<戦闘>
戦闘面のデザインについては完全なゲーム仕様であり、ここにはリアリティという要素は大して含まれていない。普通の仮想世界を舞台にしたアクションFPSの様に、スーパーマンの様な能力を持った主人公が多数の敵を次々に薙ぎ倒して行くという面が強くなっている。そして困った事にWWIの雰囲気のリアルさを出すという点では非常に出来が良い為に、反ってそのリアリティの無いスーパーマンの様なプレイ感が違和感を生むという結果を生んでいるのは確かだ。
多くの場合戦闘は標準的なFPSに比較するとやや簡単な部類となっている。弾薬は特殊な武器を除けば残りを気にする必要が無いほど存在しているし、Medikitも敵が落とす物を取り切らなくても(一定時間後に消える)充分な位はマップ内に置かれている。そんな中で特に易しさに影響しているのが敵の移動速度と反応の遅さである。まず単純に移動する速度が遅めなので狙い易い。第二に撃ち合っている時にずっと同じ場所に突っ立っておらずに、物陰に移動して身を隠すという能力は持っているのだが、その速度が遅い上に移動中に牽制でこちらを撃ちながら移動するという所までは賢くないので、「目の前で撃つのを止めてゆっくりと(隠れ場所へ)移動する」という状態になり、これは当然の如く格好の標的になってしまう。
更にリロード時にもこれは言える。弾薬が無くなるとその場では無く隠れてリロードし、終わってから再度攻撃に移るというのは良しとしよう。しかしリロードの為に完全にそっぽを向いて”ゆっくりと”移動しながら隠れようとするので簡単に撃ち殺す事が可能となる。廊下の角等の死角から飛び出して来てプレイヤーに奇襲を掛けたりもするのだが、これもその速度が遅いので単にノソノソと撃たれに出て来ている様なものとなってしまう。またはGrenadeを投げ込んだ時に逃げる能力はあるが、その逃げ方は死が賭かっている割にはゆっくりと走るといった感じで滑稽でさえあり、その移動中を簡単に狙って撃つ事が出来るといった具合だ。固定式マシンガンを使って多くのやって来る敵を倒す場面などでも、まるで自分から撃たれに出て来ている様な敵を流れ作業で倒している印象さえあり、実に簡単というか面白味の無いものとなってしまっている。
リアクション速度も基本的に遅く、数人を目の前にして撃ち合っても大して怖さを感じない程度になっている。通常遭遇した場合にはこちら側の先制攻撃が当るという事が多い。主人公の移動速度は通常の武器を持っている際には遅い方なのだが(ピストルなら速い)、敵も遅いのでその辺はあまり気にならないバランス。敵単体の弱さは普段FPSをプレイしている人には物足りなさが残る点であろう。
そこでゲーム全体としてはどうやって難易度を調整しているのかというと、一つ目はとにかく敵を増やすという手法が採用されている。マップ内に予め配置されている者だけではなく、それに加えて多数の敵が進行に応じて沸いて出るようになっており、或る種の目標を達成した後にクリアして来た道に急に涌き出て来たりいうパターンも多い。一人一人は弱い為に、それを調整するには相当な数を持って補わないとならず、ゲーム内に出現する敵の数は相当多い部類のゲームとなっている。そしてそのあまりの多さがリアリティを損ない、WWIIの世界に入り込むのを阻害している感は否めない。
二つ目は敵が落とした武器やMedikitは一定時間経つと消えるという仕様(なお落とすのかどうかはある程度ランダムに決められているようだ)。遠方から倒すのがダメージを最小限に押さえるので望ましいのだが、これだと取るのに間に合わない可能性が高い。かといって安全確認せずに死体に向けてダッシュすると、残っていた敵から攻撃を食らってしまう事もあるという様にされている。確かに難しい判断を要求されるシーンも有るのだが、通常はあまり無理に回収に急がなくても間に合うか、取れなくても大きな問題とはならないケースが多くなっている。
