☆ DEAD DOZEN ☆

18/04/30 更新 目次          HOME
製作/販売 Fntastic        公式サイト       STEAM
配布状況  2018/04/24にリリースされた V2.1 (MB) が最新バージョン。このレビュー記事に使用したのはその前のV2.0.2。

 更新頻度: 早期アクセスのリリース後に8回ほどアップデートされている

 早期アクセスの開始日は2018/03/08。

 デモは存在せず早期アクセスで有料販売されているのみ。従ってプレイには購入が必要である。

概  要  Fntasticは2015年に設立されたロシアのインディーズ会社。モバイルゲームの制作から始まったが、PCゲームの開発に切り替えてのデビュー作がサバイバルゲームとなるThe Wild Eight。ただこれはパブリッシャーであるHypeTrain Digitalと権利関係の問題で揉め事になり、現在は全ての権利をここに売り渡している(以降の開発は同社の内部スタジオが受け継いでいる)。このDead Dozenは二作目となり、今回はパブリッシャーを通さずに自分達で全てを行っている。

 タイトルは映画『The Dirty Dozen』を連想させるが、この最大プレイヤー数でもあるDozen(12)とは単に現在の開発チーム人数が12人で、その全員でプレイ出来るマルチプレイといった意味合いで付けられている。前作のEight(8)も同様。

 プラットホームはWindowsのみ。


 内部でのベータテスト段階からトラブル続きのゲームで、その辺りのゴタゴタはAutomatonの記事に詳しい。簡単に言えばリリースを約束した日に間に合わないという失態が何回も連続し、更に延期するというアナウンスが予定時間を過ぎてから行われるという有様でユーザーが怒り始める。3/8にようやく早期アクセスとしてSteamでリリースされたが、ゲーム内容以前にマッチングが機能しないのでゲームが出来ない等の障害が発生。逆に「なんでこんな状態でリリース出来ると考えたのか?」として怒りのサムズダウンレビューが相継ぐ。パッチで基本的な障害は解消されたものの、その結果として購入者も減って過疎状態となり(SteamChartsによれば発売日以降はほぼ20人以下で、しかもこれはリージョンが異なる世界での合計数字)、意図している12人に近い大人数でのマッチングそのものが困難という状況に陥る。

 そこで人口を増やす為に、まずは定価を24.99ドルから14.99ドルへと10ドル下げている。そして値下げ前に購入していた人にはフレンド等に配布出来るキーを一つ無料で配布。NA/EU/ASIAのリージョン制限も撤廃して他の地域のサーバーも検索できるように改造。4/19からは4日間フリーウィークエンドを実施して同時に50%オフセールも実施という流れ。


 1993年のシベリア。12人からなるグループが謎の研究施設に集められたという設定。ところがその中の一人がグールへと変貌し他の人々を襲い始める。彼等はグールを倒す為に武装して団結するが、グールに倒された人間はやがてグールへと変貌して人間側を襲い出すという状況にあった。


動作環境
  必要環境 推奨環境
OS Windows 7/8.1/10 (64-bit) -
CPU Intel i5 -
MEMORY 8GB -
VIDEO GTX 770 -
SOUND DirectX 互換 同左

BASICS  非対称型の対戦マルチプレイゲーム。最大12人が参加可能で、現時点ではbotをサポートしていない為にマルチプレイ専用となる。詳細なルールは記載が無いので解らないが大凡以下の通り。

・グール対サバイバーのチーム戦だが、開始時点ではランダムに選ばれた一人だけがグール(リーダー)となる
・グールがサバイバーを倒すと、倒されたプレイヤーはグール(ノーマル)として復活する
・グール側は全てのサバイバーを倒せば勝利
・サバイバー側はグールのリスポーン可能回数をゼロにする or 制限時間内を生き残るで勝利
・3ラウンド制

 FPSのファンならば倒された味方が敵に変貌してしまうという特徴からHalf-Life 2のModであるZombie Panic Sourceを連想すると思うが、その通りでこのModに強い影響を受けて作られている。


 今回フリーウィークエンドという事で参加させて貰ったのだが、先にその結果の方から書くとイベントは上手く行かなかった様である。ピーク時でも最大プレイ人数が73人となっており、ゲーム自体の存在が知られていない, 今回のイベントがPR不足で周知されていなかった, というのが原因だったとしてもさすがにこれは少な過ぎる。

