ANACHRONOX

                                   01/07/09

         93MB   Eidos Interactiveより発売中


<概要>

 Tom HallデザインによるAnachronoxが、企画案が発表されてから実に長い年月を経て遂にリリースされた。彼はJohn Romeroと共にidから抜けてIon Stormを設立した人間であり、Romeroのあまりの有名さに影に隠れていた感じがあるが、あちらでは相当著名な人間だ。このゲームも相当前から画面公開等はされていて話題性も高かったのだがようやく発売の運びとなったわけである。
 現在の取り上げられ方としてはどうしてもゴシップ的というか、1勝1敗のIon Stormはこれで勝ち越せるのか(^-^; みたいな記事が散見される。また丁度最近Ion Storm解体の噂話がニュースサイトでは飛び交っており、本家の方はこの作品の発売後に解散するという話が出ているし(オースチンの方−Deus Ex側−はそのまま残して)。ロメロが新しい会社を起こすと言う話もあり、まだこの辺に関してはハッキリしていない。
 なおこれはよく知られている情報だと思うが、ゲームのデザイナーHallはRomero同様に日本のコンシューマーRPGの大ファンであり、このゲームもその影響が大である。私自身はやっていないので詳しくはわからないのだが、特にこのゲームはFinal Fantasyシリーズの影響が強いらしい。


<STORY>

 主人公 Sylvester "Sly" Boots はAnachronoxに住む、借金を抱えて後が無い状況に追い込まれたしがない私立探偵。そんな彼に持ち込まれた仕事は偏屈な老人Grumposのボディーガード。他に選択肢もなく引き受けるしかなかった彼だったが、これをキッカケに宇宙存続の危機ともなる大事件に巻き込まれて行くことになる。
 Anachronoxとは原義を「poison from a previous time」とするもので、過去に栄華を誇った或る宇宙人の中心都市であり文字通り銀河の中心地帯に位置する。そしてその宇宙人が謎の疫病に罹って死滅した後は廃墟として残された場所である。

 ストーリーとしてはその過去に栄えた宇宙人が残した銀河テレポートシステムを使用して宇宙を飛び回り、様々な謎を解いて宇宙を壊滅の危機から救わなければならないというものらしい。その目的の為に一緒に行動する仲間?が全部で7人いるようだが、どの様に関わってくるのかは不明。


<構成>

 このデモをやる前は宣伝文句のAdventure-RPGという意味がいまいちよくわからなかったのだが、どうもこのデモからすると両者を混ぜた構成になっているという事のようだ。デモでは2つのMAPが遊べるのだが、最初のは完全なPoint-Click式のADVであってRPG的要素は無い。住人から情報を得たりして謎解きをして先に進むというスタイル。もう一つは完全なRPGスタイルで、敵との戦闘で先に進んで行くというもの。つまり進行によってこの2タイプのゲームスタイルが混ぜてあるということらしい?

 もう一つ大きな特徴としてこのゲーム全編を貫く重要な要素が「ユーモア」である。大笑いするような”ギャグ”とまでは行かないが、全編に渡って笑いの要素が詰め込まれているとのことで、デモにおいてもその片鱗は覗える。特に最初の街の市長はおかしい(^^;) それと先の7人の仲間というのも別に仲が良いとかそういう関係では無い様だ。ADVでは定番のユーモア系も、RPGではこの系統は非常に少なく一つの売りと言えるだろう。



<GAMEPLAY>

 まずはADVの面から。こちらは最近子供達が何物かに攫われてしまうという事件が続発している町に辿り着いたBootsが、その謎を解き明かす為に市長に協力して捜査をするというもの。街自体狭いし謎解きの至るまでの経過が複雑という訳でもないので、比較的簡素な造りである。クリック出来る場所を指すとカーソルが変わったりする訳ではないので大変だが、どうもクリック出来るのは一部のドアだけの様でADVとしては非常に単純な構成。住民と会話をしたり出来るが数人を除いては謎解きとは関係が無い変な事をしゃっべたりするだけで、これはそのユーモアを楽しむという味付けである。こちらの面に関してはこれだけでは製品版ゲーム全体としてどうなのかは知る由も無く評価は難しいが、このデモ面自体は証拠集めに写真を撮ってくるという面白い要素もありそこそこ楽しめる。

