POSTAL 2

                                   03/04/13


  123MB  WHIPTAIL INTERACTIVEより 03/04/14発売


<概要>

 1997年にリリースされて、ゲーム界のみならず社会的な論争となって一般のニュースとしても取り上げられた問題作Postal。精神を病んだ主人公が一般市民を巻き込んでの大虐殺を繰り広げると言った内容で、その意図的な破壊行為(人殺し)を楽しむといったゲームのデザインが問題とされ、世界10ヶ国以上で発禁処分となった。アメリカでも州によっては販売禁止措置が取られたはず。
 前作は斜め見下ろしタイプのアクションゲームだったのだが、今回は一人称視点のゲームにデザインを変えての登場となる。製作は前作同様にRunning With Scissors。既に一部の国では販売禁止が決定されているが、アメリカではESRBのRatingも通過して発売となった(ただし史上初となるIntense Violenceの査定入り)。日本では一足先にマイクロマウスより発売されている。

 デモはシングルプレイ用で(マルチプレイは製品版でも削除されており、拡張パックとして発売される予定)、最初のエリアで一つのミッションがプレイ出来る。


<動作環境>

HARDWARE 必要環境 推奨環境
CPU Pentium III 733 MHz Pentium III 1.2 GHz
MEMORY 128MB 384MB
VIDEO VRAM 32 MB  GeForce 2クラス以上 VRAM 64MB GeForce 3クラス以上
SOUND Direct X対応の物 同左

対応OS: Win 98/2000/ME/XP
Direct X 8.1以上要


 新Unrealエンジンを使用しているだけあって要求される環境はそれなりに高い。ただUnreal 2Raven Shieldなんかに比べると低い環境でもOKという感じである。一応サポートするビデオカードはかなり古い物まで含まれているが、VoodooやTNTといった物では当然設定を最低限にしないと正常動作しないと思われる。注意点としてはHardware T&L必須ではないが(強く推奨)、未対応カードの場合はDX8.1b以上が必要である。後は当然最新のビデオカード用のドライバ。



<GRAPHIC>

 まず第一にこのデモでは容量削減の為にTextureの設定等で最高レベルの物を選べないので、製品版ではどの程度変化するのかは分からない面もある。またそれほど徹底してグラフィックの向上に努めたというゲームでもなく、あまりにも重くするよりは程々の所で止めておくといった設計。どちらかというと多数の人間を同時に出現させる点に負荷を掛ける事を意図しているとも言える。このゲームの場合一般的なグラフィックの能力と併せて”残虐表現”への力の入れ方が重要となって来るのだが、その辺はGameplayの項で別に記述する事にする。

 デモの範囲内で設定を上げても特にストレスは無く、Unrealエンジンとしては軽いという印象。やはり新世代エンジンという事で綺麗なのは確か。Maxが選べないTextureには不満が残る面も有るが、地形とかにも曲線的なデザインが使われており不自然な感じはしない。キャラクタのモデリングについてはあまり細かいという感じではなく、関節の動きがぎこちない印象も受けた。その代わりにアニメーションのパターンには凝っており、面白い動きがいろいろと用意されている。顔については実写取り込みした物を加工したのかリアルな造りで、ある程度はアニメーションパターンが揃っている。バリエーションについてはデモでは容量制限の為にそれほど用意されていないという事だが、製品版でも人間のキャラのモデルやSkinのバリエーションはあまり無いといったレビューも読んだのでこの辺は不明である。

 影についてはデモでは出来ないのかキャラクタには付かないようだ。また血はそれほど残らずにすぐに消えてしまう。それと残念なのが炎のエフェクトで、Unreal 2にて現在No.1と言えるリアリティの炎(火炎放射器)の表現を見た後だけに、同じエンジンで何故?という位にクオリティの低い炎には失望した(これまでのゲームと比較すれば標準的だが)。

