<TACTICS>

 このゲームに関して言われる一つの特徴として「難易度が高い」というのがある。昔のPlay Online誌を引っ張り出してみたのだが、1999年9月号にKingpinの特集とクロスレビューが掲載されている。そこには「プレイを楽しむ以前に難易度が高過ぎて先に進めない」、「Easyでも難しい」といったコメントが寄せられている。だがこれは私に言わせるとプレイの仕方が間違っているというべき(FPSはやり慣れていない人もいるようだし)。少なくともNormalであれば言われているほどは難しくないゲームである(戦闘に関しては)。

 誤解された原因というのは、あまりにも残虐性が強調されてしまった事にある。敵が残虐に殺せるというのが、「自分のプレイも残虐に」から「血に飢えた狼の様に殺しまくるゲーム」と取られて伝わってしまったのだ。Kingpinに対する大方の認識としては「戦闘部分に関してはストレートな作りで、次々に敵を倒していくシンプルなスタイル」というのが多く、Xatrixは「このゲームは他のシューティングとは違うんだ」と強く主張していたのだが、残念ながらそれは伝わらなかった。
 根本的に彼等が作成したかったのはギャング社会を再現したリアルな雰囲気のゲームであって、チンピラの様に振舞えば良いというゲームではない。このゲームの最終的な目的は自分が新たなボスになる事なのだが、ここで考えてもらいたいのはギャングのボスとして君臨する条件である。最も喧嘩の強い人間がボスとなるのだろうかと言うとそうではない。ボスとなる人間は頭も良くなければならないし、冷酷でもなければならない。ただ単に戦闘が強いという人間は、成れてもボスの片腕止まりであってボスの器ではないのだ。そういう意味でこのゲームでプレイヤーに要求されるのは冷静な判断と知能、そして冷酷な振る舞いである。ただ敵を撃って倒せばいいというスタイルでは苦戦して当り前。実際にそれではEasyでも難しくなってしまう。

 以下はこのゲームでの具体的な進め方のアドバイスであり、難易度Normal以上であればこれらは特に重要である。

1.仲間が重要
 仲間を雇う事が出来るというのは先に述べた通りなのだが、重要なのはこのゲームでは「仲間を引き連れて行くのが有利」というのではなくて、「仲間を連れて行かないとならない」というスタンスでバランスが調整されている点にある。違う言い方をするならばこのゲームは擬似的なCoopとも言える。念の為に言っておくとCoopとはシングルプレイのシナリオを複数の人間でクリアしていくマルチプレイの事であるが、この場合ゲームの難易度を上げてプレイするのが普通である。なぜならばシングルプレイをNormalでクリア出来る人間が3人集まった場合に同じ難易度Normalではゲームが易しくなってしまうので、HardからNightmare等へとレベルを上げてバランスを取る事になる。
 実はこれと同じ事がこのゲームでは行われており、その時点で連れている可能性のある人数に合わせて難易度が調整されている。つまり二人の人間を雇う事が出来るエピソードではそれに見合っただけの数の敵が出現するという意味。なのでもしも仲間を雇わないか死なせてしまった場合には当然難しくなる。それがNormalレベルであっても、出てくる敵の数は普通のゲームで言うHard以上になっているのだから。逆に仲間が雇えない唯一の5番目のエピソードは、最後の一つ前だというのにその調整の為に難易度はやや下がるようになっている。

A:仲間を雇える事自体を知らない
B:面倒なので仲間を雇わずにプレイ
C:仲間は雇うが死んだらそれまでだし、コマンドが面倒なのでそれほど活用しない
D:仲間を雇うつもりはあるのだが、仲間が見付けられない
E:仲間を雇うまでは良いのだが、活用の仕方がよく分からない


