GAMEPLAY |
EP1ではゲームが短いという批判が相当多かった為に、このEP2では改善を図るとしていたが実際には大して長くはなっておらず6-8時間程度。Steamでの統計調査によれば、(これを書いている時点での)クリアまでの平均は6時間39分である。 このEP2の大きな特徴は、HL2及びEP1での舞台だったCity 17を離れての新しいロケーションが使われている点になる。見た目的に全く新規な場所ばかりが用意されている訳ではないが、アントライオンの巣であるとか、森林・丘陵地帯の様な広いアウトドア等はこれまでには見られなかった物である。構成としてもEP1の「アリックスとの協力で進める」という様な中心テーマを設けずに、バラエティに富んだ設定を用意するというHL2の縮小版の様なスタイルを採っている。 ストーリーの背景設定としては以下の様に語られている。「この三部作全体の流れとして、G-Manがフリーマンに対するコントロールを失って行くというようになっている。HL1はG-Manによるフリーマンへのコントロールが始まった話。HL2では彼はフリーマンを自らの目的の為に利用した。しかしEP1においてはボーティガンツの力によりフリーマンはG-Manによる支配から逃れる事に成功する。しかしフリーマンが彼の束縛から離れると共に、別の勢力がフリーマンに対する注意を強めて行く。それがコンバインの上層部であり、地球を配下に置く為の計画において最も危険な人物として、フリーマンに対するコンバインの干渉が増すようになる。というのが三部作の流れになっている。」 とは言ってもG-ManはこのEP2でもフリーマンに干渉して来るし、新たな事実が明かされるシーンも存在している。ただ彼の目的は依然として謎のままだ。HL2の時点ではG-Manが何等かのプロジェクトの為にコンバインを利用しているかのような想像をしていたのだが、Valveの話を聞くとコンバインはG-Manを含めた人類よりも遥かに強大な存在であるという設定らしいし、この辺はEP2を終わらせても依然として明らかにはされない。 それとEP1の要塞で始めて目にしたコンバインのアドバイザーという存在がこのEP2では重要になっているのだが、こちらもその役割が名前からして指揮官的な存在なのか、それとも別のタイプなのかがハッキリしないままに終わってしまう。謎の大半は最後のEP3に持ち越しという感が強く、このEP2ではあまりストーリー的な進展や、新たな発見が見られないままに終わってしまうという印象で物足りない。 ストーリー上で重要な新キャラクターとしてはマグヌッスン博士が登場。HL1での3パターン有ったBlack Mesaの科学者の中の一人をクレイナー博士同様に新規にモデリングしたキャラクタで、今回は大きな役割を果たしている。キャラ的には尊大で身勝手で扱い難く、クレイナーとは仲が悪いという特徴的な人物として描かれており、これまでには無かったタイプの人物。その他にこれまでは無個性だった反乱軍の兵士の中にも数人面白い人物が加えられている。 今回も共同で進めて行くパートが含まれており、フリーマンがアリックスやボーティガンツ(またはその両方)と共に行動しながら戦うシーンはそれなりに多い。ただその構成に付いては細心の注意が払われている。(注: HL2やEP1をプレイしていない人には、このボーティガンツとは何者なのかが分からないと思うので簡単に解説。元々はHL1でXenという異世界に棲んでいた生物で、Alien Slaveいう名前でプレイヤーの敵だった。しかし元々は高い知性を持った生物だった為に、Xenの破壊後には地球に残った彼等は人間と共存の道を選び、HL2ではレジスタンスに協力しているという設定になっている)。 EP1では当初は予定していた、アリックスがプレイヤーに対して命令を下したり、リアルタイムでの反応を必要とするような行動を強いるといった要素を、テスターがアリックスに対して不快感を持つようになってしまうという調査から大幅に軽減していた。しかし結果的にはそれでもアリックスに対して邪魔とかウザいといった反応が見られて、「とにかくプレイヤーは進行のペースが奪われる事を嫌う。アリックスが口を挟んだり、彼女が積極的に動き回るのを好まないプレイヤーが多いようだ」としている。ストレートに書いてしまえば、そもそもEP1での狙いだったプレイヤーとAIとのCoopの様な構成自体が、プレイヤー層全体からはあまり好まれない設定だったと言えるだろう。 ここで難しいのは、FPSにてパートナーのAIとして有名な人物としては、例えばCall of Dutyシリーズにおけるキャプテン・プライスが存在するが、彼の場合にはプレイヤーに対して命令したり尊大な態度をとっても特に問題は起きない。