What Remains of Edith Finch



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更新履歴  21/11/20 レビュー掲載 (バージョン不明)

販  売  制作・販売: Giant Sparrow / Annapurna Interactive
 発 売: 2017/04
 日本代理店: 無し

 2021/11/20 現在 Steamにて定価 1,980円で販売中

概  要  ロサンゼルスのインディーズ会社Giant SparrowからのThe Unfinished Swanに続く2作目。


 元はSCE(Santa Monica Studio)との協力体制で制作されていたPS4独占タイトルだったのだが、途中でSCE側からの提案によりAnnapurna Interactiveとの契約へと移行している。その際にPC版がAnnapurnaからの発売となり、後に他のプラットフォームにも移植される事となった。移行の際にSanta Monica Studioからゲームの制作チームに加わっていた何人かがAnnapurnaへと移籍しており、制作体制には大きな変化は無かったそうだ。SCEが独占を止めた理由としては契約から数年の間にインディーズゲームへの力の入れ方が低下したからとか、何人もの子供が死亡するという内容に難色を示したからとか言われているが真相は不明。

 プラットフォームはWindows, PlayStation 4, Xbox One, Nintendo Switch, iOS。

 Microsoft Storeでも販売されているが(Xbox Game Pass)これでは実績が解除出来ないそうである。Xbox Liveに未対応のタイトルだからだとされており修正されるのかは不明。掲示板


 有名どころではBAFTAの2017年ベストゲームを始めとして数々の賞を受けている。メタスコアのPC版も89点と高得点で、Steamのレビュー評価でも現時点では「圧倒的に好評」を維持している。

STORY  アメリカ, ワシントン州のオルカス島。ここに住むフィンチ家は呪われた家系とも言われる一族であり、何故か多くの人間が若い内に死を遂げたり、あるいは事故等の原因により亡くなっていた。主人公のエディスは17歳だが一族の最後の生き残りであり、母親の死亡によって相続した今や無人の屋敷に久し振りに戻って来た。彼女は内部を探索して亡くなった一族の封印された部屋を訪れようと試みるというストーリー。


パッチ&トラブル関連
 私のプレイしたのはGOG版だがゲーム画面にバージョン表記は無し。Steamのパッチノートによれば2017年6月22日を最後にアップデートはされていない。ただしSteam版はSteamworksとの連係(クラウドセーブ, トレーディングカード, 実績機能等)が絡んでくるので、そちらだけ更新されてバージョンが異なる可能性もある。

*セーブファイルの場所は C:\ユーザー(Users)\(ユーザー名)\AppData\Local\FinchGame\Saved\SaveGames の中(隠しフォルダを表示する設定にしておかないと見えない)。


 パッチは出ていないがSteamの掲示板には障害報告用のサブフォーラムが有って現在でもそれなりの数が報告されているのだが、どうやら会社側からの解答などはもう行われていない様である。そんな中ではあるシーンにおいて本来ならば起きるはずのイベントが起きないので前に進めない(スクリプトが実行されない)という報告が目立つ。ある方法で解決したという件も有ればそれでもダメという事例もあり。こういった場合(プレイ動画等で確認すると発生するはずのイベントが自分の環境では起きない)には定番の対策に頼るしか無いだろう。

・まずは動作の最低環境を満たしているのかを確認
・解像度を下げる。グラフィックス関連の設定を下げる。
・バックグラウンドで常駐させているアプリやユーティリティを出来るだけ停止させてみる
・PCを再起動。その後他に出来るだけアプリ類が起動していない状態でゲームだけをプレイする。
・垂直同期をオンにする(フレームレートを高い値にしない為の対策)
・フレームレートが非常に高いのならば → 120 → 60へと段階的に下げてみる。nvidiaならばコントロールパネルから可能(あるいは他のfps制限が可能なツールを用意)。

