☆ GRIDBERD ☆
15/06/08 更新 | 目次 HOME |
製作/販売 | Wareberd Studio |
デモ仕様 | 3.87GB (V0.1) 2015/05/22 最初のリリースバージョン |
概 要 | Wareberdはウクライナのインディーズチームでこれがデビュー作。現在は4人構成で開発している。 SteamのGreenlitにかなりの短期間で到達済み。タイトルの意味はロシア語と何か関連があるのかも知れないが不明。 Kickstarterなどのクラウドファンディングは行っていない様だが、2015/09/04とやけに具体的な発売予定日が既にアナウンスされている。10時間程度のボリュームと結構長い様なのに対して、今回レビューしたデモのバージョンはまだ初期段階である事を窺わせるし、そんなに短期間で完成まで持って行けるのかには疑問を感じさせる。販売価格は$9.99を予定。 現時点では対応機種はWindowsのみ。この辺はCRYENGINEの他プラットフォームへの対応がどの程度成熟して行くのかも影響してくるだろう。 |
動作環境 | 必要環境は公開されていない。ただしCRYENGINEで制作されているので、ある程度のPC性能がないと厳しいと考えられる。 現在のデモで気が付いた障害としては、設定画面上で何を選択したのかが明確に表示されなかったりとメニュー関連がまだ未完成である。表示項目をクリックしても効かなかったりもあり。或いは画面が真っ暗で何も表示しなくなり、適当にキーやマウスをクリックしていると何かが効いて進み出すとか。 |
BASICS | (主にフリーゲームの)インディーズ業界には、大ヒットした作品の類型作・パロディーが流行する事があり、古くはSlender: The Eight Pages、これを書いている現在ではFive Nights at Freddy'sがその対象となっている。そんな中インディーズゲームの情報などを見ていて最近チラホラと目にしていたのが、PS4用にリリースされていた P.T. に影響を受けたという作品である。例えば現在、あっと言う間にGreenlitに到達して話題になっているAllison Roadという作品があるし、何本か他にも単にPC上で似た様な構成を再現してみた物(クオリティは不明)とかを含めて存在している。そしてこのGridberdも同様にP.T.に影響を受けて制作されたゲームである。 P.T.については複雑な背景事情が絡んでいるので説明すると長くなる為、興味のある方はネット上で調べてみてもらいたい。簡単に書くとコナミが計画していたサイレントヒルシリーズの最新作『Silent Hills』のデモ版として無料配信された作品である。制作は小島秀夫監督の小島プロダクション。デモ版とは言ってもSilent Hillsの内容とは何も関係無く、単にサイレントヒルの様なホラーゲームを自社製のFOX ENGINEで制作してみたという作品。だが小島秀夫監督がコナミを離れた事から、彼が制作する予定だったSilent Hillsは制作中止となり、このP.T.も配信が停止されている。 ゲーム内容はL字型の廊下を探索するスタイルで、行き止まりから階段を降りて次に進んでも同じ場所が繰り返し出現するという無限ループ形式。しかし進むに連れて内部風景や演出に変化が見られるホラーゲームとなっている。クリアするには難易度の高い謎を解いてゲームを先に進めないとならない。 Gridberdの舞台は1998/03/28。主人公のサムは自分の名前を含めた記憶を失っている状態で目を覚ます。場所はジョンソン屋敷の地下。ここは1863年に建設された邸宅だが、オーナーがキャリー・ジョンソンの時に彼が何者かに射殺されてしまい、その後ある会社の手に渡ってしまう。だが幽霊として蘇ったキャリー・ジョンソンは自分の死に怒り狂い、自分の死に関連していると思われる人間を次々に殺害。その結果幽霊屋敷として恐れられ廃墟と化していた。サムは冒頭で幽霊であるキャリーと遭遇するが、自分が何故ここに連れて来られたのか、彼の死にどう関連しているのかが解らない。その理由を解き明かすのがゲームの目的となる。 現段階ではどの程度影響を受けているのか、システム的にどの位似ているのかは不明だが、上で書いた様にP.T.に影響を受けているホラーゲームである。演出にはカットシーンを多用しており、プレイ時間は8〜10時間を想定。エンディングはノーマルが2種類, シークレット1種類, 更にベリーシークレットが1種類あるとされている。 ・マウス感度設定可, 明るさ調整可。キーバインド不可, サウンドボリューム調整不可。 ・難易度選択は無し ・現在の目標を表示する機能は無し ・ミニマップの類は無し ・インベントリー画面無し ・字幕機能あり。英語とロシア語を選択可能。 ・一人称視点固定 ・FOV調整不可 ・屈み, ジャンプ可能。スプリントは出来ない。 ・照準無し 現行バージョンでは開発者モードである、F1キー(FPP/TPP切り替え), F2(マップ内の特定のポジションに移動する), F3(FLY/NOCLIPモード切替)が有効になっている。 |
