ALYX VANCE |
このEP1のデザインの根本となっているのは、製作チームの表現によるなら「アリックスとの仮想Coop(協力プレイ)」とでも言うべき物である。スタートから最後までプレイヤーは常にアリックスと行動を共にするようになっている。ただしずっとプレイヤーの横に居て一緒に戦うという意味ではなく、例えば通れるようにゲートを開ける為に彼女を待たせておいて、プレイヤーのみで行動するというシーンも結構含まれている。或いはアリックスがスナイパー・ライフルで遠方から援護したり、固定銃座を持ってサポートをしてくれたりという箇所も存在している。 このデザインから、必然的にアリックスというキャラクタの存在感は非常に重要な物となってくる。まずは「プレイヤーにくっ付いて来るだけのロボットにしか見えないのでは困る」という観点から、グラフィックスの項で述べた様に外観や表情のアニメーションを格段に豊富にしている。これはセリフやアクションに付いても同様であり、ロボットの様に同じ動きを繰り返すだけではリアリティが生まれない。そこでこれを解決する為にValveではダイナミック・スクリプティングと呼ばれる技術を開発している。(精度を別にすれば業界としては特別に珍しい物ではない)。 具体的には全ての行動やセリフは予め用意された物(スクリプト)なのだが、それが使われるシーンは状況に応じてダイナミックに変化するというシステムである。例えばプレイヤーが戦闘中に大きなダメージを受けた場合には「危なかったわね」、逆に余裕で勝利した場合には「さすがね」という風に話し掛けるセリフが切り替わる。その他には暗い場所のみで喋るセリフとか(ライトを付けていると喋らない)、特定のシチュエーションのみで適切な言葉を話させる事で人間的に見せるような努力が図られている。 行動面ではゾンビ相手に肉弾戦のアクションを見せたりするシーンが含まれているが、これもランダムに発生させてはプレイヤーが見ていない可能性が出て来るので、プレイヤーから一定の距離(近過ぎず、遠過ぎず)に存在するケースで且つアリックスにプレイヤーの視点が向いている時に、見栄えの良い特殊なアクションを発動させるようなスクリプトを働かせている。 アリックスの振る舞いや与える印象にも細心の注意が払われている。「ゲームプレイ以前の問題として、アリックスが嫌いなプレイヤーにはこのゲームは決して面白くならない。その為にアリックスに対してプレイヤーが好感を持てるようにする為には多大な努力と修正が行われている。」と話しており、その顛末についてゲーム内で聞くことが出来る開発者コメントから幾つか抜粋してみる。 ”このエピソードの初期バージョンでは、アリックスはもっと頻繁に、プレイヤーにヒントを与えていた。 でも、アリックスは目標を告げるだけで、その目標をクリアするまで何もしないほうがプレイヤーの満足度が上がることがプレイテストで分かった。 これを参考にして、ヒントに関するアリックスのセリフはほとんどすべてカットした。 ところが、さらにプレイテストを繰り返して最終的に分かったことは、プレイヤーが求めているのは、アリックスが勝手にヒントを提示してくるのではなく、プレイヤーの要求に応じて助言をくれるようにすることだった。 そこで、ヒントに関する会話を一部復活させて、プレイヤーが必要なときにアリックスから引き出せるようにしたんだ。” ”緊迫感を出すために、当初はアリックスがプレイヤーを頻繁に急かすような設定だったんだ。 頻繁に「急いで!」とか「止まらないで!」って言うのさ。これで緊迫感が出るかどうかは議論の余地があるけどね。 1つ分かったことは、これが3分も続くと、プレイヤーがアリックスを嫌いになるってことかな。 アリックスがプレイヤーをリードするのではなく、ほぼ常にプレイヤーの後についてくるという設定に変えたのは、このためでもあるんだ。 プレイテストで分かったことは、プレイヤーが自分のペースでプレイすることを好み、アリックスが偉そうにするのはたとえわずかであっても敬遠するということだ。” 以上の様な修正からEP1におけるアリックスの存在はあまり押し付けがましいものでは無くなっており、確かにプレイヤーに対して悪い印象を与える危険性は減っていると思われる。ゲームの進行はあくまでもプレイヤーのペースで行われ、Medal of HonorやCall of Dutyシリーズに代表される、上官や仲間からの指令によって半強制的に達成を急がされるようなイベントは存在していない。しかしその代償として無難なゲームになってしまったという感も否めない。