更新履歴 | 22/08/18 レビュー掲載 (V1.05) |
販 売 | 制作・販売: Noiseminded 発 売: 2021/08 日本代理店: 無し 2022/08/18 現在 Steamにて定価 410円で販売中 |
概 要 | 制作のAbel Neto氏はポルトガルの方で、音楽以外はほぼ自分一人でこなしている。これまでにも主にゲームジャムを通してフリーゲームを制作しているが、有料の製品版として本格的に作られた物はこれが最初となる。 プラットフォームはWindowsのみ。コンソールではSwitch版のリリースを考えているそうである。 2021/08/31付けの作者からの投稿で、「ゲーム内にはシークレットのイースターエッグが隠されているのだがまだ誰にも発見されていない。これを見付けた人先着5名にゲーム内に登場するカセットテープの物理的なグッズをプレゼントする」というアナウンスがなされた。その中に回答の際には実績"Don't Be A Stranger"をどうやって解除したのかを説明する必要があるという条件が有り、この秘密の実績の解除のやり方が掲示板などでも話題にされている。新たなヒントを出したりとイベントとしては続いていた様だが私は興味が無いので詳しくは追っておらず、現時点で達成者が既に5名に達しているのかも判らない。 |
STORY | ポストアポカリプス設定で滅亡に近付いている世界。そんな中で注文した人々へとカセットテープを夜間に配達する仕事をこなしている“NIGHTSLINK”としてプレイする。 なおタイトル名にもなっている“NIGHTSLINK”だが、私は当初“NIGHTS - LINK”という風に切れるのだと思っていたが、どうやらそうではなく“NIGHT - SLINK” (Slink=こそこそ動き回る)という方が正しい様である。 |
パッチ&トラブル関連 |
メニュー画面にバージョンは出ないが、Itch.ioの方を見るとV1.05が最新のバージョン表記になっている。 Steam版はSteamworksとの連係(クラウドセーブ, トレーディングカード, 実績機能等)が絡んでくるので、そちらだけ更新されてバージョンが異なる可能性もある。 掲示板を見る限りでは頻発している障害などは無い模様。 |
シ ス テ ム |
・難易度は無し。アイテム持ち越しの二周目やクリア後の別モードは持っていない。 ・セーブは無し ・現在の目標の参照機能は一応ある ・アイコン表示や矢印による進行方向ガイド機能、ミニマップを含めてのマップ表示機能は無し ・字幕有り(日本語対応) *キーアサイン不可×, マウス感度設定可○, マウス反転不可×, 明るさ調整不可× *一人称視点固定, FOV調整不可× *スプリント○, 屈み×, ジャンプ× *照準(カーソル)有り *コントローラー非対応× *Steam実績対応 ・配達リストとカセットテープの切り替えはマウスホイールで行う ・視界の上下方向の角度は限定的 |
BASICS |
構成としてはプレイヤーの操作する主人公NIGHTSLINKが、あるマンションへとカセットテープを届けるという形で進められる。注文を出している部屋番号のリストを所持しているので、それを基に届けるべき部屋へと順次訪問して行く。並び順に届ける必要は無く順不同(届けた部屋番号は消されるので見落とす事は無い)。全部届け終わると一旦終了して幕間となり、それがACT
I, II...という風に続けられる(1日目, 2日目と連続している訳では無い)。 背景設定の解説などはほぼ無く、何等かの原因で人類は滅亡の危機に瀕している事。その何かとは大いなる恐怖の様な物で世界を浸食しており、人間はそれに反抗しようという姿勢も見せていないし、皆自分の家へと引きこもっているだけという状況らしい。プレイヤーの操作する主人公はその世界で謎のカセットテープを届けているが、どういう経緯でその仕事をやっているのか等は一切説明されない。 提示された謎が解決されたり説明されるのが一般的なのは当然だが、この作品では最後までプレイしても説明される事項はほとんど無い。よってストーリーはきちんとは理解出来ないままに終わる。制作者はデイヴィッド・リンチに影響を受けているそうだが、彼の作品を観た事がある方ならああいった感じだと思って貰っても良い。とは言えまるで理解不能というレベルではなく、とりあえずは「こういった話なんじゃないか?」とある程度の解釈は出来る程度にはまとまっている。 制作者としてもどんな風にストーリーの意味合いを解釈するのかは各プレイヤー任せという立場であり、そもそも「実はこういった話である」という設定自体が存在していない。制作者によればあえて幅広い想像の余地を持ったシチュエーションだけを提示してやり、それに対して各人が自分だけのストーリーを考え出すという事を意図しており、それ等をストーリー論議の場で見たりするのが好きなのだそうだ。 なおParatopicとの共通性を指摘されているが(例えばストアのサムネイルが、ゲーム内の主人公では無いNPCが, マンションの廊下で, タバコを吸っているところも共通)、確かに影響は受けているとしている。 |
GAMEPLAY |