三つ目が本当に難しさを生んでいる要素で、特定のシチュエーションでの戦闘というパターン。例えば戦車を相手にバズーカで応対するしかないとか、プレイヤーが気が付きにくい場所にスクリプトで敵を出現させてダメージを与えるというやり方になる。特に難題なのは固定マシンガンによる攻撃で、一度撃たれるとノックバックが起きてしまい、反撃しようにも銃の照準が合わせられずにそのまま撃たれ続けて死亡というパターンが多くなっている。
こういった仕様の為に敵を発見しにくかったりするアウトドアはともかくとして、インドアにおいては敵一人一人は弱くて戦闘が単調である。最初の内はゲームの雰囲気が良いので気にならないのだが、段々と進むに連れて作業的な感覚が強まって来てしまう。おそらくは爽快感を重視してやり、難しくもしない事でPCゲームを普段プレイしていない層へもアピール出来るようにという考えからだと思うのだが(元々はコンソールで流行っているシリーズなので)、もうちょっと敵単体を強くして数は減らすという方向性の方が良かったように思える。ただこのバランスが普段FPSをプレイしないような層にも受けたという点は認めてあげないとならないだろう。
ESRBはTeenのレーティングなのでBlood系の表現は含まれていない。しかし撃たれた時のノックバックのアニメーション等は良く出来ており、敵に当たっている感覚は充分に伝わって来るようになっている。ここは高く評価すべき点である。
使用武器についてはゲーム的に複数の武器を所持は出来るのだが、その種類が少ないという面を持っている。基本的には遠距離でライフル系武器、近距離でサブマシンガンというパターンになる。更にミッションによって使える武器が制限される為に、武器の使い分けといった面白さはあまり無いゲームとなってしまっている。通常は2種類程度の武器であり、時にはほぼ1種類でのプレイを余儀なくされる。また当たり前の話だが、現実の武器を扱うとなると同じサブマシンガンならその区分の中で顕著な変化は付ける事が出来ず、ThompsonとMP40では使用感はほぼ同じという事にもなっている。当時の武器を再現する以上は架空の武器を導入したりは出来ないのは確かだが、これの何が不味いのかと言うと敵が出過ぎるのと重なる点。リアル系のゲームではメインの両手武器は1種類しか所持出来ない事が多いが、敵の数が少ないからそれほど不自然にはならない。しかしこのゲームでは場合によってはずっと同じ武器、例えばインドアではずっと同じサブマシンガンだけでひたすら大量に出てくる敵を倒したりといったケースもあり、それが戦闘の単調さを助長してしまっている。
ゲームのAIについてまずは良い点から見て行こう。このゲームでの敵は物陰を利用して攻撃して来たり、リロードの時は一度引いて安全な場所に移動してから再度出て来たりといった攻撃を仕掛けてくる。物陰から次の障害物へと移動もするし、しゃがんだり伏せたりといった動作もこなす。更には壁を利用してLeanし被弾面積を小さくしての攻撃が出来、壁からほとんど体を出さずに銃だけをこちらに向けて攻撃したりといった事までやってきて、これは今までのゲームには見られなかった点だろう。こちらを見付けると必ず追って来るという単純さも無いし、スクリプトで決められている以外は完全に固定されたパターンでは無くて自分で考えて移動ルート等を決められるようでもある。
手榴弾にもちゃんと反応して逃げるという動作をやって来る。なお噂にあった味方の被害を最小限に食い止める為に手榴弾に覆い被さって犠牲になるというのは見たのだが、手榴弾を投げ返す行為に付いては確認出来なかった。
一方で問題点の最初は従来通りの欠点を相変わらず抱えている事。つまり「巡回路に死体が倒れていても気が付かない」、「明らかに自分の視界内の仲間が(スナイパー・ライフルで)狙撃されたのに反応無し」、「騒ぎがあっても時間が経つとそれが無かったかのようにリセットされてしまう」、と言った問題が見られた(全てのケースでは無いにしろ)。この反応に付いてはちょっとプレイしていて妙な感じが有り、どうもアウトドアの様な開けた場所では音では無くて武器の種類で気付くのかを決めているかの様な印象である。スナイパー・ライフルはゲーム上では大きな音を立てる(当時の物だし)感じがするのだが、これを使うと近距離にいる他の敵が気が付かないというケースが多々見られた。ただインドアにおいては歩いて足音を消すと気が付かないで、走って移動すると感づくという風にちゃんと反応してくれるようだ。向いている方向と認識に付いても設定はまちまちで、こちらを向いていないので気が付かないかと思えば、それよりも離れているのにこちらとの距離で気が付いてしまうというケースもある。