上記のコメントからは”仮想Coop”の印象を強める為に、当初はアリックスが半強制的にプレイヤーを動かすようなイベントが幾つも存在していたと思われる。人間同士のCoopならば主導権を持った相方の指示に従うのは別に不自然ではないのだから、そういったイベントを混ぜた方がより「人間とCoopをしている」という印象は強まる。そしてそれが成功すれば「本当に人間とCoopをしている様に感じられるゲーム」という革新性をアピール出来たかも知れない。 だがテスターに不評という理由でそういったイベントがカットされてしまっているので、結果的には普通にAIをエスコートしてプレイするFPSという、特に革新性を感じられないゲームに落ち着いてしまった感が有る。イベントによる半強制的なプレイを余儀なくされるタイプのゲームは、成功すれば「素晴らしい臨場感と興奮を生む」として効果的に働くが、その反面「やらされている感がして不快感を生む」と悪い方に出てしまうマイナス面も併せ持っている。その負の結果を避ける為に安全策を採った事から、当初打ち出していた仮想Coopというスローガンは、実際の製品版では大分後退しているように見える。 アリックスへの印象としては、前作からの引き続きという点も影響して来る。HL2の時点で好感を持っているプレイヤーに対しては有利な地点からのスタートになるが、逆に良い印象を持っていない人の場合にはマイナス地点からのスタートになる訳で、これはEP1を楽しんでもらうには大きな障害である。 個人的にはHL2の時点でアリックスに対しては特別な印象を持っていなかったので、スタート時点で既にマイナス印象という風には感じなかったし、このEP1によって若干は好感度を増したとも言える。開発チームの狙い通りに、動きやセリフの改善により人間的な印象を高める事に成功しているのは認める。しかしまだガイド役のAIというイメージを抜け出せてはいないのも確かだ。そのレベルを実現しているAIが他に存在する訳ではないが、アリックスを人間的に見せるようにするのがゲームの最重要のポイントでそこに力を注いだのならば、もっと上のランクの達成度を見せてもらいたかったというのが本音である。 Valveは上記のコメントの様にアリックスに対してプレイヤーが悪い印象を持たないように多大な努力をしたが、結果としては「プレイヤーからは様々な意見を戴いた」として、良好なフィードバックだけでは無かったとEP2でのインタビューでは答えている。問題は「結局何をするべきかという指針は、大抵の場合アリックスによって示される」という点になり、調整にもかかわらずアリックスに命令されて動かされているという感覚を受けたプレイヤーも多かったようだ。 確かに普通にルートを見付けて進んで行くシーンではプレイヤー任せだし、謎解きに関して過剰なヒントをくれたりする事も無い。しかし行動の指針については彼女がリードする形になっており、「何々をしてくれない?」、「こういう風に出来ないかしら?」といった感じで指示が出されるのが普通である。常に一緒に行動するという設定で、またアリックスの存在を重要視させるという狙いが有るのだから、この様に彼女側から指示が出されるというのはある程度は仕方がないのだが、そこに不満を感じるプレイヤーが想像していたよりも多かったという事になるだろう。或いはHL2の時点でアリックスに好感を持っていなかったプレイヤーが予想していたよりも多かったので、EP1での対策も効果が無かったのかも知れない。 最後に付け加えると、その一方でゴードン・フリーマン自身は今回も全く喋らない。「会話中に彼が何も意見を述べないのは不自然だという声は当然有るのだが、彼に喋らせてしまうと、プレイヤーは自分がゲーム内世界に居るのではなく、外部からゴードン・フリーマンというキャラクタを操作しているという意識を持ってしまう。これはゲームへの没入感を妨げるのでそれだけは避けたいと考えており、今後も一切喋る事は無いだろう。」 |
GAMEPLAY |
ゲームのプレイ時間は4-6時間程度。ソース・エンジンは匿名で各種ゲームプレイ要素に関連するデータをSteamを通して集計する機能を持っており、それによると平均クリア時間は5時間41分だそうだ。(EP2が発売前時点のデータ)。これは近年の拡張パックとしては特に短いとは言えないが、このプレイ時間の短さはEP1において最も批判の対象になった点と言えるかも知れない。私は通常クリアまでに平均とされる時間よりも長く掛かる方なのだが、何故かこのゲームでは4時間半程度でクリア出来てしまい、ボリュームに付いてはやはり不満が残った。 構成としては内容の短さの割には場面転換が多く、戦闘の合間には随所にパズル要素も含まれていたりと、プレイヤーを飽きさせないような展開で構成されている。