☆ SCP - CONTAINMENT BREACH ☆               目次

  13/12/14


データ  制作: Joonas Rikkonen          公式サイト      Indie DB

 2012/04リリース  102MB

 頻繁に更新が行われており、現在の最新版はv0.8.2(このレビューも同バージョンを使用)。バージョンからも解るようにまだβ版の段階である。大変有名な作品なので、公式以外でもミラーで落とせるサイトは多い方。解説&攻略を行っているサイトも多い。


 Joonas Rikkonen ("Regalis")氏による個人プロジェクト。人気を得てからは制作に協力する有志からの素材提供も受けている。

 The SCP Foundation(SCP財団)とは架空の秘密組織で、超常現象や未知の生物などの確保や研究を極秘に続けており、人類に対する脅威であるならばそれの排除や制御方法を探っている...という設定。あたかもこのSCPが実在しているかの様な設定で有志が作り続けているのが上記サイトであり、各種の怪異報告がナンバリングされて管理されている。言ってみれば都市伝説や怪異な作り話のまとめサイトで、日本語化のプロジェクトもあり(日本語化wiki)。

 このゲームはその中の幾つかのレポートを使用して構成された物であり、使用しているナンバーの怪異を考えたのは作者ではない。特に著作権が存在している訳ではないので素材として使っているだけである。“Containment Breach”とは「封じ込めの決壊」程度の意味。

動作環境  Windows版のみ。Blitz3Dエンジンを使用している。必要環境の記載は見当たらないが、非常に古いエンジンを使っている為にかなり古いマシンでも動かせる可能性はある。

 現時点ではまだトラブルが多く、システム的な障害とバグによる進行不可が幾つも挙げられている。あまりにも有名になってしまった弊害として、既にこれが完成バージョンでそれをパッチで修正している段階と誤解される事もあり、そこから「あまりにも不安定orバグだらけ」の作品と批判されたりもしているが、作者は「まだベータなのを理解して欲しい」と要望している状況である。


 システム面でのトラブルとして多いのは“Memory access violation”で落ちるという件で、この問題には起動時に発生してしまうケースと、プレイ中にそれで落ちてしまうケースがあり、Readmeには以下の3点が対処方法として記載されている。

・管理者権限で起動(Vista以降)
・ビデオカードのドライバを最新に更新
・解像度の変更とフルスクリーンでのプレイ

 しかし上記の対処を行っても治らないという人も多く、別の多数の対処方法が掲示板にもまとめられている。私自身の環境でもMAVは頻発し、掲示板の対処等もやってみたがダメ。検索してみると日本語環境下ではCドライブ直下に解凍されたフォルダを置かないと正常動作しないという情報も見付かったがこれも不可。だが(情報の出所は不明だが)日本語環境では問題ありというならと思い、AppLocaleを使って言語をEnglishにしてやると安定して動く様になった(解凍フォルダは別ドライブでOK)。なおどうやっても現象が頻発して治らない方は、過去のバージョンを試してみるという手もある。


 次にセーブデータを読み込む際に45%で止まってしまうというエラーも頻発した(自動的に最小化される)。こちらは4〜5回クリックしていると最小化せずに真っ黒なスクリーン画面で止まるので、そこでしばらく待っているとロードが継続されてちゃんと完了される。10回以上はこれを行ったがロードに失敗するケースは無し。しかしロードが完了するまでにかなりの時間待たされる事になるのでやはり問題なのは同じ。なお別の場所でセーブすると治ったりもするので、生成されたマップに固有の障害では無いようだ。

BASICS  主人公は死刑囚(D-9341)で、一ヶ月間SCPの研究所において危険な作業に携わるのと引き替えに、生き延びれば自由を得られるという立場にある。しかしその作業中に事故が発生して各種の研究対象が解き放たれてしまう。それ等の異形の怪異から逃げながら施設脱出を目指すというストーリー。

 内部のマップをランダムに自動生成するというのが大きな特徴。進行には手順があるので完全にランダムでは無いが、進行するブロック毎にその中の構造は変化する。

 敵となる物はSCPの登録ナンバーで管理されており、現在でもいろいろとゲーム内に追加中の段階。これは生物に限らず、何等かの超常現象(orそれを引き起こす存在)も含まれている。


