☆ SLENDER: THE EIGHT PAGES ☆          目次

  13/11/20


データ  制作:Parsec Productions          公式サイト

 2012/06 リリース  63MB   最新はv0.9.7

 有名な作品なので公式サイトのリンク以外にも多数のサイトからダウンロードが可能。


 実質Mark J. Hadley氏による個人プロジェクト。最初は単なる『Slender』というタイトルだったが、途中からサブタイトルが追加されている。フリーのホラーゲームとしては大変な反響を呼んだ作品であり、影響を受けたプレイヤーによって幾つもの派生作品を生んでいる。その評判もあってか同社は2013/03に有料の製品版としてSlender: The Arrivalをリリースしている(このゲームをベースした内容的には異なる作品)。

動作環境  WindowsとMacに対応。Unity Engineを使用している。以下はPCの必要環境だがビデオカードの詳細は不明。

CPU: Pentium 4  2.0GHz
RAM: 2GB
DirectX 9.0c

BASICS  スレンダーマンとは痩せ細った腕が長くて顔の無い異形の者で、それを見続けた人間は死ぬと言われている古来からの伝説の存在である。だが実際には海外で言うところのフェイクロアの一種、つまり捏造された嘘の都市伝説である。昔映画が大ヒットしてこちらもゲーム化されたブレア・ウィッチ・プロジェクトと同類。2009年に生み出されてから多数のスレンダーマンに関するフェイク画像や寓話が作られており、知らない人には実際にそういう都市伝説が昔から在ったと誤解されるまでに至っている。詳細はGame*Sparkにスレンダーマンの関連ゲーム特集が掲載されているのでこちらを参照すると良いだろう。


 初期バージョンから多数の修正やバランス調整が行われており、バージョンによってシステムや難易度が結構異なっている。私がプレイした事があるのは最新の0.9.7だけで、このレビューもそれに基づいている。

 ゲームの基本は非常にシンプルであり、フェンスに囲まれた森林公園の様な場所の中に深夜入り込んだプレイヤーが、スレンダーマンに関連する8枚のメモを探し出して回収するというもの。しかしそこにはスレンダーマンが徘徊しており、彼に捕まったりしないようにする必要がある。

 公園内の大半は森になっているが、合計で10個の建造物やオブジェクトが目印として存在している(ランドマーク)。メモの出現場所はその中からランダムに8箇所が選ばれるシステムで、また各場所にて何所に貼られるかもランダムとなっている。

 プレイヤー側は攻撃方法を持たず、逃げるという手段しか用意されていない。スレンダーマンに接近されて捕まるか、一定以上の時間彼を見続けると発狂してしまいゲームオーバー。セーブ機能は無く、集め終わる前に失敗すればメモの場所がリセットされた状態からのやり直しである。


 (以下は非公式トレーラー)

GAMEPLAY  “非常に”という形容詞が付くレベルの高難易度ゲームであり、クリアには攻略方法の研究や長時間のやり込みが要求される(私も未クリア)。それは以下の様な要素に因る。


 公園内は暗くて視界が悪い上に、マップも無いし方向表示機能も無い(と言うかそもそもHUDを持っていない)。よってランドマーク以外の森エリアを彷徨いている状況では現在位置を掴み辛い。全体像を掴まないとクリアは困難だが、そこまで到達するのが大変になっている。

 バッテリー式のフラッシュライトを携帯しているが、しばらく休めると復旧するとか、交換用のバッテリーを入手しないとならないといったよくある形式ではなく真のリアル仕様。バッテリーが切れたらもうそれは復旧しないし、またプレイ中に点けっぱなしでいられる程の容量も持っておらず、切れてしまったら後はライト無しでプレイを続行するしかない。そして残りのバッテリー量を知る方法もない。よって出来るだけ消した状態で探索するべきなのだが、これでは周囲が見えないので探索がやり辛くなる。結果的に暗い状態でも探索が可能になる位にマップを憶えるまでやり込むべしという風になってくる。

 デフォルトでは歩きとなりこれはかなり遅い(マップの広さに比して)。Shiftキーでジョギングモードになり、これはある程度長い距離を走れるが、息が切れてしまうと回復には時間を要する(止まっていると早く回復)。またジョギング時はライトを下げるので、前が見え難くなるというデメリットが生じる。スタミナの状態を知るメーターはやはり無し。スレンダーマンに接近された時のみスプリントモードが発動して短時間に限り高速で逃げられるのだが、これを行うと最大スタミナ量が5%ずつ減少して行くというペナルティが科せられる。

 スレンダーマンを見続けるとゲームオーバーになるが、その時間は距離が遠いほど緩和される。またライトをオフにしておくほど長くなる。ライトを保たせるという観点からもなるべく消しておく方が良いのだが、消している状態では捕まり易くなるという厳しい設定。プレイヤーが視界に入れている間はスレンダーマンは動けないというシステムなので、全く見ないようにしているうちに突然傍に出現されて死亡というケースを避けるには、発狂しない程度にチラチラと見ながら逃げるというテクニックも要求される。

 スレンダーマンの追跡はページが集まるほど過酷になる。具体的には5枚目以降と7枚目以降で追跡能力が変化し、格段に難しさが増していく(逆に言えば4枚目までは慣れてくればそれ程難しくない)。具体的には霧が増して視界が悪くなるし(霧をオフにしていても視認距離は短くなる)、スレンダーマンもスピードアップし、7枚目以降ではテレポートして追って来たりと瞬殺の危険性が増す。


 現在ではやり込みによる攻略ページが多数提供されているのでその分楽ではある。例えば全体マップなどは特に便利。一方でゲーム自体のバランス調整では難しくなっている様なので(ライトのバッテリーが減少等)、ヒント無しで挑戦する人には初期バージョンよりも難しいはず。それとネット上では様々なヒントが見付けられるが、プレイヤー側の発見したシステムの穴や有効な作戦をパッチで潰すという状態が続いた為、最新版に対応したヒントでないと逆効果になる恐れもある。

 例えば「10箇所の中でX地点に有ったならばYには無い」というXYの二択出現や、「必ずX地点には出現する」といった内部設定は修正されており、現在では完全に出現場所はランダムである。他にはスタミナのクールダウン時間を利用して小刻みにShiftキーを使うというテクニックも最新版では潰されている(ジョギングになった瞬間に5%スタミナが引かれるので、これをやるとすぐにスタミナが切れる)。


 クリアすると"Daytime Mode"等の新モードがアンロックされるというボーナスあり。

評  価  ホラーゲームとして秀逸な出来栄えで、これなら大人気を博したのも当然という感想。一人称視点, 攻撃手段を持たない, 灯りを制限された暗い世界, といったタイプのホラー物が好きな方には特にお勧めである。類型の派生作品ををプレイするよりもまずはこれだろう。

 スレンダーマン自体の造形は特に怖くないが、暗い森の中で彼に追われる恐怖感はとても良く表現されている。これには切迫感を持つサウンドのクオリティも貢献しており、ホラー物におけるサウンドの重要さを改めて認識させられた。

 極めて高難易度なのが問題と言えば問題だが、クリア出来なくても恐怖感は十分に味わえて楽しめるので大した欠点ではない。メモを集めるという単純な目的なので、途中で止めてもあまり未練が残らないというのもある。


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