The Last Show of Mr. Chardish


追加情報&ヒント

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更新履歴  22/09/24 レビュー掲載 (バージョン不明, 実行ファイルのプロパティでのバージョンは 4.26.0.0)

販  売  制作・販売: Punk Notion / Hydra Games S.A.
 発 売: 2020/11
 日本代理店: 無し

 2022/09/24 現在 Steamにて定価 1,010円で販売中

概  要  Punk Notionはポーランドの会社で設立は2018年。Weaklessに続いてこれが2作目となる。元は『Ars Fabulae』というタイトルだったのだが意味が解らないという声もあって(ラテン語, The art of the story的な意味)、パブリッシャーとの契約後に変更を勧められてこの名称へと変わっている。

 プラットフォームはWindows, Nintendo Switch、 PlayStation 4、 Xbox One。日本展開はされておらず海外コンソール版に日本語が収録されているのかも判らないので、日本語でプレイしたいのならばPC版が確実。


STORY  1956年、イギリスの地方Lindfieldに劇場を起ちあげた劇作家兼役者のRobert Chardish。彼は自身の演出による舞台劇を幾つか公開しその革新性により時には大きな話題ともなっていたのだが、その後は廃れて劇場も閉鎖されてしまっていた。

 設立から20年後の1976年、彼の病死をきっかけに当時の共同設立者であり役者でもあったが、ある時期から土地を離れて関係を断っていた女優Ella McLaneが廃墟と化している劇場を訪れる。


パッチ&トラブル関連
 バージョン表記が無く、アップデートのお知らせも見当たらないので現行のバージョンは不明。発売後に修正された事はある様だ。

 Steam版はSteamworksとの連係(クラウドセーブ, トレーディングカード, 実績機能等)が絡んでくるので、Steam版だけ更新されて他のサイトとはバージョンが異なる可能性もある。


 障害関連の情報はほとんど無し。デモの位置付けで最初の章を収録しているThe Last Show of Mr. Chardish: Act Iが無料で用意されているので、自分のPCでちゃんと動作するのか確かめたいならこれを利用すると良いだろう。

*セーブファイルの場所は以下の中(隠しフォルダを表示する設定にしておかないと見えない)
 C:\ユーザー(Users)\(ユーザー名)\AppData\Local\ArsFabulae\Saved\SaveGames

シ ス テ ム

・難易度は無し。アイテム持ち越しの二周目やクリア後の別モードは持っていない。
・セーブはオートセーブ(1箇所のみを上書き)。クリア後にチャプター選択がアンロックされる。
・現在の目標の参照機能無し
・アイコン表示や矢印による進行方向ガイド機能、ミニマップを含めてのマップ表示機能は無し
・字幕有り(日本語対応

*キーアサイン可○, マウス感度設定可○, マウス反転可○, 明るさ調整可○
*一人称&三人称 視点はパートによって固定される仕様, FOV調整可○
*スプリント○, 屈み×, ジャンプ○
*照準(カーソル) ON/OFF可
*コントローラー対応○
*Steam実績対応


・ドキュメント類(メモ)はプレーンテキストへの変換が可能。後にメインメニューからも参照する事が出来る。
・日本語翻訳はしっかりしており怪しげな面は感じられない(設定画面の項目には変な物も)

BASICS
 今では廃墟となっている劇場へと訪れた女優エラ・マクレーンが、劇場内を探索しながら過去のチャーディッシュの演劇や自身との関係について思いを馳せるという形で進められるストーリー重視の作品。ただし一般的なウォーキングシミュレーターではなく、回想のシーンでは別ゲームになるというデザインである。

 劇場内の探索時は一人称視点固定でエラとしてプレイ。過去のメモ書きや想い出の品などを見付けて行くという風に進められるが、チャーディッシュが脚本を書いて演じた劇にて使われた仮面(マスク)を手に取るとその演劇の世界へとシーンが切り替わる。このパートではプレイヤーが操作するのはチャーディッシュとなり視点は三人称へと変更。正確に言えば全ては演劇としてステージの上でのみ演じられていた物だが、それを「イメージとして実際にはこういう事が起きている」という風に各演劇の世界である3D空間を移動しながら進めて行く形になっている。この様に計5本の演劇の世界を順番に体験していくパートが、現在におけるエラの探索の途中に挟まりながら続けられる。なおそうなると当然連想されるのは設定や進行の形式が非常に似ている名作What Remains of Edith Finchだが、やはりこの作品には強い影響を受けているそうだ。

 誤解の無い様に書いておくがエラは仮面を付けてみてその演劇に関連する事を回想したりしているだけであり、チャーディッシュのパートはメタ視点からプレイヤーがゲームの形式で演劇の世界を体験しているという設定である(つまりゲーム内世界においては一瞬で終わっている)。チャーディッシュは魔法を使える人間だったので「装着するとその演劇世界を体感する事が出来る仮面」を作って残しておいたとか、あるいはエラは超能力者で手に取ったアイテムからそれに関連するビジョンを体験する能力を持っておりそれを使っているといった話では無い。