*一人称視点固定
*操作キー変更可能
*マウス感度調整可能
*スプリント出来るがスタミナの概念あり(メーターは無し)
*明るさの調整機能は無い(モニタ自体やドライバから変えるしかない)
*字幕は出るが文字は小さい
*ヘルスはアイテム回復方式だがヘルスの値は表示されない

*プロファイル方式なので複数の進行を別に管理出来る
*セーブは一部のエリアを除いては自由に行える(F5)。セーブスロットは一つだけ。
*新規開始の際に導入部のシーンはチェックを外せば飛ばせる


*アイテム管理画面のスロットは10個。一杯になったらドラッグして離せば捨てられる。
*使用はダブルクリック。ガスマスクなどはこれで装着したり外したりする。
*バッテリーは対象機器にドラッグ&ドロップして使用する
*セキュリティカードは実際に持って使用する必要がある(スロット内に有るだけではダメ)
*通信器の様に数字キーを使ってチャンネルを変えたり出来る機器もある


GAMEPLAY  ゲームの内容は敵から逃げて死なないようにするというホラー要素と、施設内を探索してアイテム類を入手しながら新たなエリアをアンロックして行くというアドベンチャー要素が組み合わされている構成。

 先にホラー要素の方を説明すると、プレイヤー側には一切の攻撃方法が無いというタイプの逃走ゲーであり、メインとなる敵はSCP-173と呼ばれる異形の存在。最大の魅力はこの敵の追跡による恐怖感だと言って良いだろう。SCP-173は誰かが見ている限りは動く事が出来ない。しかし一瞬でもその視線が途切れた場合、猛スピードで長距離を瞬間移動して人間の首をへし折り殺してしまうという非常に危険な存在である。

 その理由からSCP-173が封じ込められている区画での作業は常に3人以上の人間で行われる。一人が作業役で、他の二人がSCP-173から視線を離さない監視役。何故監視役が二人居るのかというと、まばたきをした瞬間にでもSCP-173は移動可能だからである。つまり二人で監視する事により(100%ではないが)まばたきによる一瞬のスキを無くすようにしている。

 このまばたきをシステムとして採り入れているのが面白い所で、HUDにはまばたきのメーターが表示されており、このメーターがゼロになったら強制的にまばたきをしてしまう様になっている。だがスペースバーにて強制まばたきを行いメーターをリセットすることが出来るので、これを上手く使いながらSCP-173に対処しないとならない。具体的にはSCP-173の射的距離内に自分が入ってしまった場合、視線を外さないようにしながら奴の視界外となるエリアまで逃げないとならないが、まばたきのメーターが少なくて隠れるのに間に合わないケースでは助かる方法が無い。そこで安全なタイミングでまばたきを行う事で、メーターの減少している状態を極力少なくするように心掛ける必要がある。なおまばたきメーターの時間を長くする事が出来るアイテムなども用意されている。


 SCP-173は直線的にしか移動出来ない, 移動距離には限界がある(どんな距離でも一瞬で詰められる訳ではない), 見ている状態ならば触れるくらいに近寄っても問題無い, 近くに居る時は臼を挽いている様なゴリゴリという音がする、といった特性があるのでそれを考慮して逃げる必要がある。視界から外れるエリアに逃げ素早くまばたきしてリセット。ドアの有る場所まで来たら目を逸らさずに後退りしながらドアまで辿り着き → 後ろ手にドアスイッチを押して開き → ドアを後ろ向きに通過したらスイッチを押して閉めて視界から脱出する、といった感じにする。ただしSCP-173はダクト部分を通れるという設定なので、封鎖すれば安心という事にはならない。突然上(ダクト)から降って来たりとかもあるので油断は禁物である。この瞬間移動の様にして迫られる恐怖感が一番の面白さなのだが、まばたきというシステムの関係上、どんなに上手く立ち回っていてもタイミングが悪いと詰むという面は持っている。


 まだクリア出来ていないので詳細は不明だが、今のところ他に生物タイプの敵には3体ほど遭遇している。例えばSCP-106は触れられると別次元へと飛ばされてしまい、そこから失血死する前に逃げ出さないとならなくなる。他には生物では無いタイプの危険物SCPも結構登場する。それぞれのSCPに対して逃げる&避ける方法がゲーム内にて常に明確に示される訳ではないので、対処方法は実験的にいろいろと試してみる他ない。この辺りはどれを最終的に採用するのか難易度調整と共にまだ実験的な段階の様だ。


