☆ ENOLA ☆
14/08/06 更新 | 目次 HOME | |||||||||||||||
製作/販売 | The Domaginarium 公式サイト STEAM INDIE DB | |||||||||||||||
配布状況 | 2014/07/25にリリースされた Alpha v0.13 が最新バージョン。今回のレビューに使用しているのはこのバージョン。 更新頻度: 早期アクセスが開始されてから既に2年以上が経過しており、その間にかなりの回数バージョンアップが行われている。 無料デモも配布されている。こちらはバージョンが Alpha v0.12 となり、収録マップ数も2つだけである。 |
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概 要 | The Domaginariumは中央アメリカに位置するエルサルバドルのインディーズ会社。実質2人が制作の中心で、他は外部のサポートメンバーの様だ。このゲームはLudum
Dare(制限時間内に1本のゲームを制作するイベント)において作ったプロトタイプを拡張した物。 2012/03から早期アクセスを開始しており、現在ではDesura等にて$14.99で資金募集中。SteamでもGreenlitに到達しており、近い内に早期アクセスが開始されると思われる。完成版の発売は9月中を予定。 プラットフォームは現在Windowsのみ。Mac版の発売は候補の一つだが、UDKで制作されているのでLinux版の予定は無い。 私はバンドルの中の1本として入手。Desuraのキーを貰っており、Steamでの発売時にキーを貰えるのかはまだ不明。 プレイヤーが操作するのはEnolaという女性で、久し振りに友人のアンジェリカの元をを訪れるが彼女はおらず、その際に不可思議な精神世界へと飲み込まれてしまう。Enolaはその中でアンジェリカに何が起こったのかを調べると共に、その世界に存在する別の人間(精神)とも戦う事になるというストーリー。 |
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動作環境 |
DirectX 9.0c以上要 掲示板等が無いので障害関連情報はほとんど無し。私の環境では動作に不安定な所は無かった。 問題点はまず解像度変更をしたりするとフルスクリーンに戻ってしまう。その度にAlt+Enterでウインドウ表示に戻さないとならなかった(フルスクリーンでプレイするなら関係無い)。それと設定画面での変更値がロード等にてリセットされてしまうという事もあった。 msvcr100.dllのエラーについては、Visual C++ 2008 redist (x86 version)をインストールして欲しいとある。これはインストール先のEnola\Binaries\Redist\vcredist_x86 .exe に入っている。 |
BASICS | ホラーアドベンチャーとされているが、ストーリーに重きを置いており、とにかくプレイヤー怖がらせるというタイプのゲームでは無い。プレイヤーを襲うモンスター的な存在は登場するが「モンスターで怖がらせる意図は持っていない」と宣言しており、外見が怖い訳では無いし、追われる恐怖という流行りのシステムも組み込まれていない。 このゲームにおけるホラーとはストーリーに関連する物で、主に精神的に堪える恐ろしい話という方面から怖さを生みだそうとしている。例えば(文章としての)拷問や残虐描写が含まれるし、それ程強烈ではないがビジュアル的な残忍・グロ要素も一部に見られる。 まだ完成していないのでストーリーの全貌は掴めないが、プレイヤーが操作するEnola(“Alone”の綴りの逆)は主人公では無く、彼女が助けようとしているアンジェリカが主人公の位置付け。アンジェリカは大変な美少女で、Enolaにとっては恋人的な存在に当たる(Enolaは同性愛者では無い)。しかしそのアンジェリカに男性の友人Calebが出来てから事態が一変する。アンジェリカは初めて出来た男性の友人に強く惹かれていくが、当然それはEnolaとの仲にも微妙な亀裂を生じさせる。そしてその後Calebの友人との付き合いから悲劇的な事件が発生し...という風に展開していく。 全体でマップ数は8個になる予定だが、現在のバージョンには5個が収録されている。プレイヤーには選択を迫られる場面があり、それによって5種類のマルチエンディングが用意されている。 ・キーアサイン不可, マウス感度設定不可, 明るさ調整は可能 ・一人称視点固定 ・難易度はNormal固定(製品版では選択可能) ・セーブは特定のポイントで行える形式(アイテムは必要とせず、何回でも繰り返し行える) ・ヘルス等の概念は無し ・屈みはLCtrl, ジャンプは出来ない ・スプリント可能 ・照準は無し ・フラッシュライトは無限に使える |
