☆ MAERE: WHEN LIGHTS DIE ☆



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15/05/08    制作: Lucid Dreams                   公式サイト      Facebook
データ  フランスのプログラミングとアートを学ぶ為の専門工科学校であるIMAC(Image, Multimedia, Broadcasting[Audiovisual] and Communication)の生徒4人によるプロジェクト。2012/10にOculus Riftの存在を知ってから、これを使った仮想現実ゲームを制作したいと考えた所からスタートしている。ただしプレイするのにOculus Riftは必須では無く、普通のホラーゲームとしてもプレイ可能である。

 タイトルの“Maere”は、最初はフランス語かと思ったのだが該当無し。おそらくだがNightmare(悪夢)の様に mare の部分に昔は夢の意味があり、古英語ではそのaの部分を aとe の合字として書いていたので、そこを切り離して m ae re と綴っているのだと思われる。


 2013/09/29 リリース  184MB

 最終版はV2.0(Maere_v2.0_Windows)。32bit版と64bit版が在るが32bit版の方が推奨されており、このレビューでもそちらを使用している。解凍形式でインストールは必要無し。公式では寄付を募っているが、0を入れれば無料でダウンロードが可能である。有名なゲームなのでミラーも見付け易いが、何回かバージョンアップしているので旧版である可能性もあるため注意。


動作環境  Windows, Mac, Linux対応。必要環境は明らかにされていない。Unity3Dでの制作。

 コントローラーでの操作に対応している。

BASICS  主人公は仮想現実マシンによる実験のテスター。美しい理想郷を生み出してのテストだったはずがトラブルが発生し、奇妙な構造の屋敷内に出現した上に研究者からの通信も不調に陥ってしまう。元の世界に正常に帰る為には、その世界内に存在する別の実験用チェアーを見付け出さないとならない。

 Oculus Riftに対応しており、またそれを活かしたゲームにする事を第一目標として制作されている。併せてそれとは別にパルスセンサーにも対応しており、装着されていれば自動的に設定画面上で認識される。こちらの機能については、「プレイヤーの心拍数に応じてゲーム内の反応をリアルタイムに変更」, 「現在のプレイヤーの心拍数をサウンドとして再現」, 等が述べられているが、実際にどこまでが現行バージョンにて実現されているのかは不明である。


・マウス感度調整可。 操作キー設定不可, , 明るさ調整不可, サウンドボリューム調整不可。
・ポーズは掛けられるが、プレイ中の設定画面呼び出しは不可
・グラフィックスはUnity標準の6段階変更のみ

・難易度設定無し
・セーブ無し

 字幕は有り。ただしフランス語の台詞には未対応で、また壁に手書きで描かれている文章もフランス語なので、両者が解らない場合にはストーリーや状況の理解においては不利となる。


*一人称視点固定
*インベントリー管理の要素は無し
*スプリントやジャンプは出来ない

GAMEPLAY  先に断っておくと、私は現物を持っていないのでOculus Riftは未使用でのレビューである。

 ゲームの構成は「暴走した仮想現実世界」という設定を除けば一般的な物で、マップ内を探索してゴール地点に辿り着けばクリア。謎解き要素は無しで、アイテム類を回収したりも不要となる。敵はモンスターで襲われてしまうとゲームオーバー。こちら側には武器を含めての攻撃手段は無く、敵からは逃げるだけしか出来ない。

 内部構造は妙に入り組んでいてゴールを見付けるのは簡単では無いが、マップ構造は固定なのでリトライしていればクリア自体は特に難しくない(私自身は30分程度だった)。


 ホラーとしての演出では、まず幾つかマップ内にイベント的な場所が存在しているのだが、それ等が何を意味しているのか解説されない、若しくは理解の助けとなる台詞や文章がフランス語なので(個人的には)理解出来ないという問題あり。理解出来る方が怖いという訳では無く、意味が解らない故に怖いというケースも多々在るが、文章や台詞系は「それで説明している」という可能性もあるので、英語の字幕が欲しいとは感じられた。

 フラッシュライトを常時点けているので、暗さによる怖さという面は希薄。長い廊下以外に幾つか存在する特別な部屋類も、雰囲気的に不気味という程の物は無かったため、こちらも怖さには繋がっていない。

 モンスターの造形そのものや追跡方法には特に怖さは無し。このゲームではモンスターが出現する際に特定の事象が発生する様になっており、それが解ると以降は「それ」が発生したらモンスターがこれから出現して襲って来るとプレイヤーに理解出来てしまう。つまりモンスターが不意討ちで突然目の前に登場したりは起こらない。その登場前のイベントの間に素早く逃げ出せばOKというシステムで、敵の追跡速度もプレイヤーより遅いので解ってしまえば怖くない。もしすぐに逃げ出さなかった場合には、徐々に視界が歪んだり周囲が暗くなる為に逃げるのが難しくなる。ただし敵の出し方に演出が付いている点は一つの手法として面白いと感じられたし、突然出してビックリさせるという在り来たりの方法では無い点も工夫として評価出来る

