PSYCHOTOXIC

                                 04/10/02

  公式サイト

   188MB  Nuclearvision Entertainmentより発売予定


<概要>

 印象的なグラフィックと奇抜なデザインに惹かれて、個人的には美術館(現Upcoming Games)創設期の2000年頃からフォローしていたタイトルであるが、ようやくここへ来てGoldとなった。相当予定よりも遅れた事になるが、こういった小さな会社(10人もいないそうだ)では、各人が他に”本業”を持っていたりするので、その影響もあったのかも知れない。

 既に9月初めに地元のドイツでは発売済み。しかし今年初めに契約を交わしていた国内の大手代理店CDVと決別してしまい(理由は不明)、よって他の国については新たに代理店を探している状況となっていて、欧州・北米共にショップの発売予定には載せられていない。

 シングルプレイ専用でマルチプレイは無し(製品版も同様)。現段階ではPCのみの発売。それとこのデモはドイツ語版だが、英語に直すことは一応可能(後述)。


<STORY>

 「ストーリーが命なので出来るだけ内容は明かしたくない」とずっと言い続けて来ていたが、以前に比べると若干詳しいストーリーは分かっている。ゲームの背景設定には聖書の黙示録が使われており、この中の”The Four Horsemen of the Apocalypse”が関係している。これは白・赤・黒・蒼の馬に乗った4人の騎士の事で、この4人は疫病(pestilence)、戦争(war)、飢饉(famine)、死(death)を象徴する存在となる。舞台となる2022年においてこの内の3つは既に地球上を荒廃させており、最後のDeathが到来するのを防ぐのが目的となる。
 このDeathとは古代バビロニアの時代から存在する謎の装置で、NYの地下奥深くに眠っている。人類の敵となる謎の男Aaron Crowleyは表と裏の両方の社会を牛耳る人物で、この装置を使って一度世界を破滅させてから地球上に新たな世界を築くことを目的としている。

 主人公のAngie Prophetは酒場のショー・ガールだったのだが、自分しか世界をDeathから救える者はいないという指令を受けて、彼女のみが使えるAngel Forceを駆使して巨大な敵に立ち向かう事になる(彼女は天使と人間のハイブリッドという話も有る)。


<動作環境>

HARDWARE 必要環境 推奨環境
CPU Pentium 3  1.3GHz
MEMORY 128MB
VIDEO Geforce 3,Radeon 9200以上
SOUND

対応OS: Win 98/2000/ME/XP
Direct X 9.0以上要


 発売がドイツのみという点から情報が無いので詳しい点は不明。DirectXは9.0c要なのかは分からない。ビデオカードはVertex & Pixel Shadersに未対応のカードでは動かないと思われるが確証は無い。

 こちらに伝わって来ている情報としては、発売されたドイツ語版は非常に不安定であり、特にATIのビデオカードとの相性が悪いらしい。すぐにATI Hotfixとそれに続いてパッチもリリースされているが、現在でも完全には修正されていないようである。このデモがどの時点のBuildに当たるのかは不明。私自身はGeforce6800GTにForcewareの最新版でプレイしたが、2回ほどデスクトップに落ちた程度。デモのプレイ時間は結構長いので、その点からすると特に不安定という印象は無し。ATIユーザーで不安定という方がいれば、将来的にリリースされるであろう英語版デモ(修正済みのはず)を待った方が良いかも。

 英語版への変更方法はbinフォルダの中のGame.cfgを開き、["language"]="DE"の記述をENにすればOK。ただし完全に翻訳が済んでいないようで、所々文字が抜けてしまうという現象が起きる。例えば最初の画面にて2つのミッションが選べるのだが、この上2つの欄が空白となってしまう。またOptionの設定欄も文字が無くなる箇所有り。
 一方でドイツ語版のままでもクリアには支障は無いと思うが、自動的にLow Goreモードになってしまい出血が無くなる(ドイツは非常に規制が厳しく出血表現は御法度)。死体のRagdollに関しても控えめになるような気がする(Ragdoll表現は死者への冒涜という考えからカットされてしまうケースも有るので)。


<GAMEPLAY>

 ゲームは一人称視点固定のスタンダードなFPSスタイル。Quicksave有りで特に回数制限も無い。難易度は4つでゲーム中にでも変更可能な仕様。武器スロットは5個有って入れ替え可能で、落ちている武器をUSEすると現在の武器と交換、空いているスロット番号を押すとそこに所持となる。Leanは可能だが動作中は攻撃が出来ず、また物凄い角度で傾くので慣れないと使いにくい。

 ゲームの一番の特徴(売り)と言えるのは"Dream Level"と呼ばれる物で、全30個のミッション中8個がそれに該当している。Angieは他人の精神(夢)の中にダイブする能力を持っており、ゲーム中にキーとなる人間の精神世界に入り込んで情報を得たりするようになっている。これ等のレベルは現実世界とは大きく異なっており、登場する武器も特殊な物が追加されて出てくる敵もモンスター系となっている。これまでにもカラフルな2Dで描かれた奇妙なデザインのSS等が公開されておりそのユニークさに注目していたのだが、どうやらこのデモに収録されている内の片方はそれに当たるようだ。
 マップは結構広く、特に現実世界の貨物場は相当な広さ。夢の世界の方は教会らしいのだが、跳ね飛ばした物や死んだ敵が上方向に向かって落ちていくといった具合で変わってはいる。ただもうちょっと奇抜さが欲しかったという感も。