理由は簡単で彼がプレイヤーの上官だからであり、あれこれやれと言い付けられても何ら不自然では無いからだ。 同じ様な理由でEP2でのボーティガンツについても問題は無い。彼等はプレイヤーに対して「何々をしてくれ」といった依頼を喋るが、何しろ異星人なので態度に不快感を覚えるといった点を超越した位置に存在しており、その言動に腹を立てるというような感覚は普通持たないだろう。また例の電撃攻撃が物凄く強くて頼りになるので、そういう意味でもプレイヤーに依頼を出して来るのに違和感を感じなくなっている。 ところがアリックスは基本的にフリーマンとは対等とも言える立場のキャラクタであり、それだけに「対等なのに命令されている」という感覚を生み易い。またゲームのシステム上プレイヤーからはアリックスには命令や指示が出来ないので、どうしても発言は一方通行になってしまう。これを解決したければ、一般的なゲームの様に単に付いてくるだけで決まった場所でしか喋らないようなAIにするか、そもそも一緒には戦わないような位置付けにすれば良い。しかしValveとしてはアリックスを一人の人格としてプレイヤーが意識する位の存在にまで高めたいという意図を持っており、その為には必然的に発言数は多くなるし、プレイヤーに付いて来たりして戦うという演出も重要である。 そこでEP2では、プレイヤーに過度に干渉はしないが、かと言って空気の様な存在でもないという地点を狙って、綿密にテストが繰り返されたそうだ。このEP2でも彼女は話し掛けて来るし、進行に対する提案や、謎解きに対するヒントを出したりするシーンも在る。ただそれらが控え目だったり曖昧だったりとEP1よりも引き気味に設定されており、パズルならばプレイヤー自身がより自分で考えないとならなくなっているし、行動をリードするのもプレイヤーに任されるシーンが増えている。 或いはEP1では、作動させたい装置が動かない・扉が開かないのを、アリックスが「何とかしてくれ」とプレイヤーに指示して、それをプレイヤーが達成する為に単独で行動するというパターンが多かった。それをEP2では、そういった障害を発見した後に、やはり2人で一緒に協力して解決するようにと対等の立場を崩さないようにされているシーンも少なくない。その他には戦うのはプレイヤーだがアリックスは回復薬を提供する役に回ったり、アリックスがスナイパー・ライフルで援護するシチュエーションにて、プレイヤーが望めばその援護を得ずに戦える場面も有ったりする。 それと意図的かどうかは判らないが、レジスタンスと一緒に居る時は彼等がアリックスの代わりに依頼を出して来るパターンが多い。彼等にとってはフリーマンは伝説的な存在でも有るので尊敬の念を込めた発言になるし、「俺達ではどうにもならないけど、あんたならばやれるだろう。頼むよ。」といった風に持ち上げて依頼して来たりするので、プレイヤーも良い気分で頼みを引き受けられるようになっている。 アリックスの言動をコントロールするダイナミック・スクリプティングに関しても、AIを人間的に見せるには非常に効果的だとEP1にて分かったとしてパターンが増やされており、より喋るセリフや行動のパターンがバラエティに富むように再構成されている。戦闘では敵のゾンビの頭を蹴り倒したり、障害物の陰にスワットターンの様にして背中を付けて隠れながら撃ったりとEP1では見られなかった動作も増えており、また車に乗っている最中のプレイヤーの運転と車の動きに対する反応も細かく作り込まれている。 全体的にこのバランス調整は上手く行っている様で、彼女を鬱陶しく感じる可能性は減少しているように思える。ただそれは当然他のゲームに近くなっているという意味でもあり、積極的に干渉して来ない分アリックスがAIっぽく感じられるのは否めない。しかしダイナミック・スクリプティングの効果がその弱点を或る程度補完しており、人間的に見えてプレイヤーが好感を持てるようなキャラクタという狙いはかなりのレベルで達成されている。 EP1では外されたVehicleのパートが復活している。当初実験したHL2のバギーの様な車両はやはり軽量過ぎて扱い難いという声がテスターからは多かったので、1969 Dodge Charger(通称Hotrod)という重量感のあるひっくり返ったりしない車を用意している。しかし個人的な感想としては、この車が操作し易いとは言い難い。 車はほぼ骨組みだけとなっており、乗るとFOV(視野)が広がるようにも設定されているので周囲は見易い。