 比較として最近フリーウィークエンドを開催したゲームで同じく人口が少ない, 知名度が高くないといったタイプだとDisc Jamというのが有ったが、こちらは普段から平均プレイヤー数が10人以下というレベルではあるものの、それでもFW開催時のピーク人口は900人程度に達している。違いとしてはこのゲームはレビューが「非常に好評」となっているのでそれが差になって現れたという可能性はあるが、フリーウィークエンドの開催は知られていたけれども皆が「あえてやりたいとも思わない」という理由で少なかったのだとしたら、今後も評価の方を上げない限りは安くしても人が集まらないという事でもあり、その方がより深刻な問題と言えよう。



*キーアサイン可○, マウス感度設定可○, マウス反転可○, 明るさ調整不可×, サウンドボリューム調整可○
*一人称視点固定, FOV調整機能無し
*スプリント○, 屈み○, ジャンプ○
*照準無し
*コントローラー対応かどうかは未確認(ゲーム頁には記載無し。掲示板に対応予定という返答があったが現在どうなのか不明)

 インターフェースは日本語に対応している

ESCAPE  Escapeとはフリーウィークエンドと同時に追加されたCo-opモードである。これには「メインのPvPの方がこんな酷い状態なのに、そんな物を開発している場合じゃないだろう」, 「Co-opが目的で買ったんじゃない」といった声も聞かれるが、Co-opファンにアピールして売り上げアップに繋がれば全体の開発費が増える事になるし、(実際に私もそうなのだが)それまでは関心が無かったプレイヤーの注意を惹くという効果も期待出来る。ちょっとやってみようかとCo-opからPvPへと流れる事で人口増加も有り得るし、このタイミングでの新モードCo-op追加はPvPの更新を遅らせるマイナス面はあるが完全に間違いとは言えないだろう。

 最大で4人までのCo-opが可能で、ソロでも一応プレイは出来る。クラス制で全4種。マップは現在「ピラミッド」の一つだけ。グールを倒して脱出すればクリアとなる。難易度設定は無し。参加人数によるスケーリング機能の有無は不明。


 初回バージョンだし記述内容を見てもやっつけ的な印象があったのであまり期待はしていなかったが、その低い期待度すら下回るレベルの出来映えでしかなかった。サブ的な扱いのモードなのでまだマシだが、Co-opがメインのゲームでこれが初回リリース版だとしたらレビューや掲示板が荒れてしまう可能性大。フリーウィークエンドなのでやってみようとフレンドを誘わなくて良かったという感じである。

 出現するグールを撃つだけというゲーム性で原始的過ぎるのがまず問題。クリアまでは達していないので断言は出来ないが、出現する敵のタイプはグール一種類だけである。倒しては先に進んで武器や弾薬を補給するの繰り返しと単調。マップ内部の見た目も綺麗とか個性的とかでは無し。床に多数存在する針のトラップは邪魔なだけ。細い通路が結構あって複数人では戦い難く、また体を透過出来ないので悪意の有る無しに関わらずそこで止まってしまうプレイヤーが居ると動けなくなる。

 敵にはかなりの弾を撃ち込まないと倒せないので爽快感は薄い。またその設定はともかくとして、ヘッドショットの概念が無いらしくて狙いを付ける楽しみが薄い。バランスとしてはもっと敵の敵を多くして、その代わりに各HPは下げるという方が良いと思う。

 それとPvPと同様に死亡したプレイヤーはグールになるというシステムなのだが、これはCo-opファンには受けないと考えられるので止めるべき。非常にユニークな特徴であるのは確かだが、それまで協力して一緒に戦っていた仲間のプレイヤーを襲って失敗させる側に回るのは抵抗が強い。すぐに気持ちを切り替えるのは困難である。それよりもチェックポイント到達で皆が復活といった一般的なシステムにする方がCo-opファンには受けるはず。


 今後のバージョンアップについても残念ながら望み薄である。最も必要性が感じられるのは敵のバリエーション、いわゆる特殊感染者タイプを4種程度は用意したいところなのだが、基本的にPvP側のコンテンツを流用している状況なので難題となる。つまりPvP側にはグールの他にモンスターが居ないので、Co-op用には新たに作らないとならない。しかし新モンスターのモデリングからアニメーションの作成は非常に制作時間(&金)が掛かる部分であり、あくまでもサブのコンテンツにそれだけの労力は掛けられないだろう。そうなると外見は同じグール(2種類)に異なる能力を持たせる程度しか出来ないが、それだとやはり変化に乏しいという印象は避けられない。