GAMEPLAY | 進行は精神世界内の島を中心に行われ、そこにはキャビン, 墓地(協会), ナイトクラブと3箇所の行かれるロケーションがあって、島の内部は自由に移動可能だがクリアする順番は固定されている。最初の場所をクリアすると次の場所へと行かれる様になるシステムで、3箇所全部クリアして戻って来れば鍵の掛かっている次のエリアへと進める。 精神世界の意味合いは現段階ではハッキリとは解らない。Enolaに語り掛ける別の女性キャラクターも登場するし、敵対的な男性キャラクターも出て来る。その世界ではアンジェリカの過去について知る事が出来るランプの様なアイテム, アンジェリカの精神的な亡霊の語り, いろいろな人物の書き置き等を目にしながら、アンジェリカに何があったのかを探っていくというスタイルになる。ここは力を入れているというだけあって、ユニークな内容だし先が知りたいと感じさせる面白さを持っている。なお出来れば見付けた文書類を後でも参照可能なシステムが欲しい所。 特異な世界設定だけに実世界での法則が存在しないので、扉を開けると突然全く異なる景色の場所へと出たりと予測が付かない。ホラーゲーム特有の暗くて閉鎖的な場所ばかりではない為、これは新鮮で楽しめる要素となっている。同じ建物内の各部屋を含めてそれぞれは物理的に接続されておらず、ドアを開けたりすると一瞬暗くなってその部屋の中へと入るという方式(有名な同系システムではバイオハザード)。ドアを開けたままにして行き来が出来ないので、若干移動は面倒な感じである。マップ自体も相当な広さを持っているが、スプリントがスタミナ切れまで長く且つ速いので移動のストレスは軽減されている。 アクションを要求される箇所は少しだけあるが、とても簡単な部類なのでアクションが苦手というアドベンチャーゲームのファンでも気にする事は無いだろう。むしろ時間制限がある失敗即死のパズルの方が死の危険性が高い。ただしどちらもその直前にセーブポイントが用意されているという親切設計である。 敵が出現するのは確か三箇所だけで、最初の二つのエリアではある程度ランダムに出現するが、捕まったらWSADとマウスボタンのランダム連打で振り解きが可能なので特に対応は難しくない。そして開発側の言う通りに大して怖さも無い。ただし三番目の奴は厄介で、そのエリア内(大広間)に留まっておりプレイヤーを追って来る。逃げる速度はこちらの方が速いのだが、逃げ場を誤るとどん詰まりで逃げられなくなるのと、扉を開けてそのエリアに出た瞬間にそこに居て捕まるというケースもある。ここでは捕まってしまうと、振り解き成功 → 動けない → 再度掴まれる の繰り返しで結局は死ぬ(バグかもしれないが)。 ゲーム中で一番のストレスが上記のナイトクラブにおける敵出現のエリアで、何故かここだけはセーブポイントが近くに無い状態で、ある程度の時間を要するアイテム集めを、敵に一回も捕まらない様にしながら達成し、最後に時間制限ありのパズルにチャレンジして、失敗すれば全部最初からやり直しとなる。 敵の存在やアクションシーンが重要視されていない分、アドベンチャーゲームとしての謎解きやアイテム集めの比重が高い。パズルに関して時間制限の箇所には「回転して相互に動く複数の物を綺麗に揃える」というタイプが用意されており、これは上記の様に最後の物を除いては直前でセーブ可能なので突破は難しくない。通常のパズルにはMyst等でお馴染みの、情報を集めて記号や数字を揃えるメカニカルタイプが主に使われている。謎解きの方では抽象的な説明文を参考にして複数のアイテムを並び替えるという物が幾つか。これも失敗にペナルティーは無いので苦労は感じなかった。 続いてはアイテム探しについて。インターフェースをどれだけ解り易く設定するのかは、制作者の趣味やユーザー側でも嗜好が異なるので複雑だが、個人的な感想としてはもうちょっと解り易くした方が良いのではないかと思う。取ったり読んだり出来るアイテムには印が付く(or光る)のだが、かなり近寄って正対しないとならない上に、ビジュアル的に非常に小さくて解り難いという物もあって見落とす可能性がある。