GAMEPLAY |
ゲームは全部で11章から成り、プレイ時間はNormalで12-15時間程度。パワーアップ系のアイテムを探したり、ストーリー関連の資料を回収して更にはちゃんとそれを読むなら長くなるし、そういった物をカットして先を急げば10時間位でもクリアは可能だろう。 進行の為の謎解き要素というのは薄く、有っても大半はルート探しの類。先に進むのにどうすれば良いのか分からなくなるといった箇所も少ない。進行はほぼ一本道であり分岐要素は無いが、目的地点に到達するのに複数のルートが存在するという箇所は存在する。 ゲームの一番の狙いはアクション・ムービーの主人公であるかの様にプレイヤーに感じてもらうという点で、特殊部隊という設定ではあるが戦闘のリアルさ(ダメージや武器の扱い)はそれ程重視されていない。しかしそれだけでは競争の激しいFPSゲーム界では目立つ事が出来ないという考えから製作チームが採り上げたのが、彼等が大好きだと言う日本のホラー映画の要素である。製作に当たって最も影響を受けたゲームはFatal Frameとの話。(日本語タイトル「零〜zero〜」。PS2にてリリースされているテクモ製作の和風ホラー。カメラを武器として幽霊を撮影して倒すゲーム)。よく言われる映画「リング」からの影響は特に無いそうである。 そこで作られたのが超常現象を専門に扱う機密の特殊部隊という設定であり、ホラーの要素をミックスしたFPSとしてデザインされる事となった。ただ注意して欲しいのは、このゲームはいわゆるサバイバル・ホラータイプのゲームではなく、あくまでも激しい銃撃戦を扱ったアクションゲームであって、ホラーは主にストーリー面での重要要素として扱われている。ホラー要素と戦闘シーンはほぼ分離しており、フラッシュライトを持っているので暗くて見え難い場所というのはほとんど無いし、突然暗がりから出現する敵に怯えながら進んで行くという事も無いので、基本的に戦闘では怖さという要素を感じさせない。 ただ戦闘以外の点ではホラー要素を導入しているとは言え、実際の所恐怖感は想像していた程ではない。恐怖感を煽る要素としては突然出現する少女の姿や、主人公の頭の中に送り込まれて来る敵の精神内部の映像や過去のフラッシュバックがほとんどであり、後は精霊系の特殊な敵による精神攻撃とでもいうべきシーン程度。他はグロテスクな死体等の気持ち悪さが主体となる。もっと数多くの場所で恐怖感の演出があると考えていたのだが、そういった箇所はゲーム全体の中では割合としては少なかった。確かにその様にホラーの場面自体が少ないので、油断している時に予期せぬタイミングで登場という形でショッキングな効果も挙げてはいるのだが、やはり割合としては少な過ぎて全体的には恐怖感が薄まっているという印象。またパターンが少ないので、先に進むに連れて驚きが無くなって行くというのも問題である。 マップのデザインを見ると、長さの割にはそれぞれのロケーションや構造の変化には乏しい。大半はオフィスや施設の内部であって、若干の景観の変化はあるもののその構造は単調で似通っている。アウトドアとしては建物の屋上部分とかの他に、時々広場の様な場所が出て来る程度で割合は少ない。多くのFPSではユーザーを飽きさせないようにロケーションをいろいろと変えるものだが、或る意味このゲーム位同じ様な雰囲気のマップが続くゲームも珍しいと言える。クリアした人にどこかのSSを見せて、「これは何番目のマップからの物か?」という問題を出しても正解するのは難しいのではないかというレベル。戦闘自体は非常に面白いのでプレイしていて詰まらないという訳では無いのだが、ゲームと言うよりも一種のコンバット・シミュレーターの様な雰囲気がしているのも確かだ。ゲームに独特の世界観を求める人や、ロケーションの変化を重視する人にとってはマイナス点となる箇所であるのは間違いない。 この様に構造が一様なのはAIの認識制限と関連しているのかも知れない。全体的に角張っている箇所や物がほとんどであり、曲面的なデザインを採り入れている箇所が少ない。その場所がカバーと成り得るのかの判断や、ちゃんとリーンして身を乗り出して攻撃させるには角張っている構造が最適であって、複雑な構造を持った場所だとその判定が難しくなる。例えばアウトドア等で様々な角度で地面に複雑な傾斜が付けられているような場所に、四角形ではない複雑な形状のオブジェクトが置かれていたりすると困った事になる。