 実在武器の戦闘では照準が視覚的に開くのではなく実際に銃が反動で跳ね上がる方式を採用しており、ちょっと撃つと敵から照準が外れてしまうので撃ちまくるといった事はやりにくい。回復はヘルスパックが落ちているのでそれで行う。逆にDream Levelでは武器の使い勝手は良いようだが、ヘルスパックが夢の中という事からか存在しないという面を持っている(全てがそうなのかは不明)。
 公開されていたムービーではCheat Modeでのプレイを映していたので実際にはどんな感じなのかが分からなかったが、実際にプレイしてみた印象としては、ステルスのゲームではないが行動には慎重さが要求されるという風になっている。敵の反応が早く被弾ダメージも大きいので、複数人が固まっている所へ突っ込んで行っての撃ち合いは辛い。ヘルスもそれ程用意されていない。特に現実世界では銃が一発でも撃てば跳ね上がるので、続けて照準を合わせ続けるのは困難という面も持っている。新しいエリアに入る前には敵がいないかを確認し、出来るだけSniper Rifleで先に排除。曲がり角ではLean等を使って確認して慎重に進むといったゲーム性となっている。

 特殊能力のAngel Forceはマップ内に置いてあるのを拾って使い、どうやら複数の物を切り替えて使う事は出来ない模様。拾うとその種類に切り替わってエネルギーが回復する。「体力回復」、「時間を遅くする」、「シールドを張る」、「透明化」の4つが確認出来た。戦闘が結構厳しいので使い所は重要となりそうである。


 このゲームの最大の問題点はAIとなる

*自分の視界内の味方が撃たれても反応しない
*一度戦闘状態が解除されると、何事も無かったかのようにパトロール状態に戻ってしまう
*シンプルに突っ立って攻撃して来る
*壁に向かってスタックしたり、近くにいるこちらを見失ってしまう

 上記は99-00年辺りまでのFPSゲームではよく見られたAIの欠点だが、このゲームではこういった問題点を今だに抱えている。どうやら機能が用意されていないのではなく、ちゃんと倒れた味方に駆け寄ったりとか、攻撃状態を維持したりとか、床で回転してこちらを幻惑したりという行動は取っても来るのだが、プログラム的に問題が有るのかそれが機能しないケースの方が多いようだ。一方では異常な早さでこちらを発見して攻撃に移ったりといった不自然な鋭さも持ち合わせている。
 ゲーム上ダメージ設定が厳しいので間抜けなAIというのはバランスは取れているのだが(これでAIが鋭かったら難易度が相当な物となってしまう)、ゲームとしての面白さが減少してしまうのは否めない。


<GRAPHIC>

 Trinigy Vision Engine使用。これは他社からのライセンスらしいが詳しい点は不明。これに含まれるのか分からないが物理エンジンも採用している。エンジンはDirectX9のShader機能を極限まで使っているとあり(よくあるコメントだが)、確かにNormal mappingやガラス面への反射の効果、武器へのダイナミックなライティングや水面の描画等目を引く面は存在している。Angel Forceでのスローダウン時の効果も印象的。Textureも場所によって差は有るが、良質でリアルさが感じられる箇所も多い。ただ発売が遅れた関係もあって驚くような要素は見当たらない。キャラクタのモデリングも荒さが感じられて、悪くは無いがグラフィックを売りにするにはちょっと弱いか。重さに関しては特に問題を感じなかった。なお出血はするが死体共々一定時間で消えてしまう仕様となっている。


 物理エンジンの方は良い点としては、オブジェクトが崩れたりする計算は結構リアリティが感じられるというのが挙げられる(デモであるかのように足場が組み上げて或る箇所が幾つか有る)。怪しげな飛び方をする場合も有るが、かなり派手目に箱等が飛んだり動いたりするのも面白い。それと計算負荷も掛かっていないようで、多数の物体が動いても一瞬止まったりが感じられない。
 反面Ragdollに関しては問題あり。非常に不自然な格好で止まってしまったり、落ちたりする時も不自然にスローに落ちていく。他のオブジェクトと重なってしまうというエラーも見られる。後はプレイヤー自身もその影響を受けるようになっている為に、場所によっては上手く通れなかったり逆にそのまま動いてしまったりといったケースもあった。

<SOUND>

 EAXをメニューから選択しても有効にならないので総合的な評価は保留。ただ銃声のクオリティはあまり良くない。BGMも同じ物がずっと再生されているだけでダイナミックには切り替わらない。ただメニューや死んだ後のLoad画面での奇妙に歪んだBGMは良いと思うので、この路線の物が多ければ気に入りそう。


<総合>

 このゲームはやはりDream Levelにどれだけの物を用意出来るかになってくるだろう。相当奇怪なモンスターもいるようなので、レベルのデザインと合わせて期待したい。今の時代にこのAIだと一流のゲームとして評価される事は無いだろうが、その辺が良く出来ていれば”面白いゲーム”としてなら評価される事は可能である。「特に変わっている訳でもないし、飛び抜けて凄い所が有る訳でもない」ゲームが多くなる中、こういった独特の路線は評価したい。後は早期に販売元を見付けて、風化する前にリリースするべき。



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