戦 闘 |
敵との戦闘はバランスとしてはサバイバルホラーに近く、アクションFPSでは無いとは言える。ただし風変わりな内容も含まれる。例えばヘルスと弾薬は携帯して持ち運べるが、その方法や補充用の装置のデザインは奇抜。ヘルスと弾薬の状態を示すHUDも説明無しなので最初は戸惑うがこちらはすぐに理解出来るだろう。 弾薬は少な目で目に付いた敵を片っ端から倒せるだけの量は無い。よって弾薬を消費しない近接武器での戦闘を余儀なくされるというのがサバイバルホラーの定番だが、このゲームでは敵からの回避が比較的楽なので戦闘自体を避けられる事が多い。また最初の2つのACTでは敵が出現しない(戦闘自体が発生しない)という設定になっている。未検証ではあるが、おそらく敵を倒さないとならない設定(イベント)はラストのACTだけではないかと推測する。 パズル解決の為に同じ箇所を何回も行ったり来たりするので、敵が彷徨っている状況だとその都度ステルス回避は面倒なので倒してしまいたくなる。だが敵はこちらを認識する能力が高くない上に、離れた場所から見ていれば巣穴へと消えて行ってしまうケースが多いので戦闘は避けられる。その回避に慎重なステルスが要求される訳でも無いのでステルスが苦手な人でも問題は無いだろう。その後再度出て来たりもする可能性はあるが、体感として遭遇頻度は高くない為にあまり気にはならない。もし気が付かれてもこちらの方が移動速度が早いので逃げ場さえ有るなら簡単に逃げられる。またしつこく追っても来ない。邪魔なのは通路に吊り下がっていて動かないタイプの敵だがこれは一発で簡単に倒せる。 たまに戦闘になったら銃器で倒す程度なら弾薬には困らないので、「敵を倒すしか無いが弾薬は節約したいので、リスクのある打撃武器での近接戦を挑むしかない」という状況にもならない。問題なのは遠距離攻撃用の武器が手に入るまでの近接武器のみの状況である。最初の武器は正式名称は不明なのでツール銃とでも呼んでおくが、装置を作動させるのに使うツールの役割を果たす他に引き金を引くと飛び出す棒状の物で攻撃が可能という代物。しかし射程距離が短い&連射は2回までという使い勝手の悪さ故に接近しての対戦ではこちらもダメージを喰らい易い(慣れれば問題無いのかもしれないがそこまで敵が多くない)。 積極的にプレイヤーを攻撃してくるタイプのクリーチャーは最終章を除けば4種類しかおらず少ない。その内3種は吐瀉物の様な物で遠距離攻撃も仕掛けて来るがこれが見え辛く長引かせると厄介ではある。最終章でのイベントとなる必須の戦闘はアクションFPSでのボス戦風であり、難易度的には他のアクションFPSと比較すれば普通だが、ゲーム内比較ではその場所が突出して難易度は高いと言える。 サバイバルホラーの難しさは先に書いた様に弾薬が少ないのでリスクのある接近戦を挑むしかないという件が大きい。逆に言えばここでは弾薬を使っても良いだろうとなったら戦闘は簡単になり、そこは充分に弾は有っても負ける可能性のあるアクションFPSとは異なる。それを防ぐ為に特殊な能力を持たせた敵を設けるSHも有るが、このゲームの通常の敵にはそういったタイプは存在しない。そして敵を回避するのが割と楽なので弾薬を余らせるのも容易となり、それだけに弾薬での攻撃が行える機会が増えて、結局のところ戦闘はスリルが薄れて面白く無くなっている。銃弾さえ有れば遠距離から撃って簡単に倒せるからで、これはSHとしては別に悪くないのだが、アクションFPSを期待してプレイすると失望する可能性が高いという意味である。付け加えておくと弾薬やヘルス補給のデバイスを含めてオブジェクト類にインタラクト中は敵が周囲に居ても攻撃を受けないようにもされている。 それと事前情報から弾薬はかなり少ないと考えていたのだが実際にはそこまで枯渇しているというレベルでは無かった。