 上記の項目を単独or組み合わせてセーブポイントからやり直してみる。

シ ス テ ム

・難易度は無し。アイテム持ち越しの二周目やクリア後の別モードは持っていない。
・オートセーブ(1箇所のみを上書き)。チャプター単位でのリプレイが可能(クリア後にアンロック)。
・現在の目標の参照機能無し
・アイコン表示や矢印による進行方向ガイド機能、ミニマップを含めてのマップ表示機能は無し
・字幕有り(日本語対応

*キーアサイン不可×, マウス感度設定可○, マウス反転可○, 明るさ調整可○
*一人称視点固定, FOV調整不可×
*スプリント×, 屈み×, ジャンプ×
*照準(カーソル)選択可能
*コントローラー対応○
*Steam実績対応


 屈みやジャンプ等の操作は無いが、よじ登りや屈み等の動作は出来る場所においては自動的に行う様に設定されている。

 専用のチュートリアルは用意されていないし、何のキーがどの操作に当たるかという説明画面も無い(後述)。

BASICS
 一見しただけではどんなゲームなのかが解り辛いし、またこういうゲームだという説明もし難いので最初に構造から話しておく。フィンチ家は祖先のオーディン一家が一族死亡の呪いを避ける為に1937年にスウェーデンから移民して来たという設定で、海岸沿いで周囲に何も無い場所に建てられている一軒家である。しかしその後も一家では事故死や若い年代での死亡が相次ぎ呪われた家系とも言われている訳だが、フィンチ家では死亡した人間の寝室を封印して残すという風習になっていた。それ故に部屋数が足りなくなり、(何故か水平方向ではなく)上方へと増築を繰り返したので奇妙な外観を保っている。

 主人公である17歳のエディスは一族の最後の生き残り。6年ぶりに相続した自宅へと帰って来たのだが、そこで自宅内にて封印された一族の部屋を回って過去の死者の事に思いを馳せるという風にして進行する。屋内には隠し通路やスイッチが存在しており、それ等を利用して屋内探索を行うというスタイル。各人の部屋に着くとそこには回想用のアイテムが存在しており、それ等に触れるとシーンが切り替わって言わば“ゲーム”のパートがスタートする。正確にはエディスに「死者のアイテムに触れると生前の記憶を再現出来る」といった能力が備わっているとかではなく、ゲーム内世界のエディスは自身が知っているその人物の死に関する事実を思い出して回想するだけ。一方でメタ視点からエディスを操作しているプレイヤーはその人物の死に関わるシーンを様々な形で体験して行くという構成になっている。

 各シーンは直接的にその人物の死のシーンを体験出来るという事も有れば、間接的でぼかされた表現となっているケースも有り。体験する形態も一種のミニゲーム形式だったり、単に何等かの作業をするだけだったりと様々。これが一族の家系樹が埋まるまで繰り返されるというゲームになっている。


 “呪い”というワードが出て来る事からホラーゲームの様にも見られがちだがそうではない。ストアの説明文に「なぜ彼女が最後一人の生存者なのか謎を解こうとします」という記載が有るがこれは誤りで、「呪いの正体を明らかにする」とか「原因を発見したエディスがそれを打ち破るべく対峙する」とか、全くそういった話では無いので注意。単に「まるで呪われているかの様に早死にや事故死が多い一族」なのであって、呪いが実際に存在していてそれに付き纏われているという設定では無い。ディレクターのIan Dallasは「プレイしてみて“呪いは存在している”と思ったのならば、そのプレイヤーにとっては“フィンチ家は呪われている”という受け止め方で構わない」と話しており、そもそも呪われているのかどうかという設定自体が作り手側に存在していない。

 登場する死者の数は十数人にも及び、その死のシーンを扱っているパートは全体でかなりの割合を占めていることになるが、暗い・重い・鬱といった深刻さはほとんど感じられない。各シーンは非常に淡々と悲しみを強調せずに描かれているし、時にはユーモアを交えたりもしている。延々と死亡シーンを見せられるという情報から重苦しい雰囲気を連想される方も多いと思うのだが、実際には全然というレベルでそういった印象は受けない作品になっている。死に対するスタンスは“誰もが遭遇する物”という達観的な見方を採っており、「こんなに悲惨な事件があったのです」という風には描かれていない。またエピソードによって差は有れど、どれも(死体が転がっている所が描かれる等の)直接的な描かれ方では無い。


