<SPEARHEAD>
02/11に発売された第一弾となる拡張パック(日本ではリロード)。AAの開発元である2015とは契約が終わっており、この作品はEAに開発が移されてDreamworks(現EALA)が製作を担当している。プレイには本編がインストールされている事が必要。
パッチは本編とは独立しておりV2.15が最終となっている。購入した時のバージョンにもよるが、初期版だとV2.11を先に適用しておかないとならない。マルチプレイ用のデモのみがリリースされている。
主人公は本編とは異なりSgt. Jack Barnesとなっているが、同様に無個性の匿名的なキャラクタとなっている(一応独り言的な要素は加わったが)。全3章でミッション数は9個。ゲーム性自体はほとんど本編から変っていない。本編のキャンペーンとどれかを入れ替えても別に違和感は無いという感じである。
最初のキャンペーンはノルマンディ上陸作戦となるが、夜間の空挺部隊による降下作戦に参加するという別の側面を描いている。最初の降下シーンは敵の対空砲火が響き渡る中での臨場感溢れる物として大きく宣伝され売りの一つとされていた(実際には降りる地点を操作出来たりする訳ではない)。その後は英軍兵士と一緒に行動して敵の補給ラインとなる橋を破壊するまでを描いている。全3ミッション。
2番目は1944年にベルギーのアルデンヌ地方にて行われた「バルジの戦い」として知られるドイツ軍の最後の猛反撃をテーマにした物で、今回のSHの中ではメインとして扱われているキャンペーンとなる。全体が雪に覆われたマップとなり、対戦車戦が多くなっているのが特徴。凄まじい数の敵軍の進行を食い止めたりという、オマハビーチの再現を狙ったと思われる激しいアクションシーンが含まれている。全4ミッション。
3番目は終戦間近のベルリンにてソ連軍に協力してのキャンペーン。対スナイパーを含む物と、戦車を自分で運転して戦う物の2つのミッションを収録。
新しい武器としてはBritish Enfield Mark 1 rifle, Sten submachine gun,
Soviet PPSh-41 submachine gun, Gewehr 43, Cooking Grenade等が加わっている。戦闘関連で変更された主な点としては以下の通り。
*シングルプレイでもLeanが可能に
*敵の落としたMedikitは消えないで残るようになった(武器は消える)
*スナイパー・ライフルとライフルは同時に所持して切り替えが可能
*2nd Attackで相手を殴れるようになった(Bash)
*戦車の操作にてマシンガンと砲の切り替えが可能
改善の見られる点としては、第一に仲間の兵士と一緒に行動するというパターンが多くなった。本編ではたった独りで敵の施設に乗り込んでのスーパーマンの様なプレイがリアルさに欠けるとして批判を浴びたが、今回は単独で行動するという場面は相当少なくなっている。仲間は不死身の設定の者もいるが、死んだ時点でゲームオーバーとなってしまう設定の味方も存在しており、上手く守りながら連れて移動しないとならないというミッションも増えている。
敵のAIが場所によっては問題となる点についても、敵のスナイパーの反応や視界が調整されており、本編のSniper
Townの様な馬鹿げた設定は修正されている。ただマシになったというレベルで不自然な感は残ったまま。異常な難易度の箇所としては戦車に乗って固定ルートを通りながら敵を倒して行くという"The
Great Escape"という物が存在しており、ここはやはりQuicksaveを繰り返しながら何とかするしかないという状態である。ただゲーム全体としては非常に難しいという箇所は減らされている。
武器も新しい物は増えたが、フィクション設定ではないので特別に使用感が異なるような物は当然追加されていない。サブマシンガンは形状が変化しても使い勝手はほぼ同じである。中ではEnfieldが強過ぎるという印象。ボルトアクションで単発でしか撃てないという点を補完する意味でのこの威力だとは思うのだが、ほぼ一発で敵を倒せてしまうのでちょっとアンバランスに感じた。他にはSmoke
Grenadeが加わっており、これを使うと敵の視界を遮る事が可能となっている。
戦闘にはLeanが加わったが多用しないとならない様なバランスではなく、HPが少ない時には役立つという程度。敵の戦闘AIには特に変化は無いし、Medikitが必ず拾えるようにもなったので拡張パックにありがちな急な難易度のアップというのは感じられず、難易度的には本編と同じ位となっている。
ミッションの出来に関してはなかなか良く、本編の上位クラス程では無いが粒揃いという印象。「とりあえず売れそうなので作りました」的な凡庸な物とはなっていない。ストーリーが無いのでWWIIという非常に広い範囲の中からロケーションを選択可能な為に、本編には存在していなかった新しい設定ばかりを盛り込めたのもその一因となっているように思う。ただプレイ感覚については変化が薄いので、その辺を求める人には単なる本編の延長としか映らないというのも確かだろう。