だが肝心の前方が下側を塞がれる様になるので、意外と前が見え難いのが第一の難点。ハンドリングもデジタル操作のキーボードでは無理も無いが良好ではなく、微妙な操作はやり難い。ターボで加速も可能だが、これは一定時間効きっ放しになるので障害物の無い直線以外では使い辛いといった感じ。 車体にダメージは無いので敵にぶつけて倒すという攻撃方法が取れるが、高速になると避ける敵を追尾して当てるような制御が難しく、スピードを落とせば効果が薄くなってしまう。同乗のアリックスが内部から攻撃が可能になっているのは便利な点。 ただしゲーム上は車の操作性があまり良くないという点はそれ程影響していない。通常の移動時は別にぶつかって遅れようが関係無いし、車での素早い移動が重要になるシーンも含まれてはいるのだが、操作性の悪さが問題でクリアが困難という程には厳しくは無い。急いでいるのに思うように走れないのでイライラはするが、クリアにはあまり問題が無い程度の制限時間の緩さになっている。しかし「時間制限はもっと厳しいが、それをクリア出来る程度に車両の操作性が良好」という方が良かったのは言うまでもない。 物理エンジンの適用範囲の拡大も行われており、"Cinematic physics"と呼ばれる大規模な破壊シーンが導入されている。これは多数のオブジェクトが含まれた巨大な建造物等の崩壊を物理エンジンによって見せるという技術。だがこれを使ったシーンがふんだんに見られる訳でもなく、発売前の派手な宣伝度合いからすると肩透かしという感を受けた。 |
COMBAT |
最初に仕様として変わった点が少々あるので紹介。照準の形状が変更されて、残りヘルスと弾薬を示すインジケータが追加されている。これまでもこの方式は選択する事が可能だったが、今回はこの表示方式に固定でメニューからの変更は出来ない。それとフラッシュライトのバッテリーが独立しており、スタミナバーとの兼用ではなくなったのは地味ながらも良い変更点である。 武器関連にも変更は無い。製作チーム自体が新武器の導入にあまり興味を持っていないそうだ。このチームの方針はともかくとして、FPSでは武器の種類と能力は大きなポイントとなるので、戦闘を重視する人には依然として武器に変化無しというのは弱い点なのは確かだ。ただ武器ではないのだが、対ストライダー用の新たなアイテムとしてマグヌッスン・デバイスなる物が利用可能になっている。 ネタバレにもなるので詳細は控えるが、EP2ではフリーマン達がCity 17を離れたのと併せて、戦闘の発生するロケーションやシチュエーションが変化しており、そこが最大の特長にもなっている。 序盤ではアントライオンの巣となる地下の洞窟が登場し、暗い中を光る幼虫の明かりを頼りにしながら戦って行くシーンが新規に登場。ここでは酸の毒を吐く新しいタイプのアントライオン・ワーカーが加わっている。飛んで来る酸自体にダメージはそれ程無いのだが、ゲームの特性として一旦大きなダメージが加わった後に徐々に回復するので、下がった時に連続して攻撃を喰らうと死に易いという怖さを持っている。逆に幼虫達は攻撃をして来ず、死ぬと回復用の粒を撒くので役に立つ。その他では新しいタイプのアントライオンのボスキャラも追加されている。 広いアウトドアでの戦闘も目新しい。これまでもアウトドアのシーンは存在してはいたが、その広さを活かすような設定はあまり設けられてはいなかった。それを今回は広い場所でプレイヤーが自由に動ける範囲を増やしてやり、敵の方もそれに応じて幅広いルートを選択可能というランダム性を高めて、リプレイ時には違った感覚での戦闘を味わえるように工夫されている。道の向こう側とこちら側での戦闘というのではなく、円形等の広い場所で回り込んだりと選択肢が広まっている。 戦闘のシチュエーションもこれまでには見られなかったようなパターンが結構加えられており、HL2シリーズをここまでプレイして来た人でも新鮮さを感じられるような努力が成されているのが見て取れる。敵のヘリとは新たな方法で戦ったりするし、大量の敵相手にタレットや地雷を仕掛けての拠点防御という設定も含まれている。中でも広大な土地を舞台にしたクライマックスの大戦争は壮大であり、今回のハイライトの一つと言える。 また場面によってはプレイヤーの自由度が高まっている。広い場所なら何所から攻めるか、或いは多種の弾薬が有るので好みの武器を使って攻撃出来る等。これまでValveでは敵AIの動きによる変化という面は重視していたが、プレイヤー側の自由度に関しては否定的な見解だったので(自由度を高めると、制作側の狙った演出効果がプレイヤーに体験出来なくなる可能性が出てくるから)、大きな変化と言えるだろう。 