 よって現状ではCo-opファンには勧められないし、これからの発展についてもあまり期待は出来ないというのが結論。もし将来ゲームが売れる様になって資金が入っても、PvP側に人気が出たのならばそちら一本という姿勢に切り替わる可能性の方が高そう。


GAMEPLAY  対戦モードもプレイしてみたのでそちらの感想。サーバーはP2P方式でDedicated Server機能は無し。北米・欧州・アジアを切り替え可能でとりあえずプレイ出来る場所はあったが、先に書いた様にプレイヤー数はフリーウィークエンドにも関わらず少なく、またプライベートで建てられているサーバーもあるのでかなり限定的。深夜0時から3時頃のプレイだったが、結局12人フルでのプレイは出来ずに最大でも9人。ほとんどは4〜6人程度しか集まらず。


・サバイバー側はクラス制で全4種。他のプレイヤーの選択状況は確認出来ない。開始前に武器選択は無くてハンドガンのみを持ってスポーン。他の武器や弾薬はマップ内を探索して集めないとならない。所持制限や重量制限はあり。

・グール側はまず誰か一人がランダムにリーダーとして選択される。グール側はクラスはまだ一つだけ。3つのスキルを備えており、被ダメージ減少の代わりに移動速度低下, その場で動けなくなるがHPを回復といった能力を使える。高所からでも落下ダメージを受けないとかの特性も持っている。死亡するとリスポーン数が減ってこれがゼロになると負け。

・サバイバー側で倒されたプレイヤーはノーマルタイプのグールになる。外見は一緒だが顔が変化するので正面からならば簡単に見分けは付けられる。こちらはサバイバーに攻撃を命中させると、(一定確率で)その時点で感染させてグールにしてしまえるというスキルを所持。最初は死亡したその場からの復活か別の場所からの復活を選べるが、その後は再度死亡するとどうなるのかはルールが解らない。

ゲームの一番の特徴は倒されたサバイバーがグールに変貌してしまうという所で、最初はグールはたった一体なので不利だが、感染を進められれば次第に数が増えて有利となっていく

・マップはインドアの9階建てのビルと、アウトドアに幾つかの建物が点在している物の2種類。
・ボイスチャット機能は無し。ゲームのルール的に導入は困難と考えられる。
・XPによるランクアップのシステム有り。ランクアップで何が得られるのかは不明。


 第一に問題としてゲームのシステムやルールが良く解らないという件を挙げておく。プレイして覚えるチュートリアルを作成するのは大変というのは解るので、せめてゲーム内のメニューからテキストで解説を参照可能とか、公式サイト等に掲載するとかして欲しいのだがそれすら無い。(最後の頼みの綱のユーザーガイドもロシア語しか無い)。既に解っている人の中に入れればまだ良いのだが、今回はフリーウィークエンドという事で初心者が多かった為に、誰も解っていない状況でのプレイという事も発生していた。

 主要な要素としてサバイバー側はバリケードを築くことが出来る。オブジェクト類を押したり掴んで動かしたりが可能で、あるいはアイテムを拾ってきて有刺鉄線や板で空所を塞ぎ、部屋の中に立て籠もったりも作戦として行える。対してグール側は壁や床を殴って破壊する事が可能で(可能と設定されている箇所のみ)、これで床を壊して天井から奇襲したり、立て籠もっている部屋へと侵入したりして攻撃する。

 最初の内はそれが双方解っていないので、単にマップ内をお互いに探し回って遭遇したら戦闘といった感じで単調だったのだが、途中から理解している人がやっているのを見て真似をする人が増えてきて、徐々に本来のゲームプレイになっていくという感じだった。


 グールは想像していたよりも鈍重なイメージで大して速くは無く、正面から突っ込んで行っても倒されてしまうケースが多い。よって穴を空けて通路を作り奇襲を仕掛けるという手段が有効。バリケードを作られると壊すまでに気付かれてしまうが、こちら側も増えていれば複数箇所から同時に破壊・侵入出来るので対抗も可能になる。

 しかしこういった面白さが発揮されるのはおそらく想定している12人フルかそれに近いプレイヤー数でのマッチ時のみで(10〜12人)、少ない人数では上手く機能しないという感を受けた。ほぼ4〜6人位の対戦だったので、単純にグール側が攻撃を仕掛けて仲間を増やし、そのままゴリ押しで攻撃して勝利というパターン。

