<GAMEPLAY>
ゲーム自体はノーマルなアクション系FPSである。グラフィックスを含めたWWIIの雰囲気作りが良く出来ているので現実に則したリアル系ゲームの様に見えてしまったりするかもしれないが、実際には撃たれても即死する訳では無いしヘルスパックで体力回復も出来るという設定となる。当時の雰囲気の再現については最大限の努力を払うが、戦闘についてはあくまでもゲームというデザイン。ただ結構敵に撃たれても平気だったりとか、戦車の砲弾を食らっても即死しなかったりとかには変な感じがするのは事実で、グラフィックスの表現力が高度になって現実の様にリアルさが増して来ると反ってゲームが不自然に見えてしまうという一例だろう。
時代やロケーション別に6章に分けられたキャンペーンに関連性はほとんど無く、また主人公の個性といった物も全く感じられない為に、進行に応じてストーリーが盛り上がって行くという風にはなっていない。通常のFPSを長編小説とするならば、このゲームは短編小説を6編収録した物というイメージとなり、ストーリーは章毎に完結しているというデザインになる。また進行は一本道でストーリーが変化するといった分岐等は存在しない。
ドアを開けるのに鍵をあちこち探し回るといったパズル的な要素はほとんど存在せず、コンパスにて目的の方向が表示されるので迷う様な事もまず無い。ただしミッションによってはクリアの仕方がわからないと不可能だったり辛い物もあり、途中で詰まるという可能性は残っている。
プレイ時間はNormal難易度で10〜12時間程度で、特定個所で詰まるともう少し掛かる人もいるかもしれない。ただ海外サイトのレビューだと10時間も掛からないというコメントも多く、それをもってゲームの欠点としているレビューも結構見られた。BBSでの一般のプレイヤーの意見でも7,8時間で終わってしまうという不満点を幾つか見たので、プレイスタイルによっては短くなる可能性はある。
マップはアウトドア主体の構成で、インドアマップはそれほど多くない。またアウトドアに比べるとインドアはバラエティに乏しく単調なデザインが目立つ。その中心となるアウトドアマップに関してはQuake3
Team Arenaエンジンをベースにしているだけあって非常に綺麗である。様々なディテールに関してはTopクラスと言えるだろう。ただし他のアウトドアを主体にしたゲーム、主にTactical系の物に比べると広さが感じられないという欠点はある。Delat Force, Operation Flashpointといった物は広大なアウトドアを描画しているゲームになるが、これ等では全くプレイには関係無い場所までマップが広がっていたりして、その”無駄に広い”という感覚が逆にプレイヤーに広さを実感させてくれる。しかしMOHAAではQ3エンジンという、マップサイズが大きくなって見渡せる範囲が広くなるほど重くなるという物を使用しており、その為にあまり広さを感じさせられるマップが無い。つまりマップはゲーム上必要な所にだけ存在しており、背景は一枚画だったり見えない壁で行けなかったりというケースが多い(数百メートル四方という単位で地形が広がっていてその中を自由に移動出来るという構造では無い)。
例えばOmahaのマップでも見渡す限りに戦場が広がっているという風ではなく、必要な範囲のみが切り取られて置かれているという構造になる。この点に付いては結果的にリアルでは無くゲーム的な印象を受けてしまい、高度なグラフィックスとサウンド作りでカバーしているとは言えやや物足りない所である。その代りに上記のアウトドア中心のゲームが抱えている「インドアの描画に関しては遅い&綺麗では無い」という欠点をMOHAAでは克服しているのではあるが。ベースとなったアウトドア用のQuake3
Team Arenaエンジンの地形描画部分を満足できずに書き換えたそうだが、もっとアウトドアに強い物にして広さを感じさせるマップにしたら、更に臨場感が出て良かったのではないかというのは残念な点。
難易度は全体として見た場合は普通なのだが、マップ(シーン)によって難易度の差が極端である。後半に進むほど難しいとはなっておらず、ミッションやシーンによってバラバラと考えた方が良い。基本的に敵との戦闘シーンはやや簡単で、通常とは異なった形式での戦闘や、特定の障害を乗り越えないとならないという箇所が非常に難易度が高くなっていたりする。
大きな特徴としてはスクリプト(事前に定められている進行)を多用してゲームに惹き込むという手法を使っているというのが挙げられる。プレイヤー側に行動の自由を渡すのではなく、ゲーム側が主導権を握ってプレイヤーを動かすというスタイルである。一緒に行動する仲間(上官)の指示に従って付いて移動したりとか、順番に沿って発生するイベントに対応したりとか。プレイヤーによってゲーム内の体験が変るという構造では無くて、誰がプレイしてもほぼ同じ体験が出来るような仕様のゲームと言える。
通常のFPSでも大して進行に分岐がある訳ではないが、”見せ方”の違いとして「自分が主導で探索している気分になれる物」とそうでないタイプがあり、その後者の色合いが非常に強いという事である。この部分は結構難しい所で、自由度が高いというのは重要だが、面白いスクリプトによってプレイヤーを動かせればその方が優れている場合もある。「ゲームというのは映画や小説の様に一方向性のメディアでは無いのが魅力」というのは確かだが、「視聴者の反応によって変化しない映画や小説の様な一方向性のメディア」は、「プレイヤーの行動に自由度のある双方向性のゲーム」に比べて詰まらないのかというと別にそうではない。素晴らしいストーリーによって構成された映画や小説は、それが誰にでも固定された体験であっても面白いのである。