 ウォーキングシミュレーターであるかの様な情報も見受けられるが、私の考えではこの作品はWSとは呼べない。WSとは一般的な意味でのゲームプレイ要素が希薄で、大半がマップ内の移動や発見したドキュメント類を読む事に費やされるタイプの作品というのが定義だが、その意味からするとゲームプレイとなっているパートは多いのでWSには当たらない。確かに移動はしているが屋内とその周辺のみで広くはないし、これをWSと言うなら他の一人称視点で探索をしているアドベンチャー系のゲームなども全部WSと呼ばないとならなくなってしまう。

 その他にもWSではドキュメント類を数多く用意してそれでストーリーを語ろうとする手法が一般的だが、この作品には回収出来るドキュメントが存在しない。それに合わせて後で読む為のインベントリー機能も無し。内容の説明などは全てエディスの独白(字幕)により行われる。またマップ内は非常にディテールに富んだ精細な描写になっているが、大量に設置されているオブジェクト類は取って手にすることが出来ない。


GAMEPLAY
 クリアまでは2時間半程度。2時間位でクリアしている人も多くボリュームとしては短い。リプレイ要素はほぼ無いが、再度プレイしてみたくなる様な作品である事も確か。


 探索ルート、言い換えると体験する一族の死のシーンの順番はおそらく変えられない。マップ内の進行ルートは一通になっている箇所も多く、一度進んでしまうと(見た目としては明らかに戻れるのだが)ブロックされて戻れなくなる事がある。それとゲーム内に選択肢分岐の様な物は存在していない。

 ユニークな特徴としては3Dテキストが有る。このゲームの字幕は3D表示となり、画面下の固定された場所にでは無くその都度設定されている場所(その字幕が語っているオブジェクトの表面等)に表示され、消え方などもいろいろと異なった演出が用意されていたりする。例えば次に進むべき方向へと文字が流れながら消えて行くとか。字幕の量は多くは無く、またちゃんと日本語になっているので読むのに苦労は無し。逆に言えば登場する一族の亡くなっている各人に対する記述は少なく、その為に各人への強い思い入れといった物が生じず、それが連続した死のシーンにおいても悲壮感を醸し出さない大きな要因となっているとも言える。

 移動による探索が基本となるがインタラクト出来る物は少なく、そしてそれ等には明確に印が付いて表示されるので見逃す可能性は低い(ただしイベント後にそれまで付いていなかった物に新たに印が付くケースも有り)。よって何をすれば良いんだ?と順路に迷う心配はほぼ無い。そしてゲームプレイのパートが存在しており、そうなるとスキルが要求されるシーンというのも当然出て来る。だがどれも簡単なのでアクションやら何やらが苦手というプレイヤーでも心配することは無いであろう。


 肝心のゲームプレイに関しては語り辛い。明らかにこの作品は出来るだけ事前の知識が無い方が楽しめるタイプだからである。それを細かく各パート毎に感想を綴っていくのは宜しくないと思うので、なるべく具体的な中身には触れずに書いていきたい。

 特徴は十数人にも及ぶフィンチ家の人間達のエピソードが非常にバラエティに富んだ物にされている所。シチュエーションとかは勿論だが、プレイ感がとても大きく異なる様にデザインされている。しかも中には奇抜な設定のエピソードも含まれており、次はどんな風になるのか?という期待感を持って最後まで進められる様になっている。例えば一番最初に出て来る『モリー』のエピソードなどは「一体何が始まったのか」という位に奇妙で驚かされるし、『ルイス』のパートでは自分の脳がバグったかの様に感じられる極めて不思議なプレイ感を体験出来る。

