This Strange Realm Of Mine



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更新履歴  22/09/07 レビュー掲載 (V1.12)

販  売  制作・販売: Doomster Entertainment
 発 売: 2017/07
 日本代理店: 無し

 2022/09/07 現在 Steamにて定価 1,010円で販売中

概  要  スウェーデンのWildemar Doomgriever氏による単独プロジェクト。彼は同国のStarbreeze StudiosにてChronicles Of Riddick: Assault On Dark Athena, Syndicate(2012)の開発に携わった経歴を持つ。独立してからは何本か有料の製品版ゲームをリリースしており好評な作品が多い(Koala Kids, Oh No! Bugs!等)。だがこのゲームはそれまでの物とはかなり毛色の異なった作品になっている。

 プラットフォームはWindows, Mac。コンソール版としては数年後にNintendo Switchに移植されている。

STORY  死亡してLimbo(天国と地獄の中間の場所)に囚われた主人公はそこで酒場を営むUlrichと出会い、その導きによって人生の意味を考える数々のミッションに赴く事になる。


パッチ&トラブル関連
 V1.12が最新(2019年11月9日)。ただ掲示板には2022/04/17に一部のバグ修正等を行ったという記載が有り、これはバージョン番号に反映されていない様だ。

 Steam版はSteamworksとの連係(クラウドセーブ, トレーディングカード, 実績機能等)が絡んでくるので、そちらだけ更新されて他のサイトとはバージョンが異なる可能性もある。


*セーブファイルの場所は以下の中(隠しフォルダを表示する設定にしておかないと見えない)
 C:\ユーザー(Users)\(ユーザー名)\AppData\LocalLow\Doomster Entertainment\Realm


 掲示板を見る限りでは上記V1.12のリリース後は特に大きな問題は発生していない模様。後は調べるとしたら制作者のDiscord(全ゲームを扱っている)を当たってみるとかになる。

シ ス テ ム

・難易度はEasy / Normal / Hardの三種類。途中での変更は出来ない。アイテム持ち越しの二周目やクリア後の別モードは持っていない。1回クリアするとチャプターセレクト機能がアンロックされる。また表示オプションにてUltraGoreが選択可能となる。

・セーブはオートセーブ(1箇所のみを上書き)。ESC画面からそのチャプターのリスタート可能。
・現在の目標の参照機能有り
・アイコン表示や矢印による進行方向ガイド機能、ミニマップを含めてのマップ表示機能は無し
・字幕有り(ボイス無し)

*キーアサイン可○, マウス感度設定可○, マウス反転可○, 明るさ調整不可×
*一人称視点固定, FOV調整可(60〜85)
*スプリント○, 屈み×, ジャンプ○
*照準(カーソル)有り
*コントローラー非対応×
*Steam実績対応


・難易度表記は易しい方から “I dislike resistance”, “I’m okay with resistance”, “I like a challenge”

・キーのアサインはUnityデフォルトのランチャー画面にて行う。よって指定出来ないキー(組み合わせ)なども出て来ると思われる。

・Motion Sickness(3D酔い)を軽減する設定も選択出来る

・メニュー項目の表記がスタンダードな物では無い事があるのでやや解り難い(dissociateがExitとか)

・ESCキーで表示される画面に(概略程度ではあるが)目標は記載されている。なおこの画面右下に出ている表記はゲーム開始時は“Pacifist”(平和主義)になっており、これは実績“Pacifist”(一体の敵も殺さずにゲームをクリアする)が継続しているのかのチェック用だと考えられるので解除するつもりがないなら気にしなくて良い。

BASICS
 ストアでの紹介文から受ける印象とは大きく異なっていた作品。FPSに一風変わったテーマを付加したゲームの様に見えるが、実際にはFPSのパートの方が“従”と言える様な内容であった。基本としては死亡してしまった主人公がリンボに存在する酒場へと辿り着き、そこで主のUlrichに対して様々な質問をぶつけていく中で、生・死・神・悪魔・夢・時間・認識・生きる意味などについての考察を行っていくという哲学的なストーリーとなっている。

