<SYSTEM>

 製作元のXatrixでは「このゲームは他の単なる撃つだけの3DFPSとは違う」という点を非常に強調している。その彼らが特徴として述べている点について解説しよう。

会話
 今では珍しくもないが発売当時は生身の人間だけが出てくる実社会がモデルのFPSゲームというのは少なく、それに合わせてKingpinではNPCも絡めた会話システムというのを採り入れている。ゲーム内に登場するほとんどの人間に話し掛けることが可能で、それによりストーリーも進んでいく。マップによっては戦闘をするのが目的ではなくて、バー等で会話のみで進めるケースも含まれている。会話のシステムは選択肢を出すのではなくて、Positive(肯定)かNegative(否定)で進めるという非常にシンプルな物
 自分から話しかける場合は最初にPositiveで親しく話しかけるかNegativeで挑発的に行くかを選択し、相手から話しかけられたり質問への返答にはYES(Positive)かNO(Negative)を使う。対応によって相手が情報をくれたりとか、逆に怒り出して喧嘩になるといった変化が起きるようになっている。その際には相手が怒っている場合は顔のアイコンが赤くなり、質問の時にはクエスチョンマークが出るので会話の内容がよく判らないという人でも凡その判断は可能である。或いは重要事項はF1で表示されるノートにメモされていくので、それを参照するというのも重要。

 シンプルで判り易くストレスは無いのだが、それほどシステムとして活かされているという感じではない。確かに会話から情報を得る様にはなっているが、別にパズル的な要素がある訳ではないので謎解き的な面白さは無い。当時としては敵やNPCが皆人間というのが新鮮だったので実際の社会を再現したという事だけでも売りになったが、今となっては既にアピール度は低い。それと結局の所Positive一辺倒で行けば良いだけというか、Negativeに対応してもストーリーが分岐する訳ではなく損するだけという感じでバラエティさに欠ける。有利となるような情報をもらえなかったり金額を釣上げられたりとかばかりで、Negativeに対応しておいた方が有利になるという個所が見当たらなかった。また未確認ではあるがPositiveに対応しておかないとストーリー的に問題があるのではという個所も幾つか存在し、自由に会話が出来るというシステムでは無いのは問題点。



仲間を雇う
 ゲーム内には金を出して雇う事の出来るNPCがおり、最大で2人までを引き連れて一緒に戦う事が可能になっている。言わばbotをサポートしている事になるのだが、これはシングルプレイでは当時としては珍しい事だった。彼等はエピソード毎に独立して存在しており、最初から最後まで連れて行ける訳ではない。また必ずしも戦闘オンリーではなく重要な作業をこなしてくれる役割を持った者も存在する。
 指令方法としては3種類の命令が可能であり、Follow,Stay,Attackというシンプルな物。画面のインターフェイスもシンプルで右下に各人の体力とコマンド状態がグラフィック的に表示され、簡単に現在の状況を知る事が可能。各人の所持武器は固定であり体力回復には休ませるしかない。一度死んでしまえばそのままなので、他に雇う人間がいなければ足りないまま進むしかない事になる。

 これはよく出来ている。Followコマンドで連れて行く際にもほとんどスタックする事なくちゃんと付いてくるし、ハシゴや段差もちゃんと乗り越えることが出来る。攻撃に関しても正確で非常に頼りになる存在。怪我が酷くなると動けないと言って自分から休んだりとか、時にはパニック状態になって逃げ出したりするなど結構人間ぽい面も持っていて面白い。2人連れている際は立ち位置により異なったコマンドを出すのに問題が生じるケースもあるが、些細な瑕であり総合的にはゲームの面白さに大きく貢献していると言える。

武器の取り出し
 武器をしまうコマンドがあり、これによって相手キャラクタの反応が変わるというシステムになっている。武器を所持したままだと怖がって逃げてしまったりするので注意しないとならないし、敵対的な人間の場合はいきなり攻撃して来たりもする。

 これも当時としては珍しいシステムのように思うのだが、面白いというよりは面倒という感が強い。リアルさを出すという意味では良いのだが、つい忘れてしまうとNPCが会話してくれなくなるのでロードし直さないとならなくなったりする。

Pawn-O-Matic
 弾丸やヘルス等のアイテムは現実社会同様にその辺に落ちているというケースは少なく、それらは倉庫等の在るべき所で手に入れるか店で購入しないとならないというシステムを取っている。その購入場所として各エピソードに用意されているのがこの店であって、防弾ガラス越しに店主から品物を買う事が可能。

 だがこれは正直言って機能していない。問題なのは品揃えで、金が有ってもその時までにゲーム内に登場している物しか買う事が出来ないのだ。つまり金がどれだけあろうが武器はその時までの物しか買えないし、防具等は確かに買えるのだがちゃんと探索していれば敵の倉庫等で見つかるので大した意味が無い。Normal辺りでは弾薬も豊富に手に入るし、存在する意味があまり無いと言える。最初は使うかもしれないが段々と重要性は薄れていく感じで、たまたまそこに来た時に防具やヘルスが無い時ぐらいしか使い道が無い。高い難易度ではどうなるのか判らないが。



