になる
*ズームモードあり。この時だけ左右へのカメラスイッチが可能。
*敵に照準が合って当たる状態になると赤に変化する
*ジャンプや屈みは出来ない。ただし一部よじ登ったり屈んで通れる箇所も在る(印が出る)。
*前後左右へのローリング回避動作が可能
*スタミナの概念があり、バーが残っている限りはスプリント出来る
*Useキーで干渉出来る箇所には四角い枠表示が出る
*フラッシュライトは無限に使える
*PDAボタン長押しで進行方向表示


 戦闘の基本システムだが、所持武器のカテゴリーはピストル, ライフル, 打撃武器の3スロット。ただし打撃武器は銃器とは異なり直接手で持って運ぶしか携帯方法が無く、銃器に持ち替えた時点で下に落としてしまうので、後で拾うとかしないとならない。だが打撃武器として使える物はそこら中に在るので(敵も落とす)、打撃武器が使いたいのに周囲に無いという状況にはまずならないと考えられる。

 近接武器戦闘はロックオンシステムを採用しており、ロックオンキーを押す事で敵に向きを合わせられる。ターゲット変更キーもあり、例えば前後に挟まれた際に一瞬で背後の敵に向きを合わせたりが可能。しかしガイドアイコン等が出ないので、今ロックオンモードになっているのかどうかと、どの敵に合っているのかが判別し辛く、ここは改善の余地ありと感じられた。

 打撃攻撃はWSADキーとの組み合わせで4種類の軌道変化をつけられる仕様。ハンマーや斧の様な武器は強力だが振りかぶって実際に攻撃するまでの時間が長いという欠点が在り、小型の武器はリーチが短いが連続攻撃がやり易い。クロウバーや鉄パイプ等はその中間型と、武器によってちゃんと使い勝手に変化が付けられているのはプラス点。右クリックでは敵の攻撃をブロック出来て、また敵を一時的に怯ませる蹴り攻撃も繰り出せるようになっている。

 地面に倒れたり膝を付いたりした敵に攻撃するとフィニッシングムーブとなり、連続して殴りつけるアニメーションが自動的に発動する。これにより若干のヘルスの回復が行える。ゴア要素はあまりリアルな表現ではないが、頭部を切り落としたり四肢の切断が可能(頭部は潰れるだけではなく、切断された物が転がっていたりする)。


 独自要素として用意されているのがFearLock system。トーカイの携帯するPDAは患者のストレスレベルを計る機能を持っており、これがプレイ中は彼自身のストレスレベルを計る物として使われる。右腕に装着されたPDAは緑→黄色→赤となる程に彼のストレスレベルが上昇しているのを示し、これを回復するには明るい場所に出たり、安全な状態へと持って行く様にしないとならない。

 ストレスレベルが上昇した際の影響だが、銃器による狙いの正確性が落ちて、またヘルスの自動回復速度も低下する。その代わりに打撃攻撃のスピードとダメージがアップするというメリットも持っている。


 実際の近接戦闘だが、それをメインにしているのにショルダービューを採用している点が新鮮と言えば新鮮かDead Risingの様にカメラを後方視点へと離すと、敵との間合いが解り易いのと武器のスイング動作がハッキリと見られるという利点があるが、自分が掴まれたり襲われたりしているという感覚は出し難くホラーの演出という面では不利になる。逆にDead Islandの様に一人称視点にした場合には、敵に間近で襲われているという恐怖感を出し易い代わりに、武器のスイングが一部しか見られず間合いも掴み難いという問題がある。

 その両者の中間としてのショルダービューだと、敵はある程度間近に感じられるし、武器のスイングの軌道も描画可能で間合いも解り易いとなっている。ロックオンシステムがあるのでマウスの動きが低速でも対応出来るし、これは操作に慣れてくればなかなか面白いシステムかもしれない。しかし弱点も持ち合わせており、狭い場所等ではカメラ位置が自動的に切り替わってしまうので、自分の姿がカメラの外に出てしまったりや、自分自身が邪魔で自分の正面の敵が見え難くなったりという事態が発生する。また後方が見え難いので、回避動作のローリングを行えるスペースが在るのかも後方カメラ方式に比べると判り難い。


