<GAMEPLAY>

 ゲームの構成は6つのエピソードから成っており、マップ数は全部で35個程度。ただこの中にはバーの様な戦闘の無い個所も含まれている。マップは行きと帰りで内容が異なっていたりするとはいえ、分量的には結構短い部類に入るゲームである。それぞれのマップというのが特別に大きい訳でも無いし、15-20時間程度で終わるのではないか。

 マップのデザインはグラフィックスが素晴らしい事もあって、画面から漂う荒んだ世界の表現と相まって雰囲気としては非常に良い出来である。プレイ中にその世界を実際に歩いているという感覚を味わえるという面では優秀。ただし内部のデザインその物は平均的な出来でしかない。確かにバラエティに富んだ場所を用意はしてはいるものの、エピソード毎の変化に乏しい印象である。敵として登場するのが人間だけで変化が無いというのもあるのだろうが、この辺はもう少しバラエティに富んだ敵を用意して変化を付けて欲しかった所だ。ストーリーの展開もほぼ一方通行であって分岐等のバリエーションは無い模様。

 謎解きに関しては結構な比重が置かれており、分量の割には解決して行かないとならない事が多い。ただし特徴とされている「人間との会話によるストーリー的な謎解き」というのはそれほど難しくなく、ノートを見ておけば解決にはそれほど詰まる事も無いと思える。逆に次にどこを通って進めばいいのかというパズル的な要素の方は、結構出て来る上に分かりにくい。不親切ではと思われる個所も点在しており、洗練されていない印象を受けた。
 パズルとしての出来も平均的であり、旧来の「或る場所で手に入れた鍵でどこそこを開ける」というタイプの物中心。そこに人間が絡んでくるのは変わっているとはいえもう一工夫必要だろう。また解決後に今来たマップを戻ったりという個所が多いのだが、こちらもまたそれほど活かされていない感じである。この謎解きの難易度はかなり難しい部類に入り、ノーヒントで自分の力だけで突破出来る人はそうはいないのではと思われる。これには開けられる(通れる)場所が分かり難いのと、それに必要な取れるアイテムの方も分かり難い事も影響している。



 ゲームの最大の話題となった残虐性はどうなのかというと、これは確かに相当ヤバイ感じはする。グラフィックス表現その物は後発で同じく残虐性が話題となったSoldier of Fortuneの方がリアルではあるが、このゲームは全体的な雰囲気がダークな為に、より残忍で危険な雰囲気を漂わせている。特に流血の量が半端ではなく、複数の人間で乱戦になると辺りが血の海となってしまう。またSOFはどれだけ残忍であってもこちら側は世界の平和を守る為の正義であるというスタンスであったが、このKingpinでは単にプレイヤーは自分の私利私欲のために他人をぶっ殺すだけであり、それだけ残虐で危ないゲームという印象が強い。或いはCarmageddonシリーズの様な「あくまでも冗談」というデフォルメされたスタンスもここには無く、非常にリアル指向のゲームであるのも危険度が高いと感じる原因になっている(キャラクタの体型はデフォルメされた部分があるものの)。登場してくるキャラも危なそうな奴ばかりで、手に注射の跡が沢山有る女とか目の焦点が合っていないラリッてる奴とか。言語的にも非常に汚い物が含まれており、到底子供にはプレイさせられないといった評価を受けたのも頷けるレベルの危ないゲームである。


 難易度はNovice,Easy, Normal, Hard, Realと5種類用意されており、主に弾薬やアイテムの手に入る数と敵の強さに関連してくる。戦闘に関する難しさについては他の項で分析しているのでそちらを見てもらいたいのだが、Normalレベルでの比較という事であれば数ある3DFPSの中でも相当上位にランクされる難しさと言えるだろう。普通のゲームのNormalでやっとという人はEasyで開始した方が良いかもしれない。

 敵は基本的に人間ばかりで(犬はいるが)多彩という印象は無い。また各人によって思考回路が変わっている訳では無さそうなので、どうしても戦闘においてはバラエティさに欠ける感は否めないキャラクタのモデルにはエピソード毎に変化をつけているが、ちょっと全体を通すと弱い感じである。ただ全体の雰囲気が良いのでそれほどマイナスになっているという印象は受けないのであるが。
 それと敵は見掛けだけでは耐久力が判断し辛いというのも気になる点。全て人間にしないとならないという事で強いボス格の敵がバズーカを数発食らっても死なないというのは仕方のないところか。

 逆に一般人の方は良く出来ており生き生きとしているように感じられる。簡単ではあるが会話が出来るので個性が出ているし、特にバー等にいる人間はグラフィックス的にも良い出来。こちらの態度によって逃げ出したり反抗的になって攻撃して来たりと性格にも何種類かあるようでこれもよく出来ている。

