ALPHA BLACK ZERO
            Intrepid Protocol

                                 04/05/30

   515MB  Playlogic Internationalより04/Q3発売予定


  公式サイト


<概要>

 オランダのKhaeonが製作、同国のPlaylogicを通して販売されるTactical Shooter。昨年中には発売されるはずが延期が繰り返されていたのだが、どうやら代理店が決まらなかったという事らしく、ようやく最近になって北米と欧州にて代理店が決定している。北米ではTri Synergyからで、欧州のGMX Mediaの方が早い発売(7月)となりそう。

 このデモについては開発したKhaeon側は関知していないらしく、Playlogicがプロモーションとして出した物になるようだ(データファイル名はPressdemo)。バージョンとしても昨年段階のレベルであり、現在の完成品よりも結構古いBuildとなっている。サイズは515MBと巨大なデモだが、その分2,3時間程度のボリュームはある。

 デモはシングルプレイ専用で2つのミッションがプレイ可能。マルチプレイのメニューは有るのだが、実際にはGamespyとの契約切れの為にサーバー検索機能は働かず、IP接続もプレスデモの為か機能しないようである。


<STORY>

 時は西暦2366年、主人公のKyle HardlawはSolGov Federationの管理下にある特殊部隊Alpha Black Zeroのリーダーであったが、或る一連の極秘ミッションにおいて複数の政府関係者を暗殺した疑いで現在は裁判に掛けられている。ゲームの進行はこの裁判を通して行われ、プレイヤーはHardlawが回想と言う形で証言するミッションの内容をプレイするというスタイルになる(Mafiaと同じ)。この裁判を通じて背後に潜んだ様々な陰謀が明らかになっていくという風になっており、ストーリーにも大きな重点を置いたゲームとしてデザインされている。


<動作環境>

HARDWARE 必要環境 推奨環境
CPU Pentium III 1GHz -
MEMORY 256MB RAM -
VIDEO VRAM 64MB以上のビデオカード -
SOUND - -

対応OS: Win 98/2000/ME/XP
Direct X 9.0以上要


 Readmeにも記述が無いので動作条件はよく分からない。現在では解決されている問題がまだ残っている時期のバージョンなのでトラブルの可能性は有るし、逆に最新のドライバとでは問題が発生するというケースも考えられる。一応私の環境(Geforce FX: Forceware 56.55)では落ちるといったトラブルは無かった。レンダリングはOpenGLとD3Dを切り替え可能なので、ダメならば替えて試すという手もある。

 なおPentium 4のハイパースレッドとATIのビデオカードの組み合わせではトラブルが起きる可能性が有り、BIOSで停止可能ならば切って試すか、BIOSのUpdateを試して欲しいそうである。


<BASIC>

 Tactical Shooterとあるのだが、ゲーム性としてはそれ程シビアな物ではなくアクション性も持ったゲームとなっている。通常の銃弾によるダメージはかなり少なくて結構な数被弾してもOKだし、武器の選択や使用方法も簡素化されている部分がある。しかし純粋なアクション物とするには制限も多いという、丁度リアル系とアクション系の中間に位置するかのようなバランスのゲームである。
 Map内の敵の数は相当に多く、或る程度は遠距離から倒せるが接近戦が起きるのは避けられないという印象。オープンな場所での撃ち合いも起きるので、とにかくステルスで敵が感付く前に倒すというリアル系の特殊部隊物ではない。また敵がこちらの存在を知って駆け付けて来るというシチュエーションも多い。その一方で一人で突っ込んで行って戦うには操作や移動がアクションFPS程には自由ではないという理由から、そういった行動は難しくなっているゲームでもある。

 なお開発側からのメッセージとしては「このデモでプレイ出来るミッションはゲームの中間部分に位置しており、それ故にいきなりのプレイでは難しい・煩雑と感じる事が有るかもしれない。しかし実際の製品版では単独行動から部隊のコントロールへ、弱い敵から徐々に強い敵へと段階的に変化して行くようになっているので、独特な視点での操作や、仲間に指令をしたりするのは製品版では負荷に感じる事は無いはずである」とある。その通りに最初は取っ付き難い感じは受けるゲームであるが、慣れて来ればそれ程のストレスは感じなくなるだろう。

