<MULTIPLAY>

1.仕様
 ゲームのモードはDeathmatch, TeamDM, Round Based Match, Objective Based Match の4つ。ただ実質行われているのはTDMとObjectiveの2つだけで、その他のモードのサーバーは非常に少ない。

 ゲームに入るとまずAxisAlliesを選択。デスマッチではどちらでも使用可能であり、ObjectiveやTDMでは選んだ軍によってチームが変わる。次に使用するモデルを用意された中から選択する。そして武器を選択するとゲームに入れる。武器はAxisとAlliesでちゃんと異なった物が採用されているが、キャラクタクラスの概念は無い。
 武器は選択した物以外は手榴弾とピストルだけなので選択は重要であり、変更する方法は一度死んで復活する前か事前に変更しておいて死んだ後に持ち替える形になる。ただし武器を捨てれば落ちている物を拾う事は出来る。弾薬は一切落ちていないが、所持弾数は結構多い方なのでそれほど気にする事は無い。First Aidは死体が落とす物を拾えるシステムだが、シングル同様に時間が経つと消えてしまう。

 非常に重要な点としてシングルプレイとはダメージが変更されており、Hardでやるよりも大きなダメージが入るようになっているので非常に死に易い。この辺りのバランスはリアル系と言われるゲームと大して変らないと言える。

 DMに関しては特に説明する事も無いが、TDMではちゃんとそれぞれはマップ両側の分離された場所にSpawnする。死亡回数の設定は無い。Objectiveは攻守に分かれてのゲームとなり、これは以下の様なルールになる。

※基本的に一度死ぬとRespawnは不可、同様にゲーム中に途中参加は不可。Spectatorとしてゲームを見学になる(USEキーで視点切り替え)
※攻撃側が定められたObjectiveを達成すれば勝利。守備側は時間内守り切るか敵を全滅させた時点で勝利。
※爆破ミッションでは誰でもセット可能で、赤い爆薬アイコンに向けてUSEキーを5秒間押し続ければセットされる(時計マークが出る)
※爆発するまでに同様の事を爆薬に向けて行うことで解除出来る




2.INTREFACE
 操作にはLeanが加わっており、これはかなり重要な要素として組み込まれている。ダメージが大きいので気安く角を飛び出すのは危険であり、Leanを使って慎重に行動する必要が出てくる。移動速度等は特にシングルとは変化無し。

 HUDはシンプルなのだが、シンプル過ぎて見難いのは確か。もう少し情報を掴み易い物に変更して欲しい所だ。それとメッセージ系も見にくくて出来が良いとは言えない。名前の表示には色を変えるとか、死亡メッセージをOFFに出来るとかの工夫が足りない感じ。ボイスメッセージは豊富に用意されており便利なのだが、ワンキーにBindするのは独自仕様の為にちょっと面倒である。それと枢軸側は発言がドイツ語なので分かりにくいのは確か。


3.TYPE
 まずDMはあまり行われていない。理由はデモがリリースされた時に起こった批判が一番的を得ていると言えるかも。それは「これだけリアルに作り込んだゲームで、何故同じ軍同士が戦うなどというおかしな真似をするのか?」という点になる。DMだとスキンが自由に選べるのでゲーム中は連合軍・枢軸軍に関係無く撃ち合う事になり、これはWWIIをリアルに再現するのが目的のゲームとしては根本的に発想がおかしいという意味だ。どう考えても史実通りの両軍に分かれてのチーム戦がベースとなるべきであり、DMは不自然・不必要という事で人気が無いと言えるだろう(実際に最初DMのみのデモが出た後に、内部を解析してTDMを実現する方法がすぐに出回った)。EAとしてはやはりマルチにDMは外せないのではという考えから入れたのだと思うが、リアルさを考えるならば入れる必要は無かったと私も思う。

 TDMはオーソドックスな形式であり盛んに行われている。このモードでは死亡回数による制限も無いし、武器が一つという点も協力で補えるのでバランス的には一番ちゃんとしているモードに感じられる。味方の武器構成が見れないのは残念だが、ある程度固まって動く時にはGrenade役・サブマシンガン役・ライフル役と、周りを見て変更する事でチームプレイは行う事が出来るはずだ。

 Objectiveのゲームプレイ自体は通常一度死んだら終わりのルールで、現実にあった作戦を元にした対戦というリアル指向。ただこのモードなのだが、発売前は斬新なチームプレイ戦というような発言をしていたにも関わらず、蓋を開けて見ればシステム自体は平凡なチーム戦。これには正直期待していただけにガッカリした。Objective自体も特に練り込まれた面白い物と言う訳では無く、単純な爆破物ばかりである。更にRespawnが無いので敵を全滅させればOKとなり、その為にObjectiveを攻めるor守るというプレイスタイルでは無くて単なるTDMになってしまいがちであり、実際に大半のサーバーがそうなってしまっている様だ。目的地に辿りつくとDF側は誰もいないとかも結構多い。



