☆ IDENTITY ☆


14/08/01更新 目次          HOME
製作/販売 everNerd Games        公式サイト     INDIE DB
デモ仕様 2014/05/13リリース       V1.0.10907.0       1.11GB
概  要  SMU: Guildhall (Southern Methodist University's Guildhall。テキサスにあるゲーム制作者の養成学校)の生徒15名による在学中のプロジェクト。公式サイトも情報も無いのでこのゲームの公開目的は不明。単に制作した物をより多くの人にプレイして貰おうと公開しただけという可能性が一つ。ファイルタイプにデモと名付けられているので、フリーゲームとして今後アップデートする予定があるというのが一つ。或いはeverNerd Gamesという名称があるので、同学校のKraven Manorの様に将来的にはKickstarterや早期アクセスにかけて製品版としてリリースしたいという希望を持っているのかもしれない。とりあえずここではデモ扱いにした。

 プラットフォームはWindowsのみ。


 設定としては人間のアイデンティティが盗用されたりと安全性が確保されなくなった未来。各人は個人情報を厳重に秘匿したり、また自分の外観を隠したりして自己防衛をしないとならなくなっていた。この個人情報を盗んで悪用している巨大な組織を潰す為に、テロリストの一員として破壊工作を行うというストーリーの様だ。



動作環境  必要環境等は記載がない。また障害情報などもなし。制作にはUDKが使われている。

 選択可能な解像度が少なく、強制的に変えるには実行ファイルのショートカットを作成して、そのプロパティ → リンク欄に半角空けて解像度指定を行う。

 例) ...\Identity\Binaries\Win32\UDK.exe -ResX=1280 -ResY=720


BASICS  三人称視点のステルスゲーム。武器類は無いので攻撃は出来ないタイプ。何等かの手法により警備員を気絶させて排除したりも不可。

 ロケーションは普通の明るい屋内となり、暗がりに隠れるといった要素は無い。基本的に室内のオブジェクトに隠れながら動くという方式となる。どれ位隠れられているのかの表示はHUDでは無く、プレイヤーキャラクターの背中にガイドとなるインジケーターが付けられている。これはステルスメーターというよりは逃走メーターという方が適当で、発見されてしまうと点灯し、これが完全に消えるまで追っ手から逃げ切れば逃走成功になりリセットされる。

 未来設定なのでハッキングが主に使われる手段となるが、これはシンプルなミニゲームとして用意されている。ハッキングが可能となる距離まで対象物に近付いて実行すると、表示される水平バー上に最大で三箇所までターゲットが設定される。後はバーの上を左右に移動する黒印がターゲット上に来た時に合わせてボタンを押せばOK。一回でも失敗すれば最初からやり直しとなり、ターゲットが人間の場合だと動いて範囲外に出てしまったりしても失敗となる。ただし制限時間は無いようだし、失敗してもペナルティが無いのでミニゲームとしてはユルくて簡単な部類。

 完全に一本道では無いが、多彩な解決方法が用意されているというスタイルでも無い。重要な箇所は制作側の設定している解決方法を見付けて突破する必要があり、それ以外の場所ではある程度自由に移動しながらステルスを維持するというゲーム性である。ベントをハッキングで開けて移動ルートを作れたりするが、目標地点の突破にベント経由での迂回ルートが用意されているといった事は無い。


・チュートリアルあり
・操作キーのアサイン可能, マウス感度変更可能, 明るさ調整可能
・チェックポイントセーブ方式
・難易度設定無し


・カメラは360度回転させられるが、上下方向には範囲制限がある
・一人称視点にも出来るがそのまま移動は出来ない(周囲を見渡せるのみ)
・左右へのリーン可能
・制限無くスプリント可能

GAMEPLAY  クリアまでに1時間半程度掛かった。どの位上手くやれるかにもよるがボリュームとしては相当あり、1本のフリーゲームと言っても通用するレベル。

 端末をハッキングする事でテキストを読めてそれが背景説明等になっているのだが、とにかく数が多いので途中でアクセスするのを止めてしまった。端末画面上に表示される様な形式になっていて、その横幅が狭い上にスクロールバーが無いので読み辛い。ここはアップデートがあるなら別画面でまとめて読めるようにするとかにして欲しい。

 現在の目的はテキスト表示されるが簡素であり、画面上に示されるのはゴール地点だけなので参考にはなり難い。「そこを通ればゴール」であって、その為に進むべき方向はまるで別だったりする。


 基本となるステルスでの行動だが、屈んで物陰に隠れたりしながら移動。左右へのリーンでは当人ではなくカメラ位置が左右へとシフトし、視界外の範囲を見られたりする。これで敵の巡廻パターンを観察して行動するが、ルートをずらしたい時にはハッキングが利用出来る。効果範囲内から特別な端末装置をハッキングして成功すると、そこの位置にガードが移動して頭上の白いサークルが消えるまでの間は留まるので、その間に通り抜けたりが可能となる(ただしあまりに接近すると感付かれる)。