 仲間メンバーに対するスタンスとしては上のような段階になるだろうか。Aは問題外として、まずBだがこれはかなりキツイ。アクションFPSだったらそれでも良いだろうが、このゲームは戦闘の項で述べた様にリアル寄りであって敵の弾を見て交わしてダメージを受けないようには出来ないので、一人だけでは生き延びるのが非常に困難である。
 次にCだとバランス的にエピソード内での後半に行くほど当然敵の攻撃は激しくなるのでこれもまた辛くなる。肝心の各エピソードのラスト近くの激戦が一人でという事になってしまうからだ。ここで問題となるのがメンバーの体力回復で、彼らはヘルスを取れない代わりに自動的に回復させられるのだがその時間が非常に長い。完全回復させようと思ったら数分待たねばならず(最低レベルからだと5分くらいか)、待ち切れないで行くと死に易くなるという事に。かといって一人だと基本的にヘルスが持たない作りとなっている。

 仲間を大事にするつもりがあっても雇い方がわからないとDとなる。話しかけるとすぐに交渉に入れる人間ばかりならば良いのだが、中には最初に話しかけた時ではダメで、或る種の条件を満たした後に雇える人間がおり、こういう人間を見付けられないと雇わないのと同じ事になってしまう。この辺ちょっと英語力も問題となるのだが、会話の内容とノートに書き込まれたデータをよく把握しておかないとならない。Eについては別の項で詳しく説明している。



2.SNEAK
 一見すると壮絶な撃ち合い系に思えるこのゲーム、実はThiefの様な隠密行動が非常に重要なポイントを占めている。なぜ隠れて行動するのが重要なのかと言うと、戦闘の項でも述べたのだが敵はプレイヤーを発見した瞬間に攻撃して来るので、正面から行くと必ず撃たれてしまうからだ。武器のダメージが大きく尚且つ凄まじい速度で攻撃してくる敵の為に(こちらを見た瞬間にはもう撃ち始めている事が多い)普通に前から行ってしまうと必ず幾らかのダメージを受けてしまう事になり、敵が複数の時は短時間で大きなダメージを食うし体力が低い時などは戦闘自体が危険となる。

 部屋の中に敵が一人でそっぽを向いていれば忍び寄って攻撃というのは誰でも思い付くが、ここでいう隠密と言うのはそれ以外の部分である。このゲームでは歩いている状態をSneak Modeと呼んでおり、この状態を保つ事が非常に重要となる。普通のFPS同様に設定はAlways Runで問題は無いのだが、行動に関してはアクションFPSの様にほとんど歩いたりはしないというスタンスではいけない。ではどういう時にこれを使うのかというとマップの新しい領域に踏み込む時である。開けた場所に入る時と言い換えてもよい。このゲームでは敵のアジトの中等で臨戦態勢に入っている場合、敵のいる場所に入り込むとその瞬間に敵が攻撃をしてくるようになっている。よって敵が反対方向を向いているのでもない限り、先制攻撃を仕掛けられるのは常に敵側となるのだ。よって普通に探索を続けていると敵に会うたびに後手後手となるので、勝ったとしても体力をその度に削られていく事になる。
 そこでどうするのかというと、新しい場所に踏み込む −角を曲がる・扉を開けて中に入る・同じく外にでる− 等の場合にはShiftを押したSneakの状態でこれを行うというようにする。こうすると敵には音が聞こえないというシステムになっており(扉の開く音は相手に聞こえない)、敵はこちらに気が付かない場合が多くなる。これが何を意味するのかというと、その状態から先にこちらが狙って先制攻撃を仕掛けられるという事である。広場等に多数の敵がいるのであれば狙いを定めてから先に攻撃に移れるので受けるダメージも減るし、路地で隠れる場所があるのであればそこまでこっそりと歩いて行って物陰からいきなり攻撃する事で有利に立てる。これを普通に走って行ってしまうと、その場所に入った途端に敵から攻撃が来るので応戦するまでの間に余計なダメージを食うし、隠れる場所まで行く余裕が作れないのでど突き合いの戦闘になってしまうのだ。
 同様にピストルに装着できる消音器も気付かれずに敵を倒すには便利な武器である。特に多くの敵がいる時などは気付かれずに何人かこれで倒せれば後が楽になる。ただし威力が弱く離れると当らないのでそれほど出番がある訳ではない。

