☆ SONG OF HORROR ☆

15/12/25 更新 目次          HOME
製作/販売 Protocol Games / Badland Indie        公式サイト      STEAM      INDIE DB
配布状況  2015/11/27にリリースされた SongOfHorror_PublicDemo(494MB) が最新バージョン。

 更新頻度: 無し

 Steam Greenlightにエントリーして、既にGreenlitに到達している。

 Kickstarterでの最初の挑戦は75,000ユーロの目標設定だったが約25%で大幅に未達。2015/10より再度50,000ユーロに下げて挑戦した結果、70%程の達成率には上がったもののまたも失敗している。

概  要  Protocol Gamesはスペインのインディーズ会社で現在6人構成。これがデビュー作となる。だがインディーズ制作のホラーゲームの中では知名度が相当高い部類のゲームである。

 プラットフォームはWindows, Mac, Linuxは確定。パブリッシャーとして地元スペインのBadland Indie (BadLandGamesの一部門)と既に契約しており、それによりPS4とXBOneでもリリースを予定している。ただしKickstarterへの再チャレンジ前に契約は済んでおり、その資金提供分を差し引いての挑戦だったそうで、ここが全額制作資金を提供してくれるという話では無く、今後も資金集めの手法は探っていかないとならない状況にあるのは変わっていない。

 資金難における選択肢としてエピソード形式の分割リリースで繋ぐという手段もあるが、ストーリーを重視している為に完全に最後までプレイ出来る状態での一括リリース以外は考えていないそうだ。


 主人公のDaniel Noyerはかつて事業に失敗した人間で、今では零細出版社に勤めて使いっ走り的な仕事を回される落ちぶれた生活を送っていた。そんな彼に今回与えられた仕事は、出版社としては一番の売れっ子作家であるSebastian P. Husherと連絡が付かなくなってしまったのだが、締め切りも過ぎているし何とかしないとならないので自宅まで向かって様子を見てきてくれというものだった。指示通りに彼の屋敷に向かったダニエルだったが、到着後に何やらおかしな事態が発生している気配に気が付く。

動作環境  デモはWindows版のみ。このデモはメインメモリ4GB以上, ビデオカードはGeForce 840M / Radeon HD 8750M以上, DirectX10 / OpenGL 3.3以上要とだけ公開されている。

BASICS  制作チームは様々なジャンルのゲームのファンだったが、いざ自分達がゲームを作るという立場になってみると、無数のアイディアは有っても資金集めという最大の難関が立ちはだかってしまう。そこでとにかく面白いゲームを作るという前提に立って、最も資金面で楽そうなジャンルは何かと検討した結果、それはホラーゲームだという結論に達したそうである。

 そして選択されたのがクラシックなスタイルのサバイバルホラーとなる。一人称視点や後方三人称視点も検討されたが、映画の様な演出を最重視している事から、場所によってカメラ位置が切り替わる外部視点を採用。パズルや謎を解いて進めて行くという方式も一緒である。ホラーとしてはショッキングなビックリ演出は少なく、ストーリーや心理的な恐怖感を重視しているデザイン。

 最も影響を受けたゲームはやはり外部カメラ切り替え方式のAlone in the Dark (1992)。後はResident Evil(バイオハザード), Silent HillFatal Frame(零)など。古いゲームからの影響がやはり強い様である。

 詳細は明らかにされていないが、最初のチャプターがこのジャンルでは典型的な屋敷となっているだけで、同じロケーションでずっと続いて行くという設定では無い。チャプター単位で行動する場所は移り変わっていくそうである。


 最大の特徴はプレイ可能なキャラクターが全部で16人存在するという点。全員が普通の人間である事が強調されており、誰一人として超人的な能力を持った者は登場しない。ダニエルの知り合いに限らず、色々な立場・職業の人間が用意されている。各キャラクターには性格(同じ出来事に遭遇してもリアクションが異なる)と特性(体力値, 移動速度, ステルス度等)が備わっており、外観だけが異なる訳では無い。