 次のRPG面の方がおそらくは重要視されているゲームの中心部分だと思うのだが、こちらはターン制(一部リアルタイム?)の切り替え式となっている。こちらのMAPではメンバーは3人に増えてパーティーでの戦闘となる。戦闘が始まると各人の動作インジケーターが動き出し(顔の回りの円)これが緑になると行動を入力出来る(当然この回復動作はキャラやそのレベルによって速くなったり遅くなったりする)。動作には[攻撃・移動・アイテム・Mystech・スペシャル]とあり、それぞれ選択すると更に細かい指定が出て来たりする構成。この内Mystechというのはいわゆる魔法のような特殊能力の事で、アイテムでは回復剤を使用したりとか出来る。
 戦闘中はカメラがダイナミックに動くアクション要素重視の造りで、動作が可能になったキャラを選択して攻撃ならば一覧から攻撃する敵を選択、アイテムならば使う相手を選択したりすると、動作の優先順位に従って(敵も含めて次の動作が出来るようになった順番から)順次自動的に実行されて行く。戦闘はどちらかが全滅するまで行われ、逃げたりとかの選択肢は用意されていないようだ(ゲーム自体もPause以外は掛けられなくなる=終われない)。武器やMystechアイテムの装備は事前に済ませておかないと戦闘中の変更は効かない模様。またキャラのパラメーターは非常に細かいのだが、ちょっとどれがどんなものかわからない要素も多い。それと製品版ではキャラを選択して行動するようだが、最大で何人で戦えるのかは不明である。



 大きな特徴として戦闘中の画面は非常に派手、というかド派手な感じ。各人の攻撃や魔法全てに対しておそらくは個別でアニメーション・シークエンスが用意されているようで、発動すると派手なアクション&派手な画面効果と共にそれらが画面上で行われる。それらは本当に細かくて事前の準備動作から始まって命中時の派手なアニメーション、更には終わった後の戻る動作まで用意されていたりして、それらが目まぐるしいカメラアングルの変更と共に実行されて行く。以前にやっているのを友人宅で見たことがあるのだが、一言で言うとFF7にソックリである(というかほとんど同じに見える)。
 この戦闘シーン自体は綺麗で派手な特殊効果グラフィックもあって非常に楽しめた。ただ問題はこれだけのサイズならば良いのだが、製品版ではどうなのだろうかという事である。と言うのはこのアニメーションは各動作ごとにかなり時間が長いので、最初の数回は見ていて面白いのだがそれ以上になると同じ物を見せられるので煩わしくなってくるからだ。敵の攻撃もこういったアニメーション入りなので、かなり戦闘が長めになってしまうきらいがあり、製品版で戦闘シーンが多いとなると面倒だという事に成りかねない(動作のキャンセルは出来ないようだ)。おそらくは各キャラの全ての攻撃(魔法)パターン毎にこれが用意されているのだと思うが、その数に比べて戦闘が多いとなるとちょっと飽きるかなという感じがする。パターンが何百とあればレベルが上がるごとに新しいのが見れるから面白いと思うのだが。この戦闘が長引くとちょっとアニメーションを一々見ているのが面倒になるという点を除けば、これはなかなか良い出来ではないだろうか(FF7の真似でオリジナリティーが薄いとしても)。後はカメラが大きくスイングする様に激しく動くので、これは好みが分かれるかも。

 最後に各人の特殊能力について書いておこう。このゲームにはWorld Skillと言われる特殊能力が用意されており、各人が一つづつそれを所持している。主人公のBootsは鍵開け、ロボットのPALはハッキングという風に。これらは能力を使う場面になるとミニゲームが起動するようになっており、このゲームを成功させるとうまくいったという判定になる。例えばBootsならば鍵のナンバーを時間内に合わせるゲームで、検索処理を行った時のメーターのズレから正解の数値を探り出すというもので、PALならばパイプゲームで用意された数種類の物を置いていき回路をつなげるという具合。難易度はその重要度によって違うようだが、これはレベルが上がると制限時間が延びたりするようである。このミニゲームの評価は何とも言えないが、大して難しくは無いのでそれほど気にはならないか。あまりにも多く出てくるようだと面倒な気がするが。後は3人以外の他のキャラのも見ないと判断は出来ない。