  フルサイズ画像             


<SOUND>

 ゲーム中にはBGM系は流れない仕様という事で評価対象外。最初にMapを出した時に音楽が流れたりするが、これも鳴ったり鳴らなかったりする(バグなのか?)。EAXも選択出来ずHardware 3Dサウンドが選択出来るが、あまり音の方向性は良くないという印象。

 エフェクト系に関しては出来は良くない。特に武器の音はかなり控え目という感じで爽快感にも迫力にも欠ける。キャラクタの発生する悲鳴や声については種類を制限しているという事で評価は出せないが、こちらはまあまあのクオリティか。



<GAMEPLAY>

 最初に断っておくと、私の考えではこれは純粋に3DFPSという形態を目指して作成されたゲームではない。ゲームの中心となる要素に「平穏な日常生活を蹂躙するバイオレンス」という物が有って、それを表現する為の器としてFPSというスタイルが選択されたという風に考えた方が良いと思う。前作同様の見下ろし視点や三人称視点という選択も有ったと思うのだが、近年のグラフィックの進化からしてFPSのスタイルがメインとなる要素を一番アピールし易いと考えたのだろう。それ故普通は「FPSとしての基本的なゲーム性」と「作品特有の色付け要素」では前者の方が重点を置かれるはずの所が、むしろこのP2では後者の方に比重が置かれているというバランスになっている。
 例えばこのゲームはFPSとして見ると変な個所が多い。一番顕著なのは攻撃の当り判定が適当な点で、頭を撃っても一撃では死なない点を始めとして、どうも足を撃とうが体を撃とうが単純に(武器の威力*当った回数)で死を判定しているという感じがする。敵の攻撃も異常な正確性を持って命中するし、カバーを探したりせずに基本的にただ突っ立っての攻撃が多い。従って当然FPSとしては面白味は無いし不自然なのだが、この辺はFPSというスタイルが”単なる表現の手段”として使われていると考えれば不思議ではない。もしこのゲームが前作同様の見下ろし型のゲームであれば、敵のキャラクタはゲーム上では小さなユニットとしての意味合いが強くなり、その場合部位ダメージといった要素は無くなって単に何を何発当てれば倒せるとか、持っている攻撃力や正確性の設定が固定された変化の無い数値扱いでも然程おかしくない。RWSの考えとしてはゲームの根本的なデザインは見下ろし視点の前作と同じで、それをグラフィック的には一人称に移行させてプレイヤーに見せているだけといった事なのだろう。

 次にバイオレンスに関して。このP2に限った事ではないが、暴力的・危険とされるゲームに含まれているバイオレンスには2通り有って、一つは直接的な表現としての暴力(残虐)性、もう一つはその行為の意味合いとしての暴力性となる。例えば有名な作品としてSoldier of Fortune(2)は、前者の表現としては頭や四肢が細かく千切れ飛ぶ等トップクラスの残虐性を持つが、設定としては悪を倒すという意味合いのゲームであり正義の為の行動という位置付けである。一方でGrand Theft Auto 3はグラフィックの表現的にはそれほどの暴力性は無いが、やっている事は一般人相手に銃をぶっ放したりと危ない設定のゲームである。
 このP2は既に御存知の通り、平穏な街の中で一般人相手に殺戮行為を行えるという事で後者の意味での暴力性は非常に高い。これについては一種のブラック・ユーモアであると取るか、或いは不謹慎と取るかは人によって違うだろう。ただこういったデザインのゲームはCarmageddonGTA3等過去にも存在したが、P2は前者のグラフィックとしての暴力表現において今挙げたゲームに比較すると遥かにリアルなグラフィックを取り入れているという点が、問題というか議論の対象となってくる。