例えば大きな岩の陰に隠れるとしても、形が一定では無いので位置によっては敵側から見えてしまったりや、リーンして覗き込む際の位置計算も複雑な物となるからだ。更に地面の複雑な傾斜・段差により、見えているのかどうかの判定において、双方の位置関係の他に障害物の高さといった計算も組み込まないとならなくなる。そういった処理負荷を減らす為の措置というのは考えられる。ただもしそうだったとしても、似たような構造の連続が欠点であるという事実には変わりは無い。 それと建造物の内部構造自体が異様である。ガラス越しに見える目の前の部屋に行くのに大きく遠回りしなければならなかったり、延々と回って来て以前の場所に戻って来たりと、現実には有り得ないような内部構造を持っている。プレイしていて今自分の居る所はスタート地点から見てどの辺で、どっちを向いているのかが極めて把握し辛い構造とも言える。例えて言うなら最初に与えられた建造物の外形の中に、出来るだけプレイヤーが長い時間を掛けて出口に辿り着くように、グニャグニャに曲がりくねった行ったり来たりのルートを押し込んでいるかのようなイメージである。 狙いの一つとして或る地点に到達する為のルートを複数にしておいて、その片方からやって来たプレイヤーの背後を別のルートからAIが攻撃可能にしているというのはあるようだが、それにしても変だという感覚は否めない。またこの構造故か、何も起きない通路状の場所を次の広くなる空間まで結構長い距離走らされるというケースも多くなっている。 FPSゲームとしては珍しく複雑な背景を持ったストーリーを用意しているのだが、紹介方法に問題が感じられる。通常はプレイヤーに伝えないとならないという重要な要素についてはイベント等で強制的に知らせるようにしておいて、その他の細かい補足についてはマップ内で見付かるドキュメントやEメールを見ると分かってくるというスタイルを採っている。そしてこのゲームでもそれは同様であり、補足情報は電話に残されたボイス・メッセージや、プレイ中にラップトップにアクセスしてF.E.A.R.本部にコンタクトを取った際の会話によって与えられる。 問題は強制的に知らされる情報というのがかなり少なくなっており、それを理解する為の情報が「探すかどうかはプレイヤーに任されている物」に多分に含まれているので、クリアしてもどういう話だったのかが理解し難くなる可能性が高いという点。つまり強制的に知らされるタイプの情報が少な過ぎるのではないかというのが問題。私も結構オプションとなっている情報源についてはアクセスしたつもりだが、それでもどうもハッキリしない点が残ってしまい、結局は同様の事を考えた人達が討議する掲示板からのストーリー関連の説明スレッドでようやく理解出来たという状況である。 開発元の話だと確かにここは難しかったようで、「Half-Lifeの様なゲームでは主人公自身が何が起きているのかを分かっていないので、プレイヤーにも情報を知らせなくても上手く行く。しかしFEARではプレイヤーには開始時点では出来るだけ情報を知らせたくないのだが、実際には主人公は当事者として或る程度背景に関する知識を持っているという設定になっている。そこでどういう風にその辺を公開していくかにはプレイテストを入念に行ってバランスを取った」のだそうだ。だが結果的にはそれは成功しなかったようである。 ライセンスしたHavok 2物理エンジンを独自に改造して使用しており、ラグドールの描画はトップクラスの出来ではないだろうか。死体の物理計算となるラグドールについてはポピュラーになってはいるが、そこには様々な問題点が存在している。例えば「ほとんど重量が感じられないゴム人形の様に吹っ飛んで着地する」というのがあるが、このゲームではちゃんと死体には重量感が感じられてその動きもリアリティを感じさせる出来である。また単に撃たれると一様に吹き飛ぶだけという風にはなっておらず、撃った場所に応じた飛び方をするのが分かる。ラグドールの代わりに出血やゴア表現を一切カットしてしまうという事でもなく、ちゃんと首や手足が吹き飛ぶといった点にも対応している。 しかし物理演算はかなり細かいオブジェクトにも適用されている反面、動かない物は一切動かないとなっており、見た目としては簡単に動きそうな物が動かないという点には不満も残る。また稀にだが動きが変になる事もあるし、落ちた武器等が妙な形で固定されてしまったりという現象も発生する。 |
COMBAT |