問題点としてはスクリプトによる演出が過剰になっているというのが有る。プレイヤーを引き込む為に半強制的に進行のラインに乗せるという姿勢はよりその傾向を強めているという印象で、もし非常に良く出来た物であればそれでも良かったのだが、残念ながらそこまでのクオリティには達していない為によりやらされている感が強くなっている。敵が突然Spawnしたりとか、何が起きるのか分かっていないと対処が難しいというケースが増やされており、一本道という感触はアップしている。
しかし最大の問題はその短さになる。クリアまでの時間は4−5時間程度しか掛からないだろう。本編も確かに短かったが、だからこちらも短いというのはおかしな話で、むしろ短い点を批判されたりしているのだから長くするべきだった。設定が変で何回も繰り返しトライしないと突破出来ないような箇所は減らされたのは改善点だが、それが逆にクリアまでスムースに進んでしまうという結果を生んでいる。また発売当時大評判というのも有ったのだろうが、EAはこのSHに$30という強気の価格を付けておりそれが更に批判を強める事となった。
マルチプレイには13個(後に追加された物も含めて)の新マップが加わっており、"Tug of War"と呼ばれる新しいゲームモードも追加された。これは連続したObjectivesが設定されており、攻撃側と防御に分かれてその達成を競うという物。ユニークな設定としてはspawn
pointと呼ばれる復活用の地点が設けられており、これは破壊してしまうと復活もしないし敵もそこからはRespawnが出来なくなる。よってObjectivesを達成しなくても、敵のspawn
pointを全て破壊してしまえば勝利となる。
グラフィックスエンジンも大きな変更は行われていないようだが(必要環境に変化無し)、実際には更に重くなっているという声が多く、当時の私の環境でも全ての設定をMaxにするのは無理だった。目立った新要素としては、Smoke
Grenadeの煙の描写は非常に良く出来ている。サウンドは相変わらず良い出来。
総合的には安ければ買って損はないという結論。例えば海外の通販ショップで処分価格で販売されている物とかが上手く手に入れられれば理想的。しかし北米のAmazonで見ると、現時点(2007/02)でも新品は$19.99程度となっており、年月が経過している割にはあまり安くなっていない。国内の輸入販売店となれば輸入分の代金が更に上乗せされるだろうから決して安くはならないはず。一方の日本語版となると、こちらもまだ単体での購入は高価である。
もし拡張パック第二弾のBreakthrough(リロード 2ND)も持っていないならば、Medal of Honor Allied Assault War Chest(メダル オブ オナー アライド アサルト 総集編)を購入してしまうという方法も有る。海外では$30前後、日本語版だと5000-5500円程度なので、拡張パック2本分と考えるとそれ程割高ではないとも取れる。本編とこのSHのみの統合版となるMedal of Honor Allied Assault Deluxe(メダル オブ オナー アライド アサルト 特別編)も存在するが、現在では中途半端な位置付けのパッケージとなっており、それが理由で安く売られているとかでも無い限りは意味が無さそう。
まだ本編も購入していないという人ならば、最初から全て込みのMedal of Honor Allied Assault War Chest(総集編)を購入してしまうというのもありだろう。本編はそれ程長くないので悪くは無い選択とも言える。
<BREAKTHROUGH>
03/09リリースの拡張パック第二弾(日本ではリロード セカンド)。今回は外部の会社であるTKO Softwareが開発を担当している(既に会社は存在しない)。動作にはMoHAAが必要となるが、Spearheadの有無は関係無い。
パッチは独立しておりV2.40が最終版。デモとしてはマルチプレイ専用の物がリリースされている。
主人公はまた新しい人物のJohn Bakerになっているが、相変わらず匿名性が高く誰でも一緒という設定なのは変わらない。全3章でミッション数は11個。今回は北アフリカからイタリアへという毛色の変ったロケーションが選択されている。ミッション毎の独立性が高いという点は同じだが、今回はストーリーに連続性を持たせており、時間とロケーションに一応の流れが感じられるデザインとなっている。
最初の北アフリカ戦線はパットンVSロンメルで有名な場所。Kasserine Passといった砂漠のロケーションでの戦闘だが、自身が戦車を操縦するシーンは少ない。その後は港町Bizerte、敵船のサボタージュと続いて行く全4ミッション。
第二のシチリアでは有名なOperation Husky(16万人という兵数を擁しての英米合同の大規模な上陸作戦)をテーマにしている。英軍の夜間の英軍グライダー攻撃に参加したり、飛行場のサボタージュを行ったりをこなす。全3ミッション。
