HIRED TEAM: TRIAL GOLD

                                   01/04/19

       42MB  New Media Generationより発売中


<概要>

 ロシアのゲーム会社製作のオンライン型3DFPS。本国及びドイツでは既に昨年9月に発売されていたのだが、今回Gold Editionリリースを機に英国でも英語版が発売される事となった(アメリカではまだ販売会社が見付かっていない)。オリジナルのHTTが出る前にもハードウェアのコンパチテスト用にデモが出ているのだが、これはHired Team:Trial Gold Editionの発売を記念して出された改良版のセカンドデモとなる。

 このデモがリリースされたのは実は2月で、その時もちょっとだけやったのだがそのまま放ったままになっていた。今回改めてやってみたのは英国のゲーム通販サイトに”今週の新発売”ということでアナウンスされていた為。そういえば有ったなと思い出してテストしてみた次第である。

 なお本国とドイツだけで既に100万本の売上を計上しているゲームだそうで、鳴り物入りでの英語圏デビューということになるだろう。このデモではGold Editionに収録されたMapを使ってオンラインゲームはもちろんの事、シングルプレイではBot相手に3段階のラダーゲームを遊ぶことが可能。最初が1on1のデスマッチ対決、次が3on3のチームデスマッチ、最後が4vs4のCTFであり、勝たない限りは次のMapへと進む事は出来ない。



<STORY>

 未来の荒廃した社会において増大する犯罪に対抗すべく結成された特殊部隊(Hired Team)。その一員となるべく他の候補者達との仮想闘技場での選抜試験(Trial)というのが大まかな内容。基本コンセプトはオンラインで人間だけで遊ぶ為のゲームなのだが、bot相手のシングルプレイモードも用意されている。シングルプレイでは様々なモードを勝ち上がりながら進んでいく形式で、タイプはデスマッチ、チームデスマッチ、CTFの様なお馴染みのモードに加えて、あるオブジェクトを守ったり攻撃したりといった物も追加されている。
 とここまで見てきて気付いた方も多いと思うのだが、これはまんまUnreal Tournamentその物である。ゲームスタイルやシングルプレイの形式がそっくり同じ感じであり、つまりこのゲームはロシア版UTと言ってもいい。もちろんそれは悪い事では無く、この手のゲームを作ろうと思ったらある程度似てしまうのは仕方のない事だ。後は如何に面白いかということが問題となる訳で、出来が良ければその事で文句を付けられることも無い。



<GAMEPLAY>  −シングルプレイ偏−

 「何だこれは!?」というのがまず第一の感想。私ならずともUTそっくりのゲームとなれば期待を抱く人も多いと思うのだが、その期待をはるかに下回るとんでもない出来映えの作品である。ウクライナからのVenom、クロアチアからのSerious Sam、チェコからのOperation Flashpoint等々、我々日本人からするとPCゲームがどれだけ普及しているのか?と思ってしまうような国から優秀な作品が出始めているが、このゲームを見ると結局の所どこから出ようがダメな物はダメという点を認識させられる。

 まず根本的な事としてシングルプレイとなれば問題となるのがBotの能力なのだが、これが実に酷い出来。まず基本的な動きが奇妙な感じで、小刻みに揺れたりという風で普通に進めない。ジャンプもやけに高く飛ぶし(自分も他から見るとそう見えるのかもしれないのだが)異様な動き方である。確かにUTでも人間の様に不規則にジャンプ動作をさせてやることが可能だが、あれとは全く違う次元の奇妙な動きである。Quake2の頃のBotを思わせるというか、ユーザー作成のBotでもまだちゃんと動くものがあるのではないだろうか。一言で言うならば全く知性というものを感じさせない動き方をする。

 ◎奇妙に飛び跳ねる上に変な動き方をするので狙い難い。
 ◎完全にスタックする事は無いようなのだが、壁に向かって走ったりとか隙間にハマッたりとかでちゃんと動く事すら出来ない
 ◎ハシゴを上る事が出来ずに延々と登っては落ちを繰り返している。箱に上ったりするのも同様でその間に攻撃されてもその行為を繰り返すだけ。
 ◎敵との距離を考えずに近距離でロケラン攻撃で自爆
 ◎頻繁に壁に向かって攻撃して自爆
 ◎一度攻撃モードに入ると異様な正確さで狙ってくる。いわゆるAimBot(自動的に相手が動く場所へ照準を追尾していく)という感じ。