 ゲーム上での扱いはどうなっているのかと言うと、まず主人公のダニエルはメインキャラクターとして一人だけ別格の存在。彼を使ってプレイするパートはダニエル以外ではプレイ出来ない。彼が死んでしまえばそれでゲームオーバーとなる。対して各チャプターには他の15人がプレイする別パートが用意されており、それぞれのチャプターの初めにその中から選択可能な人間が表示されるので、プレイヤーは好きな者を選んでプレイを開始する。もし途中でそのキャラクターが死んでしまった場合、そのキャラクターはそのまま死亡扱いとなり、残りのキャラクターの中から別の者を選び直前のセーブポイントからやり直しとなる。用意されているキャラクターが全員死亡してもクリア出来なかった場合には、チャプターの最初からまた全員が揃った状態でのやり直しとなる。全滅前にクリア出来ればOKだが、その際には既に途中で死亡していたキャラクターは死亡が確定する。それ以降のチャプターでもこの繰り返しとなるが、最初のプレイアブルキャラクターの選択時に、既に死亡している人間は二度と出て来なくなるという仕組み。よって死なせ過ぎると後半になるにつれて少ない人数でクリアしないとならなくなるので不利になる可能性がある。

 ストーリーへの影響は“ある程度”は出て来ると述べている。ただしより生存者が多いほど良い方向に進むのではなく、単に何かが変わるだけで善悪エンディングへの分岐といった観点からの変更は発生しない。なおメインストーリーへの影響は一切無く、そこは最重要なのでプレイヤーによってそれを味わえない可能性が出て来るという風にはしないという姿勢である。


 全てのキャラクターは武器を含めた一切の攻撃手段を持たない。だが後述するが逃げ回ることしか出来ない訳ではない。

 セーブ機能は持っているがオートセーブのみでプレイヤーには行えないという方式。例えば何人かのキャラクターが死んだ途中の状態でセーブしておくといった事は出来ない。対してダニエルでプレイしている際にチャプター途中でセーブ可能なのかどうかは不明であるが、Save&Quitは用意されているので、少なくとも生存している状態でなら途中終了させる事は出来るのではないかと思われる。

 ヘルスやSanity(正気度)の概念は無し。回復薬なども当然無しで、常に生きているか死んでいるかの二択である。


 このゲームにおける敵は“The Presence(実在)”と名付けられており、特徴の一つ目は特定の攻撃手段を持たないという所。最近ではSOMAも同じスタンスだったが、とにかくホラーゲームにおいては敵の攻撃方法や特性がプレイヤーに理解されてしまうとその対策を考え出されてしまう為に、「難しさ」は残せたとしても「怖さ」が消えてしまう。そこで多彩な攻撃手段を持たせて、プレイヤー側に特定の解り易い対応だけでは対処出来ない様にしたいと考えている。追跡してくるので逃げないとならないのを初めとして、こっそりと待ち伏せしているのでそれを回避しないとならない, 隠れてやり過ごさないとならない, トラップを仕掛けてくるのでそれを回避しないとならない等、様々なやり方でプレイヤーを殺そうとして来る。

 もう一つはダイナミックなAIを持たせているという点。出現場所は設定されておらず、どこでどのタイプの攻撃を仕掛けて来るのかはランダムである。よって死亡後のリトライにて同じ場所で警戒をしても無駄という事になり、マップ内のエリアにおいて安全地帯となるエリアはほぼ無いとされている。


・キーアサイン不可, マウス感度設定不可, 明るさ調整不可, サウンドボリューム調整不可
・難易度設定無し
・字幕は無し(説明的な文章はあり)
・デモにはセーブ機能は無し

*外部カメラ視点固定
*RMBで持っているアイテムを回転, ホイールでズーム
*インベントリー画面とドキュメント類画面を別に持つ
*スプリント可能。 ジャンプ, 屈み 操作は無し。
*コントローラー操作に対応
*メニューはESCではなくMキーを使うので注意


GAMEPLAY  デモで行動可能なエリアは限られているが、リプレイ性はあるので1時間程度は楽しめるだろう。アイテムは幾つか有るが、実際にデモの範囲内で使える物はほとんど無いようだ。