 狭い部屋の中に入る時等は分かり易いのだが、このゲームでは広い場所に入る時も足音が聞こえているのかを判断しているので、これに気が付かないと終始激しい撃ち合いばかりとなり無駄に体力を減らすだけとなる。



3.チーム戦術
 以下ゲーム中に有効なチーム戦術に関しての説明(アドバイス)を少々。Kingpinでは雇った仲間を上手く使う事が重要で、自分だけで行こうとするには敵が強過ぎる。そこで彼らの特徴を活かしてやるのが大切だ。まず彼らはヘルスを取れない代りに時間が経てば自然に体力を回復する事が出来る。問題なのはこの時間が相当長いこと。少し進んだら休んで完全回復させた後に進むというスタイルでは日が暮れてしまう。
 そこでどのように彼らを使うかというとまずはローテーションを組む。1/3以下に体力が減った場合は隅の方に連れて行ってそこで休ませて回復をさせるというのを基本とする。その間あなたともう一人(いれば)で先へ進むという風にする。ある程度進んだら置いてきた仲間を連れ帰りにあなただけが戻ればよい。その頃には体力が回復しているので、今度は今まで連れていた奴を残して回復した人間を連れて行く。一見すると面倒な気もするがそれほどこのゲームのマップは広い訳では無いので帰るのは苦にならないし、こうした方が死者が出てロードを繰り返すよりは結果的に早かったりする。もしも二人とも危うくなったらその時はそこで時間を掛けて回復を待つか、あなたが単独で行くかである。特に倉庫等で余分なArmorやヘルスを見つけた時は単独行動のチャンスでもある。自分の体力やArmorが十分に有る時にそれらを見付けても持っていける訳では無いので、この場合は仲間を残して単独で行動しギリギリまで粘って元の場所に戻る。ここで体力とArmorを回復させて再び進めばクリアした地点までは仲間がダメージを受けなくなるので楽になる訳だ。
 まとめると普段は全員で行動して早目に敵を一掃。怪我をした奴は置いていき自分達が進んで行く間の回復を待つ。取れるヘルスが余っているならば自分一人で先へ行って仲間への負担を減らす。全員ヤバければそこで初めて止まったままで回復を待つ。なお待たせるのはいいのだが、このゲームではマップの一番奥にて最終的な目的を達成した後に今まで通って来た部分に新たな敵が出現するというパターンが多いので、それだけは注意しないと待たせておいた奴が殺されてしまう。

 次に戦闘に関してだが、これは全員で襲い掛かって短時間で勝負を決めるのがダメージを最小限に食い止める基本となる。非常にオープンなスペースだと一人が集中して攻撃を受けてしまう危険性があるので、出来ればこういう場所での戦いは避けた方がいい。例えば攻撃してすぐに退却し、曲がり角を曲がった部分で待ち伏せる。これだと敵は全員が集団では普通来れないので一人ずつ曲がって姿を現したところを順次狙い撃つ。また敵が建物の内部(或いは逆に外に出た所)にいる場合はやはり攻撃してから退却して隠れ、ドアを開けても直接は目に入らない部分に味方や自分を配置して入ってくる所を撃つ。自分だけがダメージを負っている場合でもこれは有効で、囮として敵を引き付けてやって待たせておいた仲間に攻撃してもらうという手が使える。
 特に隠れる場所が無く開けた場所の場合は純粋に攻撃するしか無いのだが、まずは味方をも傷つける恐れのある武器には注意する必要がある。ここで役に立つ戦法が火炎放射器を使う事で、これは一人で攻撃する時にはそれほど便利でも無いのだがチーム戦では強力な力を発揮してくれる。この武器はそれだけでは倒せないので火を点けた後に他の武器に持ち替えないとならないという面が不便なのだが、チーム戦だとこれを分担化する事が出来るからだ。戦闘が開始されたらあなたは火炎放射器を持って敵に火を点けて回る(出来るだけ障害物を利用してダメージを受けないようにするのは言うまでも無い)。そして点いたらそいつにはもう構わずにすぐに次の相手に向かって火を点けるのだ。この時敵が味方の誰かと戦闘モードになっているならばそちらを向いたままなのでやり易いだろう。こうすると逃げ惑う敵への攻撃は味方がやってくれるので一々武器を取り替える必要が無いし、逃げ回る敵の様な動いている物に当てるのはbotの方が上手いのでそういう面でも有利だ。

