更新履歴 | 21/09/07 レビュー掲載 (V1.4) |
販 売 | 制作・販売: EMIKA_GAMES 発 売: 2021/07 日本代理店: 無し 2021/09/07 現在 Steamにて定価 930円で販売中 |
概 要 | EMIKA_GAMESより第3作目となる作品。前2作の好評を受けて短いインターバルでのリリースとなっている。 プラットフォームはWindowsのみ。 itch.ioでの購入にてSteamのキーは受け取れない。これを書いている時点では発売されたばかりだが、itch.ioでは既に50%以上のセールも行われたりしている。あるいはシリーズを一つも所持していないのならば3作品セットもお得である。 ある出来事によってゲームの中身とは関係が無い件で有名になってしまったのでそれについて少々。キッカケは作者がTwitterにて21/08/27にSteamの返金システムに対しての不満を述べた事に始まる。Steamではプレイ時間が2時間以内(&購入から2週間以内)ならば原則的に返金を受け付けてもらえるが、それだとこのゲームの様に2時間未満で終了してしまう作品においてプレイを終了させた後にでも返金を申請することが出来てしまう。その件数があまりにも多い為に(しかも面白いとしてレビューを書いてくれている人まで返品してくる)もうやる気が無くなってしまい、ゲーム開発からの引退を考えているという発言であった。この手の不満は過去にも別のインディーズから度々挙げられてはいたのだが、今回はショックで引退を示唆という所が注目されたのか、海外のゲームサイトでも大きく採り上げられて話題となってしまう。 これに対して「クリアしてから返品するとはそれは酷い」といった批判、そして作者への励ましの発言が増える一方で、自分の作品を有名にする為に仕掛けた話題作りとか、本当にそんなに損をしているのか証拠が無いし嘘の作り話といった作者への非難も相次ぎ、現時点では掲示板の中身は大半がゲームの中身とは関係ないこの件に関する賛否の議論で溢れている状態となっている。 |
STORY | 旧ソ連において子供達を預かってサマーキャンプが行われていた"Yunost"。しかし1958年のある日、子供達やカウンセラーなどが全員消え去るという事件が発生。残された証拠品から一人の子供が容疑者として浮かび上がったが、その子供も行方知れず。誰も見付からないままに事件は迷宮入りしその後キャンプが再開されることは無かったが、現地にて何やら怪しげな物を見掛けたと言った心霊現象的な報告は数多く挙がっていた。 それから50年後の2008年。ビデオブロガーとして各地の心霊スポットを撮影して回っているAlex Mortonは、ファンからのリクエストに応じてこのキャンプ場を次の撮影場所に選択。廃墟となっている"Yunost"を探索に向かう。 |
パッチ&トラブル関連 |
最新はV1.4。Steam版はSteamworksとの連係(クラウドセーブ, トレーディングカード, 実績機能等)が絡んでくるので、そちらだけ更新されてバージョンが異なる可能性もある。 *セーブファイルの場所は C:\ユーザー(Users)\(ユーザー名)\AppData\Local\Summer_of_58\Saved\SaveGames の中(隠しフォルダを表示する設定にしておかないと見えない)。 ※ ゲーム起動時にSteamVRが起動してしまう(ランダム発生) ライブラリからゲームを右クリック → プロパティ → 「一般」タブ → 「起動オプション」の欄に -nohmd と入れて閉じる。 |
シ ス テ ム |
・難易度は無し。アイテム持ち越しの二周目やクリア後の別モードは持っていない。 ・セーブはオートセーブ。チャプター選択が可能。 ・現在の目標の参照機能は無し ・アイコン表示や矢印による進行方向ガイド機能、ミニマップを含めてのマップ表示機能は無し ・翻訳用のアイテムを持っていればロシア語の手記類に字幕は出る(日本語には非対応) *キーアサイン不可×, マウス感度設定不可×, マウス反転不可×, 明るさ調整可○ *一人称視点固定, FOV調整不可× *スプリント○, 屈み○, ジャンプ× *照準(カーソル)有り(小さなドット) *コントローラー非対応× *Steam実績対応 1作目には存在していたキーのアサインやマウスの感度など非常に基本的な設定が無くなっている。用意されている1作目と無くなった2,3作目では使用しているUE4のバージョンが異なっており、その影響で1作目用に制作した(or外部購入した)変更用のプログラムが動かなくなってしまったというのは考えられる。なお今後のアップデートにて対応したいという作者からのコメントは見られる。 |
BASICS |