 一方の銃器はこのデモだとピストル, ショットガン, アサルトライフルが登場する。この他にどの位の銃器が出て来るのかは不明。当たっているのかどうかは判り易いが、銃撃の音が軽めで重量感に欠けており、オモチャの銃を撃っているかの様な感覚が強いのは残念。デモにおいては敵が自分に近付く前に倒せるので打撃攻撃よりも遥かに強力という印象だが、弾はそれ程無いという設定の様に思われる。二つ目のチャプターでは近接戦が難しい敵も出てくるので、ロケーションによって打撃メインと武器メインが分かれているというゲーム性とも考えられる。


 デモにて一番の問題に感じられたのが被ダメージの少なさ。説明はないがおそらく自動回復方式だと思われ、赤いオーラが周囲に発生して時間が経過すると消えて行くというやり方。ところが敵の攻撃によるダメージ量が相当に低く、難易度Mediumとは言ってもあまりに簡単である。打撃戦では一旦引いて回復を待つという必要が無く、真っ向からブロックもせずに適当に武器を振り回していれば勝ててしまうというバランス。最後まで一回も死ぬ事は無く進められると思う。製品版では上の難易度があるとは言え、途中で変えられないならこれは修正するべきだろう。或いは他のチャプターではもっとずっと難しくなるのか。

 それとホラーを重視するゲームならば、それを損なう恐れが高い自動回復方式は採用するべきではないと考える。これは近接打撃戦をメインとするゲームとしても同様。


 ゲーム性としてパズル要素は低そうで、アイテムを持って来てセットしたりと単純な物ばかり。QTEも登場するがこちらも簡単である。ハッキングは文字並びを総当たりで試しながら憶えるという方式で、各歯車にWSADのキーが割り付けられており、正解のキーを押すと白くなって回転し始めるが、間違えるとその列は全てリセットされてしまう。つまりどの歯車がどのキーに当たるのかを記憶して、横一列を連続して正解するのが目的というミニゲーム。

 ホラー要素を重視しているゲームでもあり、主に暗く狭い場所における閉塞感と、不気味なサウンドによる演出で怖さを表現するという方法の様だ。まだデモだけではどの程度怖いのかの判断は困難だが、Condemnedほどの怖さは感じられなかった。

 敵の種類は地上パートのチャプターでは別物となる模様で、自爆能力を持った物や直射日光の場所を避けないと出現してしまう精霊の様な奴なども出てくる。

GRAPHICS

SOUND
 Unreal Engine 3を採用。ポピュラーな同エンジンを使用しても酷いクオリティのゲームも在る中で、無名会社の作品としては水準以上のクオリティは保っていると思える。オブジェクト等に使い回しが多いのが気になるが悪くないと言えよう。無名のゲームはどうしても「グラフィックスが貧弱→ゲーム内容も貧弱に違いない」という見方をされがちだが、このレベルならばそういった事も無いだろう。

 3Dサウンドに対応しており、環境音としてのノイズや不気味なBGM等、怖さを演出する上で良く出来ていると感じられた。

感  想  名前位しか聞いた事が無かったタイトルだが、予想以上にクオリティが高かったという感想。一応購入候補に入れたが、情報が少なく未知数の部分も多いので、発売後に様子を見てからにしようと思っている。上で挙げた欠点への対応も気になるところ。現在の$1キャンペーン中はシステム上自社サイトでしか売れないが、発売後は他のダウンロード販売での取り扱いも検討してもらいたいところである。後は価格が無名会社からの物としては高目か。ただこれは評判が良ければ影響は少ないと思われる。

 ポイントとしては、打撃戦をメインにするなら敵のAIを優れた物にする事と、敵のタイプを増やすという点になる。同じ様な敵ばかりが登場して且つ単純な戦い方で倒せるとなると、飽きが来るのが早いし面白味にも欠ける。それに絡んで飛び道具を持たない敵に対しては銃器攻撃が非常に強力なので、弾数の調節も重要になってくる。

 後はホラー要素か。どうやら「主人公が単なる医者なので弱く、戦闘で死に易いので怖い」というゲームでは無さそうなので、それ以外の部分でどれだけ怖く出来るのか。ここが成功すれば戦闘面の弱さがあってもある程度は補えるだろう。


 評価 75点

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