 そこでデモをプレイした感想としては、想像していたよりは暴力性は低いという印象。人間の細かさはGTA3やカーマゲよりもレベルが高いが、それでも”ゲーム内の単なるオブジェクト”と言った感じは同じである。人間らしい物を相手にしているという感覚は希薄。プレイヤーが殺せる人間の造形のリアルさは確かにこれまでのゲームよりも高いレベルだが、それでもペナペナした薄っぺらい印象が有ってリアリティには欠けるという感じ。逃げ回ったり叫んだり座り込んで命乞いをするといった動作はリアルな点だが、こういった行為その物はカーマゲで既に実現されている。
 またゲームのデザインとしてプレイヤーがいつでも相手を殺せるように(或いは殺して金を奪えるように)殺されていなくなった分は補充されるようになっている点、またバリエーションは有るとはいえ人間のSkinやモデルにはある程度同じ物を用意せねばなら無い事、それら故「人間を殺している」では無く「オブジェクトを倒している」といった感の方が強い。

 またグラフィック表現としても、SOF2をプレイしているプレイヤーにはそれほどインパクトは無いだろう。例えばこのゲームではスコップで殴って首を刎ね取れた首を蹴ったり出来るが、これなんかは残虐というよりも滑稽といった感じが強い。首がもげてそこから血が噴出したりとかも有るが、手足が取れたりとかといった表現(Gore)も無く、血の表現もそれほど画面上に残らずKingpinなんかに比べると血痕の残虐性は低い。Unrealエンジンという事で死んだ際の物理表現にはKarmaを使用しているが、これはリアルな反面変な風に体が曲がったりするのでリアリティに欠けるという面も併せ持っており、死んだ瞬間に糸が切れたようにヘナヘナと崩れ落ちる点はゲーム的である。
 SOF2では死体を撃っても手足は千切れ飛ぶしナイフで切り刻めば血が吹き出るが、P2では死体にはそういう事は出来ない。また死に顔用に専用のTextureも用意されていないようだ。唯一飛ぶ首についても切り口はリアルでなく、顔の一部だけが吹き飛んで肉や骨が露出したりするSOF2ほどの残虐性は無い。炎で焼かれた時のアニメーションや焼死体の表現、またはKarmaによる物が吹き飛ぶ物理動作は評価出来るが、それだけでは弱いと言える。



 それではゲーム全体を通しての総合的な感想を。プレイ前に否定的なReviewが結構有ったりしたのでいろいろな意味で注目していたのだが、残念ながら私が期待していたレベルには到達していないという結論。このゲームの製品版の最大の癌と言われるLoadingの多さについては未体験の段階である為、それを考えに入れると更にマイナス評価という事になるだろう。

 私が満足出来ないのは2つの要素への力の入れ方が中途半端な点。FPSゲームとしての完成度を追及したゲームでは無いならそれはそれで構わないのだが、であれば暴力や残虐の要素にもっと力を入れて欲しかった。具体的には残虐性を謳うならばせめてSOF2と同レベルのグラフィックは欲しかったし、そういう方向性ではないとしても行為のバリエーションに欠けると思う。製品版を見ていないから分からないが、基本的に出来る事はデモの延長線上止まりとなると魅力に乏しい。私はこういったタイプのゲームについては肯定的な立場だが、それ以前にGTA3やCarmageddon、SOF2、Kingpin等の残虐度で有名なゲームは、その残虐度を抜きにしても一つのゲームとして面白いという事実がある。しかしP2はそのベース部分の面白さではこれらの作品の域には達しておらず、それであれば暴力・残虐・或いは箍の外れたブラック・ユーモアという要素をもっと前面に押し出してそちらで勝負して欲しかったと感じる。
 一方でそちらの表現度はこの程度で押さえるならば、FPSゲームとしてもっとしっかり作成してもらいたい。まず武器のサウンドやモデリングに力を入れて、破壊力のある兵器等を多数取り揃えて攻撃そのものの爽快感を増すとか、敵の動きをリアルにして戦闘自体の面白さを追求するとか。或いはもっと死ににくいバランスにして自由度を高めるというのも有効だろう。そうなれば見方はどうあれ一つの面白いゲームとなったと思う。

