☆ ERIE ☆                              目次

  13/05/11


データ  制作:University of Utah's EAE Master Games Studio Program(Utah Game Forge)  公式サイト

 2012/10/09リリース  535MB

 ユタ大学のThe Entertainment Arts and Engineering Programからの作品。これはゲーム, 音楽, 映画といったジャンルのクリエイターを養成するシステム。その中のチームによって、恐怖に関する心理的な研究を兼ねて制作されている。1本の完成されたゲームではなく、出来る範囲で作られたプロトタイプという方が正確(インタビューでもそう表現している)。

 Desuraにてわずか二日で1万を超えるダウンロードを達成。同サイトでは投票にて高評価も受けており、フリーのホラーゲームの中では有名な作品。またYouTubeで流行しつつあるホラーゲームの実写実況動画(プレイしている自分自身をカメラで撮影した映像を再生画面の一部に取り込む方式)としても、百万再生を超える物が存在している。(ホラーゲームの常として、ネタバレによる恐怖感の減退を避ける為にプレイ前に見る事は推奨しない)。

 その人気を受けて一ヶ月後にはKickstarterにて完全版を制作する為の資金集めが開始されたが、結果的に資金は集まらずにキャンセルされている


 現時点ではダウンロード先はDesuraがメイン。Desuraとはアマチュアやインディーズ会社を主にサポートするダウンロード配信サイトで、有料作品の販売の他、Modやフリーゲームの配信も行っている。クライアントソフトを使用してダウンロードを行い、それにはアカウントが必要(無料)。単体版のミラーとしてはShacknewsが見付かった。何故かファイル名が古いがV1.0しか出ていないので同じ物のはず。

     
動作環境  制作ツールにはUDKを使用。必要動作環境はアナウンスされておらず不明。

 d3dx9_43.dllが見付からないといったdll関連エラーの際には、最新のDirectXをインストールする。

 解像度は固定でメニューからは変更出来ない。変更するには \Desura\Common\erie\UDKGame\Config の中の
UDKEngine.iniを開いて、[SystemSettings]の中の以下の項を変更する。ただし変更した際に起動するかどうか保証は無い。Alt+Enterでウィンドウモードでも動作可。

ResX=1280
ResY=720


 グラフィックス系の設定が一切無い為に、低スペックのPCでは相当重くなる件が報告されている。

 レンダリングテスト用の操作がそのまま残されており、例えばFキー押下でレンダリングを停止する(再度押下で復帰)。ファンクションキーにもいろいろとアサインされており、ノーマルに戻すにはF3押下。

BASICS  舞台は1966年。エリー湖に面する原子力発電所にてメルトダウンが発生。また近隣の住民が謎の失踪を遂げるという事件が起きた。失踪した住民を探す為に赤十字から派遣された主人公のOliver Victorだったが、秘密研究を行っていた研究所内に閉じ込められてしまう。そこからミュータントの追跡を逃れて脱出しないとならない。


 UDKだから出来ないはずはないのだが、非常に原始的な作りとなっており、一切の設定オプションがゲーム内に用意されていない。操作説明は序盤に表示されるが見逃したり忘れたらもう参照出来ないし、マウス感度や操作キーを変える事も不可能である。どうしても感度や操作キーを変えたいなら、上記の解像度変更と同じく設定フォルダにアクセスして、ここでは UDKInput.ini の中身を直接書き換えるしかない。(マウス感度はマウスのユーティリティー側から変えるという手もある)。

・一人称固定
・カーソル表示は無し
・アクセス可能なオブジェクトやアイテムはハイライト表示される
・スプリント可能
・インベントリー表示画面から状況を確認可能



GAMEPLAY  初回でのプレイ時間は40分程度。解ってしまえば短時間でクリア可能だしリプレイ性も少ないが、本筋とは関連のない収集アイテムとして黒猫の死骸が用意されており、シークレット的な扱いのこれをコンプリートするには時間が掛かりそう。


 メインとなっているのは迷路状のエリア内を追って来る敵から逃げるという要素(メンバーの一人が単独で制作していたForever Huntedというゲームの同システムを拡張したのがこのErie)。大きく分けて3つのパートから構成されており、イントロパートの後に出現した敵に追われる追跡パート、そこから先に進んだ後にラストパートとなる。ラストパートにも敵は出てくるがイベント的な物となり、最後の方は何も起こらずに進んで行くだけである。よって実質ゲームの本体となるのは第二の敵に追跡されるパートと言ってよい。

 プレイヤーを追って来る敵はそのエリア内での作業(アイテム集め)を終えるまでは消える事は無く、常にプレイヤーを追い回す設定にされている。広くて入り組んだ通路内から必要なアイテムを見付け出し、これを使ってドアを開いて次のエリアに進めばOK。プレイヤーは武器を持っていないが代わりにスプレーを所持しており、これで印を付けて迷わない為のガイドとして使う事が出来るようになっている。掴まってしまうとゲームオーバーとなり、チェックポイントからやり直しだが、それまでに収集していたアイテム類は持ったままでのリスタートになる。


 ではその追跡されるホラーの出来具合はどうかとなると、率直に言って特に出来が良いという印象では無い。最初の登場シーンにはインパクトがあるのは確かだが、本当にそこ一発だけという感は拭えない。まず敵の造形が怖さを感じさせないので、繰り返し追われている内に恐怖感は無くなってしまう。次に敵から逃げる方法が簡単且つ安全を確保出来るやり方なので、それが解ってしまえば敵をまいて自由に探索出来る余地が増す。そして大きな問題が敵の移動パス判定で、部屋の中などに誘導すると中のオブジェクトに引っ掛かってそのまま動かなくなってしまう事がある。複数回発生したので偶発的なバグとは思えず、引っ掛けてしまえば後は楽なので恐怖感はゼロ。


 アクセス可能なドキュメント類のインターフェースに問題あり。Useキーで参照出来るのだが、短時間で解除されてしまうので全部読もうと思ったら繰り返しUseしないとならない。ESCメニューからでも集めたドキュメントを読めるのだが、こちらでは表示が小さ過ぎて読む事が出来ない。結果的に背景設定などは良く解らないままでのプレイとなってしまった。


 グラフィックスの出来はフリーゲームとしては高い方。マップ内に用意されているオブジェクト類も多く、多人数チームでの制作という利点が出ている。サウンドの方も恐怖感を生み出すのに有効に働いており、こちらもクオリティは上々である。

評  価  非常に評価が高いゲームという期待が大き過ぎたのか、私としては平凡なレベルの作品という感想。最初の敵との遭遇シーン以外は特に褒められる箇所が見当たらない。敵に追われるという要素の一点勝負といった感じであり、有名になった日本産のフリーゲーム青鬼の様に、追われる怖さ以外に他のパズルなりストーリーなりも充実させるべきだと思える。時間的な余裕の無さからこの程度のプロトタイプしか作れなかったのかもしれないが、評価としてはどうしてもそうなってしまう。

 無料だし全般的な評価は高いので、ホラーゲームのファンならば試す価値はあると最後に書いておく。

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