☆ HELDRIC: THE LEGEND OF THE SHOEMAKER ☆


14/06/01 更新 目次          HOME
製作/販売 Astral Byte         公式サイト     STEAM     Indie DB
デモ仕様 136MB       SteamかIndie DBからダウンロード
概  要  Astral Byteはニュージーランドの開発会社でこれがデビュー作。会社と言っても現在は一人だけで運営しているようだ。このゲームは既にSteamのGreenlightを通過して14/04/17に発売されている。価格は$9.99。プラットフォームはPC, Linuxとなり、Mac版のプランは無し。

 シングルプレイ専用。マルチプレイ対応の予定は現在無い。発売されているがこれからコンテンツをいろいろと追加したりする予定となっており、完全版というよりは当座の資金集めの為の見切り発車的な印象も受ける。


 Tower Defenseとはリアルタイムストラテジーの1ジャンルとして発達した物だが、2011年頃からそのフィールド内にプレイヤーが操作するキャラクターが降り立って、FPS/TPS視点にて自分自身も防衛に参加して戦うという形式のゲームが増えて来て、Dungeon Defenders, Orcs Must Die!, Sanctum等の人気作が生み出された。アクション・タワーディフェンスなどと呼ばれるこの形式には、その他にも作品が存在or制作されていたりと定着しつつあるジャンルとなっている。このHtLotSもこのジャンルに属する作品であり、ハックアンドスラッシュとタワーディフェンスを併せて捻りを加えたゲームと宣言されている。


 ある小さな村で生まれたHeldricは、他の子供達と同じ様に近隣一帯を束ねる王家に属する騎士となる事を夢見ていた。しかしその夢は叶わず、成人した彼は一介の靴屋として生計を営んでいた。そんな折、周辺の村々をモンスター達が襲うようになり多大な被害が発生。王様はモンスターの拠点を叩いて全滅させるべく、自らの指揮の下に討伐隊を編成して遠征に出掛けたのだが、地元に兵士を残さなかった為にやって来たモンスター達の侵攻を防げなくなってしまう。だが今こそHeldricには兵士として立ち上がる機会が訪れた。残された人々と力を合わせてモンスターを撃退するべく戦いが始まる。


動作環境
HARDWARE 必要環境 推奨環境
CPU Dual Core Quad Core
MEMORY 2 GB 2 GB
VIDEO Shader Model 3.0, VRAM  512MB
1024x768以上の解像度
Shader Model 4.0, VRAM 1GB
1920x1080
SOUND Stereo Sound Surround Sound
対応OS  XP / Vista / Windows 7
DirectX 9.0c以上要


 これを書いている時点でゲームの最新バージョンは1.1.5229であり、デモのバージョンも同じ。

 自分がプレイしている際のバグとしては、ウェーブの開始タイマーが表示されない為にゲームが開始出来ないという問題に一度遭遇した。

BASICS  キャンペーンは10箇所の拠点がマップに示されており、徐々にアンロックされていく形式。それぞれ難易度によってクリアするべきウェーブ数や初期条件が設定されており、それを達成すればマップのクリアとなる。

 ゲームは施設等を建設するビルドフェイズと、敵が襲って来て戦闘になるバトルフェイズにて構成されている。ビルドフェイズには制限時間が設けられているが、タイマーを待たずにスタートさせる事も可能。基本的に不利になるが、その分ウェーブクリア時のボーナスが増える。

 ヘルドリックは村に施設類を建設出来るが、それぞれ固定された場所にしか設置する事は出来ない。Small, Medium等のサイズに応じて区分けされており、そこをクリックすると建設可能な物の一覧が表示される。ただしゲームの進行に応じて(マップによって)、同じサイズでも何を建設可能かは異なっている。当然建設には資金が必要だが、サイズ別の設置場所が固定なので、仮に資金が有ってもその施設を建造可能な区画が余っていなければ建てられない。なお施設は売る事も出来るし、中には建設後にアップグレード可能なタイプも含まれている。

 大きな特徴として村人全員で敵と戦うというシステムになっており、マップ内に存在する村人の数が特に重要となる。よって施設の基本となるのはテントやハウスなどの住民の数を増やすタイプで、それぞれ最大の住民スポーン数とリスポーンまでの時間が設定されている。右下の住民数がその施設分だけ増加し、以後死亡したら時間に応じて一人ずつリスポーンして補充される方式。

 やって来る敵と村人が直接対決するのがメインというゲームなので、敵を直接攻撃したりするタイプの建造物はあまり無い。炎を吐く像とかビーム攻撃する塔程度。用意されている建造物の例を挙げると、周辺の村人のヘルスを回復させる, 周辺の村人の攻撃力を増加させる, 鍛冶屋(近接武器ダメージのアップ), 弓屋(弓矢の製造), 勇気を与える, 防御壁等。

 資金はコインとして設定されており、住民の数に応じて一定数が時間と共に加算されて行く仕組み。つまりウェーブスタートまで待った方が良いが、それだけボーナスポイントは少なくなる。その他ではマップ内に数カ所隠されていたり、動物類を倒しても得る事が出来る。

 村人は死亡しても最大数まではリスポーンしてくる。ただしその村人を生み出す施設の性能にもよるが復活速度はかなり遅い。よって前のウェーブで多数死んでしまって残りが少ない場合、その間に得られるコインが少なくなる上に、ウェーブスタート時にフルの人数まで復旧しないのでより難しくなったりが生じる。ヘルドリックのヘルスは自動でゆっくりとリチャージされる方式で死亡すればゲームオーバーだが、魔法の復活装置を設置する事も可能である(復活待ちの間に村が全滅したらアウト)。


