<SIDEKICK>
何と言ってもこのゲームの最大の特徴は主人公のHiroの仲間、Sidekickと呼ばれるMikikoとSuperflyの存在である。ここではRPGに影響を受けたという彼ら御供の能力について詳しく分析していく事にしよう。
1.基本事項
まず第一に彼らのストーリーへの絡み方だが、想像していたのと違って三人一緒に戦うというシチュエーションはかなり少なめで全体の1/3程度しか無い。どちらか一人と一緒というのが一番長く、一人だけで戦うというのが2割くらいか。これはストーリーの進行度合いによって逸れたりとかする為にこうなっている。
彼らの操作をするにはまず自分の視界内にいないとならない。離れた場所への仲間に指示を出す事は基本的に不可能である(例外はある)。彼らに指示を出せる状態になると右下にSuperfly/左側にMikikoのアイコンが現れるので、そこで片方だけならば直接/両方いるならば切り替えて指示を出す事になる(同時に同じ指示を出す事も可能)。ステータスはバーで表示されヘルスとArmorの値が見れる。所持武器の残りの弾薬数は3段階の色でしか判断出来ない。コマンドは以下の5種類。
*COME 後ろをついて来させるモードで一番基本的なもの
*STAY その場に留まらせる。自分だけで動く時に使用。或いは彼らが死にそうな時に置いていくとか
*GET 指定した物を取らせる。プレイヤーが判断するまでは基本的にアイテムを取らないので指定してやる必要がある
*ATTACK 攻撃モード。或いはカーソルで指定した相手を攻撃させる
*BACKOFF 後退。戦闘時に死にそうになったら下がらせる時に使う
2.完成度
既に御存知の方も多いと思うのだが、レビュー等で最も叩かれたものの一つがこのSidekickシステムである。各メディアから相当酷い言葉で罵られたりしたのを見た人も多いだろう。いろいろと批判の対象は存在するのだが、根本的に何が一番問題なのかと言うと「Sidekickが死んでもゲームオーバー」という点に集約される。このゲームでは主人公はもちろんだがSidekickが死んでしまってもその時点でGameoverとなるシステムで、これがやってみると実に厄介なのだ。別の言い方をするとバランス無視と言うかいい加減と言うか、「出来もしないことをルールとして組み込んでしまった」のが悲劇の始まりである。
死んではいけないという事からして、Sidekickに要求される能力というのは「効果的に攻撃はするが、決して死なない様にして危なくなったら逃げる」という行動を出来るだけ高いレベルで実行するという様になる。これは人間でも完璧には当然無理だし、現状他のゲームのBotでもここまでのレベルの者はいない。だからこれが出来ないという事自体は恥では無いのだが、それを認識出来ずに組みこんでしまうというのは責められて然るべきだろう。ハッキリ言って大刀のSidekickよりも出来の悪いAIの仲間というのは他のゲームでも存在するが、どの程度それが動けるのかというのをちゃんと製作サイドが認識してやり、プレイヤーがゲームを進める上での大きな障害とならないようにしてやれば、頭の悪さ自体は特別な問題とはならないはずである。しかしこのゲームではこの件に関してあらゆる設定を全て悪い方へと向けており、何でこんな事をテストプレイ中に気が付かないのか首を傾げざるを得ない。
「好戦的で死なない様に動けるほど頭が良くない」、のだったら出来るだけ戦闘に参加させないのが無難であるが、かと言って一人で戦って行くには敵が強い。じゃあ一緒に戦ってなるべくダメージを受けない内に早く勝負を決めるかと考えると、彼らは思いきり敵に接近していく上にFriendly Fire有りなのでプレイヤーが敵に向けて強力な武器が撃てないという具合。
このゲーム、サイドキックが死んでもOKという事にしていれば全く違った物になったはずだ。例えば体力0になるとついて歩くだけで回復するまでは何も出来ないとか。或いはHiroの成長に連れて彼らも耐久力等が上がって死に難くなるとかでも良いし、ゲームの発表当時の企画案にあった「RPGの様な復活ポーションがアイテムに存在して、その数の範囲内であればサイドキックやHiroさえも生き返ることが出来る」というのでも良かった。ところがそうではない為にゲーム中に非常に神経を使ってプレイしないとならず、ゲームとしての完成度はサイドキックという視点からは低いという事になる。