4.GAMEPLAY
 基本のシステム自体は本当に普通であり、違いとしては移動速度が遅いという事程度だろうか。遅いので避けるという行為が難しく、これはしばらくやって慣れないと他のFPSとは勝手が違うのでやりにくい。WWIIの世界の表現という点では、私は史実に詳しく無いがグラフィックスが秀逸であり雰囲気は良い。Q3エンジンと言うことでオンライン対戦も軽い方である。ただし動作は重いゲームなのでグラフィックスの設定を落とさないと問題が出る可能性はある。
 それと武器がほぼ純粋な銃器系の為にPingはかなり重要なゲームである。幸いな事に人気があってサーバー数は多いので、出来るだけPingの良い所に行くのが望ましい。人気といえば人気ゲームの宿命としてTKも結構出没している様で、その為かFFはOFFの所も多い(これはまたこれで問題もあるのだが)。
 そのシステムの素っ気無さの為にそれほどメディアの評判は良くない感じで、RTCWとの比較で「シングルのMOHAA、マルチのRTCW」みたいな点数付けをされている事が多い(特にあちらでは新しい要素にチャレンジしていないゲームへの評価は厳しいというのもある)。しかしマルチプレイ自体は決して詰まらない訳では無いし、プレイしてみる価値はあると思う。

 ただ私がこのマルチプレイを遊んで見て問題に感じるのが「作り掛け」という点である。。確かに土台はしっかり出来ているのだが、その上に簡単に構造を作っただけという印象だ。例えばメインとして宣伝されていたObjectiveだが、あれだけ推しておいて収録マップはたったの4つだけ。更にはマップのバランス感覚が悪く、どちらかがかなり有利という構成になってしまっている(チョークポイントを押さえる事で守り易いというケースが多い)。また武器の性能が非常にアンバランスな印象で、一つしか武器を持てないという仕様の割にはちょっと問題があるのでは無いか。例えばShotgunの破壊力が非常に強く室内戦においては物凄い威力を発揮する。そこそこ照準が外れても倒せる印象でバランス的に面白味が無い。次にSniper Rifleが正確過ぎる。撃った後に銃身が跳ね上がるのは良いのだが、それが自動的に戻ってしまう。若干連射には間があるもののそれを補って余りある正確性を誇り、当時こんな正確な物が存在していたのかと疑問に感じてしまう。これではマップによってはプレイヤーがライフルだらけになるのも無理はない。
 もう一つBazooka(ロケット)の威力が強いのだが、バズーカを持っても特別に移動速度が遅くなるとかのペナルティが無いのでこれを持つ人間がやたらと多い。敵のいそうな所へ撃ち込んでスプラッシュダメージで倒すというスタイルが蔓延しており、かなり議論の的となっている。チーム毎に武器数制限等を導入しないと不味い感じがするのは確か。後はGrenadeも殺傷範囲が広く、敵に会ったらALTで乱射するという自爆戦法も興醒めな要素となっている(移動速度が遅くいので避けるのが難しいという点がこの武器を凶悪な物としている)。この様に多くの武器に関して不満が出ており、かなりの数の使用禁止&能力調整のmodが出回っている状況だ。この辺りはロケットやライフルを非常に威力はあるが使いにくいとしてバランスを取っているRTCWに比べて大きく劣っている所だろう。

 更にそれと絡んでサーバーの設定関連にも大きな問題がある。多くのFPSではサーバー起動時の画面上でのルール設定及びServer.cfgといった設定ファイルによって細かな内容を変更出来るようになっているのが普通である。これはユーザーへの利便性という意味もあるが、実はメーカーサイドの”保険”といった側面も存在している。どういう意味かと言うと、実際問題として発売前に収録する全てのマップについて徹底的なバランス調整というのは困難な作業である。そこで発売後に問題が起きた時に対応出来るように、出来るだけ多くの要素を変更可能にしてリリースしてしまうという保険がうたれる。つまり発売後にデフォルトの設定ではバランスが悪いといった意見が出た時に、それをパッチで修整しなくてはならないとなるとユーザーへの心証が悪くなる(何故事前のテストでわからないのか?という事で)。しかし簡単にホストがOptionの設定変更で調整可能ならば、これは単にその設定が公開されるサーバーでの「定番ルール」として流通するだけの話になる、つまりメーカーへの批判はそれほど起きない事になるのだ。例えばRTCWは相当バランス調整の難しいゲームシステムだが、それ故マップ単位で細かなルールを変更出来る様になっているのは問題が起きた場合の保険の意味合いが強く感じられる。
 そういう視点でこのゲームを見た場合、素っ気無いほどに変更出来る項目が少ない。だから発売後にバランスがおかしいとかの意見が多数出て、わざわざユーザー作成のサーバーサイドmodが多数出回るようになる。これだけリアル系のゲームに近いダメージバランスであれば、リアル系のゲームでは普通に用意されているサーバー側での使用武器規制を入れておけば良い。そうすればShotgunだろうがBazookaだろうが簡単に規制出来る。均等の人数だとバランス的に問題があるマップがあるのならば、チームの人数Rate機能を入れて強制的に人数配分をマップ毎にさせるとかも出来るだろうし、ObjectiveでのRespawn可能かについてもサーバー側で決めさせれば良い事である。つまりバランス調整に問題がある上に、それをサーバーサイドで変更出来ないというのが大きな問題点と言える。