実際にいい加減にUseしていたらアイテムが手に入り、「今どこにそんな物が有った?」というケースにも遭遇した。更には「こんな場所に有るのか!」と言いたくなる様な場所に置かれていたりする事もあれば、ランダムな位置に出現するアイテムも一部在り。 そしてアイテムを使用する受け側のオブジェクトには印が付かない。よってここでアイテムが使用出来るというのが判り辛い箇所が複数あった。グラフィックスがもっと綺麗であれば良いのだが、「これがXXを意味する物なのか」と答えが解ってから初めて気付かされたりもした。更にオブジェクトにUse操作を反応させる際に、ある程度その反応スポットに画面のセンターが近寄っていないとならない為、これは反応が無いオブジェクトだと見過ごす恐れもある。他には鍵等は自動的に使用されるが、他のアイテムは自動使用だったりそうではなかったりで統一されておらず、余計にそのオブジェクトにて所持アイテムを使って何かが行えるのかどうかが判断し難い。 結果的にアイテムの取り忘れや、アイテム適用可能箇所の見落としが発生し易いゲームとなっている。アイテムを探しながら行ったり来たりはアドベンチャーゲームの基本だが、これだけ広い範囲でアイテム探しも難しい状況だと、細心の注意を払って虱潰しに探索を行わないとならなくなる。その上に見落としがあっても島に戻れてしまう様になっており、これは各ブロック内にて一時完結させた方が良いと思う(そのエリアで必要なアイテムを全部集め終わらないと元の世界に帰れない様にする)。実体験だが、島に戻っても次のエリアに進めず、再度前のエリアに訪問して一から見落としが無いかを徹底して行う羽目になった。 クリアまでに掛かった時間は5時間程度。上記のやり直し再探索と、ナイトクラブでの難所のやり直しが結構な時間を占めている。しかしクオリティはともかくとして、早期アクセスだからまだボリュームが少ないという事は無いとは書いておこう。 バグは自分のプレイだけでも結構あったので記しておく。 ・画面上のメッセージが消えなくなる ・近くに読めるメッセージが複数置いてあると、同時に複数に反応してしまってそれが消えなくなる ・スタックして動けなくなる(コンソールからghostで脱出し、セーブポイントでセーブ後にロードし直すで一応解決) ・読み上げるべきボイスメッセージが再生されない ・パズル解決後に再度使用すると所持アイテムが消えてしまう箇所がある |
GRAPHICS & SOUND |
精神世界という特殊な設定故のシュールな風景などには見るべき点もあるが、グラフィックスのクオリティは高い方では無い。特にテクスチャーは非常に粗い物も見受けられた。 ボイス有り(字幕も有り)と頑張っており、そのクオリティも悪くないと思う。それとホラー系のBGMは良く出来ており、かなり低音を強化しているのが印象的だった。 |
感 想 | 敵とのやり取りやアクションの要素が少ないので、これは3D視点でプレイするアドベンチャーゲームにより近いと言える。ゲーム内での仕掛けや雰囲気に確かにホラー要素は含まれるが、先に書いたようにそこはあまり強調されておらず、ホラー要素は文章類を読む事でストーリーから味わうという感が強い。故にアドベンチャーゲームのファンにはお勧め出来るが、Amnesia: The Dark Descent の様な「パズル要素の含まれた一人称視点のホラーゲーム」を求める向きには、ホラー物としては静的過ぎて受けないかもしれない。 ストーリーに面白さがあるので、日本ではこれが大きく不利に働く可能性が高い。英語はそれ程多くないし内容も難解ではないが、理解しない限り解けないパズルが出て来るし、非常に重要なヒントが一回だけしかメッセージとして表示されないというケースもある。 プライオリティの一番がストーリーであるならば、敵の出現を無くしたり等で簡単にしたEasyモードの様な物を設けた方が良さそう。詰まって最後まで行けないプレイヤーにはその肝心なストーリーが体験出来ない事になるし、その件でサイト等に批判を書き込まれたりする危険もある。個人的にもセーブポイントの問題やナイトクラブの敵の面倒さなどは修正希望箇所。 現在の完成度: 既に結構出来ており、現在のバージョンでもボリュームはある。残りのマップ制作に既に取り掛かっているそうだし、ここから大幅なシステムの変更も無いだろうから、9月はともかくとして今年中には正式発売されるであろう。 |
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