☆ VAPOUR: PART 1 ☆

15/06/29 更新 目次          HOME
製作/販売 Skobbejak Games       公式サイト     STEAM     INDIE DB
デモ仕様 Vapour: Part 1 Demo (668MB)  2015/05/26  計3回リリースされておりこれが最新
概  要  Skobbejak Gamesは南アフリカのインディーズ会社でこれがデビュー作。コアメンバーは二人だけで、途中から外部の人間を雇ってこのゲームを制作している。元のタイトルは“Vapour: Borders of Purgatory”で、そのプロトタイプの公開後はしばらく音沙汰が無かったのだが、今年になってからエピソード配信へと切り替える事を発表し、ゲームのタイトルの方も変更されている。

 Greenlightに登録されて既にGreenlitに到達済み。公式サイトではもう予約販売が開始されており、Steamでは2015/07/03に発売予定。価格は$9.99。

 予定エピソード数には触れられておらず、2パートよりは多くなるとだけ判明している。エピソード制に切り替えたのは資金面の理由だと思われ(Inidegogoでクラウドファンディングをやっていたらしいのだが頁が見当たらない)、当然このパート1が売れなければ次があるとは限らないゲームと考えておくべきだろう。


 なお以前にはプロトタイプとして2回デモを公開しており、今回はその中でPrototype 2の方も参考に使っている。こちらは2013/10/28にリリースされた物なのだが、新デモのリリースに伴って既にアクセス出来なくなっている状態。もし興味のある方は現時点ではこちらからダウンロード可能である。


 主人公はチャールスという名の魔法使い。サディスティックな性格で現世にて悪逆の限りを尽くしたのだが、敵対勢力に捕らえられて殺されてしまう。だが死の間際に最後の力を使って地獄の深淵へと落とされるのを防ぎ、(地獄の前段階の)煉獄にて目を覚ます。しかし多大なエネルギーを使用した事により、自らの持っていた能力をほぼ無くしてしまっていた。チャールスは煉獄にてデーモン達と戦いながら再び力を蓄えて、自分をこんな目に遭わせた3人のヘルロード達に復讐を挑む決意をする。


動作環境
HARDWARE 必要環境 推奨環境
CPU 2 Ghz Dual Core CPU -
MEMORY 1 GB -
VIDEO Geforce 8800 GTS or Radeon HD 3870
Geforce Go 9800M GTS or Radeon HD 4650
-
SOUND -

 Windows, Mac, Linuxに対応。Unity engineを使用している。

 デモ版のプレイにて特に不具合には遭遇しなかった。

BASICS  ゲームのデザインとしては、何らかのユニークなゲーム性で勝負すべきだというのがまずあって、そこで自分達の好きな90年代のクラシックなFPSゲーム(Doom, Blood, Duke Nukem 3D等)に、同じくファンであるホラーゲームの要素を合体させようというのが狙いとなっている。その意味でかなり実験的な作品と言える。

 主人公が魔法使いである事から、武器では無く多彩な魔法を使っての戦闘となる。要素としては以下の様な特徴が挙げられている。

・クレイジーなパズル
・ノンリニアなレベルデザイン
・探索要素を満載
・途轍もない恐怖
・プラットフォームでのジャンプアクション
・シークレットの探索要素
・多大なゴア要素


 90年代のFPSよろしく難易度は相当高めに設定されているそうだが、同時に製品版には選択可能な難易度設定を用意するので、どれを選択するかはプレイヤーの好み次第だとしている。


・キーバインド不可, マウス感度設定不可, 明るさ調整不可, サウンドボリューム調整不可
・難易度選択はデモには無し
・現在の目標を表示する機能は無し
・字幕機能無し
・セーブ機能無し(製品版での方式は不明)

・一人称視点固定
・照準無し

・FキーでUse, 数字キーで魔法選択, Q&Eキーでアイテム選択
・Backspaceで腕を隠す(腕の明るさを消したい時)
・スプリントとジャンプ動作在り。屈みはCtrlキー。
・終了はESCキー長押し

GAMEPLAY  デモのボリュームは短く、本当に冒頭のエリアだけという事になっている。

 90年代のアクションFPSの影響を受けているという話だったが、移動速度が遅いというのがまずは気になった点。スプリントは出来るがほぼ常時それを使うようになるので、Always Runの設定が無いと大きなストレスになると考えられる。

 箱の中や樽を壊すと出て来る緑色のアイテムがヘルスらしく、取ると右腕部分に光って表示される。ただ現在どの位残っているのかという「残量」については見た目に良く判らないという印象。


 早速デモの問題点から入らせて貰うが、率直に言ってこのPart 1デモは面白くない。魔法攻撃を使って戦う訳だが、このデモにおいては燃える手による近接打撃攻撃(蹴りも自動的に出す)しか使えない為に、単に敵に近付いてはクリックしているだけという詰まらなさ。こちらのリーチが短い上に、敵も非常に単純で突っ込んで来るだけなので、動き回ってかわしながら殴るという風にも出来ない。単に面と向かってのド突き合いになるだけである。一方でプロトタイプ2の方はグラフィックスを含めて粗さが目立つものの、魔法を放つ攻撃を行えるという点ではまだマシである。

