<GAMEPLAY>


◎基礎事項

*選択可能な難易度は4種用意されているが、最高難易度のNightmareだけは一回他の難易度でゲームのクリアしないとUnlockされない
*途中で難易度の変更は出来ない
*Mapの最初でAutosave。Quick Load/Saveも可能で、回数制限等は存在しない
*プレイ中は一人称固定だが、時折入るムービーシーンでは三人称になる。
*体力はHealth(100)とArmor(150)によって管理されており、これをMax値よりも上げる方法は無い
*スタミナの概念が有るが、これは時間と共に回復するし、減らなくなるアイテムも存在する
*PDA(携帯情報端末)使用時にPauseは掛からない設定(敵から攻撃される可能性あり)

 近年のFPSゲームにしては珍しくボリュームが有り、初回プレイ時のクリアまでは30時間程度は掛かると思われる。PDA端末からの情報をどの程度ちゃんと読むかにもよるが、25時間以内というのは本国の方でも少ないようだ。事前情報ではそれ程長くなくてリプレイ性を重視と有ったのだが、それは変更されている。

 それとこのゲームの操作の特徴としてはUSEキーが存在しないという点が挙げられる。USE出来るパネル等にカーソルが向くと自動的に銃が下げられてカーソル形状が変化し、そのままNPCであればFireにてTalkコマンドとなり、パネルであればそのまま操作が出来る。こういったパネルのグラフィックは直接画面上でアニメーションをしたりといった先進的なイメージの物となっており、グラフィック的に優れた部分の一つと言える。


◎ゲーム性

 過去のDoomは大量に出現する敵相手に撃ちまくるアクション面を重視したスピード感のあるゲームだったが、この3では大きくその辺を変更している。ペースをスローにしたサバイバル・ホラータイプのゲームとして製作されているのだ(少なくともidの意図としては)。この変化については旧来のゲームプレイを愛するファンからは、新作は間違った方向への進化という意見も今だに根強いようだ(大量の敵相手に撃ちまくりでなければDoomではないという意見)。そういった作品はもう作らないのかの問いには「Doomを今やりたければSerious Samが有るしね」といったコメントも出ている。
 このゲーム性の変更に関しては、エンジンが完成した時点で影生成に大きな特徴を持つという点から、その特長を生かすにはどうしたら良いのかという所からスタートし、最終的には暗闇を多用したサバイバルホラー・スタイルのゲームが良いのではという事になったという話である。後はライティングの複雑さ(重さ)の面から、これまでの様に同時に大量のモンスターを画面に出すのはこのエンジンでは困難という点も影響していると思われる。

 ゲームは基本的に一本道であり、ストーリー的な分岐は存在しない。しかし本道から離れた弾薬やアイテムの手に入る枝道は結構有るという構成。シークレットもカウントされたりする訳ではないが所々に有る。後は一部行動やルートを選択出来る箇所は存在している。ゲームはスタンダードに与えられる目的を達成していくスタイルで進み、「別の場所に行って機械を作動させるスイッチを入れる」、「ドアのロックを解除する権限を持った人間のPDAを探す」といった類が多い。特に難解な謎解きは無いが、進行ルートを探すのが分かりにくい箇所が幾つかという程度。謎解きで面白さを演出するといった面には大して力が入れられていないと感じた。
 リプレイ性については、難易度が変化するとモンスターの登場数が変わるという風にはなっていないので、あまり考えられているとは言えない。初回プレイで隅々まで回ってしまっているとより薄くなるだろう。Nightmareではゲームのルール自体が変わるというのはあるが、根本的には変化は少ないゲームである。

 リプレイ性ともやや関係するが、構造上弱い点として単調になる箇所が有る。FPSゲームでプレイヤーを飽きさせない為の工夫としては、ロケーション(設定)を変更する、新武器を追加する、敵を変更するの3つが代表的な物となるが、特に最初の物は非常に重要である。しかしD3ではロケーションが火星の基地のみの為に(後はHell)変化が付けにくく、優れたグラフィックスによるリアリティ溢れるロケーションを用意してはいるものの、全く異なる場所を何箇所も使用するゲームに比較すると弱い。
 更にどうしても後半に備えて武器や敵を出し惜しみせざるを得ない前半部では、必然的に少ない種類の武器を使って同じ敵と相対するケースが多くなり、それが単調さを生んでしまう事となる。それ故にいろいろな敵が出て来て武器選択の自由度も高まる後半に比べて、前半部分の単調さは弱いと感じた。ロケーションのバラエティさも後半の方が優れている。敵や武器の数が変えられないのならば、前半部分をもう少し削ってやや短くしても良かったのではと思う。
 それとアウトドアが使われている箇所がほとんど無く、この点はもう少しアウトドアのマップを入れるとかのデザインの方が良かったように思う。確かにアウトドアでは空気が無いので長時間戦えないという別のやりにくさが有るのだが、これは宇宙服等の導入で何とかなっただろう。