 ハックアンドスラッシュと聞いてどういったタイプのゲームを思い浮かべるのかは定義の問題にもなってくるが、私の思っていたハクスラのイメージとは異なった仕様であり、また(私の知る)他のアクションTDゲームとも似ていない。ヘルドリックに成長(レベル)といった概念は存在せず、施設による近接武器ダメージの増加や弓矢の使用が可能になったりという、他の村人と同レベルの力しか得る事が出来ない。マップをクリアすれば全てリセットされるし、プレイ中に武器や装備品を選ぶとかの概念すら存在していない。

GAMEPLAY  マップは計3種類プレイ出来たが、クリアすれば他にも遊べるのかは未検証。

・難易度は4種類
・セーブ機能は無しで失敗すれば最初のウェーブから
・FOV変更可(デフォルト60度)
・攻撃はオートにも設定可能(ただし勝手に近くの敵に向かって行くので注意)
・カメラ位置は自動追尾に設定も出来る
・HUDスケール調整可能
・ミニマップに情報は表示されるが見辛い(スケール拡大しても)


 ゲームのシステム自体に特に変な面は見当たらないのだが、それ等が上手く機能しているとは言い難く、実際にプレイしてみるといろいろと問題が感じられた。

 レベルアップもしないし強い武器を持てる訳でも無いという設定により、自分が強くない為に村人の戦闘能力に頼らないとならない。そこがこのゲームの個性と言えるのだが、この村人達のAIが相当に原始的なのが大きな欠陥。移動パス選択がちゃんとしておらずに変な動きをしたりもそうだし、施設類の存在を利用出来ないというのも困った点。全くでは無いかも知れないが、例としてヘルスを回復させる物が有ったとしても、ダメージを受けて危険になったからその範囲内に退避して一時休息みたいな事がこなせない。敵の近くに行って自分が勝つか死ぬまで攻撃し続けているだけという印象。

 指示コマンドも無いので自由に行動させるしかなくコントロールが効かない。よってかなりの数を用意していても次々に死んでしまって、あっという間に少なくなってしまう。そしてリスポーン速度は遅いので次のウェーブスタートは少人数で戦わないとならなくなるといった具合。強化に重点を置いた方が良いのかとも試したが、少人数で攻撃力を上げても基のAIが馬鹿なので大差ないという感を受ける。これならば味方をユニットとしてまとめてマップ内各所に配置し、それに指示を与えられるという方がゲームとしてまともになるとは思うのだが、それだと類型的で個性が薄れるという面は確かにある。

 敵のAIもパス移動で引っ掛かったり棒立ちだったりと同じレベル。またデモだけなのかも知れないがタイプも少ない。


 ヘルドリックが独自に出来る事はまず爆薬を置いて近くを通った敵を吹き飛ばす事で、これは成功すると大きいが爆薬はあまり手に入らない。次にヘルプを呼べるので範囲効果を持つ施設近くで使ってみたが、反応してくれる村人は少数で効果は薄い。弓矢は遠距離攻撃可能なので効果的だが、弓屋を建造しても入手本数はあまり多くないので(少なくともデモの範囲では)大きく戦況を変えるまでには至らない。そして村人が全滅して自分一人になってしまえば、逃げ回って回復を待ったとしても攻撃力が低いのでジリ貧にしかならない。

 こういった状況下で試行錯誤しながら有効な手段を見付けていくのがストラテジーゲームの楽しみとも言えるが、残念ながらそれにはリプレイするだけの面白味がなければならない(それさえあれば高難易度であっても楽しめる)。ところがHtLotSはそこにも問題を抱えている。武器種やアイテム類に選択の余地が無いので、戦闘シーンは単純で退屈であり爽快感も無し。どのマップでも敵の近くに行っては斬り付けや殴りのアニメーションを見るだけで変化に乏しい。更に周囲を確認しながら動くにはズームアウトした方がやり易い為に、画面上ではとても小さなキャラクターがゴチャゴチャと戦闘しているのを見ている状態になりがちである。

GRAPHICS
&
SOUND
 エンジンはUnityを使用。解像度は1972*1344まで選択可能。設定可能なオプションも多目で見た目はそこそこ良い。ただし戦闘が始まってしまうとアニメーションの方は単純なのがあからさまになってしまう。

 サウンドはもっと派手でも良いと思うが、これはパッチで続々と多彩な種類を追加(差し替え)していくそうである。

感  想  マップ数が多くて結構遊べるし、何にせよどういうゲームなのか理解するには優れた紹介用デモだと言える。ここはプラス10点。

 やはり戦闘シーンが地味過ぎて長くは楽しめない。ここまで単純であるならアクション要素の無い完全なリアルタイムストラテジーにした方が良さそう。個性的ではあるがやはり楽しめるかどうかが最重要である。改善を図るとすればヘンドリックのレベルアップ要素や、武器類のアップグレード系システムを導入するなどが候補として挙げられる。或いは地上視点オンリーにして、もっとプレイヤー自身のスキルによるアクションを重視する様にするか。だがいずれにしても資金に乏しいインディーズ会社には大幅拡張は厳しいので実現は困難。村人のAIがもっと良くなればかなり変わると思うがこれもまた技術がないと難しい。

 まあ気に入ってくれる人が少なくても良いので、こういった個性的なゲームを制作して安く売って行くというスタイルはインディーズ会社としてはアリだろう。だがアイディアや仕様は悪くないので、もっと資金の有る会社が作ったら面白くなったかも知れないのに残念、とも思えてしまう。


 評価 40点

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