Her Story


ヒント&補足

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更新履歴  22/10/23 レビュー掲載(バージョン不明。実行ファイルのプロパティでのバージョンは 5.4.2.57392)


販  売  制作・販売: Sam Barlow
 発 売: 2015/06
 日本代理店: PLAYISM

 2022/10/23 現在 Steamにて定価 1,010円で販売中

概  要  制作者のSam Barlowは英国の方で現在はHalf Mermaidという自身の興したパブリッシャーにて活動している。このゲームの時点では自身の名前でのリリース。元はClimax Studiosに勤めており、古いところではSerious Sam: Next Encounter(2004)のデザイナー。有名な物ではSilent Hill: Origins(サイレントヒル ゼロ), Silent Hill: Shattered Memoriesのリードデザイナーを手掛けている(いずれもトップのプロデューサーやディレクターでは無い)。

 2014年に自分自身のデザインしたゲームを作る為に退社してこの作品でインディーズとしてデビュー。その後はTelling Lies, IMMORTALITYとやはり実写映像をベースにしたゲームをリリースしている。

 プラットフォームはWindowsの他にMac, iOS, Android。


 2016/11にPLAYISMから日本語版が発売されている(英語以外に対応している言語はこの日本語のみ)。Steam版にはこの日本語がアップデートにて追加されているがGOG版やMicrosoft Store版は日本語対応していないので注意(同社が日本語化に関わったゲームでは他にもこういった「日本語の配布範囲が限定」されている作品が有る)。ちなみにTwitch Prime(Amazon Games)にて無料配布された事があるがこちらも英語オンリーである。

 Steamのストアページにも受賞リストが掲載されているが、2015年度作品を対象としたコンテストにて多数のメディアから賞を受けている。

STORY  英国の某警察署内に残された古いコンピューター。その中には1994年に発生したある事件に関するインタビュー映像が保存されていた。事件から20年以上が経過した現在、主人公はこのPCにアクセスしてそのビデオ映像から事件の真相に迫ろうと試みる。


パッチ&トラブル関連
 アップデート自体は何回か行われているがパッチノートなどは無くバージョンも不明。

 Steam版はSteamworksとの連係(クラウドセーブ, トレーディングカード, 実績機能等)が絡んでくるので、そちらだけ更新されて他のサイトとはバージョンが異なる可能性もある。

*セーブファイルの場所は以下の中(隠しフォルダを表示する設定にしておかないと見えない)
 C:\ユーザー(Users)\(ユーザー名)\AppData\LocalLow\Sam Barlow\HerStory\


※ ビデオが再生出来ない
 MPEG4 codecにてエンコードされており、Vista/7だとこのコーデックが含まれていない可能性がある。MPEG4に対応したコーデックをインストールすれば直る(拡張子のmp4とは関係ない)。2015年の発売当時は結構問題になっていた様だが現在ではOSが変わっているのでトラブルの可能性は減少している。


※ ビデオ再生にてゲームがクラッシュ, 音声が正常に再生されない
 FFDSHOWをインストールしているなら停止させるか、このゲームを除外に登録する。


シ ス テ ム

・難易度は無し。アイテム持ち越しの二周目やクリア後の別モードは持っていない。
・セーブはオートセーブで操作の度に逐次行われる(1箇所のみを上書き)
・現在の目標の参照機能は無し
・字幕有り(日本語対応)

*キーアサイン不可×, マウス感度設定不可×, マウス反転不可×, 明るさ調整不可×
*照準(カーソル)有り
*コントローラー非対応×
*Steam実績対応


・クリア後には探索を楽にする一種のチートコードがアンロックされる
・セーブデータの全消去は設定メニューから可能
・全画面表示の場合、ゲームを終了させるメニュー項目が無い(ALT+F4で終了させる等で対応)

BASICS
 数々の賞を得た非常に評価の高い作品なのだが、その受賞部門は「革新的なゲーム」といったその斬新さを評価する事が多かった。言うなればアヴァンギャルドな内容とも取れる訳で、それ故に作者が強い影響を受けたとしているDear Esther, Gone Homeなどと同様に、この作品も「これを果たしてゲームと呼べるのか?」という風に一部からは批判(否定)も受けている。

 設定としては1994年に起きた男性の行方不明事件における、関係者のある女性に対する警察による7回に渡る尋問の様子を撮影したビデオ記録が残されており、古いコンピューターを使ってそのデータベース内のビデオを観るという物になっている。なお時間軸はゲーム内で操作するPCのデスクトップ上の時計アプリが、現在の(プレイヤーの使っているPCの)年数を表示する為に正確には定められない(6/16の日付や時間はそのままだが西暦年が変化する)。いずれにしろ発売年(2015)を考慮すると事件からは20年以上が経過しているのは間違いない。