 この様にマップや武器のバランスに関して言えば、ちょっとFPSをやっている人間を集めてテストをすればすぐに分かりそうな問題がそのまま残されている感じであり、素材としては良い物を持っているだけに残念だ。ある程度は遊んだがもう大きな変革でも無い限りやらないかなというのが今の感想である(これが詰まらないというよりは、他のゲームのマルチの方が面白いので優先度が低くなる)。この辺に関してはテストする時間が無かったのではないかとも推測される。

 結論としてはやはりこのMOHAAはシングルプレイ重視のゲームという事なのだろう。去年のE3で話題になってから、EAの3DFPSマルチプレイ市場への挑戦という記事が見られた。オンラインゲームには非常に積極的なEAだが、3DFPSの(オンライン)人気タイトルを所持していないという弱みがある。そこでこのMOHAA、Renegade、Global Operationsといった所を連続してリリースという積極的な姿勢を打ち出して、3DFPSマルチ市場へも進出しようという意気込みを見せていた。しかしながらこのMOHAAに関しては”より”シングルプレイを重視というスタンスでの開発姿勢であり、宣伝に付いても相当な金額を注ぎ込んでの物となっていた。効果的に宣伝を行うにはリリース日を明確に決めてやりそこに向けて活動するというのが必須となるのだが、開発が予定よりも遅れてしまい当初予定の年末のリリースを逸してしまう。延びるほど金銭的な負担は増えてしまうので何時までも延ばす訳には行かない。そこでおそらくはシングル部分にメドがついた時点で発売日を決定してしまったのでは無いかと思われる(かなり発売日の決定は早かった)。つまりマルチ部分に関しては出来る所までで出してしまおうという事だ。あくまでもシングルプレイを売りとして宣伝し、それに加えてマルチも面白いよといったアピール方針である。
 この辺りに付いては2015もEAもマルチ部分に作り込みが足りない、間に合わなかったという事は言っていない。しかし見るからに調整不足なのは明らかであるし、そもそもこのレベルが彼らの考える完成品だとしたらそれこそ問題だろう。発売後に2015はこのMOHAAから離れてしまい、このゲームに関する事はEAに問い合わせてくれといった態度になっているが、これには発売時期に関しての意見の食い違いによる揉め事があったのかもしれない。最早現在のゲームレベルでは、シングルプレイとマルチプレイに同等の高いクオリティの物を用意するというのは1社では不可能という意見があるが、このMOHAAなどはその一例と言えるかもしれない。

 ただここまではともかくとして、発売後の姿勢にも問題がある。発売時点でマルチ部分が完成されていなかったゲームというのはかなりあるし、その後の対応(パッチ)で充実させて行けば良い事である。しかしMOHAAでは公式の追加マップもリリースされないし、どうやら拡張パックの発売される11月まで大きな動きがないような感じさえして来ている(実際に動きは無かった)。
 また非常に重要なSDK(Software Development Tool)に関してもチグハグな対応だ。元々WWIIを題材にしている事からWWIIはもちろんの事戦争系のmodが作成し易い環境にある為、mod作成のツールのリリースが待望されていた。それに応える形でEAがSDKのリリースをアナウンス、それを機に多くのグループがmod作成に名乗りを挙げた。しかし実際にリリースされたのはLevel Editorであってゲームの内部改造を行う為のSDKはリリースされず、それは拡張パックの製品に同梱される事になってしまったのである(これは単独でDownloadの形式になったが、予告していた2002年内のリリースは果たされず、何時になるのかのコメントすら現時点では出ていない)。こうなると開発宣言をしたmodグループもリリースは拡張パックが出てから少なくとも数ヶ月後という感じにトーンダウンしてしまい、実際にSDKリリースの為の署名運動やBBSでは抗議が起きたりしている。年末まではかなり長いし、その間にもっと作成のし易いゲームが出てしまえばそちらに開発チームがシフトしてしまう危険性もある(これは実際に起きている)。



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