\SPEK.TAKL\


ヒント&解答

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更新履歴  20/08/17 レビュー掲載 (V1.04)

販  売  制作・販売:  somewhat
 発 売: 2019/05
 日本代理店: 無し

 2020/08/17 現在 itch.ioにて定価 1.99ドルで販売中

概  要  作者のsomewhat氏はカナダ在住のソロデベロッパー。現時点で既に6作品ほど発表しており、このSPEK.TAKLは3作目に当たる作品。彼の作品の中で一番有名なのはpleaseだと思うのだが、このSPEK.TAKLも知られている部類だし評価も高い物となっている。特徴としてはPS1世代レベルのレトロなローポリゴン(ローファイ, ローレゾ)を描画に用いている点と、どれもホラー系ではあるのだが内容が非常にアバンギャルドで理解し辛いという所になる。

 なおタイトルは正式には最初と最後にバックスラッシュが入るのだが、これは通常の日本語フォントだと半角のバックスラッシュは円マーク(¥)に変換されてしまう為に省略している。意味合いとしては“spectacle”(光景)という解釈で構わない。

 活動の場は主にitch.ioとなっており、どの作品もSteamでは未だ販売されていない。Steamでは作品数が多過ぎて目立てないというのはあるだろうし、どれも短いので返金制度の有るSteamでの有料販売はやり辛いという件も影響しているのかも。

 プラットフォームはWindows, Mac, Linux。


 [作者からの注意書き] このゲームでは室内にてTVが点けっ放しになっており、そこではパブリックドメイン(著作権の消失した素材)から収拾してきた多数の過去のTV番組映像などが流されているのだが、中には昔のソフトなポルノ系の映像なども含まれている。同様に裸の女性や性行為などを描写した昔の絵画等にも進行ルートによっては遭遇する可能性あり。現在の基準でいうところの18禁ポルノというレベルでは無いのだが、例えばプレイ動画投稿者によってはその部分を隠したりもしている(動画サイトの規約に触れる危険性を避ける為)。他には昔のTV放送故に現代のLGBTQ+に対する偏見を含んだ映像も存在しているが、これはゲームを制作した自分自身が同じ様な偏見を持っているという事では無いと強調もしている。

 いずれにせよ流れている映像はゲームの進行には必要が無く、一切無視して進める事も出来るので気になる方は見ない様にして進めて欲しいとしている。


STORY  1992年の設定。夜遅くに最近引っ越してきたマンションの一室でTVを点けたままにしている主人公の元に、何者かから突然VHSテープが届けられる。その内容は異様な映像から構成されていたが、届けられるテープは1本だけではなかった...。


パッチ&トラブル関連
 大きなバグは最新バージョン(V1.04)にて修正済み。


※Mac, Linux版
 対応しているとなっているが十分な検証は行われておらず、トラブル発生時には直接問い合わせたり掲示板にて尋ねる等をして欲しいとある。

シ ス テ ム

・難易度は無し
・セーブ機能は無し
・現在の目標の参照機能や矢印による方向ガイド機能は無し。ミニマップを含めてのマップ表示機能なども持っていない。
・字幕無し

*キーアサイン不可×, マウス感度設定可○, マウス反転不可×, 明るさ調整不可×
*一人称視点固定, FOV調整不可×
*スプリント×, 屈み○, ジャンプ×
*照準(カーソル)有り
*コントローラー非対応×

GAMEPLAY
 初回プレイは30分程度。作者は20分程度としているが、TVで流れている映像を無視すればその位という意味合いであろう。逆にこの映像のボリュームがかなり有るので、これを視ていればずっと長く掛かる事になる。なお終了時は自動的に終わってデスクトップに戻る仕様。

 そのTV映像なのだが、作者自身が実際にこういった感じで様々なTVの映像を何とはなしに長時間眺めて過ごしていたという過去があり、その経験をゲーム内で再現という風になっている。ドキュメンタリー映像とかインタビューとか、または注意書きで書いたように性知識の教育番組とかも含まれており内容に統一性は無く雑多。ボリュームは不明だが少なくとも1時間分以上は有る様である(チャンネル選択などは出来ない)。それとパブリックドメインから集めてきた映像を単にそのまま流しているのでは無く、一部編集されて奇妙な映像になっていたりもする。ただしこの映像制作自体は楽しんで時間を掛けたコンテンツとしているのだが、内容的にはゲームのクリアには全くの無関係なので全編無視して一切視なくても構わないという設定。順次届けられるVHSテープを再生して視るのが重要なので映像をTVで視るという行為はゲームの根幹ではあるのだが、編集されている昔のTVの映像の方はリアルな雰囲気作りとか奇妙な感じを醸し出している以外には特に意味が無いという、ある意味ではとても変なデザインのゲームである。


 ホラーとしては精神世界系。敵に当たる存在は出て来ないし、ステルスを要求されたりとかも無し。精神世界系と言っても様々だが、この人の作品は実験的でアバンギャルドな物ばかりでこのゲームも同様。ストーリー的な意味合いとか、それぞれのシーンが何を意味(比喩)しているのかはほとんど解らない(少なくとも私には)。ホラー物ではハッキリとは状況の説明を示さずにわざとボカして恐怖感を生み出すという手法が良く見られるが、こちらはそういうレベルでは無くてプレイヤー側の理解度としては1割とかそういった内容と言っても過言ではない。