序盤の要塞のコアに関連するパートはパズル要素重視でやや変わったプレイ感覚だし、その後は暗闇の中をゾンビと戦い、そして地上へと脱出して反乱軍と合流するようになっている。この辺のテンポの切り替えを重視した構成は評価出来る点。 しかし新鮮さという面では不満も残る。ゲームの舞台はHL2と同じCity 17のままであり、マップは完全な使い回しでは無いのだが、景観的には見た事が有るような場所が多くなっている。また戦闘パターンのバリエーションが少ないのも欠点。HL2での事前にタレットを配置して敵を迎え撃ったりするような変化のあるシーンや、Antlionを誘い出して味方にして戦うといったユニークなシーンがほとんど存在しない。更に戦闘が全般的に地味であり、大規模戦闘による盛り上がりも感じられない。ストライダーやガンシップとの戦闘も含まれてはいるのだが、HL2に比較すると小規模に収まっている。 乗り物に乗って進めるという要素は今回はカットされている。HL2にてエアボートのセクションが長過ぎる(それと3D酔いの問題)といった不満や、バギーがすぐに転がって扱い難いという声を受けて、取りあえずEP1では乗り物の要素は排除したそうだ。 内容が短いのでネタバレをしないように心掛けるとあまりこの項目では話せる事が無く、実際に発売前の各種インタビューでもゲームの内容にはあまり触れられていない。主なテーマはエピソード形式に踏み切った理由と、Valveのゲーム制作哲学の様な物が中心であり、ここでは後者をEP1と絡めながらちょっと解説してみる。 Valveのゲーム制作における基本的な姿勢とは、プレイテストを最重視するという点になる。Valveに雇われたPortalの開発チームがインタビューで驚かされたと述べているが、とにかく彼等の感覚からすると「まだテスターに見せるような段階では無いだろう」という様な原始的な状態のマップからプレイテストを始めてしまうそうで、その後もひたすらテストからのフィードバックによる修正の繰り返しでゲームを作って行く。 多くのゲームでは或る程度中身が出来て来た所からプレイテストは始まる物で、しかも最初は同じ会社内の営業や事務の人間、製作者の家族や友人といった内輪の人間のみに限定され、ベータの段階になって初めて本格的なテスターによるバランス調整やバグ取りが行われる。しかしValveの話だと、同社ではマップの形状を作って仮にテクスチャを貼り付けただけという段階からテストを行うのが普通だそうだ。アルファとか言う以前のレベルからテストが始まって、それを基にしてデザインを流動的に変化させるという制作姿勢になっている。 テストは通常週に一度で、多い時には二回行われる事もある。ここではテスターから意見を聞くだけではなく、(どういう風にやっているのかは判らないが)開発チーム全員が「テスターが実際にプレイを行っている」ところを全て観察するそうだ。その目的の一つ目はプレイヤーの視点の観察。これは別の会社のインタビューでも聞く話なのだが、FPSゲームでは視界が限られているので、開発側が意図的に見せたいと思っている物を確実にプレイヤーに見せるという方法が非常に難しいとされている。進行方向に置いてあっても、必ずそれがプレイヤーの目に留まるとは限らないからだ。Valveではパズルの解法にヒントとなる様な物を周囲に設置する事が多いのだが、これにプレイヤーがちゃんと気が付いてくれるのかをテストを重ねて見極め、ダメならば他の上手いやり方を考えて行くようになっている。 ”このドロップシップの場面でも、これから起こるクールなシーンにプレイヤーの注意を向けさせるため、細心の注意を払わなければならなかった。プレイヤーが、正しい方向を向いてくれていなければ、見逃してしまいやすい場面だからね。 ドロップシップが視界に入ってくる地点にプレイヤーの注意を向けさせるため、1人の兵士をプレイヤーに向けて発砲させることにしたんだ。 プレイヤーがドロップシップに気づきさえすれば、かなりの確率で最後まで見てくれるはずだからね。” 次に難易度の調整。Valveでは「最後までプレイしてもらってこそのゲーム」という考えを持っており、それ故に難しさによってプレイヤーが進行を困難だと感じる様な状況は避けたいとしている。そこで一度止めてしまったプレイヤーは、二度とプレイを再開しようとしない可能性が出て来るからだ。よってテスターが頻繁に死ぬ場所(Valveでは"Difficulty spike"と呼んでいる)を観察し、どうやったら難易度を下げられるかを考える。