<操作性>

 ADVモード(移動)の場合動作は非常シンプルで操作キーもほとんど無い。常に背後からの視点なので移動に戸惑うことも無いし、壁に近づくと透明化するので見難いこともない。またマウスでカメラの視点移動が出来るので辺りを見回すのも簡単だ。カメラもデフォルトの高さや位置を細かく調整可能と非常に親切に出来ている。会話に関してはそのキャラをクリックするとカメラが動いて話が始まり、終わると元の視点に戻る(元に戻らない場合はまだ話の続きがあるということ)。基本的には聞くのみだが、ある程度は答えをこちら側で選択肢から選ぶという事もある様だ。操作キャラクタの切り替えはワンキーで可能で、後のキャラは自動的に付いて来る。
 
 RPGモードでは最初慣れない面もあって戸惑ったが、ちょっとやれば凡そはわかるという範囲か。ただ敵の指定がカメラの位置関係から分かりにくい事も多いし、どういう効果なのかがわからない物もあった。これに関してはゲームが悪いというのでは無くて、それに関する説明が無いことが問題だ。
 デモではデジタル秘書?であるFatima(Bootsの秘書であったがある事件で死亡。それをBootsがデジタルデータとして保存してある人工知能の様な存在)が操作の解説をしてくれるのだが、RPG部分に関しては詳しい説明が無い。これはゲーム中でやらなくてもマニュアルとして用意してくれれば問題無いのだが、このデモにはReadmeすら添付されておらずその面では不親切でマイナス評価だ。ということで各キャラのパラメータ等は不明な点も多い。

 Saveに関してはNormalだと指定ポイントのみとあるのだが、設定をAnywhereにするとどこでも出来るようなので便利。現在のクエストの進行状況も一覧でいつでも見れる(F1)のでわかりやすい。


<GRAPHIC>

 改造したQ2エンジンを使用。当然改造したとは言っても古い物なのでそれほど綺麗とは言えない。キャラの造形も頑張っているとは思うが最新のエンジンに比べるとゴツゴツしている感じだ。ただし先に書いた様にエフェクト系処理は非常に美しく見る価値あり。

 解像度は変わっていてHiRes(1280*960)とLoRes(640*480)の選択のみ。どうもHiResは単純にLoResを倍化した物の様で、ジャギーは確かに無くなるがテクスチャ系は大して変化が無くスクリーンショットもかなり荒れている様に見える。なおHiResでも特に重さは感じなかった。

  フルサイズ                     


<SOUND>

 ムービーシーンにはセリフが入るのだがゲーム画面ではテキスト表示のみで、これは製品版でもそうなのかデモの容量節約なのか未確認。製品版には2時間以上のムービーシーンがあるそうなので、それを考えると容量的にカットされているような気がする。

 3DサウンドはEAXとA3Dに対応しておりEAXで聞く限りはかなりポジショニングは優秀なクラスではないだろうか。音質もなかなか良いという印象。戦闘時の効果音は画像に比べるとそれほど派手さは無いという感じだ。BGMもあるがちょっとゲームの印象と合っていないような気がした。



<総評>

 このゲームは確かに大作として騒がれてはいたのだが、そのゲームの内容が今一つ明確では無くてそれほどマークしていた存在では無かった。ゲームがリリースされて評判を聞いてからで良いかという風で。で、このデモをやった感じでは結構面白そうだなという印象。ちょっと検討してみようかなというくらいにはなった。長さ的に本編がどのくらいあるのか分からないが、上で書いた様に戦闘部分が冗長でダレ無ければ結構行けるかも。コンシューマーと同様のゲームスタイルとは言っても、別にマルチプラットフォームで作成しているわけでは無い=売るためにそうしている訳では無い、と思うので問題無いだろう。

 一応出始めているレビューを見ると好印象という物が多いようだ。まあDeus Ex程という評価では無いし、大刀の様には言われていないと言う事だが。特にSF的なストーリー部分が秀逸な様でストーリー重視派にはお勧めとある。そのユーモア面を含めてあの名作The Hitchhiker's Guide to the Galaxyとの相似性を指摘するものもあり、そうなると更に期待が出来そうな感じである。今後は気になる点を含めてもう少し情報収集をしてみようと思っている。



  目次