 ◎チームデスマッチでは各人が勝手に動いてチーム行動というものが全く出来ないし指示も出せない
 ◎CTFでは命令が出せるがちゃんと動かない

 一度戦闘モードに入ると奇妙な動きをしながら決してこちらから狙いを外さないというコンピューターコントロール丸出しの作り。これでは努力して勝とうという気も失せる。かと思うとこちらは旗を持っているのに全く無視して素通り。味方は味方で「旗を取り返せ」と言っているのに延々と自陣でアイテムを取りながらグルグルと巡回しているばかり。もちろん敵の旗は取って来れるが、突然敵陣から逆戻りしたりとか落ちている自陣敵陣の旗を拾わずに無視して動いたりとか.....。確かに指示は出せるのだがその分自分からは状況判断が出来ないようなのである。レベルを上げれば変わるのかと思ったがそうでも無いようだ(評価はMedium)。
 仮にUTのBotと勝負をさせたらほとんど相手にならないであろう。攻撃の正確性は勝るかもしれないが、これだけ頭が悪くてはチーム戦ではどうにもならない。こんな単純な構造のMapでこの程度しか動けないのだから。これをシングルプレイでも遊べますと言って売るのは詐欺に近い。

 Mapは製品版はどうなのか知らないが極めて単純で普通の構成。最初の1on1Mapは酷い出来で、Armorの出る場所が一つだけなのでここで張ってしまえばそれで勝ちという造り。武器の場所も限られているというバランスのおかしなMap。後の2つは悪くは無いが特に良い面も見当たらない。



<GAMEPLAY>  −マルチプレイ編−

 分からないというかサーバーが起動していないので出来ない。確かにメニューから検索すれば出て来るのだが、どうやらこれらは製品版のサーバーの様で使っているMapも違うしバージョン違いで蹴られる。更に全てPingが999。その上サーバーが3つしか無いというのはどういう訳だろうか? 100万本売れているはずなのでは? 100万本が嘘なのか、それともそれ以上に詰まらないことの証明なのか。


<WEAPON&戦闘>

 基本的な操作系はオーソドックスで特別変な所は無い。特徴となるとまず第一にダメージ設定が大きめであってノーマルの状態であると死に易いバランスであるということ。UTのHardcoreをより強くしたようなバランスと言える。その為かArmorのRespawnが早く、50(100)ポイントの物を200ポイントまで重ねて装着しておく事が可能。もう一つゲームモードにArcadeとTacticalという二つの設定が可能ということ(デモではArcade固定)。

 武器の発射モードは一つだけというシンプルなもので、特別に変わった武器は存在しない。まずやってみて感じるのは武器のしょぼさ。撃っている時の爽快感が著しく乏しい。エフェクトは大した事無いしグラフィック的にも武器が地味目で存在感がない。特に撃っている時の反動というか手応えが伝わってこないのが致命的である。唯一ロケランだけはまともだがそれでも並程度の出来。
 それとバランスが変。最初にデスマッチをやった時にMediumを選んだのだが15対1で敗戦(‥;) 何だか変だと思って観察するとデフォルトのピストルが全くと言って良いほどダメージを与えられない事が判明。まず武器を取らないと不利ならわかるが、いくらなんでも威力が弱すぎと言えよう。

 戦闘に関しても当り判定が変な感じで、画面的には自分は避けているのに当っていたりとか、自分の攻撃も当っているのかどうかがつかみにくい。部位別のダメージも考慮されていないようだ。Botに関してはさておくとしてマルチで人間相手でもやりにくそうな印象である。もう一つArmorのゲーム上でのバランスが極端で、これだとArmorを取るのに巡回し回っているのが極めて有利という構造である。Armorを持っている者と無い者は勝負時に差があり過ぎるという印象。