GAMEPLAY | 先に書いておくと私はP.T.を実際にプレイした事は無い。参考としてプレイ動画を中盤辺りまで観てみた程度である。 デモのエリアは3つに分かれており、スタート地点からチュートリアル的なエリアが最初。その後メインエリア(P.T.で言う所の廊下)、そして屋敷内の別エリアへと進行する。セーブ機能は有るのか無いのかハッキリしない。これは後述するが、ゲームオーバーの様になるシーンが本当にそうなのか、それとも演出なのかが明確では無いからである。 スクリプトで進行するシーンも出て来るが、戻れてしまう可能性を処理していない箇所もあり。例としてハシゴを自動的に上ったりするが、そこから再度下に跳び降りてしまうと、もうスクリプトが働かずに上れなくなる(F3キーのチートでFlyを使って飛べば戻れる)。 2番目のL字エリアは風景的にP.T.に良く似ており、ここはもっと独自の構造の方が良いと感じられる(這っている物がゴキブリでは無くてクモであるとか、そういった単純な違いを含めて)。マップの進行はループ構造ではないがスタイルはやはりP.T.と似ており、何かを行うと周囲の状況が変わっていたり、イベント後に再度戻ってくると風景や発生する事象が変化しているという風になっている。そしてGridberdでは、イベントがイコール死亡(もしくは幻覚?)らしき構成で、それを避ける事が可能なのかは定かでは無い。避ける事が出来ない死亡を思わせるイベントを体験すると、周囲が変わった状況の次の段階へと進むという意味。(P.T.では途中で死亡してもやり直せる構造だが、死なずにクリアする最適解を選択していかないとゲームクリア達成には不利になるそうだ)。このデモ版ではそのイベントによる死亡体験はおそらく不可避の様に感じられるのだが、製品版では正解も用意して到達エンディングの切り分けに利用される可能性もある。 3番目に異なるエリアに入るのはP.T.とは違った点。ここは螺旋階段の最上部に到達した時点でエンジン側からエラーメッセージが表示されてしまい、そこまでしか作っていない様である。Noclipで通り抜けを試してみたが、鍵の掛かっている玄関ドアの先や開かない各部屋ドアの中等には特に何も作られていない。 ホラー物としては定番の演出がほとんどであり、少なくともこのデモにおいては平凡な出来栄えと言わざるを得ない。演出面でもP.T.との共通性を感じさせるシーンが目立ち、P.T.に似ているという点からプレイヤーを集められても、そういった所を比較されてしまうとオリジナリティという面で弱い。(P.T.を全く知らないというプレイヤーに対しては有効かもしれないが)。またこちらではサイコホラー的な要素が薄く、P.T.とは違って得体の知れない不気味さというのは感じられない。となるとP.T.では無限ループというのが一つのホラー要素になっているが、こちらでは延々と同じエリアをプレイする訳では無いようなので、その点をどういう風に活かせるのかが重要になってくるだろう。 謎解きと呼べる様な要素もまだ含まれていない。最初のシーンもパズルという程のレベルではないし、後は進めて行けばアイテムが簡単に手に入ったりして進められてしまう。 I/F系について幾つか。明るさ調整は可能だが、制作側の意図する明るさに合わせる機能は無し。私の環境では内部設定で目一杯明るくしても結構暗目という印象。照準が無くFキーでUseだが、それが表示される箇所の範囲が限定されており、「Fの表示が出た」となった後に、もう一度Fが出る位置を探らないとならなかったりと問題あり。またFキーが出る場所だけが干渉可能なのではなく、それ以外のドアなどでもハイライト表示などはされないが開けられたりと一貫していない。 移動速度が遅い。ゲームのタイプとして走れないのは解るが、ちょっと遅過ぎるという印象。それとマップ内のオブジェクトに乗り上げてしまう事が数回発生した。 |
GRAPHICS & SOUND |
CRYENGINEで制作されており、解像度は4K対応等設定可能項目は多いが、全てが有効になっているのかは未確認。描画のクオリティは確かに高いし、サイズが巨大なだけあってテクスチャーの質もインディーズゲームとしては良好。オブジェクト類の種類も多目。なお描画上の問題点としては、自分自身の影が投影される為に前が見辛くなるエリアが有る。 欠点としてはキャラクターの3Dモデリング&アニメーションの質の粗さが目立つ。ライティング等のエフェクト系はエンジン側が処理してくれるが、高度な3Dモデリング化されたキャラクターやアニメーションをエンジン側が自動的に制作してくれる訳では無い。そしてそこは製作負荷が最も高い箇所でもあり、インディーズ会社にとっての泣き所となる。具体的には3Dモデルのキャラクターを使った演出シーンなどでの粗さが目に付き、怖さを増加させるのにマイナスに働いてしまっている。ここはP.T.の様なそれなりの予算を採れる作品との大きな差である。 3Dサウンド対応。BGMは多彩で質も良い。ただし開発初期段階にしてはここだけ随分充実しているという感は受けた(アマチュア制作のゲームではデモの段階ではBGMが出来ておらず、他のゲームなどから拝借した物を臨時利用しているケースがある)。ボイスはかなり悪い出来という印象で、ウクライナ産なので英語ボイスを達者に話せる人材を集めるのが難しいのだと思われ、これから探していく事になるのだろう。 |
感 想 | あるゲームに対して強い影響を受けた事から制作された作品では、敬意を払うあまりに似過ぎてしまって二番煎じと称されてしまうケースが多々あったりする。そこでシステム的には似ているがオリジナリティをも感じさせるのが大事なのだが、このゲームは今のところオリジナル作品に似過ぎている。ループしながら世界が変化して行く部分を基本システムとして継承するなら、ロケーションを屋敷内からアウトドアにするとか目立った変更が必要だろう。このままだとPCに移植されたコピー品的な評価で終わってしまう恐れもあり。 まだ開発初期段階であればこれから化ける事に期待も出来るのだが、発売日が短期に設定されておりそこは不安な点。ただPCではP.T.がプレイ出来ないので、それに良く似たゲームがプレイ出来るという観点から「良く似てはいるが内容的には楽しめるゲーム」として評価される可能性も持ってはいるのだが...。 最後に気になる件として、アマチュア作品のパロディなどは制作者同士のやり取りでちゃんと許可を取っていたりもするのだが、P.T.に関してはその辺が問題にならないのかどうか。(現在ではダウンロード不可にされていたり等の複雑な経緯があって、著作権というか許可を取るにしてもその対象先は良く判らない)。有料販売するとなると問題視される可能性も考えられ、フリーで出すにしても本元が大手だけにうるさいかも。 評価 70点 |
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