DEADLY DOZEN

                                   03/07/14

          112MB   Infogramesより発売中


<概要>

 WWIIを舞台にしたTactical 3D Shooter。並外れた能力を持ちながら部隊の規律という枠に収まらないはぐれ者達で構成された特殊部隊、タイトルの通りに彼ら12人の隊員を操って世界各地での困難な任務に挑むゲームである。

 3Dシューティングのファンの方でも「こんなゲームあったんだ?」というのが結構多いと思うのだが、それもそのはずで製作が発表されたのはつい先の8月の事。それから3ヶ月も経たない内に発売というゲームなのだ。またこれはいわゆるValue Softの類に属するのか?という事で、ほとんどあちらのPC系ゲームサイトでも取り上げられていなかったというのも関連しているだろう。

  追記:日本語代理店版も発売された



<ValueSoft>

 このDDの販売価格は$19.99。大抵の3Dシューターのリリース時の価格は$39.99から$49.99程度であり、特にリアル系のゲームは高めの設定である事を考えると相当に安い。それに加えて8月の発表の時点で11月にはリリースという事だったので、これはValueソフトなのか?と私も考えていた。

 正確な定義や名称がある訳では無いのだが、アメリカにはこういった価格の安いゲームの市場がある(カジュアルゲームとも言われる)。掛ける予算や作り込みはそれなりだが価格もそれなりに安いというゲームの事で、対象にするテーマも割とメジャーから外れている物が多かったりする(バードウオッチングのゲームとかフリスビーゴルフとか)。御存知の方も多いと思うが元々は1998年にDeer Hunterという鹿狩りシミュレーションゲームがリリースされて、これが低予算に簡単な作り込み(やった事は無いが)にも関わらずに200万本を越える大ヒットとなった。このゲーム以降ValueSoftと言われる分野が伸びて来たのだが、その後この会社Wizardworksは続編も含めて各種ValueSoftをリリースして、現在ではかなり有名なゲーム製作・配給会社となっている。

 このDDの製作はnFusionという所なのだが、実は配給は上記Wizardworksである(WizardworksはInfogramesの傘下)。と言うことでこれも価格に見合ったそれなりのゲームなのかという疑問は当然あった。3DFPSでもこの手のゲームは存在しており、Vietnam Black OpsCIA Operative(日本ではマイクロマウスからリリースされている)、或いは当のWizardworksではPolice Tactical Trainingと言うのもある。やった事が無いのでこういう言い方はちょっと問題があるがいずれもかなり低予算というのが顕な作りであり、海外PCゲームサイトでもレビューすら載らない事が多かったりするし、載っていてもかなり評価は辛辣である。

 では肝心のこのDDに関してはどうなのかというと、ゲームシステムその物はれっきとした普通のゲームと言って良いだろう。ただし低価格にはそれなりの理由がある。

※ミッション数が10個しか無い(つまり短い)
※ゲームにバリエーションが少ない(いろいろなモードで遊べるというオプションは用意されていない)
※マルチプレイに対応していない
※インターフェイスも含めて結構素っ気無い部分が見られる


 一応は安易に製作されているという面はそれほど無くて、基本的に「安いのは短いから」と思っていいのでは無いか。まあ同じ理由で安いSerious Samの様な完成度を期待すると外れるが.....。



<GAMEPLAY>

 これはもうHidden & Dangerousのクローンと言ってもいいのでは無いか。当初からWWIIがテーマで4人の隊員を操作してという面からして似ていると思っていたのだが、実際にこのデモをやる限りでは想像以上にソックリだ。
 プレイヤーは12人のそれぞれが異なる能力を持った隊員(得意な武器や体力、ステルス能力等が違う)から4人を選んで部隊を編成してミッションに臨む。プレイ中は指示を出して従わせる事も出来るし、任意の隊員に切り替えて自分で操作する事も可能。視点は1人称と3人称外部視点を切り替えられる。このデモでは1つのミッションがプレイ可能で、敵の拠点に潜入して機密文書を奪い要人を暗殺、それをラジオセンターから本部に通信した後脱出という物で結構ボリュームはある。