ホラーとしての特徴はジャンプスケアが強化された所。前作Find Yourselfもジャンプスケアに寄った作品であったが、今作は更にそこに力が入っている。発生数も結構多いし、演出としても強烈な物が増えた。ジャンプスケアを重視した作品ではその事がプレイヤー側に知られると「ここで来るんじゃないか?」と身構えられてしまい、最大のポイントである不意討ちが難しくなってしまうという問題が有る。だがこの作品では「上手く気を逸らしてからの不意討ち」といった感じで発生のタイミングも工夫されており、その意味でも良く出来ているという感を受けた。ジャンプスケアの出来が優秀なホラーゲームは絶叫系配信者に人気が出るので、これも採り上げる配信者や再生数が多いというその評判には納得出来る(加えて先に書いたSteam返金制度の件で一躍有名となったので、今後は更に採り上げる配信者が増える可能性が高い)。 一方でジャンプスケアは嫌い・苦手というホラーファンには向かない作品となったのも事実。苦手な方は本気で驚かせようと目論んでいるシーンが増えているので注意。 前作との違いは雰囲気的な怖さの方も強化された所になる。今回は幽霊が出るという心霊スポットにて一人だけで撮影を行い心霊現象を捉えるというのが目的となり、他にも廃病院など気味が悪くて怖い場所としては定番のロケーションが採用されている。ビジュアル面では夜間は暗視カメラに頼る形になり、フラッシュライトで限定的な部分のみを照らせるのとは怖さという観点からすると一長一短だが、「緑一色でディテールは損なわれるが全体が比較的鮮明に見える」という特徴をホラー演出に活かしていると感じられた。 |
GAMEPLAY |
プレイ時間は1時間半程度(作者自身も90分程度と述べている)。エンディングは一つだけでリプレイ性もほぼ無し。 2作目に導入されていたゲームオーバーや死亡の概念は無くされており、クリアにはアクションやステルスなどを成功させないとならないといったスキルを要求されるシーンも出て来ない。1作目と同じくウォーキングシミュレーター的な色が強くなっている。 何等かの行為を行うと周辺が変化するので、それを連続して達成して先へと進めて行くという基本のシステムは変わらず。有った物が消えたり無かった物が出現したりというパターンで、Find Yourselfよりは複雑化したがLocked Upほど多段階でややこしくはないという設定。そこにアイテムを探してきて使ったりという一般的なパズル要素も出て来るというスタイルである。 ・インタラクト可能なアイテムには手形のアイコンが出る ・フラッシュライトのバッテリー交換は必要なし ・アイテム類は実際に手に持っている(見えている)状態になるケースと、見えないが持っている事になるケースがある ・ヒント表示があるので下段のメッセージは良く読む(目的達成までそのエリアから出られなくなる等もあり) この「何がフラグとなるのか?」については相変わらず解り難い箇所も存在しており、必死に考えた挙げ句「単に移動してから戻ってくるだけ」だったとか、あるいは単に待っていれば時間経過で周囲が変化なども発生。しかし長時間詰まるケースはほぼ無しと思えるので大きな問題とはならないはず。 今回のストーリーはユニークで途中から想像もしていなかった方向へと転じて行く。ネタバレになるので詳しくは書けないが、恐怖感を軽減する様な方向の内容へと変わって行くので怖がらせるという意味ではマイナスなのだが、意外性という観点からは面白いと感じられ差し引きでは総合プラスと評価したい。なおそれに関連してドキュメント(文章)を読むシーンはかなり増えている。 |
GRAPHICS & SOUND |
Unreal Engine 4を使用。グラフィックス設定のプリセット無し。個別の設定項目は7個。画面モードは排他的フルスクリーン, ウインドウ。 使用されている2D&3Dのアセット類は全て無料かショップで購入された物のはずだが、今回のロケーションは作者の地元であるロシア(ソ連)であり、ロシア語で書かれているポスター等が数多く用意されているので見た目としては新鮮。使用するアセット類が段々と高価な物になっていると考えられ3Dモデルのクオリティなども上がっている。 ボリューム調整可(ただし個別調整は不可), 3Dサウンド対応, ボイスはほぼ無し。BGMは少なく、エフェクト系の音数は多い。やたらといろいろな場所でホラー系の効果音が鳴っているという特徴は今回も同様。ボイス関連をより充実させるべきなのだろうが、その辺はもっと売れて稼いで優秀な声優を雇える様にまでなるのを待たないとならない。 |
BOTTOMLINE |
これまでに同社がリリースしている3作品の中では一番優れているという評価である。 ジャンプスケアがメイン要素となっているのは確かでその出来映えも良いのだが、同じホラーファンでもジャンプスケアに対する見方は異なるのでそれによって評価は変わってくる。ジャンプスケアが好きでその手の怖さを求めている方にはお勧め出来る作品。グラフィックスのクオリティも向上し雰囲気的な怖さの方も過去作に比較して良くなっているので、ジャンプスケアは好きでは無いが特に抵抗は無いという人でも楽しめると思う。 これまでの2作では謎解きをしながら進めて途中にホラーイベントが挟まるという感覚が強かったが、今回は探索の合間に結構な割合でジャンプスケアのイベントが発生する為に、謎解き(フラグ探し)をしながら先に進めるという要素はこれまでの作品における“主”から“”従へと格下げされているという印象である。パズル要素が強い作品でも無く、ジワジワと静かに怖がらせるというタイプの物を求めているのならばこれは違うと言えよう。 |
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ヒント&解答 |