 ではプレイヤーは画面内の(仮想)PCのデスクトップ上にて何を行えるのか?となると、それは保存されているビデオを観ること、実質それだけである。ただし好きに選択して観られるのではなく、検索ワードを入力してそれにヒットした物を観られるというシステム。つまりこのゲームの目的とは、より多くの, 事件の核心に迫る内容のビデオを, 検索にヒットさせて表示させる為に, それに当たる重要なキーワードを探し出す事である(より詳しいシステムは後述する)。

 ビデオを観て事件の情報を集めて行ったら次にどうするのか?だが、それ以外には何も無い。一般的な推理物アドベンチャーであればプレイヤーの推理を提出する過程や、真相がどうだったのかを説明するパートが有るものだが、そういった類は一切無し。終わりは一応あって、プレイ中に条件を満たすとある種のイベントが発生してそれで終了するが、後はエンドクレジットが流れるだけ(その後もやりたければビデオの検索や閲覧は続けられる)。

 という風に何も説明されずにゲームは終わる。「真相はこうでした」といった説明は行われない。より正確に書いておくと、何が何だがサッパリ理解出来ないという感じの終わり方をするのでは無く、こういう話だったのかという様に理解は出来る範囲内で終わるとは言える。だが明確には解らない部分、言い換えれば解釈次第では様々な可能性が考えられる部分も残される。それはビデオを全部観られていないからではなく、全てのビデオを見終わっても明確には解らない箇所が残されるという意味である。


 この真相が明確には提示されないという件についてだが、実のところ元の構想では推理過程と真相解明のパートが存在する一般的な内容であった(作者の最大のこだわりはゲームの進行が尋問形式で行われるという方にあった)。しかし途中で考え方を変えて、真相を明らかにはせずにクリア後も議論や推測が行える様に曖昧な終わらせ方にした方が面白いと方針転換。あるいは「各人が自身による真相を考えたらそれで納得して終わる」というデザインとなっている。

 方針を変えるに当たって強い影響を受けたのがポッドキャストのSerial。実際に起きた犯罪事件を扱う綿密な調査をベースにした報道番組で大きな人気を得ているが、そこではデータは与えるが番組としての結論や主張を述べるのではなく、事件をどう考えるのかは聴取した各人の考えに委ねるという姿勢が採られている。それを受けて単一の真相を制作側が提示してしまうよりも、真相を各人の想像に任せる方が魅力的で面白いと考えたそうだ。

 実際に真相考察用のサブフォーラムが設けられているのだが、スレッド数は多く各人が「自分の考える事件の真相」を披露したりして盛り上がりを見せている。日本語対応している事から検索すると日本でも自身のサイトで真相の考察を展開している人も結構見受けられる。よって真相を愛昧に留める事で議論を楽しめる様にするという狙いは一定の成功を収めたと言えるだろう(もちろんハッキリしない結論に不満を覚えるプレイヤーも居るはずだが)。

GAMEPLAY
 エンディングに到達するのをクリアとするなら4時間程度。全部もしくはなるべく多くのビデオを観ようとするならそのまま続行も出来るので更に時間が掛かる事になる。ただプレイヤーによってはずっと早くクリア出来てしまう可能性もあり(理由は別記)。

 主役の女性Viva Seifertは新体操の選手としてオリンピックにも出場した事があるという経歴の持ち主で、その後はミュージシャンとして活動しており女優として映像作品へも参加している。プレイ時間のほとんどはこの女性の演技を観ている事になる為に非常に重要な役どころであるが、作った演技ではなく自然な“初めて警察に尋問される素人”っぽさが出ており質は高い。ゲームの雰囲気作りに大きな役割を果たしている。


 検索窓から単語を打ち込んで進めるというシステムからキーボードが必須となる。コントローラー非対応と言うよりは根本的にゲームの操作性にマッチしていない。操作I/Fは以下の様になっている。

・検索語句は日本語でOKである
・使用している日本語入力システムにもよると思うが、検索語句欄をクリアしてしまうと日本語モードが切れてしまう
・複数ワードでのAND検索や文章検索が可能
・検索に使用した語句(組み合わせ)は履歴機能でヒット数と合わせて参照出来る
・各ビデオに自身でタグを付けて保存可能
・ヒットしたビデオの中で新規には未視聴マークが付く
・早送りや巻き戻しは無いが、画面クリックでプログレスバーを表示させてジャンプする事は出来る


