<GRAPHICS>

 グラフィックスに関しては、どうしても元が同じQ3エンジンでしかも内容がWWIIという同じテーマという事でReturn to Castle Wolfensteinとの比較が盛んに行われている。そこでは両者に一長一短はあるにせよ総合的にはRTCWの方が上というレビューが多かったが、その辺も絡めてグラフィックスについての感想を書いてみよう。

 まず両者のグラフィックスにはデザイン的に違いがある。どちらも優れてはいるのだがMoHAAはゲーム的であり、RTCWは写実的と言えるだろう。背景画及び人物グラッフィクに関してRTCWは写真の様な表現を取り入れており、そういう意味で「リアルで綺麗」という印象がある。対するMoHAAでは綺麗ではあるが「ゲームのグラフィックスとして綺麗」というデザインで、特に人の顔の表現にそれが見て取れる。
 アウトドアについては私の好みではやはり全体的にRTCWの方が綺麗というのが感想である。ただしここで考慮しないとならないのは、MoHAAでは曇っていたり夜の暗い場面のミッションが多く、また爆撃で崩れ落ちた家屋といった同じパターンがよく使われているという点である。この為にどうしても本来の綺麗さが犠牲になってしまう面があって、エンジンの持つ実力が発揮されていないという面は持っている。例えばマルチプレイに使用されている幾つかのマップは非常に美しく、それらを見る限り決してグラフィックスエンジンの能力で大きく劣るという事は無いと感じる。なお乗り物や木々に関してはMOHAAの方が良く出来ている。

 次にインドアやそのオブジェクトに関してだが、これはちょっとMoHAAの弱い点だろう。トップクラスのゲームに比較するとテクスチャの質が今一つという感じで、それほど綺麗という印象では無い。こちらもまた灰色コンクリの壁に茶色の調度という単調なデザインの繰返しが多いのがその印象を強くしている。ただし細かい部分の作り込みについては凝っている様で評価はされているらしい。らしいと言うのは、私には当時の様々な品々を史実に忠実に再現していると言われても分からないので。


 逆にキャラクタのアニメーションに関してはMoHAAの誇れる点と言える。ゲーム中に見せる顔の表情の変化は見事で、銃を構えた時にちゃんと目を細めたりとか、喋る時のリップシンクもRTCWよりちゃんとしており非常に細かい所まで作られている。キャラクタの動作アニメーションも見事な出来で、全体的に丸みを感じさせる滑らかな動きであり、関節でギクシャクと動いているといった感じがしない。用意されているアクションのパターンも豊富であり、壁に張り付いてこちらを覗ったりとか、Proneしてローリングしながら避けたりとか、手榴弾に身を屈めて頭を抱え込んで対処したりとか非常に多彩。方向転換時の体の捻れ方とかまでキチンと再現されている。更に一度撃たれて倒れてからヨロヨロと起き上がって来て再度攻撃してきたという複雑な動作も見せてくれる。問題点というと倒れる時の動作パターンにやや不自然さが見られる事くらいか(重力を無視したかの様にやたらと早いスピードで倒れる事が多い)。

 エフェクトに関してだが、まず武器のエフェクト関連についてはそれぞれによって変化が付けられており(マズルフラッシュ)、一様な印象のRTCWよりもリアルである。特に撃っている時の重量感表現が秀逸(RTCWでは武器に重さが感じられない)。一般的なエフェクトについて言えば、木々は風でちゃんと揺れているし、煙の濃淡の表現もかなりリアルに見える。砲弾の爆破よる砂塵の舞い上がる所も迫力があって良い。更にそれほどハッキリしていないとは言え、ちゃんと影が付けられるのもポイントが高い(影はQ3エンジンの弱点)。ただしFogの表現は従来レベルの一様な感じでRTCWの域には達していないし、ライティングの綺麗さも劣っている。
 残念な点としてこのゲームでは一切のBlood表現が無い。これだけリアルに作っておいて血の一滴も見れないと言うのは変な感じがするのだが、これについて公式サイトでは「当時の軍服は相当厚手に作られており血が流れ出したりはしない」というコメントを出している。しかし製作側(2015)の話では「Bloodは入れたかったが、EAがゲームのレーティングをM(Mature)では無くT(Teen)で取ってしまったので削除するしか無かった」と述べており、やはり幅広い層への販売(PS版のファンの子供とか)を睨んだ故の削除と言う事になる(Goree表現を入れる場合はMの17歳以下禁にするのが普通)。なおこれを不満に思う人は相当多く、幾つかのBloodmodが作成されている。色々な種類があるので不満に思う方は好みで使ってみると良いだろう。