 だが「まるで意味不明な内容なので、訳が解らないから面白く無い」といった作品も多い中で、この作品は「ほぼ意味不明だが非常に不気味でインパクトがある」という点で評価出来る物になっている。「なんだこれ?」という風に意味が解らないシーンが次々に登場するが、気味が悪くて恐怖感を与えるというホラーゲームとしての根本の狙いは成功しており、ストーリーや背景はちゃんと理解可能だが肝心の怖さが足りないという物よりは遥かに優れている。しかし万人向けとは言えず、ありきたりな比較になってしまうがデヴィッド・リンチの映画的な内容のゲームという説明が一番そのイメージを理解して貰えそう(つまりは賛否両論に晒される)。


 進行はアイテムを集めてパズル?を解きながら進める形式だが別に難解ではない。精神世界系アドベンチャー(ホラー)では「理論の通じない世界 → 謎解きも非論理的で発想の飛躍が必要」というタイプも有るが、比較的謎解きはまともで論理的。プレイヤーがインタラクト可能なオブジェクトにはテキスト表示による反応が有る, アパートの覚え書きにはやるべき事が書いてあると親切設計。インベントリーのアイテムはちゃんと選択しないとならない方式だが(持っていれば自動的に選択されるのでは無くて)、アイテム数は多くないし組み合わせたりとかも無いので解り易い。なお進行ルートによるがアクションゲーム風のスキルを要求されるシーンが1箇所だけ存在している。

 エンディングは3つ。エンディングが異なるというよりはルート分岐が有るという方が適切で、シークレット以外の2つのルートは途中から分岐する事になっているのだが分岐させる方法は解り易い。まるで異なるマップに進む為にリプレイ性も高くなっており、短いゲームだけにこのルート分岐は大きなプラスになっていると言える。他にはプレイヤーの選択によって入手出来るドキュメント類やアイテム出現など一部が変化する要素もあり。

GRAPHICS & SOUND
 Unityを使用。グラフィックス設定のプリセット6種。個別の設定項目は無し。画面モードは排他的フルスクリーン, ウインドウの2種。

 一連の作品でPS1世代レベルのローポリゴン(ローファイ)表現を用いており、ローポリゴン故の不気味さという効果を狙いとしている。当然ローポリゴン故の問題点というのも抱えている事になるが、この作品ではイメージが上手く雰囲気とマッチしている様に感じられた。


 ボリューム調整不可×, 3Dサウンド非対応, ボイス無し。ヘッドフォンを推奨+出来るだけ大きな音量でという点を推奨しているが、それの関連なのか音が小さめでまたボリューム調整はゲーム側には用意されていないのは難点。背景音にはカットアップされたBGMがノイズの様に鳴り響くという手法が多用されている。

BOTTOMLINE
 内容については大半が理解出来ないが、異端な雰囲気を抱えた作品としてオリジナリティは感じられるし、ホラーゲームとして一番重要な怖さ(気味悪さ)は十分に出せているので高評価としたい。ストーリーや背景設定は理解出来なくても怖いので(不気味で)あれば良し、という人ならば問題はないだろう。

 私がプレイ済みの作者の作品の中では現状これがベストだと言える。他の作品も何が何だか理解出来ないという面が多分に感じられる所は同じなのだが、他がホラーよりもアバンギャルド色がより強く出ているのに対して、この作品ではホラーがメインでその範疇に踏み留まっておりホラー好きにはこれをお勧めしたい。


 ちなみに作者自身はこのゲームの事を、技術的な問題点, 当初の目標からの完成度, 内容的な充実度などには大きな不満が残っており自分としては好きになれない失敗作だと語っている。逆に次の作品となった『please』の方を様々な点で上手く行った成功作品として気に入っているそうだが、個人的にはこちらのSPEK.TAKLの方が遥かに面白いと思える。作者の満足度と受け手の反応は必ずしも一致しないという話である。


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ヒント&解答

 以下ネタバレとなるので反転表示。







※起動画面の右下?

 これはTVのチャンネルを模した隠し要素。数字キーでチャンネルを切り替えられる。





※ストーリー

 作者からの解説も無くほぼ解らないままだが、おそらく隣人によって監視されていたという設定と考えられる。主人公自身は精神病か何かを患っていたと思われる形跡有り。





※ルート分岐

 ルート(エンディング)は3通り。その内2つは書棚の裏の穴をどうやって通過するかによって決まる。ここは照準をズラすと二つの選択肢が出ており、具体的には「ナイフで切り裂く」か「潤滑剤を使う」かになる。なおこの穴は何を意味するのかについてはあえて書かない。

 付加情報として、分岐後の2つのルートにはアイテムを使って開けないと入れない部屋が各2存在し、開ける為のアイテムとはクロウバーとレンチになる。ところが前半パートのマンションにてこの2個のアイテムはどちらか片方しか入手出来ない様になっている。レンチはオーブンの中、クロウバーは浴槽の前のマットに有るのだが、片方を入手した時点でもう片方は出現しなくなる設定。よって分岐後の2ルートの全ての部屋を開けて入るには、レンチorクロウバーのどちらを取ったか X どちらのルートに進んだか、で2x2=4回プレイしないとならない。


 シークレットエンディングは、TVの前のソファに座って番組を最後まで見続けるというのが条件。詳しい情報が無いので正確には解らないが時間としては2時間位は掛かるらしい(未検証)。画面に放送終了を意味するノイズが走り、ドアからノックの音が聞こえてきたら完了している(なのでソファに座った状態で放置という形にすれば良いだろう)。