 基本動作は通常のFPSと変わらないのだが、命令や返答の為のキー3種類や武器をしまったりといった特殊キーが増えている。動き的にはステップが広い感じでちょっと戸惑う面もあるかも(特に横移動)。それと結構進む際に飛び移ったりが多いのだが、落ちて死ぬというケースは無いもののややジャンプの感覚は掴みにくい印象。問題なのは箱の移動で押したり引いたりして目的の場所へ移動させるのだが、これはかなりやり辛くて閉口させられた(Shiftにてスピードを落とすと何とかなるレベルではあるのだが)。
 それと弾薬入りの箱については誤って撃ってしまうと爆発するので、開けるにはパイプを使わないとならない。これに関して壊せる箱と壊せない物の区別が付きにくく、アイテムが入っている事もたまにしか無いのでかったるい感じを受けた。それと気になったのは死体から金を奪う時は屈んで探さねばならない点でこれは面倒に感じた。単に近付けば拾えるというスタイルで良かったのではと思う。



<戦闘>

 FPSである以上は戦闘というのは重要になってくるのだが、このゲームの戦闘体系というのはかなり通常の物とは異なっている。一番の違いはダメージに関する考え方だろう。Kingpinでは武器の与えるダメージというのが非常に大きいという設定である。ヘルスはMax100固定で防具が頭・体・足に独立して100まで装着出来るのだが、完全フル装備でも大して持たない程度の防御力しかない。同じNormalレベルで他のゲームと比較した場合、攻撃により受けるダメージのスケールが2,3倍になっているという感じである。更に敵の攻撃が恐ろしく速く、こちらを発見すると一瞬で撃ち込んで来るし狙いも正確である
 例えば同じ実銃系ゲーム(&残虐系ゲーム)としてSoFと比較してみた場合、Normalの場合SoFではショットガンを持って敵の目の前まで行って同じショットガンを撃ち合えばほぼ勝てるし、マシンガンを持った3人ほどの敵の前に飛び出して行って撃ち合いをしても通常は勝てる。しかも必ずしもフルヘルスの状態で無くても大丈夫だ。ところがKingpinでは敵の攻撃スピードが速くダメージが大きい為に、ショットガンでは敵の目の前まで行こうとして近づこうとする間に数発先に撃たれて死んだりとかになるし、敵が3人マシンガンを持っている所へ飛び出すなどフルアーマーの状態でも危険である。5秒と持たずに蜂の巣にされるだろう。SoFと比較して敵の攻撃ははるかに正確且つ高速でダメージが高い。

 それとほとんどの武器が発射と同時に着弾するタイプの為に避けるという動作にあまり意味が無い。敵の発射するミサイル等を左右にステップしてかわしながら敵に攻撃を当てて倒すといった芸当は使えないのだ。確かに動いて敵の狙いを混乱させるというのは可能だが、敵の追随能力は非常に高い為にこちらが動いて照準を乱す事を考えると反ってマイナスになる。よって敵の攻撃をある程度は受ける事を考えて戦わないとならないが、その受ける攻撃が非常にダメージが大きいというシステムのゲームになる。
 とにかく大抵の武器では撃たれれば着弾するので避け様が無く、言ってみればアクションFPSをプレイする際の”能力”というのが活かしにくい。フルアーマーにした次の戦いでいきなりヘルス50以下まで削れらてしまい(まともに行ったらこの程度のダメージは一瞬である)、その後が進めなくなってしまったりとかが頻繁に起きる事になる。そしてヘルスの値が危ないレベルにまで下がってしまうと、基本的に個々の戦いでは体力を幾らかは削られるので次の戦いが出来なくなってしまう。
 Armorについてもどういうシステムになっているのか詳しくは不明なのだが、どうもArmorが無くなった部分からダメージが入るらしく(或いは敵が意図的にそこを狙っているということかも)、例えば頭と体にはまだ充分に残っているが足は0という場合だと、どんどん本体のヘルスが減らされてしまい頭・体共にArmorが半分以上残っているのに死亡という事にもなる。

 総じて感覚としてはリアル系とアクション系の中間という感触であって、普通のアクションFPSと同じ感覚でプレイすると簡単に死亡してしまうことになるであろう。よって正面からの撃ち合いではなく不意を突いての攻撃を仕掛けたり、弾を無駄使いしてでも出来るだけ遠方から攻撃して被弾の確率を低くするといった戦い方が中心となる。またなるべく仲間を連れて行動して敵の注意を彼等に逸らすという戦い方も重要となってくる。

 AIについてだが、まず動きとしてはかなり動き回って撃ってくるというパターンが多い。こちらが移動するとそれを追って来れるだけの能力は身に付けているし、ダメージが大きくなると一度退却して回復を待つという事も出来る。更に敵わないとなれば逃げるし、戦闘モードであればしつこくこちらを追いかけてくる。いずれも段差や階段をものともしないし曲がり角等でスタックもほとんどなく、移動パスのプログラムは優秀な部類に入るう。こういった面は人間ぽいのだが、攻撃に入るまでの間が早過ぎるのと正確性が高過ぎる印象であり不自然。それと壁に突っ掛かったりがほとんど無い反面、こちらを直線的にに追って来る際に高いビルから飛び降りて来たりというおかしな面も持ち合わせている。



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