<武器>

 武器についてはシンプルなゲームであり、使える種類は少ないしSF的な物は当然含まれていない。なおNormalにおいては、一人で突き進むのでない限り弾薬はかなり豊富なので困る事は無いだろう。また敵の持っている武器とこちらの使う武器が一緒な上に、進行上こちらに新しい武器が入ると敵もそれを使ってくるという構造となっている。つまり自分だけが強い武器を持っているという状況はあまり無い。


PISTOL
 ほとんどダメージが与えられない上に射程距離も短く使い勝手は悪い。最初以外は使わないと言っていいだろう。ただサイレンサーMODを装着する事で場面によっては役に立ってくれるので、自分が危うくて撃ち合いにはしたくない時には頼れる武器ともなる。その他弾の威力を増加させたりリロードを短くしたりというMODもあるのだが、他の武器がある場合はそれほど有用では無い。

SHOTGUN
 非常に強力な破壊力を持ちPISTOLとは掛け離れた性能である。当然の如く近づく程威力は増し、遠方からでは弾が散ってそれほど当らない。リロード時間は相当長く戦闘中に行なうと極めて危険である。破壊力は確かにあるのだが、これもまたマシンガンが手に入ればほぼ出番は無くなる。何が問題なのかと言うと敵の持っているショットガンも破壊力が抜群だからだ。
 自分にショットガンが入った時点からは敵もこれを使っている事が多くなるのだが、例えばSoFとは違って撃ち合いには持って行き辛いのである。Kingpinではあそこまでの威力は無いし(敵がArmorを身に付けていれば一発では死なない)何よりも敵の非常に近くまで行くのは危険である。最も効果的になるように敵に向かって走って行って撃とうとすると、自分がいざ近づいて撃つまでに逆に相当なダメージを食ってしまう。ヘルスが半分程度ならば撃つ前に死ぬ可能性が高い。そうなると近づいてもまあ大丈夫な相手であるPistol相手にしか使えず、遠距離から狙える武器が入れば出番はほとんど無くなる。完全に不意を突いて近くから撃てる場合以外は使えない。


TOMMY GUN
 最もスタンダードなサブマシンガンで一番使い易く多用する武器。ただし遠距離には不向き。これだけは多少弾薬の量を気にする必要があるかも。

HEAVY MACHINE GUN
 長距離用の狙撃用武器でほとんどの敵を一発で仕留められる。リロードの長さが問題だがこれはModで解消する事が出来るので、そうなれば非常に役に立つ武器である。特に敵がこちらに来る前に倒す事が可能なのがこのゲームでは大きい。欠点は反対に敵がこれを持っていると非常に厄介な事。

GRENADE LAUNCHER
 弾が転がって時間が経つと爆発するスタンダードな物だが、かなりの距離を転がるのと爆発までの時間がちょっと長めな為に狙いにくい武器でもある。しかし破壊力は抜群なのでこれを上手く使うと相当戦いが楽になるし、敵の前に姿を見せずに陰から攻撃可能な唯一の武器なので重要度は高い。

 単純に敵の居る場所目掛けて撃っても狭くないと転がってあらぬ方向へ行ってしまったり、爆発するまでにこちらに向かって走って来てしまうので不発に終わるという可能性が高い。そこでテクニックとしては弾がそこそこ手に入るのを利用して2発の弾を分けて撃つというのが有効な戦術。敵の方へ撃った後にこちらへ走って来るのを見越して、すぐに手前側に計算して2発目を撃ってそちらに巻き込む。また部屋の中へ撃ち込む場合はドアを開けておいてその付近に転がした後にドアを閉めてしまうという技があり、これだとやって来た敵がドアを開けるまでに時間が掛かるのでその間に吹っ飛ばせる。また遠方から敵付近目掛けて撃った後に別の武器に持ち替えてすぐに攻撃するという手もある。こうするとこちらに向かって走って来ようとした敵が足を止めて撃ち返してくるので、そのまま爆発に巻き込める。

BUZOOKA

 非常に破壊力がある兵器で連射速度も速く使い勝手は良い。爆風ダメージもかなり広範囲に渡る。敵で持っている者は少ないのだが、その場合は相当注意しないと即死の危険性もある。弾薬も結構豊富に手に入るが、難点は味方が一緒に戦っている所では使いにくい事か。弾速はそれほどでもないので動いている敵に直撃は難しい。

FLAMETHROWER
 演出的には最も派手な武器で火の点いた相手が叫び声を上げながら逃げ回る。この間は反撃してこないし与えられるダメージもかなり大きいのだが、止めを刺すには逃げ惑う間に他の武器に持ち替えて撃つ事になるのでちょっと面倒な所も。炎はある程度先までは伸びるのだが、逆に敵にこれを使って火を点けられると悲惨な事になる。しかも浴びせてから実際に火が点くまでにちょっと間があるので、1対1で尚且つ不意を突けないと反撃を食らう可能性がありそれほど使い易い武器では無い。



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