 一つデモでの注意点として解説を読まないと分からない機能が結構有るのだが、Readmeがインストールするデータには含まれておらず、デモファイルのZIPに同梱されているといった風になっているらしいので、Downloadした場所によってはそれが無いというケースが考えられる。そこで以下にゲームの内容説明を兼ねて知っておくべき点を解説する。


*行動は5人チームで行い、プレイヤーは主人公以外にも全ての隊員を切り替えて操作可能
*残りのHPはヘルスではなくスタミナで表示されて、スタミナが0になった隊員は死ぬのではなくて動けなくなるという仕組み
*ミッションは隊員が一人でも生き残って(動いて)いれば続行可能であり、次のミッションでは全員が復活する。ただし前のミッションで倒れた隊員は開始時のスタミナが低いというペナルティが付けられるようだ(未確認。難易度にもよるのかも)。
*LOADOUTは部隊単位でStealth/Standard/Heavyの3種から選択する。個人別のカスタマイズは出来ない。

*個人に命令する場合には1-5の数字を入れた後に表示されるプルダウンメニューから数字を入れて命令する。他に全体に同じ命令を与えるキーもある。
*全体命令はRegroup/Hold Position程度で複雑ではない
*敵を発見するとそのメンバーの探知アイコンが白くなる。またレーダーには赤く敵の位置が表示される。
*弾薬とヘルスはサプライ用のケース(Crate)からのみ補給可能で、その場所は近くに来ると緑でレーダーに表示される

*TABにてObject等の状況確認
隊員切り替えはSHIFT+番号キーで行う。よってSHIFTに何か操作を割り振ってしまうとこれが出来なくなるので注意。これはControlsフォルダの中のControls0.ctlの中を直接編集する事で別のキーに設定する事も可能。
*[,]キーにて各隊員の現在の動きを見る事が出来る(後方追尾視点になる)
*Regroupコマンドを別々に行う事で分隊行動可能。例えば1を操作中に2,3へとRegroupを出し、その後4へと切り替えてから5へとRegropuを出せば2チームに分けられる。
*立った状態から方向キーをダブルタップでローリング動作

*Saveは無制限に可能
*注意点としてデモでは常にNew Gameしか選択出来ず、一度ゲームを終了させた後に再起動してNew Gameを選ぶとそれまでのSaveは消されてしまう。これを防ぐにはSavegameフォルダの中のファイルに書込み禁止属性を付けてから起動後にNew Gameを選んでやり、新たにスタートした後にF2でLOAD画面を呼んでやれば選択して続きからプレイ可能になる。


<GAMEPLAY>

 視点は三人称と一人称の切り替えとなっているが、実際には一人称とはSplinter Cell風の肩越し視点となる。肩越しの視点はFPSでいうIron sightsに当たる物で精密に狙いを付ける為に使用し、もしもスコープ機能を持った武器であれば完全な一人称(スコープ)となり、無い物に関しては斜め後から覗き込んだような形になる。このモードだと照準が合った敵のStatusが左下に表示されて、どれだけのダメージを受けているか確認可能。スコープ視点だと敵が赤く浮き出るので暗い場所や草むらでも視認が容易となる。ただしこの構えからは移動速度が遅くなるのは言うまでも無い。
 姿勢はCoruchとProneを持っており、それによって照準が縮まって命中精度が上がる。Proneは勿論だがCrouchの姿勢でも照準の移動範囲制限を持っており、これは最初戸惑うだろう。それと移動中は立って移動しているとき以外は銃を撃てない。

 銃撃戦では近距離での撃ち合いならともかくとして、或る程度離れるとしゃがむか伏せて肩越し視点で慎重に狙わないと簡単には当たらないゲーム性。視点と操作がちょっと変わっている為に慣れるまではかなり違和感が有るが、こちらが上手く操作出来ない分敵の能力も高くはないので、難易度的にはバランスは取れているという印象。
 自動的にリロードしない上に武器の切り替え速度も遅く、その辺を考えて撃ち合わないとならないという面も持っている。また視点切り替え型の宿命として、全ての視点に最適なマウス感度を設定するのは難しく、どこかで妥協しないとならないという欠点は存在している。