以下ネタバレとなるので反転表示。 ※ 全般的なヒント ・本文でも触れたが今作では「単に移動する事がフラグ」のケースが増えている。例えばA地点からB地点へと向かって、その後再びA地点に戻ってくれば話が先に進むなど。よって何をすれば良いのか解らず詰まったのなら、インタラクト出来るオブジェクトを探しながらいろいろと周囲を歩き回ってみるという方法が有効。また単なる時間経過での進行、イベントが発生すればそれでフラグが立つというケースも多いので、これもまた何か起きるまでその辺を歩き回ってみるというやり方を試してみる。 ・主人公の独白がヒントになっている事が多いので下段に何か出たら見逃さない様にする。再表示は出来ないという事もあるので。 ・これまでの作品でもそうだったが、音がした方向へと行ってみるというのがフラグと関連している事も多い ・これまでの作品ではほぼ無かったように思えるのだが、屈まないとインタラクト出来ない、もしくはやり難いというオブジェクトが有るので注意 ・特別な反応(メッセージ等)が出ないオブジェクトが結構有るが、これ等の多くはSteam版における収集系実績の対象物であるので気にしなくても良い ※ ストーリー おおまかな設定としては、キャンプの主催者であった女性Mariaの息子Ivanは病にかかっており、それは心臓移植手術を施す以外の治療法が無かった。そこで彼女は病院の医師Alexey Sergeevichと手を組み、彼の「キャンプに来ている子供達から臓器を抜き取って闇市場で売り捌く」という計画に止むなく協力する。MariaのターゲットはIvanとの臓器移植にて免疫反応の起き難い体質である少年Yakovで、彼とIvanとの移植手術を遂行するというのが取引条件。しかし計画の実行前に二人の会話を聞いたYakovはそれに気が付き、子供達の誘拐実行当日には隠れてそれを逃れていた。以降は自分を犯人だと疑う警察から逃れる為に外には出ずに施設内に留まっており、その中で仲間になった幽霊達に協力してもらって調査に来た人間達を脅かして追い払っていた。 だが最終的に明らかになったのは実はIvanは1950年の段階で死亡しており、それが元で発狂したMariaは息子が生き続けていると信じ込んで行動していたという事になる。協力体制にいた医師Alexey Sergeevichは当然その件を理解していたはずだが、子供の臓器を入手するのにMariaが協力してくれるというならその方が都合が良いとして、Ivanが既に死んでいるという事実をあえてMairaに認識させるという事はしなかったのだと考えられる。そして子供達(カウンセラー達も含めて)の誘拐(実質殺人)の実行時には、もうMariaは用済みだとして一緒に眠らせたのだろう。そして病院内のあの一室に閉じ込められた状態で、息子が実は死んでいたことを知らされたMariaは絶望して自殺した。ただし復讐の為に蘇る事を誓って。 解釈が難しいのはYakovの状況である。彼が物理的にこの現実世界に干渉出来る能力を持っているのは明らか。しかし事件の起きたのはAlex Mortonが訪れる50年前の話で、その後ダクトの中などであの施設内に住んでいたと言われても、食料などはどうしたのかといった疑問もあるし、なにより当時12歳位だったとして今は60過ぎの年齢という事になる訳でそれは不自然に思える。 ここからは想像という事になってしまうが、幽霊として出現する中には当時のままの子供もおり、それを考えるとYakovは普通の生身の人間ではなく、姿形は当時の子供のままで半分幽霊の様な状態?で存在しているのではないだろうか。幽霊達と一緒に協力し合って生活しているという点からもその様に推測出来る。この考え方ならば50年間に渡る生活必需品の調達に関しても考慮しなくて良い。よって彼は発見されたら警察に捕まると考えているが、現実的には時効という件もあるし単なる子供の発想という風にも捉えられる。 Alex Mortonの立場からすると、彼からしても現在60過ぎのYakovが実際にここで生きているとはちょっと思えないだろうし、子供のままで幽霊の様に存在しているのではないか?と考えていたという方が自然。超自然的存在に興味がある訳だし、彼がそういう発想をする事に違和感は無い。Alexが証拠を見付けて来るとして実行した一連の行為は、Yakovが無実だと証明して現実世界にて警察に捕まらない様にする為ではなく、Yakovを安心させていわば“成仏”させてやるのが目的だったと私は見ている。証拠を発見したという成果に対してYakovからは返答が無かったという件に関しても、それを知って安心し成仏して消え去ったという風にも考えられる。 ※ クレジット後の展開 流れとしては最後にAlex Mortonから次の探検対象となっている心霊スポットに向かうという宣言が出て、クレジットには次作として予告されているFrom Day To Dayの映像が流れる。その後Alexは見知らぬ場所で目覚めて、もしかしてこのSummer of '58で遭遇した幽霊達がこの場所まで付いてきてしまったのか?といった疑念も見せる。 これだけ見ると次作FDTDがAlexが予告していた次の心霊スポットという風にも受け取れるし、また最後に階段下に登場するMariaに似ている幽霊はFDTDのデモの中にも出て来る。しかしFDTDのストアの説明を読む限りでは設定が異なる様に思えるしAlexの名前も出て来ない。なのでFDTDがAlexが登場する予告された続編なのか、今回のエピローグとなっているこの話はFDTDとはまた別の作品なのか、現時点では何とも言えない状況にある。 |