まずはFPSとしての基礎的なデータから。 ・同時所持武器は3個まで ・持っている武器によって移動速度が変化 ・基本的な移動速度は相当速い部類であり、高所からの落下ダメージも少ない ・ズーム視点可能。命中率が上がるが移動速度が落ちる ・姿勢はCrouch可能でProneは不可 ・左右へのリーン動作可能でその状態から撃てる ・照準自体の大きさが集弾率を表しており、座ると安定し走ると広がる ・照準の広がりとは別に、連射すると実際に照準が跳ね上がる(武器によって程度は変化) ・部位ダメージを採用しておりヘッドショットでは1.5倍のダメージを与える事が可能 ・グレネードは武器を持ち替えずに専用キーを使っても投げられる 近接攻撃が多数用意されており、まずはMelee Attackにて武器で敵を殴れる(持っていなければパンチ)。その他にもキーの組み合わせにより、回し蹴り・跳び蹴り・スライディング・キックが繰り出せる。全て相当強力なダメージを持っており、特にスライディング・キックや跳び蹴りは多くの兵士を一撃で倒す事が可能。Slow-Moとの組み合わせで特に効果を発揮する。ただしアーマーで重装備したタイプの敵には効果が無い。 F.E.A.R.の他のメンバーと行動するシーンは限られており、戦闘場面については一人で戦うというデザイン。予定では部隊戦闘のシーンを結構入れるつもりだったそうだが、最終的にはカットしたそうだ。 移動速度は武器によっても変るが概ね速い部類であり(マップ内での移動もHolsterにして武器をしまえば相当に速くなる)、リロードは速くて弾薬も通常武器に関しては大量となっている。武器の集弾性能も大きくバラけるという程ではないので、アクション性はかなり高いゲームである。なおステルスでの行動を強制されるシーンは無いが、先制攻撃を仕掛けて敵の数を一人でも減らせればそれは有利に働くし、またこちらの存在に気が付いていない敵にはより大きなダメージを与える事が可能になっている(通常よりも簡単に倒せる)。 戦闘中における敵への弾の命中は血が飛び散る表現でも分かるし、撃たれた箇所を押さえて痛がるというアニメーションも用意されているので把握し易い。銃を撃っているという感覚もしっかりと感じられるし、FPSの基本部分はしっかり作られていると言って良いだろう。武器の所持制限についてはある程度は変化を生んでいるという印象。3個の内で2つはショットガンとサブマシンガン(アサルトライフル)でほぼ決まってしまう為に残りにどれを持つかになるが、弾薬が少なかったりで選択しても使える場所が少ない武器も有るのであまり自由度は無い。また一度落とした後に入手出来るのかどうかもかなり武器によって差が有るので、思い切って交換というのも初回プレイではやりにくかったりもする。 その戦闘シーンでは派手なエフェクトが見られるので爽快感が高いのもゲームの魅力の一つとなっている。銃弾が当たって上がる粉塵が凄くて前が見えない位になったりとか、壁は削れるし血は飛び散るし、爆発による大気の揺れや火花の効果も派手。更にそこに死体の吹き飛ぶラグドールの効果も加わって迫力がある。時間を遅くするという能力は機能としては目新しくはない物だが、このゲームのSlow-Mo中にはそういった効果がスローモーションでじっくりと見られるという点で大きな効果を挙げている。 全体の難易度は丁度良いレベルと思うが、後半に行くに連れて難易度が高くなって行くというイメージはないし、非常に難易度が高くなるような箇所も存在していない。死ぬ回数は少なくはないけれども、何回やっても突破が困難というような箇所はNormal程度では無いという印象である。非常にタフな敵は通常動きが遅くて高度なAIも持っていないという欠点が有るし、素早い相手にはSlow-Moで対処が可能となっており、またボスに当たる難敵は基本的に存在していない。 ダメージ面を見てみると、被弾ダメージがNormalでも結構高く設定されており、何人もの敵の目の前に出て行って正面からの撃ち合いというのは難しいというバランス。敵の武器はほぼ銃なので目で見て避けたりは出来ないし、狙いを幻惑するのにサイドステップを使ったりして動き回ると、照準が開いて命中率が落ちるというマイナス面が生じてしまう。 そこでSlow-Moを使う事である程度の正面突破は可能にはなるが、それでも無限に使用が可能ではない設定だし、Slow-Mo中でも相対的に高速では移動出来ないので、敵の数が多い際には撃たれてダメージを受ける危険度が増す事になる。