 一つだけ気になったのはTactical Modeの存在で、これにするとAIも変わるのかと思って調べたのだがどうやらそうでは無いようで、単に怪我をすると出血してダメージが加算されていくのとダメージの度合いが更に大きくなるだけらしい。



<GPAPHIC>

 これは悪く無いというかそこそこの出来。ただしかなり細かい設定項目が出て来て期待を持たせる割には”凄い”という面が無いのが残念な所。圧縮テクスチャ等もサポートしているのだが効果の程は確認出来なかった。エンジンはオリジナルのShine Engineであって、これはOpenGLとDirect3Dの両方に対応している。両者には結構差があり、画像のシャープさと鏡面効果、ライティングについてはOpenGLの方が優れているのだが、レンズフレアーや爆発のエフェクトに関してはD3Dの方が綺麗である。武器の発射エフェクトに関してはもう少し考えてもらいたい所。なおプレイヤーモデルに関してはデザインがカッコ悪い感じだし、動きのアニメーションがヘンテコで失望させられる。

 Mapが小さい事もあるのだろうが1024*768*32で重さは感じられなかった。また私のGeforceではトラブルもほとんど無し。ただsetupプログラムが存在するのに立ち上げ後にメニューから変更しないとグラフィック設定が有功にならないというのはどういうわけだろうか? 本家のサイトには「こんなにもShine Engineは優れている!」という宣伝に比較リストが載っているが、その比較対象がQuake2Unrealというのは一体いつの時代の話をしているのだろう.....。

    フルサイズ           


<SOUND>

 容量的な問題なのかもしれないが、プレイヤーがしゃべる訳でもないしBGMも無いので(これはCDかららしい)寂しい感じである。一応EAXとA3Dに対応はしており3D効果はちゃんとあるのだが、武器関係の音が全体的に小さめの為に位置関係はそれほどハッキリした印象ではない。


<総合>

 最大の疑問は「本当にこれは100万本売れたのか?」という点であり、もしそうならば「一体何故?」という事になるだろう。マルチは未体験であるがそれほど面白そうにも見えないし、少なくともBotで遊ぶのを目当てに買う人間がいるとは思えない。相当粗雑な作りであって、仮に10万本売れたというだけでも驚きに値するレベルだ。サイトにはロシア最大のゲーム雑誌から「Quake3を越えた!」という評価をもらったと誇らしげに書いてあるが、何が最大のゲーム誌なのか勘繰りたくなるし(デッチ上げ記事がか?)、どういう面で越えているのか一度その記事を見たい気がする。
 最近のゲームではGoreの様に新しい事にチャレンジしているのでれば可能性は感じられるが、このゲームはUTやQ3とほとんど同じ形式なだけに何らかのそれらを超える部分が無い限りはアピールのしようが無い。そして現実には何一つとしてそう言った部分が感じられないので、UTやQ3を差し置いてこれを買うという意味は全く無いし、また持っていたとしても買うようなゲームでもないだろう。それらのModで遊んでいた方がよっぽど楽しめそうだ。

 この売上に関してはひょっとするとバンドル分として出荷した物を計算に入れているのかもしれない。というのはこのゲームは例のMatrox専用のEMBM方式Bump Mappingに対応しており、メーカーからサポート品としての評価をもらったとあるからだ。もしかするとドイツやロシアではMatroxが強くて、それを持ったユーザーが効果の程を確かめる為に買ったのかも。そんな事をいろいろと憶測してしまうくらい売れたとは思えない完成度。

 結論としてはこれは買わないですね。UTのASファンとしてはそれに相当するゲームモードを見たい気もするのだが、ちょっとこのbotでは望み薄。マルチも出来ないのではどうしようもない。売れずに処分品として\1,000程度になれば考えるかもしれないが、UTから1年半経った今出すようなゲームでは到底無い代物。まあ取りあえず一時間程度は遊べるので、時間が有れば話の種として遊んでみるのもいいかもしれないです。

 追記:その後2002年になってUSでも発売された。しかしほとんどのサイトではValueSoft同様にレビュー自体されず、私が確認出来た限りではGamespotで3.5点、Gamesdomainにて1点の評価。



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