新しい敵では何と言ってもHunterが目立つ。ストライダーを小型化したようなデザインの三足歩行のロボットで、接近するとダメージの大きな高速体当たり攻撃でプレイヤーを遠くへと吹き飛ばし、離れると付着後数秒で爆発する青いプラズマ弾を連続して放って来る。更には数匹が固まって現れる事が多く、複数を相手にするのは相当辛い。特に耐久力が高いのが厄介な点で、ショットガンだと7,8発程度当てないと倒せない。しかし接近するのは不利なのでショットガンは使い難く、SMGやパルス・ライフル程度の攻撃だと倒すまでに時間が掛かってしまう。 一番有効なのはパルス・ライフルの2ndで、これだと一発で蒸発させられるが弾薬は非常にレア。よってRPG、SMGの2ndやグレネード等の爆発系の攻撃を利用するか、無いなら357マグナムやクロスバウ等の弾を使って戦う事になる。周囲にオブジェクトが存在するなら、時限式のプラズマ弾をぶつけ返してやるという戦法も可能。 気になった点としては、毒のダメージを喰らうパターンが多い。毒のダメージを受けると一旦HPが低下し、その後ハザード・スーツが解毒薬を処方するので徐々に元の値へと戻って行くというのがHL2での仕様。これの代表的な敵が黒い毒タイプのヘッドクラブで、攻撃されるとHPが一旦1になってしまい、その後連続して攻撃を受けるとHPが100で有っても死んでしまうという怖い存在である。EP2ではこの毒タイプが不意打ちを仕掛けて来るシーンが結構多く、しかもこれはちょっと避けられないだろうと思わせるシチュエーションも増えている。よって毒のダメージで視界が遮られる中、瞬間的に「次の攻撃を喰らって死なないように何とか避けるか倒すかしないとならない」という対応を余儀なくされる。こういう攻撃自体が悪いというのではないが、パターンとしてちょっと乱発し過ぎという印象を持った。 また同じ様な事例として、既にHL2からそうなってはいるがマップ内に爆発物が多過ぎる。これは重力銃を使って敵に叩き付けたり出来るというのが主な狙いなのは分かるのだが、どうもEP1以降このEP2でもその数が更に増やされているように感じられる。そしてこの爆発はダメージが高く、敵の攻撃がプレイヤーの近辺の物に当たって爆発すると大きなダメージとなり、即死する事も珍しくない。またそれだけ沢山置いてあるのならと、重力銃で掴んで攻撃用に使おうとした際には反撃で爆発してしまう危険性が有るので、(ゾンビ相手以外には)数多く有っても意外と使えなかったりもする。 クリアまでに或る程度は死なないと、または最低限死の危険性を感じさせないと緊張感が生まれず、簡単過ぎるとして低い評価を受けてしまう可能性がある。よって死ぬ可能性の高いシチュエーションを意図的に設けるというやり方には異論は無い。だがその目的の為に爆発物とか毒攻撃の不意打ちを多用するのには賛成出来ない。もっと通常の戦闘での危機感を増すべきと感じる。 その一方で難易度バランスの調整に関しては、やはりこのゲームでも相当な練り込みが行われている。例えばプレイヤーが苦戦するようなバランスを設定した場合、回復薬が足りなくなってデッドエンドになってしまう危険性がある。つまりちょっと前のセーブ地点に戻っても、既にその時点で回復薬が少なかったらどうしようもなく、相当前まで戻ってやり直さないとならない。対策としてはメディックを用意して幾らでも回復可能にするというのがHL2シリーズでの手法だが、それを連れて行く事が出来ないシーンでは問題が生じてしまう。そこでアントライオンの巣のパートでは、幼虫を潰して得られる回復用の粒にて、回復可能なヘルスの値を自動的に調整するという方式を考え出している。HPが低い状態ほど、粒一つでの回復量が増すという意味。 別のタイプとしてはオートセーブのタイミングにも新システムが採用されている。ラストの戦闘では予め定められた特定のタイミングでオートセーブを行うシステムだと、そこからではどうやってもクリアが不可能に近い状況でセーブされてしまう可能性があるというテスト結果が得られた。そこでプレイヤーのHPと周囲の状況をモニターするようなシステムを作成して、一定の条件下ではそれがオートセーブのタイミングであってもセーブを行わないという風になっている。 戦闘中のAIは常に改善を図っているという話だが、これまでと大きな違いと言うのは感じられなかった。具体的な改善点としては、味方のAIが自分の移動パス上にプレイヤーが居るとそのまま強引に押し退けてしまうようになっていたのを、衝突判定のルーチンを改良して避けて通れるようにしたそうだ。 |