よって通常はリーンを使って体の曝すのを最小限にしての戦闘というのが基本となっている。リーンならば止まっているので照準を安定させて命中率を高められる為に、移動しながら戦うよりも遥かに有利である。そして機会を見てSlow-Moでの直接攻撃と組み合わせながら戦って行くというゲーム性となっている。 そのゲームの主役とも言えるSlow-Moの能力だが、Normalでも初回プレイ時はSlow-Moをそこそこは使わないと辛いという設定である。この能力を使えば、物陰から飛び出して撃ち合う際にリアクション速度の差から絶対的な優位に立てるし、遠距離から撃つ時には銃のリコイルを上手く調整したり、移動中の敵により正確に当てたりする時にも大変役立つ。またタレットの破壊や高速で動き回るAssassinとの対決といった、これ無しでは突破が困難という箇所も存在している。 なおメディキットの数自体は多目であり、そしてメディキットを10個まで携帯可能な上に何時でも即座に適用可能というシステムになっているので、難しいのかはどうかはその場のシチュエーションよりも、今現在持っているメディキットの数に影響される傾向が強い。つまり敵が多い難所でもこれを5個も持っていれば回復しながら戦ってクリアは容易となるが、同じ箇所でも1個しか無いとなると難しくなってしまう。例えばSlow-Moをなるべく使わずに戦うという姿勢もメディキットの数からは十分に可能なのだが、たまたま少なくなったタイミングで難所に遭遇してしまうと困った事になる訳だ。よって先行きの展開が分からない初回プレイにおいては、そこそこはSlow-Moを使ってメディキットを節約するという戦法に頼らざるを得ない事になる。 この能力の問題点としては、時間経過による無限回復というシステムなので、とにかく引いて隠れてはリチャージを待つという形での乱用も可能となっている。そしてそれをあまりにも連続して使うとなると、爽快感がやがては単調さへと変化してしまう恐れがある。なのでSlow-Moを多用するならばHard以上へと難易度を上げてバランスを取る方が適当と思える。 肝心の戦闘はAIの出来の素晴らしさもあって実に面白い。登場パターンは予め配置されているか、或る地点に到達するとスクリプトで出現するという形で初期配置については固定されているのだが、その後の動きはプレイの度に変化するので、どんな風に来るのか分からないという面白さもあるしリプレイ性も高い。個々の動きは勿論の事、部隊として行動して来たりと理に適った人間的な動きを見せてくれるのもリアリティを高めている。移動ルートについても、その近辺の通路は全て通過可能なので大回りして背後からやって来たりといった行動もしてくるし、ガラスを割って飛び込んで来たり手摺を飛び越えたりしてショートカットもして来ると非常にダイナミック。更に遮蔽物をちゃんと利用して来たりとそう簡単に倒せるようには出来ていないので、緊張感を持って戦えるのも優れた点である。 AIの出来は素晴らしいのだが、その反面敵の種類が少ないという問題は残っている。人間タイプの敵はスキンは異なっていても大きな変化は感じられないし、その他とタイプの敵となると光学迷彩を使って姿を消すAssassinや、厚い装甲を持ったHeavy Armor Soldier等数種類しかバリエーションは存在していない。それが単調さに拍車を掛けている。 AIの良さについては別項で触れるとして、ここでは問題点を少々。グレネードを壁に当てての自爆はやはり有って、投げ込むルートの計算は完全では無いようだ。ガラスを破れると思ってしまうのかそれに当ててというパターンもよく見られる。一方で敵が投げ込んでくるグレネードの正確性が高くて到達速度が速いという別の問題も。この点は投げ込みルート計算の簡略化の関係でプレイヤーの近くに落ちた事にしているのかもしれない。それとこれは意図的と想われるが、通常のグレネード以外の2種には敵は気が付かないという設定。またこちらの足音には気が付かないようになっているので、背後から走って近付いても大丈夫と不自然。反対に視覚については相当鋭くなっており、NOLF2に比較すると短時間体を曝しただけで気が付かれてしまう。後は稀にだが戦闘中なのに変な方向を向いてしまったり、こちらに反応しない状態になってしまう事もある。ただ総合的には些細な難点という範囲に収まっている。 |