<COMBAT>
戦闘に関しては「武器の所持制限は無し」、「移動時はSprintキーにて高速移動が可能」となっており、スタンダードなFPSと大きな変化は無い。発売前の情報にあった「サバイバル性を強調する為に、武器には所持制限を持たせて、移動速度もかなり遅くする」といった要素はスッパリと削除されてしまっている。
戦闘面の特徴の一つはやはり暗さによる敵の見えにくさが挙げられる。Impに代表される発光するタイプの攻撃を行う敵はまだしも、そうではない敵の場合にはどこにいるのかが非常に見えにくいケースが多い。Zombieの様に遅い敵ならば、完全な闇であっても対処は或る程度可能だが(敵に攻撃が命中すると照準が赤くなるので居場所が判る)、高速で襲ってくる敵だと相当攻撃がやりにくい。
次に敵の出現がトリガー式の場合が多く、予め配置されて徘徊しているというのは少ない。よって突然出現した敵に攻撃を受けるというパターンが多くなっており、これがテレポートしてくるのが見えるタイプの敵ならば良いのだがそうではないタイプもいるし、ドアを開けた瞬間に攻撃されたり、また通過してきたばかりの背後からの出現というケースも多々有る。正面からとの挟み撃ちもあって、前に現れた敵への攻撃で音が聞こえずに背後に出現した敵に突然攻撃を受けるというのもしばしば。他には突然壁が開いて敵が出て来たりもあるし、ライトを持っていない状態だと見えない箇所から攻撃を受けたりもある。
後は戦い難さの要素として、「壁に詰められたり前後から挟まれたりするとそこから動けなくなる」、「敵の攻撃を受けるとその種類によって、視点が別方向へと飛ばされてしまう」、「画面にブラー効果(ブレ)が掛かったり、血のエフェクトで視界が遮られる」といった事が起きる。
こういった条件が有るので、「突然背後等に出現した敵に襲われるが暗闇で敵の位置が少しの間掴めない」、「接近されて攻撃を受けるが反撃しようにも視点が吹き飛ばされてしまう」、「逃げようにも詰まってしまって動けない」、といった理由からそのままボコ殴り状態にいうのは結構起きるゲームである。しかしNormal(Marine)の難易度はそれ程難しく作られておらず、死ぬ状態にまで追い込まれる事は少ない。見た目の派手さほどには敵の攻撃のダメージは強くなく、また回復アイテムの数もかなり多いので、中盤までの2/3程度はFPSをやり慣れている人にとってはあまり難易度は高くないゲームと言える。
この点に関しては賛否両論有り、簡単過ぎるという風にも取れるし、バランスとしては良く出来ているとも取れる。バランスというのは、これだけ突然の出現や不意打ちが多いゲームだと、どうしても憶えゲーとしての要素が強くなりがちである。しかし怖さを強調したゲームではこういった死んではLoadしてパターンを憶えての繰り返しではそれがマイナスに働く可能性も高く、最初の体験時で切り抜けて行ける程度のスムースな進行が可能なバランスにした方が面白くなるとも考えられる。個人的にはNormalに関してはこの程度のバランスで上手く行っているのではないかと感じた(Hardならば最初から選択は可能なので、難しい方が良いという人にはちゃんと設定が用意されている訳だし)。
ゲームの終盤1/4程度ではSoul Cubeというアイテム(武器)が手に入るので、戦い方が大きく変わってくる。その効果やどんな風に使のかといった情報は最初からマニュアルに全部書いてあるのでネタバレにはならないと思うのだが、一応ここではその能力については伏せておこう。これの使いこなしによって相当に難易度が変化するので面白いアイテムでは有るのだが、Normalではちょっと強力過ぎるかという印象もある。
その他大きな特徴としては、敵の大半がモンスターという点になるだろう。昔はFPSの敵といえばモンスター・エイリアン系が中心だったのだが、現在ではAI重視やリアルさ重視という観点から、アクション系のFPSであっても主に人間タイプの敵を使用した物の方が圧倒的に多くなっている。そしてまたこの人間の敵という点から、相手の使う武器が即着弾系のリアル系銃器中心というのも増えており、それ故に動き回って敵の狙いを外すという戦い方が多くなっていた。