最後のイタリア本土ではMonte Cassino, Anzio, Mont Battagliaにて仲間の救出ミッション等が用意されている。全4ミッション。
追加武器としては舞台となるイタリアの物が多く追加される。後は英国軍の物が何点か追加。Delisle
Silenced Rifle, Vickers-Berthier Heavy Machine Gun, Vickers Berthier Mk3b,
PIAT, Carcano rifle, Moschetto Automatico Beretta MOD.38A等
ゲーム全体として目に付く点は単独行動のミッションが増えている事。SHではAAの不満に応えて仲間と一緒に行動するケースが大幅に増やされていたが、逆にBTでは全体の7割程度は単独で進んで行くようになっている。仲間との合流は長いミッション内の一部だけとか、仲間は周囲に居るのだが実質自分だけが命令されて何かを実行しに行くというパターンが多い。それと今回は仲間のHPが低くて死に易くなっており、一緒にスタートしてもすぐに一人になってしまうというのもある。
マップの構造やデザインはこれまでの様なパターンとなるが、最初のアフリカのマップはリアルタイムで濃度が変化して行く凄まじい砂塵で視界が遮られる(場合によっては少し先も見えなくなる程の)という点で新鮮さは出ている。それとアウトドアにおいてはこれまでに無かったような広さを感じさせる物が加わっている。
SHにて最大の問題とされたゲームの長さについては今回改善を図るという話だったのだが、アナウンスされていた10−12時間程度という程にはなっていない。私は8時間以上掛かったが、一般には6−7時間という声が多い。
AA,SHではゲーム性に大きな変化は無かったが、このBTではそこに変化が加えられている。一言でまとめると格段に難易度が上がっており、それに伴ってプレイの感覚も異なるものとなっている。拡張パックも二本目となれば難易度を高くする事自体は別に問題ではないのだが、その上げ方の方向性に大きな問題が感じられるゲームとなっている。
難易度が上がっている原因の一つ目は、死んだ敵がアイテムを落とさなくなった点になる。最初の2つのミッションはこれまでと変化が無く、とにかく突っ込んで行って死体の落とすMedikitや弾薬を拾いながら進められるというスタイルなのだが、それ以降はMedikitや弾薬が死体から回収出来なくなるケースがほとんどとなっている。そうなるとMedikitだと定期的に置いてある物を回収するしかないのだが、その数自体がこれまでよりも少な目な上に、脇道の様な場所に置いてあったりもするのでしっかりと探索して見付ける努力をしないと厳しいという設定。
よってダメージとMedikitの比率という点については非常にシビアなバランスとなっており、一箇所の戦闘で余分なダメージを受けてしまうと、それ以降次の補給地点までHPを持たせる事が出来ずに、HPがまだ充分に残っている地点をロードしてやり直さないとならない事態も起こり得るゲームである。よってとにかく遠方から慎重に狙って倒したり、Leanを多用して体を晒さない様にして戦うというスタイルが要求されてくる。
雰囲気同様に戦闘に関してもリアリティを高めるという観点からは好ましい変更点とも言えるのだが、やはりここは受けが悪かったようだ。ファン層の多くはあまりダメージを気にせずに撃ち捲くれるゲーム性を好んでいた事から、この慎重さが要求されてくる遠距離戦主体でスローペースな戦いへのシフトには爽快感の欠如という不満が出ていた。
武器や弾薬については更に顕著であり、同時に持つ武器数も減っているし、特に弾薬数の少なさはミッションによっては深刻な問題となっている。数個のミッションでは普通に撃っていたのではクリアするまでに全ての弾が切れてしまうという位に少なく、徹底してHeadshotを狙って使用弾数を減らしたり、時には数人の敵相手に突っ込んで行って全員をBash(殴る)連打で倒すような珍妙な行為で対処しないとならなかったりもする。
稀に武器を落とす敵が存在はするのだが、よく観察していないと落としたのかどうかが見え難いし、一定時間後に消えてしまう点は変っていないのでやり難い。突っ込んで拾いに行こうとして他の敵からのダメージを受けると、今回はMedikitも少ないのでそちらの方が厳しくなってしまう。
二つ目は難易度の高い箇所が幾つか存在している点。これもSHでは緩和されていたのだが、プレイ時間を稼ごうと考えたのかまた増やされている。例えばM3の仲間を守る物では、上に挙げたように弾数が極端に少ない為に最後のシーンでどうにもならなくなるケースが出て来てしまう可能性がある。飛行場のミッションもM3程では無いがやはり弾が無い。他には多数のTankの攻撃をMortarを使って迎撃するシーンでは、Mortarの調整にガイドが無いので狙いが難しい。捕虜救出ミッションでは3人の捕虜が勝手に敵だらけのオープンスペースに飛び出して死んでしまうという難題。後はラストの防御ミッション等々。
