☆ MORI ☆



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15/05/08    制作: xfunnyname                   公式サイト      Indie DB
データ  ドイツのBremen University of Applied Sciences(ブレーメン専門大学)の学生2人による作品。学士論文の研究テーマ用に制作されたゲームである。そのテーマとは、「ゲーム中のプレイヤーの様々な精神的な反応をリアルタイムでゲーム内の状態変化に反映させる事で、より没入感の高いゲームを生み出すにはどうしたら良いのか?」という研究になる。

 具体的にはBCI(BrainComputer Interface) - 脳波検知装置を使ってプレイヤーの脳波を読み取るというやり方で、実際に使用している装置はOCZ Technology社製のNeural Impulse Actuator(NIA)となり、これを受け手側のソフトとしてUnreal Engine(UDK)のKismet(プログラミングの知識無しで使えるスクリプトよる制御機能)を利用しゲームに反映させている。このNIAに関しては発表当時に「面白デバイス」的なニュース記事として読まれた方も多いと思うのだが、純粋に脳波を読み取る他に、目の動きや歯の噛み合わせなど顔の非常に小さな動きで実現出来る脳波の変化を捉えて、手を使う操作デバイス無しでゲーム操作を可能にするという入力デバイスである。例えば歯の噛み合わせにより生じる脳波変化をモニターを参照しながら調整して、オンとオフを意識的に切り替えられる様に設定しておき、それを銃を撃つといったトリガーに用いて操作したりする。検索すれば今でも幾つか動画付きのまとめ記事(インサイド)を見る事が出来る。

 なおNIAを制作したOCZ Technologyは既に無く、装置の開発は中断されている。だが別会社であるBCInetにその権利は受け継がれており、その後継品を制作しようという意図はあるようだ。それとこのゲームの制作者の一人は現在でも活動を続けていて、xfunnynameにて他のフリーゲームも公開している。


 2013/08/01 リリース  368MB

 アップデートは行われておらず、この最初のバージョンしか存在しない。更新の予定も無いように思われる。



動作環境  Windows版のみ。具体的な必要環境は公開されていない。「普段ゲームをしているPCなら、よっぽど低い性能で無い限り問題は無いはずだ」とは書かれている。UDKで制作されておりインストールが必要である。


 デフォルトではウインドウ表示。フルスクリーンにするならALT + ENTERで切り替えるしか無い。

 私の環境での問題点として、ヒントメッセージが表示される際に複数行の物ではその切り替え速度がとても速くて読み辛いというのに遭った。表示場所に再度近付けば繰り返し表示されるので大きな問題では無いのだが、二人ほど他者のプレイ動画で確認してみたところそこまで速くは無かった為、CPU(Intel Core i5)との相性問題か何かとも考えられる。


BASICS  ハンググライダーで飛んでいた主人公が天候の悪化により不時着。彼は不思議な雰囲気の森の中に迷い込むが、そこは何らかの邪悪な存在が支配している場所であったというストーリー。一種のホラー物だが、最大の特徴は上記の様に脳波検知装置をゲームに利用しているという点。なおNIA(BCI)装置無しでもプレイ&クリアは可能である。

 一つ目はプレイヤーの心理状態がゲーム内の状況に反映されるシステムで、具体的には心理状態が落ち着かない状態だとゲームが難しくなり、平静を保っていれば簡単(普通)になるという風に設定されている。もう一つはそれとは逆に「意図的にある種の心理状態を作り出さないとクリア出来ない」という場所も用意されている。詳細は後述。


・操作キー設定不可, マウス感度調整不可, 明るさ調整不可, サウンドボリューム調整不可
・ポーズは掛けられる。プレイ中の設定画面呼び出しは不可。
・グラフィックス設定は無し(解像度のみ)

・難易度設定無し
・セーブはチェックポイント方式(何所でセーブされたのかはハッキリしない)。ただし一度終了すると最初から。
・字幕有り

*一人称視点固定
*照準あり
*スプリントは無し。ジャンプ, 屈み(CTRL)は可能。
*RMBでオブジェクトをピックアップ。LMBでそれを投げられる。


 NIA(BCI)を持っていない場合には、特定のキーを押す事である種の心理状態に移行するという風に出来る。実は最初この操作が解らなくて進めなくなってしまい、プレイ動画を参考にしようとしたらその人も同じ場所で詰まって中断していた。Readmeも同梱されておらず、探したところ公式サイト内の説明文や、Indie DBの(メイン解説頁では無く)ダウンロード頁の説明文にて[続きを見る]をクリックすると出て来る先に書いてあった。非常に特殊な操作であり、ゲーム内にチュートリアルを表示するか解説テキストを添付するべきだと思う。(NIAが無ければこの操作が解らない限りは進めなくなるので)。操作可能なのは以下の3種のキー。