 その他気を付けないとならない点を幾つか。まず敵の死体を探ったりすると仲間へ与えているコマンドが切れてしまうことがあるので常に彼らのアイコンの色をチェックしておく必要がある。同様にパニックに陥って逃げ出した場合は時間が経たないと元には戻らない(赤で点滅の時)。それと戦闘時に味方に当ってもそれほど問題は無いが、数発当ると怒ってこちらを攻撃してくるので気を付けよう。

4.冷酷であれ
 このゲームでは徹底的に汚く振舞う事が非常に重要となる。綺麗事で済ますというスタンスではゲーム上不利になるだけだ。

 少なくとも最初だけは下手に出る。相手と話す時に強気に話すのとやんわりと話しかけるという選択が出来るが、ここで自分は強い男なんだとばかりにツッパって挑発的に出てはいけない。徹底して媚びへつらうのが正解なのだ。陽気に敵対心を見せずに話しかけて相手の機嫌を損ねないようにし、情報を得たりするのが得策となる。ただし必要となる情報を得た後は自由である。気に食わない奴であれば御礼の代わりに弾丸をお見舞いしてやればいいだろう。

 あくまでも仲間はコマでしかない。自分の為に金で雇った仲間は生かしておくのが重要であるが、それは彼らが役に立つからであって必要無いとなればスッパリと切る。例えばもうここで終わりで連れて行けないという各エピソードの最後の激戦では、ボス敵への攻撃命令を出して餌として敵を引きつけた状態にしてやり、もろともバズーカでふっ飛ばしてやるとか。或いは新しい強い仲間が見付かって入れ替えたいのだが解雇が出来ないという場合(解雇コマンドは無いので既に2人いると新しくは雇えない)、路地裏に連れて行って今までご苦労さんとばかりに撃ち殺して枠を空けてやればいい。

 不利な状況で勝つというのはチンピラにとっては自慢話となるのだろうが、ボスを目指すあなたにとっては不必要な事であって、そんなものは頭の中まで筋肉で出来ているような力自慢の馬鹿に任せておけばいい。勝てば正義であって堂々と男らしく戦うとか卑怯などという言葉は考える必要が無いのだ。
 例えばゲームの最初のシーンでは1ドルで武器を売ってくれるという男がおり、その近くにはカップルがたむろしている。普通に考えるとこのカップルを倒して金を奪えばいいのではと考える所だが、これは次善策に過ぎない。彼らは相当強いのでリスクが大きいし倒せたとしても相応のダメージを負ってしまう。更にその先の倉庫に警備員がいるが、彼らはショットガンを持っているので相当手強く勝てる可能性は薄い。ではどうするのかというと敵よりも強い武器を持つか、必要が無ければそもそも戦わないかだ。男女のカップルの場合はピストルを手にしてから戻って来て戦えばいいし、警備員は無視して構わないのである。
 確かに倒した相手からは金が手に入ることがあるので戦った方が良いというケースもある。しかしそれならば一般人の方がこちらの持っている武器を判断して、適わないとなれば逃げるか怯えて許しを請う可能性が高いので、そういう状況を作る方向で動いた方が有利である。戦闘においても対等やこちらが劣る状況で戦うというのは男らしいかもしれないが勝つには邪魔なだけである。敵よりも強い武器を持って優位に立ってから戦いを挑むというスタイルの方が被害も当然少ない。相手が逃げたら背後から一方的に撃ってやれば良いし、怯えて手を顔の前に上げて撃たないでくれとなったら一方的に撃ち殺してやれば良い。



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