 ビデオを鑑賞するだけという情報から長い物をじっくりと観ていくと思われるかも知れないが、実際には各ビデオは短めで1分を超える物は少なく、30秒以下という物が大半を占めている。この様に各ビデオは短い為に、未視聴の物をサッと観ては新たに検索といった感じでサクサクとテンポ良く進んで行く(少なくとも序盤は)。中盤からは推理をしたり、自身の考察に応じて過去のビデオを見直したりも出てくるのでテンポは遅くなるが、いずれにせよビデオ視聴の負荷が高いという設定では無い。それに関連してプレイの際にはメモを用意しておく事が推奨されるゲームで、紙のメモかデスクトップ上にメモを開いて「後に検索する予定の語句」や「事件に関する推理考察」などを随時書き込んでいく方が楽である。


 重要なビデオがヒットする様な検索語句を探し出すゲームと言える訳だが、ここでも非常に特異なデザインが採用されている。制作側にとっての厄介な問題点として、当てずっぽうであっても入力した検索語句にいきなり真相に関連したビデオがヒットしてしまったらどうする、という件が存在する。よって普通であれば捜査の進捗状況に応じて重要なビデオを段階的にアンロックして行く(それまでは検索にヒットしない)等の手法が使われるところである。しかしこの作品ではその様な制限を設けておらず、代わりに「検索にヒットしたビデオの番号の若い方から順に最大で5件しか表示されない」という方式にされている(視聴済みのビデオが除外されたりはしない)。

 でもそのやり方だと偶然に重要なビデオが早期にヒットして観られてしまう恐れがあるのでは?と思えるが、そこを検索ワードの配置を考えて台詞を何回も推敲しながら作り上げられている。つまりプレイヤーは主に既に観たビデオの中で言及されているキーワードを検索に使うから、そういった初期の検索ワードが重要なビデオの中では使われないように台詞を改編すると共に、且つ重要なビデオ内での台詞が特異なワードばかりで不自然にはならない様に数百のビデオ内ので台詞を連動させて改編するという事が行われている。自動検証作業用に制作したスクリプトがPCをハングアップさせるほどに複雑で膨大な作業だったそうだ。この様なシステムを採用した理由としては、一つはPCのデータベースを検索しているというストーリー設定上、その検索にヒットしないビデオが段階的に存在するのはおかしい。それと各プレイヤー毎のビデオ視聴の順番のランダム性が高まりそれぞれの体験が異なった物になるという効果が得られる点が挙げられている。一方で欠点はそこまで計算して調整をしていても、真相に関わるような重要なビデオが複数語句のAND検索などにてかなり早期に5件以内にヒットして表示されてしまうケース(すぐに真相が解ってしまう)が起こり得るという所。


 個人の解釈によっては異なる真相に辿り着くという件はさておき、メインとなるトリックに関しては「意外性満点」とかではなく、特にミステリ好きの人には割と早目にアタリを付けられてしまうかもしれない。この作品はその真相やストーリー自体が純粋に面白いと言うよりは、ストーリーの見せ方がビデオによるインタビュー映像のみで、更に検索結果によって時間軸が完全にバラバラの状態で情報が明らかにされていくという特殊な構成が新鮮で面白いと言う方が適切であろう。仮に7日分のインタビューを“第何日目”という風に順に見せていく構成のゲームであったらここまで魅力的になったとは思えない。

 それと推理物ADVでは登場人物の発言内容のみが重視されがちだが、この作品では映像の方も重要な内容を含んでいるという点において優れている。2Dの立ち絵とかでは無く実写映像を用いている事を有効に活用しており、プレイヤーは以前に視た映像を再度見直したりする事になるだろう。

GRAPHICS & SOUND
 Unityを使用。グラフィックス設定は無し。起動時のランチャーにてウインドウ表示の切り替えは可能。

 事件の起きた1994年頃を強調する為か当時のWindows 3.1を想わせる画面デザイン。アスペクト比は4:3固定で、CRTモニターという設定なのでリアルな表示にするノングレア(反射)のON/OFFが選択出来るが変更出来る点はそれのみ。当初は普通に撮影したビデオにCRT表示の様に見えるフィルターを掛けて描画するつもりだったが上手く行かず、リアルなVHSでの撮影と再生で当時風の画質を表現している。ビデオのフレームレートは25fpsであり変更出来ない。


 ボリューム調整不可×, 3Dサウンド非対応, ボイス有り。ビデオの再生時では無い時に鳴るBGMは有り。ボイスは英語でこれは日本語化されていないが、演技が重要なので差し替えは困難である。