次に視界の問題。通常時は敵の認識能力はそれほど高くないのだが、事態をややこしくしている物に草木の表現がある。複雑な枝葉の描写に加えてそれが風に揺れるという事まで描画されているのだが、その為にそれを通して見る場合の認識をどう判定するのかという問題が当然出てくる。AIは人間と違い実際に見ている訳では無いので、その”見えにくさ”をどう判定してやるのかというは難しい問題だ。これは雪や雨、霧といったマップでの判定でも同様。無難にやるなら「草木がある場合は敵からは見えない。しかしプレイヤーは隙間を通して見れる可能性がある」とするのだろうが、このゲームではAIからは枝葉は透過するというシステムを採用している。従って困るのが「こちらからは全く見えないのに敵からは見えている」という状況が生じる事で、相手が居るとは思わない時に攻撃を受けてしまう事や、相手が向こうにいると分かっている場合でもこちら側からだけ草木をカバーにして動く事が出来ないといったケースが出てきてしまうのだ。これは自分のHPが低い時など大きなストレスになる。なおこれは味方についても同様であり、一緒に行動している時に、何も見えないのに枝葉を通して敵を見付けてしまい突然撃ち合いを始めたりする。更に悪い事に幾つかのマップではクリッピングのバグが有り、地形的に出っ張ったりしていて先が見えない部分を透過して相手を発見してしまうという問題も見られた。例えば突き出している岩の先に敵がいるという判断で岩に向かって銃を発射したり、或いは閉まったドアや壁に向けて銃を撃ったりとか。
続いては設定の問題。このゲームでは一律に同じ能力のAIを採用しているのではなくて、場面によっては特別に調整された物を使用している。これだけ聞くと良い事の様に聞こえるのだが、実際には不自然な方向に向いてしまっているのが現実だ。まずMG42(固定式マシンガン)を使う敵の視界が非常に良く、まるでこちらが出てくるのを知っていたかの様に攻撃してくる。よって初めてやる時は相当注意でもしていないと先制攻撃を受けてしまう可能性が高い。弾を受けると武器によっては仰け反り動作が入るのだが、このMG42の場合連続でしかも大きく入るので一気に死んでしまう事もあり、もう少し調整してもらいたかった所である。
それとM5のSniper's Last Standのマップ。この面では腕利きのスナイパーが配置されているという設定なのだが、あまりにも正確過ぎるというかハッキリ言ってゲームを台無しにしている。敵が見下ろしている道をのこのこと歩いて行けば撃たれてもしょうがないだろうが、このマップでは建物内の窓から顔を出しただけでも(それを知っていたかのように)すぐに撃たれてしまう(その上次の発射までが早い)。相手が視界として設定している範囲内に入ったら即狙撃という設定が事前になされているので、死にながら敵の配置を憶えてクリアして行くしか無い。それも視界が悪いという位ならばまだマシだが、枝葉でこちらからは100%見えないのに敵は平然と撃って来るという設定。少なくとも注意深く移動すれば敵が発見出来るというのは最低限の守るべきルールだろう。憶えゲー的な要素は確かにどんなゲームにもあるが、これ位極端なのはちょっと珍しい。
味方のAIについては普通の出来。基本的な面はしっかりしており、スタックして付いて来れなかったりという点は見られなかった。ただしやや攻撃的に過ぎる面が有り、それに関連して指示が出来ないのは辛い。味方が体力のあるミッションでは良いのだが、そうでない場合は自分に着いて来てしまうケースが多く、撃たれてすぐに死んでしまう事も。「待て」くらいの指示は出せるようにして欲しかった。
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