◎暗闇

 D3における最も特徴的な要素は暗闇である。そしてこれを強調する設定としてFlashlightを持っている間は武器を持てないようにされている。よって周辺を探る為にFlashlightを持っている場合には敵を発見しても持ち替えて攻撃するまでにラグが生じるし、かと言って武器を持っていたのでは周りがどうなっているのかが良く分からないという風になってしまう。暗さを強調したゲームであってもライトを常時装備出来るならばそれ程の苦労は無いのだが、このゲームではそれが出来ないので暗さという要素が非常に強調されている事になる。
 D3では製作側の意図した暗さを調整する機能(明るさの変化していくバーによる調整等)を持っていないのだが、偶に白地に文字の書かれたモニターが有って、明る過ぎるとそれが全面的に白潰れしてしまって文字が読めなくなる。なのでその文字が見える程度の明るさが適当という事になるのだが、これに合わせると相当に暗いというのは確かだ。おそらくはそれよりは明るく設定してプレイする人が多くなるだろう。後は周囲の電気を消してプレイするのが雰囲気が出て良いという意見があるが、これは使っているモニタ内の暗い画面を見易くするのにも効果が有るケースもある。(以下は余談になるが、瞳の違いによる明るさの感覚という点も関係しているかもしれない。欧米人の様な青い瞳は明るさに弱く、日本人の様な黒い瞳の人間だと平気なレベルでも目を開けている事が出来ないので、強い陽射しの夏場にはサングラスを常用している事が多い。しかし逆に暗さには強く、黒い瞳を持つ人間よりも暗闇における識別能力は高い。なので画面上の暗さに対する感覚が異なり、日本人はよりD3の様なゲームは暗く見えにくい感覚を持つのではないかとも考えられる。ただ勿論あちらでも暗いという点には不満が挙がっているのは確か)。

 既に発売前の時点で、暗闇を強調したゲームであり、またライトと武器を同時には使えない仕様である事は明らかになってはいたのだが、多くの人にとって予想外だったのは「まさかこんなにも暗い場所の割合が多いとは」という点ではなかったかと思う。明るい場所と暗い場所の変化が有る訳ではなくて、全体としてとにかく暗い場所が多くなっている。以下はプレイして感じた暗さの種類の分類と割合。ただし私なりの感覚なので正確なデータではない。

1. (10%) ライト無しでは道自体が見えないレベル。ライトを切ったら敵が全く見えない。
2. (30%) 周囲の形状は一応見えるが、脇道等の細かい箇所までは見えないとかなり暗い。ライト無しだと敵が相当見えにくい。
3. (30%) 普通に暗いというレベル。ライト無しでは動きにくいのは変わりない。敵は若干見えにくい。
4. (20%) 視界は結構良いが、隅の方等の影となる箇所は暗くて見えないのでアイテム系を見逃す惧れが有る。
5. (10%) 明るくてライトの必要性が無い。

 この様に終始視界がハッキリと確保されない場所での行動という感が強く、その点はストレスに感じる箇所でも有る。置いてある弾薬やアイテムも発光する部分が有る物は暗闇でも気が付き易いが、そうでない場合にはライトを点けてそこを照らさない限りは有るのが分からないというケースも出てくる。中にはライトが使えない場所も有って、そこではかなり動きにくい。全く敵が見えないのを含めて演出としての暗闇は良いと思うのだが、もっと明るい場所を用意して変化を付けた方が面白くなったように思う。更には暗い為にマップ毎のグラフィックの変化によるインパクトが薄れてしまっているのいうのもあるだろう。