ボリュームは30分程度。急げば20分程度でもクリアは可能。これをウォーキングシミュレーターと呼んで良いのかは判らないが、ゲームプレイと呼べる様な要素は無し。配達リストに沿ってその番号の部屋へと行ってカセットテープを届けるだけである。何等かのゲーム的なスキルを要求される箇所は出て来ないし、謎解きやパズルも無ければゲームオーバーも無し。 ノックした各部屋からの返答を読むのがほぼ全て(厳密には“聞く”のだが、音声が加工されたノイズになっている為に聞き取りは出来ない)。この時に主人公の発言などのセリフは無いので会話選択肢も無し。注意点としては部屋の中からのセリフが一旦途切れた後に更にノックすると続きを喋りだすケースもある。インタラクト出来る物に対してはカーソルが変化するので解り易いが、各部屋以外にインタラクト出来る物がほぼ無い。 ちなみに日本語に対応しているが機械翻訳などでは無く、一部日本語として変な感じの所もあるがちゃんとしている部類。だがそれで部屋の中の人間の喋っている事が理解出来るのかと言えばそうではない。何の話orどういった意味合いの事を喋っているのかが理解出来ないというケースも多々発生する。(つまり英語音声で英語ネイティブの人がプレイしても意味が理解出来ないのだから、それを忠実に日本語化されても訳の解らない日本語になってしまったりで同じ事という話)。 ホラーとしてはサイコロジカル系であってジャンプスケアなどは無し。非常に怖いというタイプでは無く雰囲気が不気味という作品である。ローポリなのは低予算だからという訳では無く、人間の想像力にこそ怖さが有るからという作者の嗜好に因るもの。非常に精密に作られたハイポリゴンのモンスターなどは最初のインパクトが強いだけですぐに慣れてしまう。それよりは「画面上で見ているローポリゴンではなく、リアルな世界であったらどんな風に見えるのか」という想像力に訴えた方がより怖さが出るという考えである。 ゲームプレイと呼べる様な要素がほぼ無いとしたら何が魅力なのか?となるとこれは雰囲気という事になってくる。ビジュアル的にも独特な雰囲気を醸し出しておりその世界感にはオリジナリティーが高い。明確な意味合いは解らないとは言えドアの向こうの顧客の喋る内容は興味深いし、ゲーム内で発生するイベントに関しても謎めいており想像力をかき立てられる。作者の作り出した特異な世界を体験する短編映画的な作品であると言えよう。問題としては「雰囲気一発」な所は確かにあり、それが合わない人には意味の無い作品となってしまう。 |
GRAPHICS & SOUND |
Unityを使用。グラフィックス設定のプリセット無し。個別の設定項目は無し。ウインドウ化可能。上下の黒帯表示は固定。 グラフィックスはPSX世代のローポリだが、このゲームにおいてはその雰囲気に良くマッチしており成功していると感じられた。 ボリューム調整可○, 3Dサウンド非対応, ボイス有りだがノイズ音に変声されている(シンプルな単語ならば聞き取れる事も有るが、後はほぼ理解不能というレベルにされている)。注意としてラストのシーンは音量設定とは別に音が非常に大きい。 プレイ時間が短いのでサウンドも少ないが、環境音的なノイズが鳴っているというスタイルでそのクオリティは高い(残念ながらサントラは現時点では無し)。 |
BOTTOMLINE |
お勧めするのかどうかに悩むタイトル。ゲームプレイと呼べる様な物はほぼ無いので、その雰囲気と世界観に金を払えるかという話になってしまう。個人的には気に入ったのだが、どういった人にこの雰囲気が気に入って貰えるのかとなると判別が難しい。トレーラーやSSを見て面白そうだと興味を惹かれたなら、と言う位しか出来ない。現時点での評価は非常に良いが、これは気に入った人だけが購入しているからという件は考慮しないとならない。安価とは言え非常に短いので雰囲気が気に入らなければセール時であったとしても損をしたと感じられるだろう。 ストーリーは説明されず自身で想像するとかになるので、その辺りがちゃんと解説されないと納得出来ないという方には向かない。一方でゲームに限らないが映画やドラマなどでもその独特な雰囲気を重視する(中身には問題が在っても)という人にはお勧め出来ると思う。後は映画好きの方ならばゲームでは無く400円払って短編映画を観るような感覚でも良いのかなという気はする。 |
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ストーリー考察 |
私の受けた印象からの「ストーリーはこんな感じなんじゃないか」という推測であって、制作者によって公開されている内容の解説などでは無い。 以下ネタバレとなるので反転表示。 逆から辿るが、まずは最後に出現する巨大なモンスター?について。主人公が地球側の人間だとすると彼は地球を支配しようとしている者とコンタクトを取って仕事をしている事になり、そうならば交渉の相手も人間型の生物である可能性が高い(スクランブル状態で表示される謎の文字を使っている種族)。だとするとこの巨大生物は直接のコンタクト相手では無い。ならばそのコンタクト相手の操る配下的な存在か、あるいは彼等にとっての神に当たる上位の存在なのかになってくるが個人的には後者という印象である。 黒い巨大な塊を仮に“コア”と呼ぶとしよう。NIGHTSLINKがカセットテープに録音している際のレコーダーはこのコアが存在している部屋と繋がっており、そこからコアの発生する信号・音波の様な物がテープに録音されていると考えられる。それは麻薬的な効果を持っており、聞いた人間が繰り返しそれを注文するようになっていく。これを何回も聞いているとやがてはその信号に冒された人間の体内からコアの破片が分離する(最後の両手に持たれた大量のコアが並んでいるシーンからも人間自体がコアに変化する訳では無いと思える)。NIGHTSLINKの仕事はそうなった人間からコアの破片を集めてコア本体へと提供しその成長を助けるという役目。最後のシーンはコアに十分なエネルギーが溜まったので回収され、モンスターの出現に使われたという事なのだろう。 なぜ主人公が謎の支配者に協力しているのかは解らない。何等かの報酬と引き換えにとは思えないし(人類が滅亡してしまえば意味が無い)、モンスター=邪神とするならばその神の支配を願う異教徒的な存在なのか。 なおタバコを吸っているNPCだが、最後になって一度だけ発言する内容からすると同業者か監視役的な役割か。ACT IIIにてコアの破片が入手出来る開け放たれた部屋の方へと彼が走って行くシーンがあるが、これはコアが分離した後に部屋の中の人間が暴走?か何か異変を起こしたので追い掛けて行ったとかではないかと思われる。 |