BOTTOMLINE
 その特殊なゲームプレイや真相解明に対する姿勢などから非常にユニークな作品となっており、その奇抜さ故に否定的なプレイヤーも出て来るというのは仕方の無いところ。だが肯定・否定が半々程度の賛否両論だったら勧め難いが、面白いと感じている人の方が遥かに多いのは確かだし私としても広くお勧めしたいゲームである。特に推理・考察好きの方に推奨したい。

 検索語句を探す作業だけで面白いのか?と思われる方も居るだろうが、次第にビデオの中身に興味が惹かれていくので気にはならなくなる。キーワード検索の大きなヒントになる事から発言内容のみに注意を向けがちだが、映像の方にも情報が含まれているという実写インタビューの設定を活かした構成が素晴らしい。

 推理に関わる情報量は結構多目だがゲーム側には発見した情報を保存したり整理する機能が無い為、手書きでメモを取ったりする必要性が出て来るのは好みが分かれる所だろう。


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ヒント&補足

 以下ネタバレとなるので一部反転表示。






※ どうなったら終了するのか?

 デスクトップ上にチャットアプリからの連絡が発生する。それを実行して内容に受け答えし、チャットが済んでからゲームを終了させるとクレジット画面になる。終了条件は不明だが、重要なビデオをX本視聴したらとか何か条件があるのだろう。私の場合にはデータベースへのアクセスが75%に達成する前にクリアになっている(クリア率に関わる実績有り)。




※ クリア後の報酬とは?

 特殊なコマンドがアンロックされるのだが、クレジットを最後まで観ないとならない。また表示される時間が短いので見落とす(読むのが間に合わない)恐れもあり。具体的には以下の二つの管理者コマンドが検索窓から有効に出来る様になる(後にオフには出来ない様だ)。

 admin_unlock  検索にヒットして表示されるビデオの数が最大で15個に拡張される
 admin_random ランダムにビデオを選択する

 なおこれ等はクリアする前に入力しても有効にはならないらしい。





※ データベース表示にて欠けているファイルが有ると出るのだが?

 これは単にインタビューのビデオの中に警察官側の質問している物が入っていない事を表しているだけである(何か有るのではないかと探さないようにと作者より)。




※ 以下はゲームの開発に関連する補足情報など(ゲームのネタバレでは無い)

 ビデオには尋問をする側の警察官が居ない理由) 参考として実際の警察官による尋問の映像を観た結果、警察官との対話形式だとそれを観ている人は、尋問をされている側の人間に必要以上に共感(同情)を覚えてしまう事が判った為、それはこのゲームにてビデオを鑑賞させる上での中立感が無くなり適さないとして止めている。そこでバーロー自身が警察官役として尋問をしているパートは全てカットされた。


 プレイヤー自身が尋問する形式ではない理由) プレイヤーが質問したい事項を常に選択肢として用意出来る訳ではなく、それが外れる度に自身が尋問役を務めているという没入感が損なわれていってしまうので採用せず。


 ゲームのシステムとなるプログラムのプロトタイプに、実際に発生したある事件での犯人と嫌疑を掛けられているChristopher Porcoという人物のインタビュー内容を導入して検証を行った。その結果としてゲームの内容が大きく変更される事になる。インタビューの中身はかなりの部分が事件とは関係の無い話になっており、逆にそれ故に非常にリアリティが感じられる事に気付かされたのが原因。面白さはむしろ日常的な会話の中に在る, 論理的に構築されている会話はゲーム的で不自然, リアルさを醸し出すにはむしろ会話は曖昧な内容であるべき等。そこでこのゲームにおいても事件とは直接の関係が無い話題などがかなり会話内に盛り込まれる様になった。


 Silent Hill: Shattered Memoriesに関するエピソード。制作の依頼がClimax Studiosに来た際にコナミからの指令は探偵を主役にしたゲームを作るようにという物であった。そしてコナミからやって来たプロデューサーは一匹狼的な型破りな人物で、彼のアイディアはBrahms PDというサブタイトルの警察を主役にしたゲームだった(警察=探偵)。バーローも警察を主役にした尋問をメインとする作品、つまりこのHer Storyの様なゲームを作りたいと考えていたので警察が主役という点では意見が一致した。だがバーローは警察が過去の殺人事件を調べるというストーリーを考えていたのだが、プロデューサーは警察が主役のシューティングゲームを作るというこだわりを持っていたので意見が合わなかった。結果的にコナミも交えて検討した結果、シューティングゲームにしたいという意見は取り下げられて非戦闘型に。バーローのこだわった警察による尋問形式のゲームというアイディアが、精神科医による質問という形式へと置き換えられている。


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