 このゲームの大きな特徴としては、とにかく弾薬が少ないという点、そしてそれがチームの行動モードに大きく関係しているというのが挙げられる。装備はメイン武器とサブの拳銃、それと特殊武器かGrenadeしか持つ事が出来ず(これは持てる隊員が限られる)、倒した敵や倒れた味方の武器を拾ったりは出来ない。そして弾薬とヘルスはMap内に有るCrateからしか回収出来ず、これはそれ程用意されていないという仕様。
 弾が少ないゲームというは特殊部隊物には良く有るが、このゲームにはアクション的な撃ち合い要素も含まれており、敵の数も多い事から慢性的な弾薬不足といった状況に陥る。Readmeにはヒントとして、激しい撃ち合いに備えて普段は拳銃を使い、メイン武器は温存しておいた方が良いと書いてある。これは確かにその通りなのだが、初回プレイ時には敵がどの程度いるのかや補給が何処で出来るのかが分からないので困った事になる。温存して戦ったらダメージを受けてしまったが、その後すぐにCrateが有ったので実は温存する必要が無くダメージを受けた分だけが損として残ったり、逆に弾がもう無いが補給個所が無いのでBash(武器で殴る)以外に攻撃方法が無いといった状態に陥ったり。最悪の場合には相当前のSaveまで戻ってやり直さないとどうにもならないという事になるケースも有り得るゲームである。
 実際に2つのMap共に、クリアの段階ではもう何も持っていない隊員と、サブの拳銃に残弾が少しといった隊員しかいないという状況だった(Mapを把握したリプレイ時にはそんな事は無いと思うが)。取り合えずのヒントとしては、或る程度弾が残っている隊員で死にそうではない場合にはわざと補給しないで残しておくというのも考えておいた方が良いだろう(ただし戻れなくなるMapでは損となってしまう危険性はある)。

 隊員への指令はReturn Fire/Suppressing Fire/Precision Fireとなっており、それぞれ敵が攻撃するまでは撃たない、激しく撃って敵にプレッシャーを掛ける、慎重に狙って撃つという風に命令可能。ここで面白いのは敵はモラルというパラメーターを持っており、これはSuppressing Fireを行う事で下げる事が出来る。これによって敵は後退するし、プレッシャーを受けるので攻撃回数・精度共に減少するようになっている。問題はこれをやるとただでさえ少ない弾薬が早く消費されてしまう点で、頻繁に行うのは不可能に近い。
 ではPrecisionにすれば良いのかというと、これは命中率は高まるが敵にプレッシャーを掛けられないので、敵が積極的に前に出てくるし狙いも正確になるという弱点を持っている。そこでHeavy GunnerにSuppressing Fireを指示しておいて、Sniper Rifle等の精密な武器を持った隊員にはPrescisionを指示したりと、この辺の使い分けの必要性は面白い要素となっていると思う。
 その他Primaryを装備させた隊員のみで攻撃し、Sidearmを装備させた隊員はHOLDさせて後方からのPrescisionで援護に徹して、時間を置いて役割を交代させて弾の消費を防ぐといった作戦も重要となる。この弾が少ないという点はそれ程撃てないというストレスは感じるものの、ゲームを特徴付ける要素としては面白い物となっていると感じた。


 AIの出来は全体的に良い。味方のパス移動は変にスタックしたりとかも無くしっかりしているし、Friendly Fireの様な行為も起きないようだ。勝手に指示を無視して撃ったりとか、弾が無くならない限りは武器を勝手に持ち替えたりとかもしない。常にプレイヤーの後に控えるのではなくて自発的に前へも出て行くし、Grenadeへの反応もちゃんと行う(絶対では無いが)。周囲をカバーして分担して攻撃に当たるし、この手のゲームの中ではかなり使える部類と言える。敵もただ単純に突っ込んでくるのではなく、一時的に逃げたり伏せて隠れたりもしてくる。モラルという要素を先に挙げたが、これはグループの大将を倒す事で下げたりも可能な様だ。動きにはスクリプトを使用していないという話で、こちらの行動によって同じ箇所からでも対する反応が変化するというのも良く出来ている点である。
 ただ普通のアクション物では敵の反応を早くして正確性を上げる分、プレイヤーが回収出来るヘルスを多くしたりしてバランスを取っているが、このゲームではヘルスの回収箇所がほとんど無いという設定なので、それとバランスを取る為に反応自体は鈍く設定されているという印象。遭遇してもすぐには撃って来なかったり攻撃の間隔が長かったりで、隊員と比べると反応速度が遅い。これ以上反応を速くされると今の設定では厳しくなるので、難易度のバランスとしてはこれは仕方が無いだろう。


