☆ DARK TOWN ☆

15/09/25 更新 目次          HOME
製作/販売 Star Games Interactive        公式サイト      itch.io
配布状況  2014/11/01にリリースされた V2 (373MB) が最新バージョン。

 更新頻度: 一度更新されている(英語対応版はこれが最初)

 現在公開されているデモ版は無料でもダウンロード可能だが、早期アクセスの様な形態で寄付も募っている(基本1ユーロから)。

概  要  Star Games Interactiveはドイツのインディーズ会社でこれがデビュー作だと思われる。詳細な情報は不明。

 説明書きを見ると昨年末の時点で「レベル18まで完成」, 「もうすぐ発売」といった書き込みは有るのだが、一方で「完成度は48%」という記載もありハッキリしない。いずれにしろ昨年末から更新情報が出ていない状況。itch.ioはマイナーな存在なので、本気で売るならSteamだと思うのだがGreenlightへの登録はまだされていない。

 対応プラットフォームはWindowsのみ。FPSCで制作されているので他のプラットフォームへの移植は無いだろう。


 プレイヤーはダークタウン内から妹を探し出してそこから脱出しないとならないという設定で、詳細はストーリーは持っていない。

動作環境
  必要環境 推奨環境
CPU Pentium 3,  1 GHz Pentium 4, 2.66 GHz
MEMORY 256 MB 1GB
VIDEO VRAM 64MB VRAM 128MB
SOUND DirectX 互換 同左
対応OS  Windows XP/7/8/10
DirectX 9.0c以上要


 Windows7以降で起動しないケースでは管理者モードで起動と注意書きにはある。その他のトラブルはサポート頁のFPSCの項目を参照。

BASICS  このゲームはFPS Creator Classicを用いて制作されており、先にこのFPSCについて簡単に解説してみたい。FPSCはプログラミングの知識無しにFPSを制作出来るというのが謳い文句のツール(ツクール)で、UnityやUnreal Engineの様に使い勝手を学習する所から始めないとならない他のツールに比較すると、初心者でも使い易いという点が大きな売りとなる。また完成したゲームを面倒なライセンシング契約無しに販売可能という利点も持っている。

 しかし「制作が簡単」とはイコール「複雑な事は出来ない」という意味でもあり、独自のシステムをゲームに組み込んだりするにはやはりプログラミングの知識が必要になってくるし、ユーザー側にて修正可能な範囲が狭いので大幅な改造はやり辛いという面を持つ。要は独自のスクリプトを組んだりするなら別のエンジンでやった方が良いという話になってしまう。「他のエンジンを使いこなせるまでに掛ける勉強時間は無いがゲームは作りたい」という人に向いているが、それだけ出来る事は限定されているのを覚悟しないとならない。そして出来上がったゲームの純粋なクオリティという面では、全般的に他の制作エンジンよりも数段劣る点は否めず、商用ゲームを制作するには不向きとも言える(特に今の様にインディーズゲームの販売網が充実する前の時代には)。近年ではGreenlightというシステムの恩恵を受けてSteamにて発売されている物も幾つか出ているが(Into the Dark, Moonbase 332, Sector etc)、大半のゲームの評判は良くないというのが実情である。

 更に知識無しでゲームが作れるという前提から、ゲーム内で使用する3Dアセット(素材)を様々なテーマや種類別に有料販売しており、ユーザーは自分のゲーム用に適した物を購入して使用するというシステムになっている。これ等は例えば敵のキャラクターモデルであるなら、それなりのモデリングやアニメーションのクオリティを保てるという利点を持つが、その代わりに同じテーマを扱ったゲームだと誰もが同じ素材を購入して使ってしまう為に、どのゲームを見ても同じキャラクターモデルが出て来るという問題が生じる。例としてこのDark Townはホラー物だが定番のホラー用パックを使用しており、他のゲームで見た敵のモデルばかりが登場するので新味やインパクトが薄くなる。(最初にそのモデルを見たゲームでは良いのだが)。

 最後に現在では後継の制作ツールであるGameGuruへと切り替わっており、このDTにて使われているクラシック版は更新も3年前に停止。使用メモリの制限からグラフィックス関連のデータ容量に限界があるのでクオリティを上げられず、また新しいOSとの相性問題もあり、FPSCの使用者は減少の一途を辿ると考えられる。