 RWSの狙いとしては前者としての意味で面白いゲーム、ある意味キワモノ的な扱いでもそう評価されればそれでOKというスタンスと思うが、キワモノとして凄いと呼べるほどにはブチキレていないという印象である。Carmageddonを初めてプレイした時のそのキレッぶりの衝撃度には遠く及ばない。「安穏とした日常生活に突如として持ち込まれる暴力」という要素をある意味最大級の暴力として捉える=P2を暴力的な要素の極めて強いゲームとして楽しめる、といった人がいるのは理解出来る。ただ多くのReviewでコメントされていた「楽しめる人間を非常に限定するゲーム」というのは確かだと思うし、私はその中には入らないようだ。これについてはグラフィックがそこそこ綺麗な分想像力が入り込める余地が少なく、昔の残虐ゲームに比べると逆にそれが低く感じられるという面も有る。後は評価関連でこのデモではよく分からない点としてはユーモアの出来というのが有るが、これも全体的な感想を覆すほどは含まれているとは思えない。

 ゲーム本体の内容について最後に補足。基本的にゲームはメモに書かれたお使い(妻の要求する)をこなしてくるゲームで、月曜から金曜までの5日間で行われる。目的の達成にはどのような手段を使っても構わないが、金が必要となる物では暴力的な行為も必要になる可能性も高い。デモではミルクを買ってくるという物なので、スーパーでミルクを取ってレジに並んでお金を払えば良いだけ。もちろんミルクを盗もうが何をしようがプレイヤーの自由である。
 ゲームの面白いと思った点はまずKarmaエンジン。このゲームではあまり複雑な計算は行っておらず他のゲームで言うLow程度の処理しか行っていないと思うのだが、それでも爆風で人が吹き飛んだり箱等を撃ったり蹴ったりして動かせるのはリアリティが有って面白い。あまり複雑ではないので一度処理が終わった後のオブジェクトについては周囲と重なってしまったりする欠点は有るが、Karmaが非常に重い事を考えると上手く省略すべき個所を削って負荷をかけないように調整されていると思う。
 後は武器?として小便を使えるというのは傑作。チャックを開けて放尿可能で、これで相手の足を止める事が出来るし(顔に浴びせるとゲロを吐く)、自分に火が付いてしまった時に上に向けて出して自分にかけて消化出来るというのは素晴らしい着想だ。なお出したままで街中を歩くと犯罪と見なされるので注意しよう。それと犬を餌で手なずけて味方として使えるというのも面白い着想。猫は銃に取り付けてサイレンサー代わりに使用出来る。


<総論>

 その評価点数の良し悪しは別にして多くのレビューで共通して書かれている事は「シングルプレイのミッション自体が特に面白いゲームではなく、ゲーム中一般的に行える犯罪行為を面白いと感じられるかが評価の分かれ目となるゲーム」という点。デモをやった限りでは確かにそんなゲームという感じであり、そのデモで受けた感覚と現状のLoadingの問題を併せるとちょっと購入意欲減退という感じである。

 ただUnrealエンジンという事でMod関連の製作は比較的容易と思われ(特に独特な変更を加えていなければ)、武器サウンドの変更や新武器自体の導入、或いはユニークな多数のSkinを始めとしてBloodやGore系のエフェクト系Modに関しては期待出来るかも。将来的にリリースされるというマルチプレイパックの内容と併せて、コミュニティでの盛り上がりに今後期待したい。


<付記>

 デモには7分間という時間制限がついていて、これだとちょっとプレイ時間が短過ぎるのでそれを延長する方法。

 ゲーム中にTABキーを押すとコンソールが出てくるので(或いは@キー)

 set gamestate demotime 6000

 にて制限時間が延びる(数字は秒数)。或いはsissyと入れるとCheatがONになるので、そこでalamodeにてGODモード。


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