 もう一つグラフィックスについて論じるのに重要な点として”重さ”という物がある訳なのだが、これに関してはMoHAAは残念ながら非常に重いゲームである。質の高いグラフィックスと引き換えに相当ヘビー級のゲームとなってしまっている(発売当時の2002年において)。この面については比較的軽いRTCWに遅れを取っているという感じだ。対応APIはQ3エンジンということでOpenGLのみ。ソフトウェアモードは持っていない。

 総合的に見てやはり現時点ではトップレベルのクオリティなのは間違い無く、全体的に地味なロケーション&シチュエーションの選択が無ければもっと綺麗になっていたと思われる。




<SOUND>

 各所で言われている通りにサウンドのクオリティは素晴らしい。サウンドフォルダだけでも400MB近い容量があるがそれだけの事はあると言える。Dreamworksから提供されたというサウンドの多くは映画「プライベート・ライアン」にて実際に使用された物だそうである。

 まず環境音は比較的目立たない様に使われているのだがリアルでクオリティが高いし、敵のしゃべる言葉が英語では無くてドイツ語というのも意味はわからないが雰囲気があって良い(マルチプレイでもドイツ語なのでAxis側だとちょっと困るが)。BGMはそれほど使われている訳では無いのだが、メニューでのテーマも含めて如何にも昔風という曲調がノスタルジックで良い感じである。

 特に良いのが武器のサウンドだ。これがどの程度現実の物と似ているのかは知らないが、武器によって特徴があり良く出来ている。例えばM1 Garandは”ブシュッ”といった独特の発射音を聞かせてくれる上に、カートリッジを排出する時に”カキーン”という風な綺麗な金属音を発する様になっている。スナイパーライフルの音もエコーが掛かっていて響きが綺麗だし、BARの重量感のある迫力ある音も気にいってしまった。
 その他のサウンドもかなり凝っており、弾は当った場所の材質によって音を変えるし足音についてもそれは同様。上空を戦闘機の飛ぶ音や、砲弾の炸裂音も低音が効いていて良い音を出している。

 音響的にはQ3エンジンと言うことで3Dサウンドには対応しておらず、一応メニューからは4SPシステムとサラウンドを選ぶ事が出来るだけである。その為に音の正確な位置表現や移動についてはあまり大した事が無いのだが、4SPにした場合の迫力はかなりの物がある。位置はそれほどハッキリせずに包み込む感じのサウンドになるのだが、例えばOmahaなどでは物凄い迫力のサウンドを聞かせてくれる。

 問題点としては自分の足音が動きと合っていない様に聞こえる(遅れて聞こえる)のと、音がクリアなのでステルスで行動している時にどの程度まで聞こえているのか判別しにくい点だろうか。


 この製品に関してはインストール時に各種表示や音声の言語を自由に設定出来る日本語版がリリースされているので、基本的には日本語版を買うのが普通と思われ、その意味からしてあまり英語の問題は起きないと考えられる。マルチプレイ重視の人だとパッチの問題から英語版という人も多いと思うのだが、EAの場合にはその辺の互換性も良く出来ているので問題はないだろう。
 セリフ自体は字幕表示がONに出来るのだが、ちょっと背景と文字色の関係で見難い感じはある。特に連続で長いセリフを言われる場合に、前の物がドンドンと消えていってしまうので。それとミッションの開始前の全体的なブリーフィングには字幕が出ない。ただゲームの進行に関しては大して聞き取れない或いは理解出来なくても問題は無いと思われる。クリアへの英語依存度は低いゲームと考えて良い。



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