X: 不安状態を増加させる
C: 安定状態に移行する
Y: ショック状態を発生させる

GAMEPLAY  NIAは使用せずにプレイしての感想である。(と言うかこれはどの程度の人が所持している物なのだろうか?)。

 ゲームの内容は探索によるアイテム探しと謎解き(パズル)で構成されており、その障害となるのはプレイヤーを襲うモンスター的な生物の他、木々の枝や蔓なども攻撃を仕掛けてくる。これ等を操る邪悪の本体を倒して脱出するのが目的。武器による戦闘要素は存在せず、攻撃はパズルの一部(仕掛けの作動等)として行われるのみ。

 プレイヤーのヘルスは“心”として表示され、これは時間を置けば回復する方式。この自動回復方式に因り敵の攻撃はそれ程の脅威では無く、逃げたり安全な場所に留まる事で大抵は切り抜けられる。謎解きの方も祭壇がヒントをくれるのでそれ程難しくないのだが、先に書いた特殊な操作方法を知らないとクリアは出来ない場所も在る。


 プレイヤー心理状態のゲームに対する影響だが、NIAからの反応がストレス状態だと判定されると、その度合いに応じて画面に歪んだようなエフェクトが掛かり、トンネルビジョン(視野が遠く離れて狭まる様な効果)が発生する。それと移動速度は速くなるが、これだとある意味操作し辛くなるという問題も発生する。更に木々の蔓などは、不安定状態になるほど攻撃的になって襲って来るという性質を持つ。ただし心の回復速度には影響しない様である。精神が落ち着くと徐々に元通り視界が回復して行くというシステム。こちらについてはNIAを使用しない場合、精神変化をゲーム側が読み取れない為に、常に最も易しい状態でのプレイとなってしまう。よって簡単だと感じるなら、Xキーを長時間押下しあえて不安状態を強くしてプレイするという風にしても良い。

 Yキーによるショック状態発生の方はネタバレにもなるので具体的には書かないが、こちらもNIA無しなら実際に自分の精神状態をコントロールする必要は無く、キーの操作でその様な状態を作り出せば良いので“それ自体”は簡単である。


 ホラーゲームとされているが、ショッキング系の突然ビックリさせる手法は使われておらず、怖いという感じのゲームでは無い。良い点は森の中の木々がメインの敵というユニークさと、全体的な雰囲気が不気味且つ幻想的で美しいという所になる。体験型のゲームとでも言おうか、装置無しだとより簡単にクリア出来てしまうが(30分程度)、独特な印象を持ったゲームとして評価したい。


 グラフィックスは雰囲気表現では良だが、モンスターの造形などは粗っぽくて宜しくない。対してBGMを含めたサウンドの方は良い出来となっている。なお3Dサウンドも使われている様だが、定位がちゃんとしている箇所とおかしい箇所が混在している。

評  価  NIAを所持している人はほぼ居ないだろうから、それを考慮して「NIA無しでの感想」になってしまうが、やはり装置無しでは簡単になる為に面白味が薄れるというのは否定出来ない。ゲームのシステムが研究用に装置を利用してプレイするという点を最重要に考えられている為に、無しでのプレイではマイナス面も生じてしまっている。

 その意味で装置無しでのプレイ用に調整されたバージョンも別に有った方が理想的であったと言えよう。感情の変化をプレイヤーが行った動作等に応じて数値的に反映させるとか、やり方はいろいろと考えられる。作者は他のゲーム制作を続けているようだし、今度はNIA無しのゲームとしてデザインされたリメイクバージョンを制作したりしても面白いと思う。

 ホラーとしては怖いゲームを期待すると外れるが、不気味な雰囲気を重視したゲームが好きならお勧めの作品。

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GAMEPLAY  ヒントと解答。ネタバレの為に以下反転。


*岩場を跳んで渡ろうとするのを遮るモンスター
 見た目に解り辛いのだが、向かって左側の岩の壁面の緑色の部分が蔦になっており上へとよじ登れる。



*一本橋で通るのを邪魔するモンスター
 前のムービーシーンの兎がヒントで、橋の上でショック状態が発生するとその瞬間に蔓に攻撃されてしまうのでそれを利用する。

 開発側の意図としては、最初に渡る際にはショック状態を起こさないようにして渡る必要があり、反対に帰り道では意図的にショック状態を発生させる必要があるという設定である。



*ラスト
 ボスを倒さないとならない訳では無い模様(エンディング変化無し)。脱出地点に到達してしまえばゴールのマップへと飛ばされる。ボスを倒すにはマッシュルームのリスポーンを待って、それを全ての祭壇へとセットすれば良い。なおNIA使用時の狙いとしては、ショック状態を自ら作り出す事で地面からの攻撃タイミングをズラすという風に使う。