 より理解を深める為にUlrichの勧めに従ってある種のテーマに沿った世界へと訪問するという形で進行し、そこではFPSとして敵を倒していくスタイルもあれば非戦闘タイプのチャレンジを行うという物も有り。更には2Dのゲームになったりとバラエティに富んだマップが用意されている。そして幾つかの世界からはそこで遭遇した住人を酒場へと誘って連れて来られる様になっており、彼等とは酒場へと帰ってくる度に新しい話題で会話をする事が可能。例えば社交不安症(対人恐怖症)をテーマとしたマップではそれを克服する為にある種の挑戦をしないとならないが、ここから連れてきたキャラクターとは以降人と人の関わり合いをテーマにした会話がなされていくといった具合。

 哲学的考察の内容はかなり難解な面も持っており、それはマップ間に表示される独白やマップ内の壁等に書かれている文章においても同様。主のUlrichとの会話は特に難解でまた分量も結構ある。定期的に会いに行く事になる“D”なる人物との会話も同じ。ただしマップ内で遭遇するキャラクター達は酒場に連れて来なくても良いし、連れて来たからといってマップから戻る度に逐一話し掛けないとならない訳でも無い。必須の会話でも内容をスキップして飛ばせるので哲学的なコンテンツにあまり触れなくても進める事は出来るが、それだと普通のFPSになってしまうのでこのゲームをプレイする意味が薄れるという話にはなってしまう。

 それと考察の内容とゲームプレイ自体は別物という扱いがずっと続くが、終盤になるとそのテーマに準じた展開になってくるのである程度はストーリーの進行を理解しておいた方が楽しめる。

 会話を含めてゲーム中には選択肢有り。明確には示されないが選択肢になっている状況も存在している(エンディングの判定に影響)。


 普通ならここまで哲学的な考察にこだわるのであれば、各世界では探索やパズルをメインとした戦闘無しのゲームとして表現するところだと思うのだが、そこをFPS等のアクションゲームに合体させた点にこそユニークさがあるとも言えるし評価も出来る。非常に変わった似ている作品を探すのが困難というゲームでありそこは人を選ぶというのも確かだが、その極めて特異な件において価値が見出せる。無名ではあるが「こんな内容のゲームが在るのか!」と驚かされた。

GAMEPLAY
 難易度Medium(“I’m okay with resistance”)にてクリアまでは4時間半程度。キャラクターに話し掛けた際に表示される文章を読んでいる時間が結構長いので、それ等を全部飛ばしていくなら初回でも半分程度で終えられるだろう。

 FPSのパートに関して、先に問題点から列挙。武器は5種類で近接, ハンドガン, サブマシンガン, ショットガン, ライフルなのだが、使える武器はマップによって限定的で例えばライフルが使える場所は一つだけしかない。よって武器の使い分けという点では面白味が薄い。打撃攻撃のみの敵が多く、こちらも打撃武器のみor弾節約とすれば近接戦となるのだが、その際の間合いの感覚が変で慣れるまでは苦労する事になる(FOVを拡げると発生するゲームも有るがこれはそうではない)。かなり遠くからでも敵の攻撃が当たる感じで、同じくこちらからも離れている距離から当てられるという感じ。もっと銃撃戦の割合を増やした方が良い。

 弾薬はそれ程多くはないのだが、余裕がある際には打撃攻撃のみの敵に対して一方的に遠方から撃てるので簡単になってしまう。更に射撃で的に当てる事が必要な箇所では詰まない様に弾薬がリスポーンする設定にされており、これを利用すれば弾薬を貯めることも出来てしまう。後はダメージエフェクトが非常に大きく全画面を一時的に覆う様になるのもやり過ぎと感じられた。難易度は終盤のみ難しく、他は手応えが弱く緊張感が保たれない。プレイ前に難易度Hardでは相当な高難易度になる箇所有りという情報を得ていたので(クリアが実績の一つなので情報が幾つも出ている)Mediumにしたが、それだとバランス調整が上手く行っていないのだと考えられる。