しかしD3では敵が目に見えるタイプの弾を放ってきたり、直接こちらに肉弾攻撃を仕掛けてくるので、それを見て避けるという昔ながらのFPSスタイルのゲームとなっており、敵の攻撃を避けながら上手く自分の攻撃を当てるというアクション性が高くなっている。この敵の攻撃をギリギリでかわしながら攻撃するというスタイルは、今となっては逆に新鮮で非常に楽しめた。PainkillerやSerious Samも同じような要素は持っているが、これらは同時に登場する敵の数が10体を超えたりと非常に多い為に、その分個々の敵の攻撃能力は低目に調整されているが、D3では敵の数が少ない分攻撃速度は速くなっている。例えば飛び掛ってくるタイプの敵が結構多いのだが、その速度は高速で対応が一瞬でも遅れると避けられないといった物も多い。或いは空中を移動して攻撃してくるタイプの敵では不規則な移動ルートを取るので攻撃を当てるのが難しかったりとか。
グラフィックス面でも敵にはBump Mappingが施されているので体表面の描画がリアルになっており、その動きにはこれまでには無かったような迫力を感じる物も多い。また影の描画も迫力を生むのに一役買っている。形状自体はまだ粗さを感じる部分もあるが、それでもポリゴンで作成された物ではない”生体”と戦っているという雰囲気は良く出ており、これはD3の大きな長所である。
後はライトを持って移動している事が多い為に、その状態で敵と遭遇するのでどの武器に即座に持ち帰るのかを判断しないとならない難しさもある(一応Flashlightを持った状態で再度呼び出しキーを押すと、その直前に持っていた武器に切り替わるというようにはなっている)。それとSprintの持続時間が相当長くなっている上に回復も早いので、この機能を常用する事が多い。というかこれを使わないと戦闘時に高速で横に動いて弾を避けたりが出来ないので苦戦することになるだろう。敵と戦闘になったらSprintキーを押しっ放しで戦うというのが普通の戦い方になる。DefaultではShiftだが、個人的にはマウスの右ボタンがやり易いと感じた(このゲームには武器のAlt
Fireは無いので問題ない)。なお常時Sprintにしたり切り替えのキー設定は出来ない。
戦闘に関して問題と感じるのは、先に挙げた暗闇という要素が大きく影響している。つまり暗い場所が多い上に武器に持ち替えたらライトが使えないので、戦っている敵が見えない或いは見えにくいという事態が生じてしまうケースが多いのだ。更にD3ではモンスター系の敵は倒したらすぐに消えてしまうようになっており、死体はその場に残る事は無い。若干残った後に消えるのではなくて、すぐに消えてしまうようになっている。
本当に暗い場所では敵を倒した事自体が視覚的には確認出来ない事も多く、やや暗くなると敵を倒したという事は分かるのだが、明るい場所の様に明確にそれを見る事が出来ない。しかも消えてしまうので倒した敵をその場所に移動して確認する事も出来ない。或いは敵の死には物理エンジンによる計算がちゃんと適用されるが、暗い中ではその飛び具合自体もハッキリとは見えないという事になる。この様に自分の戦っている敵が良く見えないし、倒した後もその死体を確認出来ないという点は爽快感を大きく削いでおり、ゲームエンジンの仕様としても残念な点である。
ただ物理エンジンが適用された死体を少しの間でも残すといろいろな問題が出てくるのは確かで、例えば自分の進路に有る床に転がった死体を動かすだけのパワーを持たないモンスターがその死体につかえてしまう、吹き飛んだ死体が別のモンスターに当たるのをどうやって処理するか、モンスターのSpawnするポイントに死体が残ったらどうする、Saveで保存する時に物理エンジンが適用された状態の死体をどうやって保存する(データ量が増えるのでLoad時間が長くなる)、等々の問題が有る。この辺は次回作向けに改造されるというエンジンの課題となるだろう。
◎削除された要素
ここでは導入されるとアナウンスされながら実際には使われなかった点で、他の項目にて言及していない要素について記す。
最も削除されて残念に感じる点は、従来の3DFSPでは”環境”と”オブジェクト”の区別が存在していたのを、その差別を無くしてしまうという要素である。以下はそれに関して過去にPreviewで記載した記事。