 ストーリーの進行はエラの探索の合間にチャーディッシュの生前最後となったインタビューを携帯カセットプレイヤーで聞きながら(自動再生)という形式になっており、他には多数のメモ, 手紙, 資料などによって補完するというやり方を採用。更に5つの世界には過去の音声データが多数散らばって残されており、これ等を探し出して再生する事でも当時のより詳細な状況を知る事が出来る。ただしこの音声データの場所はシークレット的な扱いの物も多く全部回収するのは難しい。

 ストーリーの内容はチャーディッシュと言う天才的な演劇作家の栄光や苦悩といったテーマを軸にしており、ボリュームも少ないし深く語るとネタバレにもなってしまうので、ここではそのストーリーには感慨深い物が有るし合格点を与えられる出来映えとだけ書いておく。だが一方で問題点や物足りなさも感じられて素晴らしいといった高いレベルには達していないのも事実。

 まずはストーリー内容の展開が簡素で詳しく語られないのはマイナス。ボリューム不足でありもっと詳細ならばより良い物になったはずである。予算不足でこれ以上は出来なかったという可能性は高くそうだとするなら残念である。次にストーリーを理解する為の体系的な整理が成されていないのが理解の障害となってしまっている。進行はリニアなので体験する5本の演劇の順番は固定。しかしこれ等5本の演劇は上演時期(初演)の順番になっておらず、実際には初演が遅い物から逆順に並んでいる(最後に体験する演劇が最も初期の作品である)。初演の日時は開始時に表示されるがそれを記憶していてキチンと逆順だと理解出来るプレイヤーは少ないだろう。同様にストーリーを理解する為の手紙類も入手の順番と時系列は揃っておらず(主に各演劇のパートと連動してその時期の物が入手されるから)、これもまた後で読み返す際には理解の妨げとなる。手紙類を時系列に並び替える機能が有れば良かったのにと思える。

 ストーリーを補完する音声データ関連も脇道を探さないと見付けられないという件も問題。ストーリーを重視するなら容易に見付けられる場所に配置してなるべく多くのプレイヤーに聞かせるべきである。探索させる事でプレイ時間を延ばそうという意図(あるいは発見を実績と結び付けるのが狙い)は短いゲームなだけに悪くは無いアイディアだが、脇道探索を促す収集アイテムは別に設けても良かったと感じられる。

 そして個人的には特に物足りなさが残るのはエラに関して。チャーディッシュの人生について語られるのがメインなのは解るのだが、それに比してエラの人生とか彼女の考え方といった件についてはほとんど何も語られない。チャーディッシュの人生に大きな関わりを持っていたエラだが、彼女が共同設立者として劇場を興した後にチャーディッシュの元を去ってどうなったのかという事実については明かされるが、それについての行動の理由とかエラの感情の動きなどは説明されないのである。またエラのパートを操作中にエラ自身が発言(独り言)を多く喋る訳でも無いので、空気の様な存在となっており不満が残る内容であった。

GAMEPLAY
 ボリュームは3.5時間程度でクリア。2時間程度でクリア出来てしまうという件に不満も出ている作品なのだが(当初は今よりも定価が高かったのも影響)それについて解説すると、演劇パートでのルートが解り辛いとかゲームプレイの難易度が高い設定では無いので直線的に進んでしまえば2時間程度でのクリアも容易な設定。対して私の様にストーリーに関連する音声アイテムをなるべく探そうと脇道をチェックしたりシークレットを探したりする姿勢だと当然時間は延びる。または実績解除を目的とする姿勢でも同様に時間が掛かる様になっている(各世界内毎に音声アイテムを全て回収するという実績が存在)。


 エラ(一人称)とチャーディッシュ(三人称)のパートでは若干の差は有るが、インタラクトが可能なオブジェクトに対してはカーソルの形状が変化する方式で、またある程度離れた位置からでもその変化が見てとれるという親切な設計。三人称となる演劇世界のステージでは360度のカメラ回転が可能。後退の操作ではこちらを振り向く動作を行う仕様。進行ルートに関しては迷わせる要素はほぼ無く解り易い。だがマップ自体は結構広く何も起きない場所をただスプリントするシーンも多いのにスプリント動作の切り替えは出来ない仕様である。

 各世界はそれぞれに全く異なった演劇をテーマにしたパートになるのでバラエティに富んでおりここは評価出来るところ。単に前へ前へと進んでいくというステージも有れば、パズルを解いてルートを作るのが目的という物も有り。ペアのロボットの片割れとしてプレイする「Symmetry」の世界などは特にユニークである。パズルはそのステージの世界観に沿った物となるのでシュールで奇抜な印象の物も出て来るが、概ね簡単で長時間解決に悩まされる可能性は低い。見方を変えるとパズルのファンには物足りなさが感じられる難易度となっているとも言える。