 カメラは固定アングルとなりプレイヤー側からのコントロールは不可。一人称視点に切り替えてその場で見回すとかも出来ない。よって画面内のキャラクターには見えているはずの正面がプレイヤーからは見えないとかが発生するし、狭い場所では真上からとかの奇抜な視点移動も発生してしまう。と言ったクラシックなサバイバルホラーではお馴染みの設定だが、移動操作はカメラ基準でいわゆるラジコン操作ではない。カメラ位置に対して入力した方向へとキャラクターは移動する。バック方向移動では反転を行う。なおカメラ切り替え時でも、キーを離さない限りはそのまま同一方向への入力操作は継続してくれる仕様。マウスはフラッシュライトで照らす位置を動かす役割を持つ。

 この操作性が問題となるのかどうかは、急いで逃げるシーン等にてどの程度のコントロール精度が要求されるのかに因るが、走って逃げるシーンはデモには無いのでどの位やり辛いかは不明。それよりも気になったのは、障害物に衝突した際にその場足踏みを行う所。その方向へと進めない状態であっても方向キーを入れている限りはそちらへと進もうとする走り(歩き)モーションを続行してしまう。これでは不自然に見えてしまう事から、現在ではブロックされたらその方向へとキーを入れてもキャラクターは止まったままというゲームが多い。と言うか後方固定視点ならば入力方向を間違えるというミス自体が起こり難いので目立たなくなっている欠陥である。だがこのゲームではそれを採用しており、特にカメラ位置が変わった後に入力ミスが起き易い設定。そして発生してしまうと、なまじグラフィックスが綺麗なだけに余計に違和感を覚える。ホラーゲームなのに真面目な顔をしたキャラクターが移動出来ない方向へと走り続けるその姿勢は滑稽でもあり、シリアスな雰囲気を損なう恐れが高いので止めた方が良いと思う。


 ドアはUseすると自動的に開けるアニメーションに入って、そのまま閉める動作まで行われる方式。後述するゲームの基本システム上、扉を開けたままで放置する事は出来ない。昔の様にロード時間を稼ぐ必要は無いはずだが、一連の動作には数秒間待たないとならない。これはキャンセル操作も設定で可能にして貰いたいのだが、システムの都合から困難なのかもしれない。

 灯りを点けられる場所は多いが、光が敵の出現に影響を及ぼすのかは判らない。フラッシュライトは無限使用可能。これも敵を照らすと何か効果があるのか説明は無し。

 アイテム類にはアイコンが出るのは親切。しかしアイコンが特定の方向から近付かないと出なかったり、距離を合わせないとアイコンが出なかったりと問題も感じられる。或いは近くに有る別の物を指してしまったりも発生する。


 デモにおいて敵となるプレゼンスとの対決のメカニズムを幾つか体験出来る。まず出現やその攻撃方法は解説の通りにランダムとなり、これはリプレイ性に貢献しているという印象。デモではキッチンの奥の扉の先には必ず出現するので、ここまでで終しまいという意味だと思われる。

 一つ目の攻撃方法はドア越しに襲って来るというやり方。ドアの隙間から黒い瘴気が漏れ出てきたら、それを押さえて物理的にドアを開けさせない様にしないとならない。押し合いに負けると捕まってゲームオーバーとなる。ここでのメカニックは、ドアでの押し合いにてプッシュアイコンが表示されるが、それに対して「出来るだけ間を置いてからUseするほど力を溜めて強く押し返せる」という風になっている。ただし時間を置き過ぎると敵のプッシュが成功して押し込まれてしまう事になる。これの繰り返しで押し勝ってドアを閉じれば回避成功である。なおゲージ類は出ないのでどの程度溜めるのがベストなのかは検証出来ていない。

 二つ目は閉じている部屋全体に黒い浸食エフェクトが掛かり出したら逃げる事は出来なくなり、そのままで居ると地面の裂け目に引き摺り込まれてゲームオーバー。回避するにはこの時だけHideアイコンが出るオブジェクト(家具類)が有るので、それを見付けてからUseして隠れるという風にする。発生する部屋では隠れられる場所が必ず有るはずだが、通常時はアイコンを確認出来ないのでスリリングという設定。