しかしこれは非常に難しい問題で、単にプレイヤーが途中で詰まらない様にしたいなら簡単にすれば良いだけだが、これだと「全く死なないでクリア出来てしまうヌルいゲーム」と受け取られて評価を下げてしまう恐れがある。つまりプレイヤーが戦闘中に死んでしまうのは別に構わないし必要でもあるのだが、それを適度な範囲に留める様な調整が重要になってくる。 例えば強敵としてストライダーが存在しており、HL2シリーズでは唯一効果の有るRPG(ロケット)が照準の動きに応じて軌道を変えてしまうので、一般的なゲームにおける「物陰からさっと出て、撃ってはすぐ隠れる」という方法が使い難く、より強敵になっている。かと言ってオープンスペースに出ると、その凄まじい攻撃能力によって大きなダメージを負ってしまうので、HL2では強過ぎるという声も多かった。そこで研究の結果EP1ではこれを解決する手段として、「プレイヤーがロケットを発射した場合には、それへの反応でストライダーの反撃が遅れる」というようにAIを変更して良いテスト結果を得たそうだ。(つまり発射後に敵の反撃を気にせずにロケットの向きを調整可能な時間が長くなっている)。その代わりにキャノンの攻撃ダメージは高くなって、またプレイヤーの移動に対する追尾能力も上昇しており、弱くなったというイメージは抱かせないように上手くバランスが取られている。 この難易度の調整は発売後も引き続いて行われる。限定されたテスターからのフィードバックが、それよりも遥かに多い購入プレイヤーからの物と一致するとは限らないからだ。Steamを通してのソース・エンジンの集計機能によって、どのエリアでプレイヤーがよく死んでいるのかは調査が可能になっている。実際にこのEP1では、「エレベーターの到着を待つ間、閉鎖された空間内で生き延びる」という戦闘シーンが在るのだが、ここでは想定よりもプレイヤーが苦戦している事が分かったので、パッチでエリア内に置かれている回復薬の数が増やされている。 またValveではゲームの流れに付いても重要視している。別に長時間プレイしている訳でも無いのに、プレイヤーがゲームを続ける気力を減退させてしまうケースがある。同社内ではこれをFatigue(疲労)と呼んでおり、同じ様なプレイ感覚が長く続くと発生する可能性が高い。よってアクションとパズルの登場するシーンのバランスや、周囲の環境やビジュアル的な変化を考えてゲームの流れを構成している。しかしあまりにも場面転換を行ってしまうと逆に散漫な印象をプレイヤーに与えかねず、その辺の最適なバランスを求めて延々とテストを繰り返すそうだ。 その他ではテスターからの総合的なフィードバックも当然重視している。例えばEP1で相当苦労した点として、アリックスの移動速度を挙げている。遅いとプレイヤーに付いて来れないので足手まといに感じられてしまうし、かと言って速いとプレイヤーに劣等感を抱かせかねない。最終的には「プレイヤーの通常速度よりは速く、ダッシュ時よりも遅くした時に一番良い反応が得られた」としている。 テストしてみて初めて判る事として、自分達がプレイヤーを喜ばそうとして設定した物が、思いもよらず不評というケースも少なくないそうだ。例えば注意深く観察するともっと楽にクリアが可能になる方法が見付かるというシーンを設けて、その方法を発見したプレイヤーに満足感を与えようとしたのだが、逆に「こんな風にクリアが出来てしまうバグが在る」というネガティブな反応しか帰って来ないので、取り止めて一つの方法でしかクリアが出来ないようにしたりとか。 まとめとしてはValveではテスターからの反応を最重視しており、それによって自分達の考えていたゲームのデザインをも、出来る限りは変更してしまうという姿勢を貫いている。反応によっては折角作った大きなブロックごと廃棄してしまう事も有るそうだ。どちらが良いというのではないが、「ゲームとは一種の作品であり、テスターや発売後の評価がどうであろうと、自分達がこうしたいと考えている部分は変更しない」というこだわりを持った制作姿勢とは対極にあると言える。 |
COMBAT |