 What Remains of Edith Finchとの大きな差として、フィンチ家の方はゲームプレイのパートが実に面白かったのに対して、この作品のチャーディッシュとなってプレイするパートは特別に面白いというレベルには達していない。バラエティさは評価出来るが純粋なゲームプレイとしては褒められるというクオリティでは無く、中でも「Anger」は単調に過ぎる(ただしこの演劇は不評だったというストーリー上での設定なので、その意味では正しい表現となっているとも取れる)。


 ステージ中においてはアクションゲームとしてのスキルを要求されるケースも存在している。例えばプラットフォーマーとなっている箇所では失敗によるゲームオーバーの概念も有り(一般的な移動中に段差の端から落下死などはしない)。何の問題もない位に簡単な物ばかりとは感じなかったが、難所が在るなら批判を受けたりもするはずだが掲示板を見る限りではそういった抗議等は起きておらず、アクションが苦手な人でも何とかなるレベルには収まっていると考えられる。

 一つ特殊な問題としてこのゲームではユニークなビジュアルを使用しており、ちょっと説明し難いのだがグラフィックスの中に視界が突っ込んでしまう事態が発生する。具体的には鳥になって飛行するパートにおいて、方向を誤ってこの「グラフィックスの中に突っ込んでしまう」が発生すると周囲が見渡せずに脱出が出来なくなりチェックポイントから再ロードという羽目になったりもする。


 エンディングは2つで最後の選択肢によってのみ決まり途中の過程は関係しない。これも選択した物に応じてその後のエラはどういう風になったのかという所までは語られないので呆気なさが残る。

GRAPHICS & SOUND
 Unreal Engine 4を使用。グラフィックス設定のプリセット無し。個別の設定項目は6個ほど有り。画面モードは排他的フルスクリーン, ボーダーレスフルスクリーン, ウインドウの3種類。

 グラフィックスは非常に特殊な印象を与える個性的な物で、VRを利用して描かれた非VRのビジュアルとされている。原理は良く理解出来ない面もあるのだが、3Dのポリゴンで各オブジェクト類を作らずに筆で描いた無数のパーツを組み合わせて3D的な表現を実現しているそうだ。解説動画なども公開されている  Creating Game Characters in VR 。イメージとしては絵筆で描かれた絵画(油絵)の中に入り込んだ様な感じで、とてもユニークな見た目をしているというのは確かである。欠点としては先に書いたように場所によっては視界が絵筆の描写の中に突っ込んで前が見えなくなってしまう事があること。

 アート系のビジュアルなので良し悪しというよりは雰囲気を気に入るかどうかになり、褒めている人はかなり多いものの個人的にはそれほど気に入らず。


 ボリューム調整可○, 3Dサウンド対応, ボイス有り。登場人物は少ないがボイスのクオリティは高い。BGMはまるで異なる世界で成り立っているので多彩なタイプが混在しているが全般的には良い出来栄えである。

BOTTOMLINE
 この作品をプレイしようと考えたきっかけはWhat Remains of Edith Finchに感銘を受けて、何かこれに似ている作品はないのか?と探していたら行き当たったという理由からである(正確にはゲームの進行形式などのデザインはかなり良く似ているが内容や雰囲気は別物)。その意味ではちょっとプレイ前の期待が大き過ぎたかなという感はあり、これはこれで良い出来なのだがフィンチ家には遠く及ばないというガッカリした気持ちは率直に言えばある。

 定価も下がっている(既にセールも多い)のでお勧めではあるのだが、フィンチ家を未プレイならばそっちを先にやるべき。フィンチ家を気に入ったのならば似た感じの作品としてこちらにも手を出してみるという順番で良いだろう。


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ヒント&解答

 以下ネタバレとなるので反転表示。



※演劇の実際の順番(初演の日付)


Solitude 57/04/13
Symmetry 56/12/07
Anger  56/08/16
Ascention 56/08/01
Daydreaming 54/07/08




※ロボット操作のパート

 最初は戸惑うかもしれないが、周囲の動くプラットフォーム&相方のロボットは自身の動きに連動して動作する。ただしこれは方向が入力されていれば自分が停止していても動くので、壁等の自分の動きが止まる場所を利用して相方のみを動かすという風にして狙い通りのルートを動かす様にする。




※鳥の飛行シーンでの操作

 鳥になって飛行するシーンが出て来るのだが、ここでは操作が上下反転する(昔の戦闘機操作におけるジョイスティック風に後退入力で機首を上げる)。やり難ければここだけ上下の操作を反転させるという手もあり。またルートを逸れてグラフィックスの中に入ってしまい周囲が見えなくなったら最後のチェックポイントから再開した方が早いかも。


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