そういう観点からするとMoHAAは映画的・固定的なストーリー運びを重視しており、プレイヤーは作り手の予め用意したシナリオに乗せられてプレイするという場面が多い。そしてその内容にはある程度こちらのペースで進められる物もあるのだが、ほぼ半強制的に進めないとならないイベントも結構ある。例えば別に何処でも同じ様に見えるのだが特定のルートを通って目的地点に到達しないとならなくなっているとか、ある任務を達成した時点で大量に出てくる敵から逃げないと行けない(或いは戦って抜け出さないとならない)とか。Omaha上陸のマップもそうなのだが、若干の行動の自由は許されてはいるが、クリアの為に行う順序は予め決められており、その通りにしないとならないというミッションが多い。
ゲーム全体で見るとこの方式は概ね上手く行っており、プレイヤーをゲームに強引に引っ張り込んで楽しませるという手法は成功している印象である。じっくり考えて行動させるのではなく、リアルタイムにイベントを起こしてその指示に従わせる事でゲームに没入させる。ああしろこうしろと言われて急いで対応しないとならないケースが増える事で緊張感が生まれて、それがスリリングな展開を呼んでゲームが面白くなる。そしてまたゲーム世界のリアルさの演出にも繋がっているという構成だ。例えばネタバレになるので詳しくは書かないが、一番最初のミッションは相当短いのだが導入部としては非常に良く出来ており、ゲームの世界にプレイヤーを一気に引き摺り込んでくれる。スクリプトによる強制進行であっても、それが上手く決まれば高い没入度と面白さを生み出すという事になる。
仲間との行動をミッションに組み込んでいるのも大きなポイントだろう。全体で言うと半分も無いのだが、味方と一緒に行動しながらの戦闘というのはアクション系FPSでは意外に少なく、これもゲームに面白さを加えている。指示が出せないので部隊としての行動が楽しめる訳では無いが、多対多の戦闘というのは非常に楽しい。内容的にも自分の動きに仲間が付いて来るというだけではなく、AIが指揮を取って自分が付いて行く物からMedicが自分を直してくれるタイプの物まであり、場合によっては5人以上の大所帯で移動したりというシーンまで用意されている。
ここで欠点についても述べておこう。まずあまりにもスクリプトが多いので自分の側からゲームに干渉出来ないという不満点がある。このゲームでは指示された通りに忠実に行動しないとならない場面が多く、その縛りがキツ過ぎる感じがするミッションも存在している。設定に惹き込まれて集中している時は良いのだが、手順が単調で醒めてしまったりすると「やらされている」という感覚になってしまい急に面白さが無くなったりする。具体的にミッションで言うと売りにしているOmahaは確かに面白いのだが、もう少しクリアの仕方に自由度があっても良かったのではと感じるし、M5の最初のSniper
Townなどはちょっとやり過ぎという印象が強い。スクリプトの多用は一歩間違えると強度の憶えゲーになってしまう危険性を持っているが、若干それが見えてしまっているのは残念である。
更にスクリプトに付いて言えば序盤は良いのだが後半に行くに連れて同じパターンが目立つようになってくる。特に目的を達成すると敵が帰り道(脱出ルート)に大量に湧いて出るのでこれを倒しながら脱出というパターンが結構有って、最後の方は少々食傷気味になってしまうのは欠点。
次に面白いスクリプトと仲間との共同戦線という2大ポイントの反面、逆にこれらが無いミッションでは面白さが落ちるという弱点を持っている。つまり「単独行動」で「在り来たりのスクリプト」で構成されたミッションはあまり面白くない。アクションFPSとしても優れているのならばこれは問題にならないのだが、このゲームはそういう風にデザインされたゲームでは無いので(戦闘に関しては該当項目を参照の事)。
前半3つのミッションに比べると後半3つの方がボリュームもあるし時間も掛かるのだが、終わってみると印象的な物は前半に多い。後半は味方との行動も減り、スクリプトによる面白さから敵を増やす事によるテンションの上昇という変化を付けようとしているのだが、これが上手く機能していないのである。例えばラスト付近の一連のマップは激しい戦闘になるのだが、ミッションとしては大して面白く無くなってしまっている。
ステルスに付いても問題有りだ。事前のアナウンスではこれを重視したミッションも多いという話だったのだが、これは期待外れという感じ。まずステルスを上手く機能させるには優れたAIが必要なのだがそれに問題有り。次に敵のSpawnについても問題があって、これがある為に戦略的な行動が出来ない様になってしまっている。つまり予め全ての敵が配置されているならば、それを迂回したり味方を引き連れて回り込んで奇襲したりとか出来るのだが、ある地点を過ぎた時点で自動的に敵がワラワラと出てくるとか、目的を達成するとそれを合図に敵が沸くとかいう仕様なので、隠れての移動というのが難しく正面からの銃撃戦になってしまいがちである。
中にはステルスで行動して戦闘を避けた場合、目的達成後の帰り道にその倒さなかった敵までが加わって出てくるので余計に辛くなるといったケースまで存在し、むしろバレても良いので戦って敵を一掃してからの方が望ましいという面まで有ったりする。そういった意味でステルスに付いては高い点は与えられない。他には変装して身分証明書を見せて通過するというのはユニークではあるのだが、それだけで終わってしまっていてもう一工夫欲しかった所だ。
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