 なお「何故銃自体にライトが装備されていないのか?」という不満に対しては、「そういった議論は全く無意味。これはゲームであって、リアリティを重視する必要性は無い。ライトが装備された銃は現在でも有るのに何故未来が舞台のゲームにその程度の物が無いのか?は、ゲームのデザイン上その方が面白いという理由からである。これでは前がよく見えないと言うが、あえてそういう風にしたいというデザイン的な観点からそうしているだけ。」とコメントされている。


◎ホラー&ストーリー

 このD3を製作するに当たって、idが強くフィーチャーした点がホラーという要素である。史上最も恐怖を感じられるゲームというのを目標に作成されたと言っても良い。ではそれが成功しているのかというと、残念ながら私としては合格点を与えられる出来ではない。確かにプレイ中にドキっとさせる演出は存在しているし、実際にこのゲームを怖いという人も多いのだが、これをホラーと呼ぶには問題点が存在している。それは主人公の設定である。
 これはゲームにおける感情移入の仕方による違いと思うのだが、怖いと感じる人の多くは「自分がこのゲーム内に存在している」という観点でプレイしていると思われる。しかし私の場合はムービーにも登場する屈強そうな海兵隊員が主人公という点から、彼の立場になりきってプレイしているという風に感情移入する。よって「彼はこれだけ沢山の武器と弾薬を抱えて戦うスーパーマンであり、この状況を怖がるようにはとても見えない。だからそれを操作してプレイしている私自身も怖くない。或いは怖がるのはおかしい。」と考えてしまう。

 どこから敵が襲ってくるのか分からない怖さというのも挙げられているが、これは緊張感を生むという意味合いが強くて怖いというのとはちょっと違う。難易度が高くなると奇襲されてすぐに死んでしまうという風にもなるが、それも「だから怖い」と取るよりは厄介というべきだろう。サバイバル・ホラー要素を前面に打ち出すならば、当初の予定通りに武器所持制限や弾薬制限をするべきで、どれだけ敵が出てこようが逃げる必要は無く(というか逃げられるケースは少ない)、戦って勝てるというバランスでは恐怖感というのは生まれにくい。とにかく怖さを狙うならば主人公は海兵隊員でも構わないが、単なる一隊員といった弱い人間といった設定にしておくべきだろう。


 過去の作品と異なりストーリーを重要視した構成になっていて、ゲームの脚本には7th Guest11th Hour(かなり昔のAdventuerゲーム)の作者を用意して濃密で意外性のあるストーリー展開を用意しているとあったが、これもまた効果の程には疑問を感じる出来である。ゲームの展開はオーソドックスであり、特に意外な展開がある訳ではない。「とにかくモンスターを倒せというゲーム」と一言で言い切っても良い位だ。確かにプレイ中には80人程度の人間のPDAを入手して事件の背景を詳しく知る事は出来るし、その辺の構成はしっかりと出来ている。しかしそれがゲーム性に影響を及ぼしているのかというとそれは薄く、単にゲーム内の世界にリアリティを生んでいるに過ぎない。もうちょっとストーリー展開自体を面白くする方向に努力が払われるべきだった。
 それと事前の情報ではプレイヤーの選択によってその後の展開が変化するという箇所が数多く用意されているという話だったのだが、実際には展開はほとんどリニアであってプレイヤーは影響を及ぼす事が出来ないようになってしまっている。


◎物理エンジン

 独自製作の物を使用している。感想としてはゲーム内のObjectにその適用を受ける物が少ないという印象で、その分軽いとは思うが逆に派手さは無い。またゲーム自体にも物理エンジンの作用は大して影響は及ぼしていない。吹き飛んだ箱が障害物となってゲーム性にその都度変化をもたらすとかといった要素は含まれておらず、あくまでも演出として使われているというレベルの導入度。

 死体のRagdollについては時々Objectと重なったりというエラーは見られるが、全体的にはちゃんと作動している。ただHavok系と比べると動きに派手さが無く、死体の動きや遊びは少ないという印象を受けた。死体の動きが早く落ち着いて固定されてしまうという意味で、また動きに硬さも感じられる。Havokの様なしばらく落ち着かずに体の一部が揺れていたり、斜面に寄り掛かるとズルズルと動いてしばらくは止まらないといった面、また変な方向にゴムの様に曲がるというのも少ないようだ。この辺は一長一短という所か。



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