ただしメインルート以外も見落としが無い様に探索をしたが、その際に脇道の行き止まりの場所にヘルスや弾薬の補給機が有ったというケースに数回遭遇したので、ちゃんと探索をしないと入手量が少なくなるというデメリットは当然発生する。あるいは弾薬&ヘルス不足の批判を受けて、各補給機での供給量がパッチで増やされたという可能性も。それと道中で壁面の組織に張り付いた様な状態で小さく震えている敵は注意して探し倒したが、あれは見逃して進めると後で剥がれて襲って来るので敵が増える?などのハッキリしない点も有り。 一番の欠点と感じたのは戦闘自体が普通過ぎる事。アクションFPSを期待していた訳では無いのでSH寄りのバランスで戦闘が少ないと言う件は別に問題無い。だがこれだけ特殊な世界観なのだから、奇抜な生態の敵に対して同じく変わった武器で戦うのを期待していたのだがそうでは無かった。銃の切り替え, 弾薬ケース?の仕様などは確かに変わっているが、3種の銃器の使い勝手の方は普通のピストルとショットガン(他1)といった感じで奇抜さは皆無。敵も同様にデザインは変とも言えるが攻撃方法などにはまるで珍しさが感じられない。ラストのボス戦的な強制戦闘イベントにおいても、普通のFPSでのボス戦と一緒の構成で中身は凡庸である。 最後のACTのボス戦については別の意味で問題有り。メインを探索とパズルにおいており戦闘要素は従の位置付けでそこまで重視されていない。パズルは多いのでアドベンチャーゲームのファンにもお勧め出来るとは思うのだが、それにはこのボス戦が邪魔である。ボス戦の難易度は一般的なFPS基準で見て普通というレベルだから、難易度設定は無いがFPSをプレイしている層には特に問題はない。だがFPSを含めてアクションゲームを普段はやらないという多くのADVファンにとってはこのボス戦は難易度が高過ぎると思われる。そうなるとここから進めなくなるのでお勧めし辛いという結論に。ついでに書くと最後のACTでは戦闘以外にも一種の操作スキルを要求されるシーンが何度か出てくる。ホラーゲームの中にはストーリーモード(ストーリーだけを味わいたい人向けの非常に簡単なモード)やセーフモード(敵が襲ってこない)といった設定を設けてアクションやステルスが苦手な人でもプレイを可能にしたりしているが、このゲームでもそういったモードを設けるべきではなかったか。 書き添えておくと私自身は遭遇していないが問題とされている件に「詰み」がある。ネタバレになるので詳しくは書かないが、ゲーム中にプレイヤーには予期出来ないタイミングで突然発生する被ダメージイベントがある。これは通して10回以上発生するのではないかと記憶するが、発生するとその都度少量のダメージによりヘルスが減少する。よってヘルスがギリギリか、あるいは回復薬を持ってはいるが適用していなかった際にはイベント後に死亡してしまう。つまり携帯ヘルスが無く, ヘルスが最小値で, 補給装置が周囲に無い状況だと詰む。同様に最後のACTでは使うとダメージを受けてしまう装置が有りこれでも詰む事になる。発売後のパッチで対策が施されているのかは未検証だが、死亡によるゲームオーバー画面から戻っても既に詰んでしまっているなら、終了させて再開で少し前の安全な所まで戻れる可能性があるのでそれを試してみるのが良いだろう。 |
GRAPHICS & SOUND |
Unreal Engine 4 を使用。グラフィックス設定のプリセット4種。個別の設定項目は多数。画面モードは排他的フルスクリーン, ボーダーレスフルスクリーン,