 パズルに関しても最初のエリアというのはあるのだろうが単純で面白味が無い。Duke3D等でお馴染みの「スイッチの組み合わせ総当たり」方式とか、単にアイテムを取って目的地点まで持ってくるだけとか。


 ホラーについても同様。その演出は「突然鳴るサウンドと共に、目の前に恐怖系イメージが現れるイベントがランダムに発生する」という実に原始的な手法であり、少なくともホラーゲームをよくプレイする人向けに今こういったシンプルな物をやられてもまるで怖さを感じられないだろう。これはそういうシーンも実際に含まれているが、「特定のシーンでのみ、コラージュ映像による演出を行う」という手法の方が優れている。

 そもそもアクションFPSにホラーをミックスさせるという狙いからして疑問符が付く。斬新な事をやってやろうという意気込みは良し。しかし誰もやろうとしないのにはれっきとした理由があったりもする訳で、第一にアクションFPSとビックリ系ホラーは明らかにミスマッチである。雰囲気を怖くするのは問題無いが、突然ショッキング系演出を挿入したりして驚かせようとするのは、アクションFPSのプレイ中においては鬱陶しく感じられるだけであろう。やるならホラーのシーンと戦闘エリアをハッキリと分けるべき。

 次に凄い怖いゲームを狙うと話しているが、主人公が邪悪な魔法使い(悪魔)という設定は最悪の組み合わせと言える。悪魔が悪霊が出現する等のショッキング系演出を怖がる訳が無いからで、その設定をプレイヤーが理解している限りは怖がらせるという面において著しく不利となってしまう。

 第三にホラーにおける常套手段が上手く機能しないという点。例えば「突然後ろから襲い掛かる」はホラーゲームにおいては効果的でも、アクションFPSにおいては恐怖では無く「卑怯」, 「詰まらない」という烙印を押されかねない。同様に「視界を遮ったりボヤケさせたりする」は、「見辛い」, 「邪魔」となる。


 ホラーに力を入れた件に関しては、宣伝力(資金力)の無いインディーズにおいてゲームを宣伝する為の手段として有効だと考えたと言う発言もあり、確かにそれは理解出来る。数年前からYoutubeにおいて一大人気コンテンツとなっている、「ホラーゲームの自撮りライブカム付き実況動画」。特にその中で有名実況者に採り上げられて貰えれば、非常に大きな宣伝効果を期待する事が出来るという事情が存在している(観た後に実際にダウンロードして自分でもプレイしてみる人が1/10程度だったとしても、再生数が数万から数十万とかのレベルだと非常に効果的である)。

 そしてプロトタイプの時代には恐怖系動画として結構な評判も得たようだが、絶叫系恐怖ゲームというイメージが強くなり過ぎてしまった件が、反って製品版の立ち位置をブレた状態に置いてしまっているとも感じられる。ホラーとして有名になったので、製品版でもホラー要素を予定よりも強調せざるを得なくなってしまったという意味。個人的にはその評判を得たプロトタイプにおいても別に怖いゲームでは無いという感想なので、いっその事ホラー要素はもっとバッサリと切り捨ててしまって90年代風アクションFPSとして作って行く方が良いと考えている。

GRAPHICS

SOUND
 グラフィックスはUnity標準の6種類から選択。プロトタイプ版からは大きくクオリティが向上しているが、このデモは暗いインドアエリアだけなので、総合的な判断は難しいところ。なおSSでアウトドアの物(上の2つ)はプロトタイプ2から採っている。


 サウンドは少な目で特に印象に残らなかった。プレイヤーをビックリさせる為の耳障りなノイズが主体。

感  想  魔法攻撃が主体という観点からはHexen, Hereticシリーズを連想させるし、私自身が興味を持ったのもああいったゲームの現代版という所にある。けれども上で書いた様にデモ自体の出来は悪く、せいぜい自分のPCでの動作テストくらいにしか役に立たないという感想。

 今回記事を書いた理由は、デモはアレだが製品版の方はもっと面白そうで期待出来るのではないかと感じているから。つまりSteamでリリースされたとして、そこから興味を持ってこのデモをプレイしてみたが失望したという方向けに、ちょっと待ってくれという意味合いでの記事だと考えて貰いたい。下に(まだ改名前で短い物だが)プレイ動画を張っておくので、興味を無くすのはこちらを観てからでも遅くはないだろう。実際の所こんなデモを公開するよりも、下の動画だけ見せておいた方がより販促には効果的なのではと思える。デモを出してくれるのは確かに有り難いのだが、それなら下の動画の様にアウトドアで且つ魔法が使えるセクションの方が理想である。


 評価 30点

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