HL2から武器類の能力には変化が無く、新武器も追加はされていない。敵の種類もほぼ同じで、新しいタイプのゾンビが加わっている程度。 協力して戦うアリックスは無敵ではないと言う話だが、少なくとも難易度Normal程度では守ろうと気に掛ける必要は無い程度には耐久力を持っている。彼女は武器も弾数無制限となっており、プレイヤーとの間にFriendly Fireの概念も存在していない。 このEP1の特徴として、戦闘にはそれ程大きな比重が置かれていないという印象である。HL2シリーズではパズル要素が一般的なFPSよりも多く盛り込まれており、それはこのEP1でも変っていないのだが、HL2は全体が長いので総計すると戦闘シーンも多かったのに対して、こちらは全体が短い分最後までに発生する戦闘の数自体が少ない。 それとシチュエーションによる戦闘の制限という点も加わる。例えばゲームの最初の20-25%程度はパズルに比重が置かれており、あまり戦闘シーンは出て来ない。このパートではプレイヤーの持っている武器は重力銃(Gravity Gun)のみとなり、これかHL2の最後と同様にアップグレードした(人間を掴める)Zero-Point Energy Manipulatorを使ってしか戦えないようになっている。 そこを抜けてから武器が手に入るようになるが、ここでもしばらくは武器の種類は少ないし、何よりも弾薬があまり用意されていないという状況が続く。これはアリックスとの共同戦闘を意識してのデザインと思われ、プレイヤーの弾が少なくなったら敵をアリックスに任せるように仕向けてやる事で、協力しているという感覚を高めたかったのだろう。いずれにしろプレイヤーが普通に銃を撃って戦えるようになるのは、ある程度ゲームが進行してからになっている。 テンションが高くなるような大規模な戦闘場面も不足気味という感じで、HL2では数体同時に出現していたストライダー等のボス格も一体のみで出て来るだけと寂しい。全体的な難易度もHL2に比較すると下がっている。 以上の様な点から、EP1は戦闘を重視するプレイヤーには物足りなさを感じさせる可能性が高い。 戦闘のシチュエーションの方も目新しさを感じさせるシーンはあまり存在せず、HL2でも見たようなパターンが大半である。ネタバレになるので全ての新規設定について詳しくは書かないが、その中では初めて導入された「ライトを点けないと前が全く見えない程に暗い場所での戦闘」というのはスリリングで面白かった。パズル的な解法やオブジェクトを利用して戦うというシーンの方には新要素も導入されているが、これはパズル的な面白さであって戦闘自体を満足させる物では無い。 敵のAIには大幅な変更は加えられていない。目立つのはコンバインの兵士に物陰でしゃがんで攻撃を防ぐ動作が加わった点。 |
問 題 点 |
他では言及していない点を幾つか補足。 これをどの程度大きな問題と取るかどうかは個人差が有ると思うが、EP1ではHLシリーズのトレードマークとも言えるCrowbarが、結構ゲームが進んだ後半にならないと入手出来ないようになっている。これを好んで使いたがるタイプのプレイヤーには痛い点になるはずだ。その理由としては最初からこれを持たせてしまうと、(敵としてゾンビのみが登場する)プレイヤーの武器の弾薬が少ないパートでもそれだけで十分に戦えてしまえるようになり、アリックスに頼る必要性が無くなってしまうからと見て間違い無いだろう。つまりアリックスとの共同戦闘の意識を高める為に、それを阻害する危険性を持ったCrowbarは持たせないようにしたと考えられる。 私は特にこだわりは持っていないのだが、Crowbarが無いので敵を目の前にして弾の節約の為に逃げないとならないというのには、やはりじれったさを感じてしまった。(オブジェクトが転がっているなら重力銃でも戦えるが)。 ストーリー面にも不満が残る。最初のエピソードというのは解るが、あまりにも話が進展しないというか単純過ぎるという印象。HL2の終了後に気になっていた点に付いての解答も与えられないし、EP2への期待感を煽るという意味でも伏線の張り方が足りないように思える。 アリックスのAIに付いてだが、他がよく出来ている分目立ってしまう妙な点として、移動中に進路にプレイヤーが居ても押し退けてしまう所は変っていない。最悪の場合には高台から落とされてしまう事もある。 問題とまでは行かないが、EP1では重力銃の効果範囲が広げられており、その一つとして新規に登場した「グレネードを持って突進して来るゾンビ」に対して、これを重力銃を使って奪ってしまう行為が可能になっている。しかしこれが可能な事に気が付かない場合、破壊力が即死級に高いだけに狭い場所で迫られると対応策に困る羽目に陥る。 Valve側では序盤からプレイヤーが重力銃を使ってより多種のオブジェクトを掴めるようになった点をアピールして、これを気が付かせるように仕向けたと話しているが、実際のフィードバックではそれ程の効果は無かったようだ。私自身も最初は対処に困っていて、偶然に吸い寄せが可能な事に気が付いた。またややこしい事にこれはこのゾンビの持っているグレネードにのみ有効で、コンバインの兵士からは奪えないようになっているので、気が付いた人には違った意味での混乱を与えている。 |