 戦闘全般に関して言えば、銃の精度は適度に当たらないといった感じで、実質伏せないとダメといったレベルではない。それ程通常の銃弾のダメージは大きくないので、或る程度は撃ち合えるといったバランス。ただGrenadeのダメージは大きく、また受けると引っくり返ってしばらく動けなくなったりするので厄介。しかしこれが見えにくい上に(音で判断するしかない)、こちらからでは投げにくく(遠くに飛ばない)効果的に使うのは難しい。一方で敵は結構正確に投げ込んでくるので困る事になる。一番脅威の敵はGrenade Launcherを持った相手であり、最優先で始末する必要があるだろう。
 それと倒れた敵が起き上がってくる事が多く、この場合単なるアニメーションでそのまま死ぬ場合と、本当に起き上がってくる場合が有るので見分けが難しい(自分で殺してDeadの表示を確認しているならば問題無いのだが)。

 茂った草木を通しての認識は透過のようだが、精度が高くないのでそれ程問題には感じなかった。問題なのは壁等のObjectを通してAIが認識してしまい、また実際に銃弾も貫通してしまう箇所が有る点で、これは製品版では治してもらいたい点である。



<MULTIPLAY>

 Coopのみに対応で5人までプレイ出来る。隊員は常に5人であり人数分だけ人間が操作するという仕様で、隊員切り替えはCoopでは出来ない模様。

 デモでは体験出来ないがここは大きなポテンシャルを感じさせる点であり、仕様的にも結構良いと思う。まず敵の数が相当に多いのでMapを通してあまり敵を倒せない人間が出る可能性が低い。次に死亡時の復活はその場で行われ、この時の待ち時間はサーバーが設定可能。また復活時にはスタミナは25%程度であり弾薬は補給されないので、弾が無くなったら次のCrateまでは撃つ事が出来なくなる。なので勝手に一人で進んでしまうタイプのプレイヤーの防止には向いている。そして弾薬が少なく復活しても弾は補給出来ない事から協同して、また誰が前に出てメイン武器で撃つかを考えて動かないとならず、Coopゲームとしては面白そうである。ネットコードもエンジンを考えるとそれ程心配は要らないのではないだろうか。


<GRAPHIC>

 Seriousエンジン使用で、レンダリング部分だけをSerious Samに使われた物よりも新しいバージョンのより広域描画に適した物に差し替えているという話。特に目立って凄いという点は無く、Textureにも粗さが感じられる点は有るが、小さな会社の開発という点を考えるとまあ悪くは無い出来である。ただ武器関連の描画や、Grenadeの爆発のエフェクト等は改善の余地有り。SSを見ると結構いろいろな景観のロケーションが用意されている様でもあり、もうちょっと製品版でのレベルは高いのではないかとも感じさせる。


<SOUND>

 デモだからなのか寂しい感じで、武器の音には迫力が感じられずにこの点はマイナス要素。BGMもムービーシーン等にしか用意されていない。それとゲーム中にもサウンドファイルが無いというエラーが表示されたりと未完成で出しているようだ。隊員の反応ボイスももっと多い方が理想。


<総合>

 弾薬数が少ない点を中心に若干ストレスは感じるが、誰か一人でも生き残れば成功で隊員は次のミッションでは復帰可能という緩和措置が取られている為に、極度に緊張を持続させながら続けないとならないようなシビアさも無いので、それ程人を限定するタイプのゲームでは無いだろう。この手のマイナー系会社のゲームでは、注目を浴びる為にはグラフィックに力を入れるか独特のゲーム性で売るしかないが、独特という点では弾薬の少なさとそれと連動したチームのコントロールという点は面白いと思う。

 また隊員が結構ちゃんと動いてくれるので部隊操作タイプのゲームとして出来が良く、ゲームのバランスも「全員のヘルスが低くても同時攻撃で多数の敵を退けられたりする」、「武器・弾薬が回収出来ない分隊員数が減るのは大きな不利なので、皆で生きて進む様に考えないとならない」となっており、この手のゲームが好きな方にはお勧めである。

 グラフィック&サウンド面には低予算の影響が見えておりメジャーになるゲームとは到底思えないが、これは購入候補に入れておこうと考えている。Coopだけでも相当に面白そうであり、特にCoopファンは注目の作品だろう。



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