 基本的に武器は撃ってもそうそう当らないのでスナイパー中心のゲーム性。敵の数が多い割にはこちらが強く無いので正面からの撃ち合いで勝つのは無理と言うバランスであり、慎重に慎重に一歩一歩辺りをクリアしながら進んでいくという辺りHDにプレイ感覚がソックリである。クリアすべき事項はかなり単純なのだが、それをどうやるかという点に関して作戦的な自由度は高い。どこからクリアするかとかどう敵をうまく誘い出すかとか、戦うべきかステルスでやり過ごすかとか、どの隊員を使って行くかとかかなりプレイの幅が広いのも同じ。

 そして難易度もHDを受け継いでおりかなり高い。このゲームでは難易度3つと別にダメージモデルが2種類選べるのだが、難易度NormalにダメージはRealisticでプレイした時の難しさは正にHD同様である(HDはEasyしかやった事が無いのでそれとの比較になるが)。なおこのデモでは考えなくていいのだが製品版では当然一度死んだ隊員は残りのミッションで使用出来ないという制限があるので、原則的に4人とも生きた状態でクリアしないとならないという事項が加わる為難易度は更に高くなる(HD同様に)。
 一応4人生きた状態でクリアは出来たが、ちょっとこの手の物に慣れていない人にはキツいバランスであり、そういう方は難易度を下げる事をお勧めする。難易度NormalでダメージはArcadeか、難易度EasyでダメージはRealisticという事。もちろんArcadeでも正面から撃ち合えるようなバランスにはならないが。

 バランスとしてはとにかく死に易い。このゲームではHeadshotが狙えるのだが、敵の兵士はこちらでは相当難しい通常武器でのHeadshotを結構な確率で出してくる。その為ヘルスがMAXの100でも即死する事多し。また撃たれると一瞬動作が止まるので、マシンガン系の武器で先に当てられるとそのまま反撃もままならずに撃たれっぱなしで死ぬという事も多い。仮にマシンガン系の武器スキルが高いキャラを使用してもこちら側からは相当近付かないと当て難いのに対して、敵兵士はスキルが高い様でかなり正確に当ててくる。こういったゲームでは敵が多い代りにこちらの隊員のスキルは平均的に高いというのが普通なのだが、このゲームではその辺のバランスが厳しめという印象。この辺はHDよりも難しい。ただしHDには無いMedipackというアイテムがあるのでその辺は多少緩和されている。
 もう一つの難点は弾が少ない事。HDでは弾では困る事は無いのだが、DDでは持って行ける弾数が非常に少ない上に最重要のライフルの弾が死体から奪えない(このデモでは)。よって最初の選択を間違えるとかなり難しくなる。私もHD風にライフル2人にマシンガン2人という構成で行ったのだが、ライフルの弾が足りなくなりかなりしんどかった(¨;) このデモでは全員ライフルと言う構成がお勧め。

 姿勢としてはProneが無いのでステルスにはやや辛い。敵の索敵能力が結構高いのでちょっと問題ありかも。隊員を置いて移動する時などにどこに置くかでも頭を使うことになる。見付かって戦闘になる事は避けたい場合が多いので。
 後は車の運転が出来る様になっており、この操作性はなかなか良い(HDの製品版よりも遥かに良い。拡張パックとは同程度)。これを使って敵陣を突っ切るといった事も出来るのでバリエーションも増えてゲームを面白くしている。


<AI>

 この種のゲームでは重要なAIだが、これはそこそこの出来。まず仲間については複雑な指令は出せないし能力的にもそれほど強く無い。これもまたHD同様に、「部隊を指揮するゲームでは無くて自分が操作する隊員を必要に応じて切り替えるゲーム」という色彩が強い。HDとの比較で言えば馬鹿げた行動やバグっぽい動きはそれほど無いのだが、逆に基本的な戦闘能力、例えばある方向をカバーして援護するといった能力に欠けており(端的に言えば弱い)、頼りにならないと言った印象。それと攻撃を指令すると勝手に武器を切り替えてしまうので、貴重なスナイパーライフルをガンガン撃ってしまうのも困ったものだ。

 敵は視界に関してはかなりまともになっている印象だが(HDに比して)、その分武器の狙いが正確過ぎる。またこちらが草むらに隠れて狙撃した場合でも1秒も置かずにこちらに反撃して当ててくる等不自然な点も多い。仲間の死体に気が付くといった能力も無い様だ。後は一応は遮蔽物を使用出来るようで、隠れて撃って来たりもする。総じてHDよりはちゃんとしていると言った印象。