・明るさ調整可(<>キー)。 キーアサイン不可, マウス感度設定不可, サウンドボリューム調整不可。
・難易度設定無し
・字幕(テキスト説明)有り。ただしドイツ語混じり。

 セーブは可能だが、ロードに成功しない時がある。これはFPSCに付きものの問題だが、このゲームでは比較的まともで失敗は少ない。計5回位ロード中に落ちたが、ゲームを再起動すればロードはちゃんと行える(この程度ならばまともな方である)。ロード関連ではバッテリーの問題もあり、アイテムのバッテリーの所持状況はセーブされず、ロードすると持っていない事になってしまう。よってフラッシュライトは使えなくなり、画面の明るさ調整で乗り切るしかなくなる。


*一人称視点固定
*インベントリー画面は無し
*照準あり
*アイアンサイトあり
*スプリント, ジャンプ, 屈み 操作可能

 無闇にオブジェクトの上に乗ろうとしてジャンプしたりするとスタックして移動出来なくなり詰む危険性があるので注意。これはFPSCに共通した欠陥である。


GAMEPLAY  レベル5までを収録とあるが、実際にはレベル6までプレイ出来る。バグ関連でのトラブルを含めてだが、プレイ時間は1時間以上と結構ボリュームはある方。

 ロケーションは変わって行くが、風景等のグラフィックスのクオリティは相当に低い。置かれているオブジェクトの数や種類も少な目。それとこれはよく見るのでFPSCの制限なのかも知れないが、屋内での建物の縮尺がキャラクターのサイズに比較して妙に広くなるという点も不自然である(廊下等がやたらと広くなる)。

 進行は基本的にキーを見付けて来るの繰り返しだが、そのキーが画面上で見難いという欠点が在る(FPSC共通)。よって移動している時に突然「キーを入手した」というメッセージが出て、「今どこにキーがあった?」となる事が多い。アイテム類も問題があり、見た目が小さい為に近付くと回転して光るというシステムを持つのだが、それ故に実際に近付かないとそこに在るとは気が付かないケースがあるし、またバグなのか接近しても光らないアイテムも有ったりする。後は入手出来るが何に使うのか解らないアイテムも有り。それとインベントリー画面が無いので、必要なアイテムを既に取っているのか確認も出来ない(複数の鍵が存在するエリア等)。

 パズル要素は少なく、単にスイッチを見付けて押すだけ。ただし離れた場所なので判り難いという場面はあった。他だと斧を使わないと壊せないという箇所が有り、探索すると斧が見付かるのだがそれは取れない(後に武器として入手出来る斧とは別物)。だがそこにアクセスしていれば持っている事になって壊せるというシステムで、これは画面上に斧のアイコンとかを出して欲しい所である。


 サバイバルホラーの定石は守っており、入手可能な弾薬は非常に少ない。よって打撃武器でヒットアンドアウェイして戦えるならそうするべきで、特に近接では倒すのが困難なタイプも居て(被ダメージ無しでは接近出来ない)、且つメディキットは少数しか用意されていない為に、銃弾を残していないと詰んで終わりとなる。脇道は結構多いのでくまなく探索して弾薬集めに励むべきだが、そういったエリアに嫌らしく銃でしか倒せない敵が出たりするので、差し引きでの実入りは多くなかったりもする。なるべく逃げられるならばそうするべきと言う事。

 銃器の中でリボルバーは本当に効いているのかと不安になる位にダメージが低いのは問題点。一方でボス系の敵は少ない弾で倒せたりというおかしなバランスになっている。敵は遠距離攻撃を持たないので銃撃戦は単調だし、弾は確かに少ないがその弾さえ有れば脅威を感じないというシーンがほとんど。また突然空間に湧いて出たりもするが、通常はプレイヤーからは離れた位置なので怖さは無い。総じて銃での戦闘シーンには爽快感が無いという印象。怖がらせるのがメインならばそれでも良いのだが、ホラーと言うには怖く無さ過ぎるのでそこが問題となっている。なお箱の中には撃って爆発させられる物が有るが(持って投げたりも可能)、一見してそれだとは判り辛い。