 それとこれはこのゲームだけでは無いが、最近人気の「チーム人数が非対称で片方が一人だけ」という設定の対戦だと、その一人だけとなった(このゲームで言えばグール役の)プレイヤーに負担が掛かり過ぎる。ここでの負担とは如何にそのマッチを面白くするかという意味での負担であり、この立場のプレイヤーが上手く立ち回れないとゲームが面白くならない。多人数同士の対戦ならば一人スキルの低いプレイヤーが混じっていても影響は少ないが、一人だけのチームにてそうなってしまうと影響が大きい。「多人数側が簡単に勝てるからラッキー」では無くて、肝心の対戦内容が詰まらないという意味合いで大きな問題となる。具体的にはグール役のプレイヤーが単純にただ見えている場所から突っ込んで来るだけだと、皆で撃って倒しての繰り返しでそのままお終いとなってまるで面白くならない。特にこのゲームではグール役の選択がランダムで希望者優先ではないという設定により、更に問題が大きくなっていると感じられる。


 結果的には人が増えて10〜12人位の対戦が常時実現出来れば面白そうだという感触は持ったが、実際にはそういった人数不足で窮状のマルチプレイ用のゲームは非常に多いけれども、そこから人口を増やして成功に持って行けるゲームは相当に限られるという現実がある。

 そのプレイヤー人口の増加については、宣伝費を注ぎ込むとか開発チーム規模を大きくするといった事が効果的だがいずれも金が要る。理想とする12人対戦を実現するには、Pingの値が重要なシューターである点を考慮すると世界全体で12人というのではなく、3つの各リージョンにおいてピーク時のみとしても12人を集めたいのだが、現段階ではそれへの有効な手段が存在しない状況にあるのは間違いない。現実的な人数である4〜6人ではマップが広過ぎるという感じだし、Half-Dozenモードと称して少人数向けに小さくしたマップを増やすとか、参加人数に応じてゲームバランスやルールを随時変更するという風なシステムにするとかを先に考えるべきかもしれない。もしもそれで人数が増えてくれれば、それをまとめて多人数サーバーを増やせる事にも繋がる。

GRAPHICS
&
SOUND
 Unityを使用。クオリティのプリセットは4種。他に個別設定項目も有り。

 グラフィックスは特に良いとは言えないし、その割にはパフォーマンスも優れていない模様。ただ対戦マルチプレイがメインなのでそこは大きな弱点とはならないであろう。個人的に気になったのはゴア表現で、出血表現の血飛沫は当たっているのは確認出来るがもっとリアルな描写にして欲しいし、Escapeではグールの部位損傷も有った方が良い。


 3Dサウンド対応。サウンド関連は特に印象に残らず。ボイスチャットの導入がルール上困難と考えられる為に、コマンドによるキャラクターのボイス発言機能は有った方が良いと思う。

感  想  今回は面白かったので紹介という意味合いでは無く批判的な面が強いが、フリーウィークエンドで遊ばせて貰ったお礼として何も書かないよりは、知名度を上げる為に何か書いた方が関心を惹く可能性もあるし良いだろうという考えから書いてみた次第。

 現実問題としてはスタートでここまでコケてしまうともはや復活は困難と言わざるを得ない。挽回するのに必要なのは何にせよ金が第一となるが、それこそがどこのインディーズ会社でも持ち合わせが無い代物となっている。ユーザーの意見を聞きたいので早期アクセスを始めたというケースではまだ開発費が残っているが、大抵はもう金が無くて開発が続けられない為に早期アクセスを開始するという状態にある。そこで初期につまずいてしまってユーザー評価が悪くなれば売れなくなり、それにより開発費が入って来なくなって修正が遅れ、そして開発遅れに不満が高まって更にユーザー評価が悪化していくという負のスパイラルに陥り死亡するというパターンが多数。

 このゲームもポテンシャルは持っていると思えるが、「XXXさえ改善されれば...」といった希望はほとんどのゲームにて達成されずに終わる。このDDで言うなら「人口さえ増えれば」だが、発売前に目論んでいた売り上げの数分の一程度しか稼げていない可能性が高く、金に余裕が無ければコンテンツの充実も宣伝広告も行えず厳しい。チャンスがあるとすればポテンシャルに注目したパブリッシャーが付いて資金援助が受けられる様になるというケースくらいか(もしくは前作の様に今後の開発を含めた権利自体をまるごと他社が買い取る)。


 現在の完成度: 2018/Q4に正式リリース予定とあるが、これは早期アクセス開始前の計画だと思われ、起ち上げに大失敗してしまった現状ではずっと先にならざるを得ないだろう。

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