ウインドウの3種。 独自の世界観の描写は見応えがあり優れている点の一つ。ギーガーやベクシンスキーの影響は確かに見られるが凄く似ているというほどではなくオリジナリティも感じさせる。オブジェクト類のモデリングは精細だしキャラクターの動作アニメーションも多彩で細かい。一方でエフェクト面では期待外れな面もあり、設定は上げてプレイしたのだがライティングや影の描写等で美しさを感じさせる箇所は少なかった。マップ内を覆う組織(植物&生物系)などのヌメヌメやテラテラした描写の方も、以前に公開されていたデモより控え目になっているという印象。 ボリューム調整可○ ただし調整は単一で個々のボリューム調整は不可, 3Dサウンド対応, ボイスなし。BGMに普通の楽曲系の物はほとんど無く、大半はアンビエント調のダークな音響で統一されている。かなり重低音が効いているのが特徴(シネマティックを選択すると特に)。 |
BOTTOMLINE |
[PROS] ○未知の異世界の壮大な景観や雰囲気 ○突き抜けた個性 ○訳が解らないストーリー(独創性という意味での褒め言葉) ○唖然とさせられるラストの展開 ○終盤に明かされる意外な事実には見事に騙された ○オブジェクト類のディテール(グラフィックス) [CONS] ×異なるゲーム性をミックスしており、その全てがある一人のプレイヤーにとって受ける可能性は低い ×ボリュームは物足りない ×パズルのタイプが現実世界(他のゲーム)と一緒の物が多く個性が足りない ×戦闘は武器の仕様や敵が普通過ぎてユニークさに欠ける ×グラフィックスのクオリティ(エフェクト関連)は期待していた程ではない(昔より後退している感) ×プレイヤーのコントロールを離れて進むイベントが結構多い △グロや18禁要素の存在は一部のユーザーには向かない |
かなり尖った個性を持った作品で、雰囲気重視の異世界探索, 理解困難な異端のストーリー, 巨大な連動パズルの解決, サバイバルホラー系の戦闘要素の四本の柱から成り立っている。個人的には探索要素は素晴らしく、ストーリーは解らない事が多いもののユニークさでは評価出来るとなったが、パズルと戦闘の方は普通の出来映えで高評価には至らずという結論。といった具合に4つの項目を全部気に入るという人はかなり少ないと思われ、総合的には幅広いユーザー層から高評価を多数集めるのは困難ではないかと考えている。 その一方でその個性については“面白さ”では無く“奇抜さ”という観点から高ポイントをあげたいと考えている。表現が難しいのだが「これは面白いのでお勧めです」とは言い辛いが、こんな突飛な世界観とストーリーを持ったゲームも有るんだという事で機会があればプレイをお勧めしたい作品である。ただ定価は高いので“外れ”の危険性含みからそこはネックになってしまう。既に50%を超えるセールも行われているのでそれが狙い目と書いておこう(外部サイトの方がセールが目立つ)。 好き勝手にやるインディーズ作品は珍しくないがその多くはフリーゲームや低価格の設定。そこには大掛かりにやっても奇抜な物は広範囲には売れないという自覚が存在している。Scornもそれと同類に売れる事は意識せずに制作されたのだろうが、これだけのクオリティの世界の作り込み&ある程度のボリュームを持たせるとなると金は掛かってしまう事になり、その観点からパブリッシャーの勧めにより売れる様に探索要素以外にもパズルや戦闘といったゲーム性をより多く持たせたと想像するのだが、クオリティはともかくデザインが普通過ぎてそのユニークな世界観とはどうにも噛み合っていない。 また戦闘を楽しみたいという方には、パズルが多いし難し過ぎる恐れがある。そして探索やアドベンチャーのファンには、ラストのACTにおける戦闘が難し過ぎる。更にグロや性的な表現要素も一部の方を遠ざけるなど、万人向けとは言い難い内容なのは確か。それでも上記の様に可能ならば、(特別に戦闘もパズルもグロも苦手では無い方には)体験して貰いたいと思える作品である。 |