 敵の動きやAIには大いに問題あり。以下は発生する障害の一覧。ちなみにこれはFPSC製のゾンビ系ゲームで良く見られるものでDT特定の問題では無い。目立たないゲームも有るので何等かの調整で改善されるのかも知れないが、手間無しに作れるのが売りのゲームでそれでは意味が無いだろう。

・その場駆け足状態でこちらに来られない
・突っ立ったままでこちらの存在に気が付かない
・こちらに一直線に向かって来るので、壁等の障害物に引っ掛かり動けなくなる
・壁やドアに埋まって透過してしまう(この状態ではこちらからも攻撃出来るケースと、敵側からしか攻撃出来ないケースあり)
・オブジェクトを透過してハマり動けなくなる(外すのにこちらが誘導しないとならない事も)

 AIなどはほぼ無いにしても、最低限プレイヤーの位置まで向かって来られるのならばアクションFPSとして成立するのだが、FPSCではそれすら達成出来ていないゲームが目立つというのが実情である。ついでに書いておくとミリタリー系で兵士が敵となるタイプでは、敵が神エイムの様な設定でゲームにならないという違う問題が良く発生していたりする。

GRAPHICS
&
SOUND
 FPSCなので設定項目は無いが、グラフィックスの質は非常に低い。10年前でもこれだけ低い物はそう無いだろう。ポリゴンが重なったりと物理エンジンも機能していない。キャラクターのモデリングやアニメーションは先に書いたように販売モデルを使用しているのでマシな方。なお内部設定をいじってアスペクト比を16:9にしているのでSSのHUDの表示は変になっている(サポート頁のFPSCの項目を参照)。


 サウンドには特筆すべき点は無し。プレイ中に意味の解らない効果音が多い。それと他のゲームでも聞くのでデフォルトのサウンドらしいが主人公の震え声が非常に変。

感  想  このゲームは面白いから紹介してみようではなく、FPSCで作られたゲームとはどんなレベルなのかの見本として記事を書く事にしたものである。早期アクセスに当たるFPSC製作品の中から今回4本ほどプレイした中で一番マシだったゲームだが、それは一般的な意味での“マシ”を現してはいない。FPSCで制作されたゲームにはバグの多さを含めてプレイしてみると「唖然とする」物が結構有るのだが、その唖然の度合いがまだ少ない方といったレベルか。こんな代物が存在するのかと、FPSをプレイして唖然としてみたい方以外にはお勧めしない。もしくは普段は凡庸な作品だとして切り捨てている様なFPSゲームが「如何にちゃんと基本的事項については達成しているか」という有り難みを実感する意味でプレイすべきかも。

 或いは没にした作品の中にBlack Asylum(有料で早期アクセスを行っている)というのがあるが、これのトップ頁に5分程度のプレイ動画があるので、ダウンロードして試すのが面倒ならそれだけ見てもらっても、FPSC作品における“普通”のクオリティがどんな感じなのかは掴めるだろう。


 「クソゲー」という名称があるが、この場合にはクソみたいな“ゲーム”という意味で、それが最低限“ゲーム”である事は認めている訳だが、FPSCの作品には「これでもゲームなの?...」、略して「これゲー?」とでも言いたくなる様な作品が結構存在しているのが現実である。もちろん全てがダメという事では無いが、自作のコンテンツを大量に導入した見映えのユニークな物だとか、或いは本筋であるシューティングである事を捨てて戦闘要素が(ほぼ)無いホラー系のゲームとか、そういった方向性の物以外にはまともな作品は少ししか見当たらない。アクションFPSが作れるというツールだが、残念ながらその本道にはまともな作品が少ないという事である。

 DTに戻ってこのゲームの製品版は少なくとも18レベル有るようだが、このデモバージョンの3倍の長さ分このクオリティの物をプレイさせられるというのは勘弁して欲しい。とりあえず敵がちゃんとこちらまでやって来られる, 敵が壁やオブジェクト類と重ならない, ゲームのセーブとロードがちゃんと動作する、の三点だけでも達成出来ればクソゲーレベルには昇格出来ると思うのだが...。


 現在の完成度: 先に書いた通りに完成度は不明。このまま未発売で終わる可能性もあるが、それが一番幸せな選択かもしれない。

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