”ここでいう環境(Environment)とは壁や地面の様な変形出来ない固定要素の事を指す。プレイヤーが動かしたり壊したり出来るのは予めそう設定された物(object)だけであり、固定して世界に存在する物に対しては弾痕といったDecalを付ける位しか干渉する事が出来なかった。しかしD3のマップではこの両者に区別は無い。ありとあらゆる物に対してプレイヤーは干渉する事が出来る。つまりもし銃を壁に向けて撃ったら、Decalがグラフィックとして貼り付けられるのではなくて本当に壁が凹む。それを変形させるのに十分な力を加えた場合は全ての物が壊れたり曲がったりするという意味である。Red FactionにおけるGeo Modの拡張版といった感じだが、こういった構造を導入した理由はゲームのメインテーマである”恐怖”と深い関係がある。
これまでの3DFPSではエリアをクリアしながら進んで安全圏を作るという方法が可能であり、これを防止するには敵を背後にSpawnさせたりといった手段しかなかった。しかしこれでも壁を背にしたり、部屋の中に篭ったりする事で安全を確保する事が出来る。何故こんな風になるかというと、プレイヤーは周りのどこまでが固定された環境でどれがObjectなのかを判別出来るからである。ところが今述べた様にD3では固定された壁といった要素はゲーム中に存在しない。具体的にいうと環境を壊せるだけのパワーを持った敵がいたら、それは壁を破壊して自分の元にやって来る事が出来る。実際にムービー中には突然横の壁がメキメキと曲がってブチ破られモンスターが出てくるシーンがあり、これはスクリプトとして予め設定されたイベントだと思ったのだがそうでは無いらしい。「敵から逃げ回って壁を背後にしても、その音を聞き付けるモンスターならばプレイヤーの背後の壁を破壊して襲ってくる事が出来る。つまりゲームのマップ中に絶対に安全な場所は存在しない」そうである。
idのコメントでは周囲の環境が予め固定されていては、幾らグラフィックが凄くても「これはゲーム」としてプレイヤーが認識出来る範囲内に留まってしまうし、恐怖をテーマにしたゲームとしては安全圏を作れるのは大きな問題点となる。より現実に近い環境をゲーム内に作成してこそ本当の恐怖が生まれる、という事になる。現実と区別が付かないようなリアルな世界をモニター内に作り出し、そこで最高レベルの恐怖を味わってもらうのがゲームの目指す所という意味である。ただムービーを見る限りではスクリプトとして扉が破壊されるといったシーンも有る感じで、この変形破壊機能がどこまでゲームプレイに適用されているのかは現時点ではハッキリしない。”
この機能は2002年のE3におけるデビュー後に明らかになった物だが、その後は話に出て来る事はなくなっていた。マップデザインの根幹に関わる点なので、おそらくはその後早い内に適用は難しいという理由から削除されてしまったのだろう。将来的にはD3でなくても良いので是非味わって見たい魅力的な要素である。
それと物理エンジンの戦闘への大幅な適用もあった。
”これまでには無い特徴的な点を上げるとすれば、D3では戦闘においてもこの物理エンジンが採用されている。全ての武器の弾は重量と速度による慣性モーメントを持っており、対するモンスターもそれぞれの重量や独自の身体バランスを持っている。するとどういう事が起きるのかというと、もしもプレイヤーの攻撃がモンスターの体の右半身に当ってそれが十分な速度とパワーを持っていたならば、モンスターの体は右側が後方に押されて反転し仰け反るという事が実際に起きる。そのパワーがより強ければ回転して倒れるかもしれない。同様に脚を撃って倒す事も出来るし、上半身に強力な攻撃を加えればそのままひっくり返ったりもする。”
これも面白い要素だが、実際には物理エンジンとアニメーションの組み合わせは相当に難しく、こういったゲームが出てくるのはまだまだ先になるだろう。
per polygon hit detectionについてはマルチプレイでは適用されている。これは命中判定により正確な仕組みを使うという物で、例えば脇の下等の隙間は実際に弾が貫通するというもの。事前の話ではモンスターの体や置いてある箱等のObjectに穴を空けられたりするという事が言われていて、その隙間を通して攻撃が出来るとされていた。
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