 アドベンチャーゲーム要素の方は、まずランダム生成マップを採用しているので、その都度ルート探しを行って新規エリアや重要な部屋を見付けていかないとならない。完全ランダムでは進行制御が難しいので幾つかにブロック化されて分けられており、後半のエリアほど高いレベルのキーカードが必要という構成である。つまりキーカードを使って新しいエリアに入り、そこで次のエリアにアクセス可能なレベルのキーカードを見付けるという形で進められる。(旧バージョンでは可能だった一足飛びに高レベルにアクセス可能となる手法は現行バージョンでは不可にされている)。

 このランダムマップ構造に関しては私は否定的で、似た様なエリアが変な形で繋がっているので迷い易いし面白さにも欠ける。全体としてかなりのボリュームがあるようだし、プレイヤーが面白いと感じられるような練ったマップデザインを一つだけ作って、それをプレイさせるという方が面白くなると思えてならない。マルチエンディング故にランダム生成マップにしたいというのもあるのだろうが、その辺はSCPの出現をランダムにするとか他の要素で補えるのではないか。


 次にドキュメント類は多数存在するのだが、実際の謎解きに関連するヒントは少な目なので難易度が高い。例えばある特殊なマシン(これもSCP)があって、これを使うとアイテム類を改造可能になっている。しかしマシンには5種類の設定が用意されているので、あるアイテムがどの設定だと何になるのかは実験するしかない。組み合わせによっては重要なアイテムの改造に失敗するケースもあり、詰みにはならないようだがそこから元に戻す方法を見つけないとならないと面倒である(ゲーム内のドキュメントにてある程度の改造リストが見られたりするとかなら良いのだが)。

 或いはガス室の様に失敗して閉じ込められると出る方法が無いとか(もう進められない状況という事自体が知らされないし、また中でセーブすると詰む)、不親切である面も目に付く。詰む可能性がある場所ではオートセーブ, 複数のセーブ履歴を保存するといった機能が欲しいのだが持っていない。それとSCPに関連するアイテムやオブジェクトが存在しているのだが、ゲームのクリアに役に立つ(or必要な)物も有れば、特に関係が無い物も混じっているのでややこしい。このオブジェクトの場所で何か出来るのではないかと誤解したりが発生し、より進行を解り辛くしている。総じて謎解きパートの方はもっとスッキリさせた方が良い感じである


 最後にちょっと使用エンジンについて触れておくと、制作にはBlitz3Dの上位版となるBlitzMaxを使用している。これは高度なプログラミング言語に不慣れな人用に、BASIC言語をベースした開発環境である。BASICよりは高度で複雑なプログラムが組めて、またエンジンの性能によりかなり高速に動かす事が出来るので複雑なゲームでも制作が可能というふれ込み。ただし発売が2004年と古く、ポピュラーなUnityやUDKに比べるとグラフィックス面等劣る部分が多い。

 「なんでこんな代物を使うのか?」という質問は大変に多いそうで、上記のエラーやバグの類もエンジンが古過ぎるからでは?という批判も受けている。その採用の理由とはランダムマップ生成とまばたきのシステムをUnityやUDKで実現する方法が解らないので、それが可能であるエンジンを選んだというのが答え。よってそういった他のエンジンへの移植は将来的にも考えていないそうである。

評  価  まだベータでクリアもしていないので最終的な評価は保留するが、現段階でもホラーゲームとしては秀逸な出来栄えになっている。SCP-173に追い掛けられるのは本当に怖い。問題はエラー等にて動作が不安定な件や、進行不可能になるバグの方で、特に現段階では上に書いたセーブデータのロード障害が最大の欠点という印象。

 逃走の難易度は高目で、それを補完する為にクイックセーブが無限に可能とされているのだと考えるが、そのセーブがちゃんと読めないのでストレスが溜まり途中で止めてしまった。短時間で読み込めるのならば死にゲーとしてプレイに支障は無いが、一回に付き復旧作業をしながら数分間待たされるのでは繰り返して長時間プレイする気になれない。

 旧バージョンの方がセーブに関しては安定している様だが、一方で床透過落ちの死亡, マップ内オブジェクトの消失といった他のバグに対しては最新版の方が有効なので、どっちを選んでもバグに悩まされる事になる。いずれバージョンアップを待ってまた試してみたい。


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