 この多様さを生み出す為に制作側では、どういう風に操作したらXXが動かせるのか等の操作方法を全エピソードで変化させて、且つそれをプレイヤー側には一切教えないという風にしている。つまり決してどういう風にプレイするのかという点に慣れさせず、「さっきみたいにプレイすれば良いんだな」という感覚を与えないというデザイン。教えないとは言ってもコントローラーでの操作も可能なことから使えるボタン等は限定される訳だが、それでも「これを使うとこういう風な操作が出来るんだ」といった発見は常に有るという風にされている。バランスとしては簡単には解らないケースも有るが、発見出来なくてフラストレーションとはならない様な調整は行われている。なお通常時のエディスの操作にもこの特徴は適用されており、通常のオブジェクト操作は「マウスボタンで掴んで動かしたい方向へとマウスを動かす」という例のやり方なのだが、場合によってはキーボードWASDでその操作を行えたり、マウスボタンを押しっぱなしにしていると自動的に操作が完了したりも可能だったりする。


 プレイしてみての感想を一言でいうなら非常に不思議な感覚を受ける作品である。ゲームと言うよりも一種のアートと呼ぶ方が適切かもしれない。長年の制作過程においてかなり頻繁にデザインの変遷があったそうで、開発当初はスキューバダイビングをテーマにした短いエピソードを集めた作品というコンセプトだった。海の中は美しいが一方で微細な恐怖感を感じる場所でも有る、というその独特な雰囲気を描くのが目的だったそうだが、イメージという観点からはこの正式作品でも共通性は感じられる。しかしディレクターの頭の中にこのゲームのアイディアが存在していたとして、どうやって他の制作メンバーに「こういうゲームを作る」というのを説明したのか謎である。その位「こういうゲームだ」というのが説明し難い奇妙なデザインの作品であると言えるだろう。

GRAPHICS & SOUND
 Unreal Engine 4を使用。グラフィックス設定は自動判定有り。個別の設定項目は7つ。画面モードは排他的フルスクリーン, ボーダーレスフルスクリーン, ウインドウ。

 グラフックスは発売時点を考えても水準以上で、特に家の中の小物類の詳細さが目を惹く。描画エフェクトでリアルに見せるよりも、まるで現実世界の如く大量のオブジェクト類を配置する事でリアリティを高めるという手法になるがそれが効果を挙げている。しかしPCユーザーにはグラフィックスという面ではそれ程の評価は受けていない。理由としてはFPS/TPSをプレイする為に高性能のPCを持っていた人は良いのだが、ゲームの評判から普段は高性能を要求される3D系のゲームをやらないというプレイヤーの中にも手を出す人が多くなり、それ故にグラフィックスの設定を相当低いレベルにまで下げてプレイする人が結構多かったという件が影響している(それに関連してCPUの性能不足によるゲーム内イベントの進行バグが発生していたという問題も有り)。


 ボリューム調整可○, 3Dサウンド対応, ボイス有り。ボイスは日本語化はされていないが良質。BGMは死というテーマとは逆に明るめや穏やかな感じの物が多く、雰囲気の重苦しさを軽減するのに一役買っている。

BOTTOMLINE
 どういったゲームなのかを説明するのが困難で、やはり不思議な感覚のゲームという説明が一番適切か。変わっているゲームと言うのは多数存在しているが、これに似た物が在るのかと言われるとおそらく存在しない。また変わっているゲームの中には内容の理解が困難といった奇抜さを誇るタイプも多いものだが、この作品はそういった解り辛さや奇妙さを特に強調しているという風でも無い。よって唯一無二の存在、というその点だけでも価値があると思える。

 万人受けする様な内容とは思えない面も感じられるが評価自体は非常に高く、やってみるべき価値はあるゲームである。あるいは個人的には是非とも多くの人にプレイしてもらいたいゲームでもある。


 価格の割には短いという件は批判されている点の一つではあるが、既にセールも多いしまたこのクオリティであるなら定価でも損をしたとは考えないのではないかという気もする。


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