 逆に良い点としてはレトロ系では珍しいが派手なリコイルもあって制御しないとならず射撃の感覚は合格点。またリロードでクリップごと捨てるという仕様になっており気軽には行えず、戦闘の真っ最中にリロードの際に間が空いてしまうという危険性あり。また完全に弾が無くなった際に武器の自動持ち替えも無い為に弾切れが発生するとかなり焦らされるなど、その辺りは緊張感を生んで面白い。

 極端というレベルで雰囲気が異なるマップが用意されている点はプラス。敵も種類は多いが上記の様に打撃オンリーの敵が多過ぎるのは減点対象。特に終盤になってテーマとなっている哲学に沿った怒濤のストーリー展開&それに沿ったマップ構成はとても良く出来ているという印象。

 総じてFPSとしてのパートに限れば普通の出来映えという結論で、特に悪くは無いし短いので冗長さも感じないとは思うが、FPSのパートだけを取り出してお勧め出来るのかとなると答えはNOである。あくまでも哲学がテーマのストーリーとセットで活きる設定だと言えるだろう。


 パズルも一部にはあるが、大半はバラバラになっている回路や絵画のパーツを回転させて正常な状態にするという物で難しくは無い。一人称視点での障害物を避けるタイプのミニゲーム等は繰り返しリトライ出来る形式。2Dスタイルでのゲームに切り替わるシーンでも特別に難しいという印象は無かった。


 エンディングは実績による区分によれば5種類。プレイ中にどの様な選択肢を採ったかで決定される(会話時の選択肢とは限らない)。最終的にVerdict(評決)が表示されるので、ここでの文章によって何が判定の基準になっているのかはある程度推測が可能。もうちょっと書くと評決の文の数と同じく9つの判定基準がゲーム内に用意されており、各判定項目を2種類の判定のどちらに幾つ寄せたかで決定される。問題はリプレイ時は会話パートなどスキップ出来る箇所が多いし、それならばFPSのパートも短いので一周に掛かる時間はそれ程でもないのだが、FPSとしては上記の様に普通の出来なので、作業感が付き纏って個人的には何回もの繰り返しプレイには堪えないという所。

GRAPHICS & SOUND
 Unityを使用。グラフィックス設定のプリセット4種。個別の設定項目は無し(デカールの量を設定出来るのみ)。ウインドウ表示可。Unityのデフォルト装備のランチャーにてグラフィックスの設定は変更出来る。

 ローレゾでマップは3Dだがキャラクターは2Dのスプライト表示。味があると言えばそうだが、シリアスな内容からすると普通の(高度な)グラフィックスでやった方が適切という感は受けた(予算的な問題なのだろうが)。例えば会話中のキャラクターの表情などに明確な変化が付けられないというのはマイナスである。


 ボリューム調整可○, 3Dサウンド非対応, ボイス×。台詞が多いのでボイスは有った方が良いがやはり予算の問題が大きいと思われる。世界がバラエティに富んでいるのでBGMの方もそれに応じて多彩。

BOTTOMLINE
 “変わっている”, “ユニーク”と言えるゲームなのだが、通常“変わっている”とされる作品(奇抜なゲームプレイやアヴァンギャルドな風景等)とは違った意味で独自の世界を構築している。ただしFPSゲームとして見る場合には、そのパートは一部を除いては標準的な出来映えで特に面白いという訳では無い。言い方が難しいが、ゲームとして大変に面白いからお勧めしたいというのでは無くて、これだけ独自の世界観を持ったユニークな作品と言うのは珍しいのでプレイしてみる価値はあるという意味でのお勧めになる。

 単にレトロなスタイルのFPSを求めているならこれは選択肢に入れない方が良い。


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