三つ目として敵の配置が嫌らしい。確かにAIはこちらから見えない範囲からは撃って来ないようになっており、これは霧等で視界が悪い場合でも同じなので、プレイヤーが先に気が付けば先制攻撃は可能なのだが、遥か遠くの高台に存在したりとか、多数の開いている窓の一箇所から体をわずかに見せているだけとか、陰に隠れていてプレイヤーが横を通り過ぎようとした時に撃ってくるとかにされている。
更に時々進行に意味の無い戦闘が加わっており、単に戦ってHPを減らすだけ損というケースがある。進行には関係ないので単に相手にせずに直進した方が無難という意味で、最初はそれが分からないので無駄にHPを減らして後に苦労をするか再度やり直す羽目になったりしてしまう。
最後に難易度を上げている最大の問題はスクリプトの実装の仕方にある。とにかくこのBTは異常なまでにスクリプトを多用しており、これは面白さという観点からも大きな問題となっている。例えば定番となったAIの運転する車に乗り込んでのマシンガン掃射は何回も登場するし、Tankがやって来るのでBazooka等で対処するというのも何回有ったか憶えていない位に繰り返される。
話を難易度に戻すと、敵の出現にトリガーが多いというのが非常に厄介。地上レベルならば突然の出現でもある程度対処は可能なのだが、BTでは上方等の視界が届かない所に出現するというパターンが多い。周囲の建物を上方まで観察して敵は居ないと確認して進んでも、指定された場所を過ぎると居なかった場所にトリガーで敵が発生するので、その瞬間にそちらを向いていないと気が付きにくいとなっている。屋根の上や窓に突然出現したり、背景かと思っていた窓が開いて出て来たり、通り過ぎた背後のビルの上に出現したりで対処のしようがない。或いはクリアした後のドアが一つだけの部屋の中から再度出現したりとか、プレイヤーが近付いた瞬間に物陰からズラっと大量に現れたりとかやりたい放題。
スクリプトによる敵の出現数自体も大幅に増えており、更にそれが広い範囲に配置されていたりするのでより難易度が高くなっている。備え付けのマシンガン掃射のシーン(止まっている車の物を含む)でも、右や左から次々に出て来るので、どういう順番で出て来るのかが予め分かっていないと対応が難しいという設定にされている。
スクリプトが全面的に悪いというのではなく、これは全体のバランスの問題である。つまりスクリプトが多くても難易度はそれ程ではなければ、進行はスムースとなり大して気にならないのだが、このゲームの様にそもそものダメージ設定がシビアで難易度が高いというのに組み合わさってしまうと大きな問題となる。初回のプレイでは上手く突破出来ないケースが増えてくればパターンを憶えるゲームとなるのは当然で、そうなると余計にスクリプトを進行させて行くだけのゲームという感触が強調されるようになる。ちょっと上手く行ったらすぐにQuicksaveしてプレイを続行し、もし気が付かなかった敵等の攻撃で余分なダメージを受けたらすぐにロードしてやり直すという、頻繁にQuicksaveを繰り返して進めて行くというゲーム性に陥っている。
マルチプレイには新モードLiberationが追加されている。これは一般的にJailbreakとして知られるタイプのモードで、死亡したプレイヤーは敵陣地に有る牢屋の中に閉じ込められ、味方が鍵を開けて開放するまではそこから出る事が出来ない(SW等を押して開放する)。チーム全員が牢屋に閉じ込められた時点で負けとなる。
新マップは9個収録。新要素としてはminelayer class (minesweeper)を設けて、敵軍からは見えない地雷を設置及び解除出来る役割を設けている。これまでは両軍で選べるSkinの種類に差が有ったので、これについてはAxis側の物を増やすとかでバランス調整を行っている。
グラフィックスエンジンはSpearheadとほぼ同等であり、場所によってかなり重くなるといった点は改善されていない。ただし近年のマシンでは問題の無いレベルである。必要環境はCPUが上がっているがビデオカードは同じ。目立って違うと思わせるのはアフリカの砂嵐のエフェクト程度。
全体的な評価としては普通の出来となりSHより落ちるという結論。プレイ時間は長くなっているが、質という点からはやはり本編やSHには劣っている。私の場合War
Chestが出た頃に処分価格で販売していたのを購入したのでそんなに悪い印象は持たなかったが、発売当時の$29.99だったらもっと不満を感じていた可能性が高い。
もしSHかBTかで悩んでいるなら私としてはSHをお勧め。既にSHを持っているのならば、敢えてこれを購入する価値は今となってはそれ程ないだろう。$10程度なら買って損は無いと思うが、特に日本語版はまだ単体でも高価なので問題あり。まだ本編もプレイしていないなら、最初から全部のセットとなるMedal of Honor Allied Assault War Chest(メダル オブ オナー アライド アサルト 総集編)を購入してしまうというのは悪くない選択である。
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