 序盤は比較的視界が良いので敵を見易いしその数も少ないが、後半になるに連れて数が増える上に背の高いオブジェクトが多くなり広範囲を見渡し難くなる。タグ付け(後述)した敵はオブジェクトを透過してその位置が判るが、一人だけなのでそれ程の効果は無い。よって移動には博打的な要素が強くなり(特にラストのマップ)、ここはちょっと問題に感じられた。


 敵に発見された場合、逃げ足はプレイヤーの方がやや速い。しかし敵はこちらを離れた位置からハッキングしてきて、一定時間経過するとアイデンティティがバレたという判定なのかゲームオーバーになる。背中のメーターがゼロになれば逃げ切った事になり、敵はそのまま元の巡廻ルートに戻る。これは何回繰り返しても敵の警戒レベルは変わらない。後半はエリアが広くなるので割と逃げ易くなるが、前半は隠れる場所が無いので見付かった時点でほぼ終わりというマップもある。

 敵の視界や発見の能力は見た目に疑わしい部分もあり、「この状態ならばこちらが見えているだろう」という状況でも見逃されたりする事もある。発見と見失いが短時間で交互に繰り返されてバグの様な奇妙な動きをしたりにも遭遇したし、非常に接近していても角度的にこちらを見失ってしまうケースもある様だ。だがリトライしながらプレイするタイプのステルスゲームなので、セーブがあるとは言えゲームオーバーがあまりに多くても何だし、この程度の追跡能力の方がゲームバランスとしては適切と言える。


 他のステルス物との差別化となる要素は“ID Steal”。一定距離以内に近付いて敵をハッキングする事も可能で、その際にその相手のアイデンティティを盗み出せる。この状態だと自分の頭部(のみ)が黄色く光り、盗んだ相手はタグ付けされて画面上でオブジェクトを透過してその位置を知る事が出来るようになる。そしてここから任意のタイミングで15秒間だけそのIDを使用して当人になりすます事が可能で(見た目もそのガードと同一になる)、一種の変装として使用される。これを使わないとクリア出来ない箇所が多い。

 制限としては赤いアーマーを着ているファイアウォールタイプのガードのIDはスティール不可。使用は一回だけで、再使用にはまたIDをスティールする所からやり直さないとならない。IDを盗んだ当人と同じ場所に居てはならない(矛盾でバレる)となっている。特に最後の制限に注意。

GRAPHICS
&
SOUND
 グラフィックスはSF的なイメージだがデザイン面では中途半端という印象も。現代と近未来をミックスさせたような世界デザインの場合、どうしてもDeus Ex:HR, Syndicateとか金の掛かっている大手の物に比較して安っぽく見えてしまうため、例えばTronの様にもっと極端にSF風にしてしまった方が粗も目立たないし良いのではないかと思える。後は全体の色調がずっと一緒なので単調に感じられるというのもあった。

 それでも開発人数が多いだけあってインディーズの中では水準以上とは評価出来る。なおグラフィックス関連のクオリティ設定項目は一切無し。内部(Config)をいじれば可能なのかも知れないが未検証。

 サウンドは音数が少なく寂しい印象。ステルス物なので派手である必要は無いが、敵の足音とか巡廻ルートに戻る前に警告音とか、情報源になるサウンドはもっと導入しても良いと思う。

感  想  IDをハッキングで盗んで変装するのは新鮮な要素だが、ある意味これで大半の障害を乗り切るゲームなので、これ以上繰り返しても飽きて来てしまうだろう。Hitmanシリーズの様に変装する手段もあるという風にでもしないと、基本的には一本道なのでIDを盗めば良いと最初から見当が付いてしまって段々と単調で面白くなくなっていく。よってコンテンツを増やして長くする予定なら、別のシステムや突破方法を導入して変化を付ける等でもっとバラエティに富んだゲームにするべき。各エリアの突破方法は一つだけしかないというデザインでも全く構わないが、その方法がIDのスティール連発というのは良くないという意味である。一方これで完成品として拡張しないのならば今のままでも充分と言える(単発アイディアのゲームとしては適切な長さだから)。

 将来的に金を取る製品版となるならこのデモの見方もまた変わってくるが、フリーゲームのデモ版(or完成版)としてならクオリティは高い方だし、長時間遊べる, 動作は安定している, 雑では無くしっかりと作られている、等で好感が持てる。主な減点対象はハッキングのミニゲームで、これだと緊張感も無いし単なる作業になってしまっている。ステルス物のフリーゲームは珍しくて貴重という点も加味して採点。

 評価 70点

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