他に厄介なのがマップを変更するのにメンバー全員でそこへ行かないとならないという点。こんなものはHiroが到達したらそれで切り替えてしまい、残りのメンバーは追い付いたという設定にして何の問題も無いはずである。ところがそうではないので、一緒に居なければ彼らを呼びに行かないとならない。この場合簡単なルートとかだと自動的に歩いて来てくれたりもするのだが、そうでない時は一々戻って距離を保ちながら連れて来ないとならないので非常に面倒となる。しかもこの移動パスがちゃんとしていない時など尚更だ。
3.AI
箇条書きでまずは問題点から挙げていこう。
◎戦闘を認識出来ない
敵の姿を見ない限りは自分(プレイヤー)が戦っていても戦闘に参加しない。例えば廊下の曲がり角やドアをくぐって空間に出る時等、自分がいざとなったら隠れられるように少しだけ出た部分で戦っていると、普段は自分の後ろに付いているから全く反応しない。この場合もっと前に出て(自分を危険に曝すが)敵が見える所までついて来させないとダメである。
◎移動パス
移動用にパスが設定されている所であれば問題は無い。プレイヤーがジャンプで飛んで渡らないとならないような場所でもちゃんと渡ってくるし、屈まないと通れない様な場所でも連いて来れる。しかし一般的な場所ではちょっと段差があるとついて来れなかったり、ギャップがあったりすると延々とそのギャップを越えようとしてこちらに向かって歩いた状態になってしまう。例えば”コ”の字型の場所で真中が通れない時、回り込んでこちらへ来ようとせずに進めない空間に向かってこちらへ足踏み状態となってしまう。また複雑な地形MAPでは何回かやり直したり微妙に自分の立ち位置を変えてやらないとちゃんとついて来ることが出来ないで、行き止まりの壁に向かって走り続けたりということも。とにかくただ単に連れて歩くだけでも引っ掛かって問題になる個所があるなど、AIの移動パス部分のプログラミングはかなりレベルが低い感じだ。
◎デッドエンド
時々窪み等に落ちる事があって、そのまま這い上がれなくなったりする。そうなったらそれで終わりである。やり直すしか無い。マップ・チェンジの為には全員がそこに行かないとならないので強制切り替えは出来ないし、爆風で出そうにもFF有りなんで死んで終わりだから。また自分から溶岩の中や崖下に転落することもある。
◎Backoffの方向
危なくなったらBackloffで下がらせるというが、どうもこの下がるという判定にHiroの向きを参照しているらしく、自分が敵との戦闘中に反転してしまうとその反転した後方へ向かうために前へ向かって戦闘場所に突っ込んでくる。
◎武器の有用性
敵によって武器を変更したり弾薬の残数を考えるという能力がない。よってこちらが面倒を見てやらないとならない。
◎やたらと好戦的
体力が無いのに敵の前へ突っ込んで行ってしまう。遠方から安全さを考えて攻撃ということが出来ない。
逆に役に立つ点というと狙いの正確さ位か。特に飛んでいる敵等当てにくい相手に対しては非常に正確でプレイヤーよりも使える。それ以外は特別に思い付かない。
先ほども書いたがこのゲームではサイドキックの頭の悪さが根本的な問題ではなくて、その頭の悪さに比して高い要求をゲームがしているという点に問題がある。この程度しか出来なくてもシステム次第ではプレイヤーの感じるフラストレーションを軽減する事が可能なのにそれをやっていない。何十人というスタッフがいてこれに気が付かなかったのだろうか。或いはこのシステムこそがロメロの目指したものであって、自分のデザインポリシーからこれだけは譲れないという事で変更しなかったのか。いずれにしろこのサイドキックという要素はうまく機能していないというのが結論となる。
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