 それと早々に逃げるのが得策という観点から、モンスターの姿を見る事はほとんど無い。逃げ遅れて死亡する際には遭遇するが、何しろ敵の姿自体が暗め&出現時に周囲が暗くなるため、ハッキリとどういう姿をしているのか自体が良く解らないとなっている。そして実際にSSでじっくりと確認してみても怖いという感じでは無い。


 おそらくゲーム中に一番驚かされるのは序盤に起きるあるイベントなのだが、これは特定のタイミングや場所にて発生する方式では無いので、その遭遇タイミングによって驚き度合いは大きく異なるだろう。いわゆる“Jump scare”として椅子から叫びながら飛び上がって驚く可能性も有り。上手く決まれば心臓に悪いイベントなのだが、単なる奇妙なイベントとして終わってしまう可能性もある。それならそういうタイミングを計って起こせば良いのでは?とも言えるが、どうもこれでそこまで驚かせようという意図は無かった様にも思われ、偶然そういう風になってしまったと推測している。


 グラフィックスは並で特に優れているとは感じられず。特に上記のモンスターの様にモデリングは粗くて弱点となっている。この点はOculus Riftでの描写を重点に置いているのが関係しているのかも。サウンドではまず3Dサウンドには未対応。BGMの類は無く効果音のみ。効果音の方の質は悪くないが、ホラー物としてはサウンドにもう少し凝って欲しいと思える。

評  価  ホラーゲームとしては標準的な出来という感想で、特別に優れているという点は見当たらなかったが、雑で未完成という風でも無く水準レベルはクリアしている。ポイントは序盤のビックリイベントが上手く決まった(決められた)かどうかで、私も驚かされたのでその点をプラスしているというのはある。

 なおこれはやはりOculus Riftでこそ楽しめるタイトルとも言えるし、実際にリリース当時は話題にもなった様であるが、現在のように対応ゲームが増えて来ている状況では、現在それ等と比較としてどの程度のクオリティなのかというのは何とも判らない。


 このゲームに限った話ではないが、Oculus Riftとの絡みには難しいものがある。無しだと詰まらないなら、無しでプレイした人から低評価を受けない為にハッキリと必須と謳う方が良いが、ゲーマー全体での所持者割合を考えた場合、必須とするには現状ではあまりにもその数が少な過ぎるという問題が在る。より広範囲にプレイして貰うには「対応」に留めておくべきだし実際にほぼ全てがそうなっているが、そうなると今度は特徴を最大限に活かせずに終わる危険を孕んでいる。

 Oculus Rift自体も登場時ほどの盛大な勢いは無く、PS4が専用デバイス路線になったり、SteamVRの様なライバルの出現もある。自身にも使用時の酔い, 高性能マシンが必要, コントローラー(K/B)との連動等いろいろと弱点が在る。VRジャンルの絶対的なデバイスとして将来の広範囲採用が保証されているレベルならば良いのだが、そうでは無い為に作り手側でもこれから製作するゲームをOculus Rift専用と位置付けて取り掛かるにはリスクもあるといった具合。


 話を戻すと、このゲームは評判が良かったのでプレイしてみたのだが、その評判はOculus Riftを使用したプレイヤーからの物が大きかった様だという結論になる。選び手側としても今後はOculus Rift対応を強くアピールしているゲームほど、それ無しでのプレイがどうなのかを注意する必要があると言えそうだ。

 <参考> 下に解る範囲でヒントや解説を設けている

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ヒ ン ト  ネタバレ防止の為に反転。


*壁文字の翻訳(一部)

SALLE A MANGER = Dining Hall
PAS PAR LA, AURELIE N'EST PAS REVENUE = Not by, Aurelie hasn't returned


*モンスター関連
 壁文字やボイスにも出て来るが Le Mange Lumiere という名称で、英語だと The Light Eater となるそうだ。逃げるには電気が順に消えていく出現前イベント発生時に、早目に反対側へと逃げれば良い。なお逃げ場が無い場所の場合、逆に突っ込んで行って横をすり抜ける事が可能だそうである(未検証)。


*序盤の例のアレの意味は?
 序盤に突然出現する女の子だが、敵では無くプレイヤーの味方である。敵の出現を警告してくれたりする。その意味合いや設定などは良く解らない。ただ上記の壁文字中のAurelieという名称がこの女の子ではないかという説在り。その場合にはモンスターに殺されてしまい、霊魂となってプレイヤーに警告して助けてくれている存在とも受け取れる。


*ベッドエリアのXXX
 このエリアの2部屋を繋ぐ部分に帽子が落ちている。以前のバージョンではそこに帽子を被っている女の子が存在しており、現行バージョンでは歌は聞こえるがその姿は無い。調べるとこれはアドベンチャーゲームの「The Walking Dead」に登場するキャラクターである女の子Clementineだそうで、パロディーという意味だと推測している。ただこちらのゲームの方を未プレイなので、単なるファンとして出しているのか、何かゲームに関連した内容としてのパロディーなのかは不明である。現行バージョンで姿が消えたのは権利上の問題からなのかどうかも解らない。(未プレイなので調べてネタバレ事項を知ってしまうのも嫌だなという事情も在り詳しく調べてはいない)。