 上記二点に関してはまあ新鮮で面白いとは感じたが、これがゲームを通じて何回も繰り返し発生してもその面白さが継続するかとなると疑問も。慣れてしまうと簡単そうだし、単なる作業に成りかねない。どの程度多彩な攻撃手段を持っているのかまだ解らない段階だが、これは相当バラエティに富んだ物にして慣れを避けないとならないであろう。


 最後の待ち伏せには問題あり。扉の向こう側で待ち伏せをしている事があり、それに気が付かずに扉を開けてしまったら捕まってゲームオーバー。回避手段は無い。その確認の為に聞き耳というコマンドが在り、扉の前でRキーを押し続けると耳を押し当てて向こう側の様子を探る動作を行う。この時に微かな金属音(鎖を引き摺る様な音)がしたなら待ち構えているのでそこは開けられない。別の所から出るか、しばらく間を置いて居なくなるまで待つしかない。

 問題は敵の待ち伏せがランダムなので、常時この確認を行わなければならない点。「ドア周辺に異変が起きたら注意せよ」というヒントはあるのだが(実際にその際には高確率で待ち伏せている)、確かに注意する時がそれだけならば面倒では無い。ところがランダム出現なので扉を開ける前にその都度この聞き耳操作を実行しないとならず、しかも一度通った扉であっても安全では無いという設定である。基本的にアイテム類を探したりパズルを解く為に同一エリア内を何回も行ったり来たりして移動するというゲーム性なのに、もし全体を通じてこのメカニックが存在しているのだとしたらあまりにも面倒であると言わざるを得ない。

GRAPHICS
&
SOUND
 Unreal Engine 4を使用。解像度のみ変更可能でグラフィックスの設定は無し。背景に2Dを使用していたりするので、製品版でも多くのグラフィックス設定は用意されないと思われる。グラフィックの質は高く、またホラーゲームとして屋敷内の雰囲気も良好と感じられるが、キャラクターモデルはもっとディテールに凝っている方が良いし、ライティング等のエフェクト類も出来る限り適用可能なオブジェクトには使用してより美しくなる事を期待する。


 タイトルにも含まれている通りに音楽はゲーム内に置いて非常に重要な要素となっているそうだが、デモの範囲内では特別に優れているという印象は受けなかった。サウンドの方も静まり返っている屋敷の中なので音数自体が少ない。それとカメラ位置が外部視点&切り替わる関係から、3Dサウンドを効果的に使用するのは困難という問題は存在している。製品版では16人のキャラクターには全員プロの声優を採用して演じて貰う予定。

感  想  ちょっと見にはインディーズ会社のデビュー作とは思えない位に、本格的なホラー物として良く出来ているという印象を受けた。仮にここまでの内容がフリーゲームとしてリリースされていて、脱出等でのゴール地点が存在する物であったならば高い評価を受けていたと思える。逆に言えば本文でも触れた様に、結構長そうなゲームなのだが緊張感を維持出来るだけのバラエティさ(特に敵の攻撃手段)を用意して、面白さを最後まで持続出来るのかという点はやや心配である。

 16人のキャラクターという大きな売りも、概要を聞く限りではそれ程プラスに働く様には感じられない。キャラクターに差はあると言っても特別に大きな差では無さそうだし、誰でも大差なしという印象になってしまえば効果どころかマイナスに働いてしまう恐れもある。

 いずれにしろデモだけのクオリティも見ても開発チームに実力はありそうだし、今後が期待出来るホラー作品の一つなのは間違いない。まだ未知のストーリーは別にしてホラーとしては特別に怖くは無さそうだが、ゲームとしては面白そうな感じがするし、グラフィックスを含めた雰囲気は今や迷走している本家Alone in the Darkフランチャイズとは違い、まるで正統な後継者であるかの様な感も漂っており気に入っている。予算確保がどうなるのか気になる所だが、このレベルであればパブリッシャーが付くことにも十分に期待出来るのではないか。


 現在の完成度: 各項目は2〜4割程度の進捗でストーリーのみ完成済み

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