<操作性>

 基本的な操作性は普通だが、HDに比較すると改善されている。特に一人称視点でもまともに動けるという点は大きい。特別にステルスでも無い限りは一人称視点で通せるというのは非常に楽である。ただしアイテム系はちょっと問題があって、8つまでアイテムが持ててそれがF1からF8までにアサインされるのだが、この順番が取った順になってしまうのだ。だからどの武器が何番になるのかわかりにくい上に、間違ってアイテムを指定してしまうと使われてしまうという欠点がある。また他の隊員に渡したい時にアイテムを落とす事が出来ない。例えばMedipackを渡したい時には武器も含めて全てをDropしないとならない(様だ?)。

 ミッション前のブリーフィングとかは簡素な造りであまり金が掛かっていない印象。雰囲気が重要なのでもう少し力を入れて欲しい所だが予算的に仕方無い所か。武器の選択画面とかもかなり単純化されている。だが一方で結構な長さのちゃんとしたTutorialが用意されており、この辺はしっかりしている。

 ゲームは無限Save可能となっているのは良いのだがLoad時間がかなり長いのが問題。結構時間が掛かるのでストレスが溜まる(よく死ぬゲームなので)。


<GRAPHIC>

 Value系ゲームは低予算の為に、ゲームのエンジンには数世代前の安価な物を使用していることが多い。例えばLithtechの初代とかQuake1のエンジンとか。或いはオリジナルであれば相当レベルが低かったりする。ところがこのゲームではオリジナルにも関わらずかなり質の高いグラフィックを使用しており、これにはちょっと驚かされた。

 建物系のテクスチャもなかなか良いし、草木の表現力も高い。風で草がたなびく所まで描画している。地面も緩やかな起伏があったりと単調な形状になっておらず、リアリティという面でも通常のゲームに負けていないと言える。雨の表現はそれほどでも無いが霧はなかなか良い感じである。それと比較するとややキャラクタのモデリングについては雑という気もするがこの価格でそこまで言うのは贅沢か。HDも出た当時はトップクラスのグラフィックが売り物の一つだったが、それよりは2年の月日の分綺麗になっていると言える出来である。
 1024*768*32でも特に重く無くスムースに動いてくれた。ただインドアだとちょっと重くなる感あり。FullScreen anti-aliasingにも対応しているが私のビデオカードでは選べず。

     フルサイズ画像              


<SOUND>

 まず3Dサウンドに関しては出来は良い。定位感がしっかりしており銃声の位置とかもつかみ易い方だ。逆にエフェクト系、特に武器に関してはちょっとショボイ感じがして爽快感に欠ける印象。


<動作環境等>

 安定度は高く一度だけ地面にめり込んでしまうというのがあった他はフリーズ等も無く優秀な出来。推奨環境は以下の通り。

Pentium III 800Mhz
256MB Ram
Direct3D 8.0 compatible video card with 32MB VRAM
DirectSound 8.0 compatible sound card with 3D sound acceleration
16X CD-ROM Drive
650MB Hard Drive Space



<総論>

 低予算という面もあちこちに見られるものの肝心のゲーム性はしっかりしており、安いのは短いからと考えて良さそうだ。この手のゲームが好きな方は購入を検討しても良いのでは無いか。現在問題になっている「地形的に見えないはずの起伏の部分をAIが通して見てしまう」バグも次期パッチで修整されるそうだ。ただし予算の関係からかそれでパッチ関連のサポートは致命的な物が無い限りは終了し、マルチ対応パッチも出す予定は無いとの事。

 追記:地形を通して見るバグは製品版では修正されている。マルチ対応のパッチは出ていない。

 何度も書いた様にHDに非常に似ているので、これのファンの人にはお勧め。バグとかAIの問題、それに操作性も大きく改善されている。ただし最も肝心な「ミッションの面白さ」に関しては当然デモだけでは分からない。HDは欠点の多いゲームであるがそれでも評価が非常に高いのは、それらを差し引いてもミッション自体が特別に面白いからである。WWIIの雰囲気と構成の見事さ、そして内容の多彩さと面白さはこの手のゲーム中でもトップクラスというのは私も全くの同意見。それに匹敵する物があるのかどうかは遊んで見ないとと言う事になるのだが....(HDもデモのミッションは大して面白く無いし。またそれ以前に安定度が低くてまともに遊べない)。


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