GRAPHICS |
新しい内部開発のエンジンとなるMOH-Tech(仮称)にて製作されており、これまでのQuake 3ベースのエンジンではない(ただファイル構造等は以前の名残が見られる)。少なくともグラフィックのレンダリング部分については、これまでのOpenGLからDirect 3Dへと切り替わっている。 ジャングルが中心となれば草木の描画は重要となってくるが、この点については相当な量を描画可能であるし、風でのアニメーションも加わっているとなり優秀な出来である。ただPAのジャングルは酷く茂ってはいてもクリーンなイメージであり、Vietcongの様な汚らしい雑然とした雰囲気というのは出ていない。実際に現地のジャングルの植林状態に違いが有るのかも知れないが、グラフィックのクオリティでは上だが不気味で嫌な感じという点ではVietcongの方に分が有るという印象。 Textureの質は同時期の作品と比較すると高い部類で合格点。影はそれ程目立たないが、ちゃんと草木の揺れに応じて落とす場所を変えたりというのも行われている。煙や砂煙のエフェクトも自然であり出来は良い。 キャラクタのモデリングやそのTextureも凝っており、皮膚に付いた傷や汚れ等も再現されている。アニメーションも細かくて多彩になっており、AAでのギクシャクした感じの関節の動きからは相当な進歩を遂げている。負傷時に怪我の状態によって動作が細かく変化したり、スライディングしてのProneとか用意された動作も多彩である。一方で周囲のオブジェクトとのポリゴンの重なりが生じてしまうケースも有るのは問題。 顔の表情に関しては相当に力を入れているという言葉通りに、ムービーではなくゲーム中においても何種類かの表情の変化がちゃんと見て取れる。ムービーのシーンでは唇が完全にリップシンクして動作するのは勿論、舌・歯・目までポリゴンで作成されていてより細かい表情を行うようにされているそうで、更にストーリーの進行と共に微妙に顔付きを変えて行くというレベルまで行われている。 BloodについてはやはりTeenのRatingなので当たった瞬間にそれらしき物が表示されるのみ。Goreも存在しない。 問題に感じたのはHavokをベースに開発したという物理エンジン。撃たれた人間が前作のように複雑な苦悶のアニメーションを見せるシーンも多くなっているので、常にラグドール効果を適用しているというのでは無いようだが、どうにも変な点が目立つという印象。宙に浮いて止まってしまう死体や、爆発で不自然に空高く舞い上がる死体。或いは銃で殴った際に勢い良く飛んで行ってしまう等。どうも未完成という感を禁じ得ない。 全体的な戦場の雰囲気の表現については合格点レベルでは有り、特にジャングルについては良く出来ていると思うのだが、もうちょっとそれ以外の場所のリアリティを高めてもらいたかった。特にTarawaは凡庸な印象を受ける。グラフィックのクオリティは全般的に高いのは確かだが、2004年はDoom 3を始めとしてFar Cry, Half-Life 2とグラフィックのクオリティが飛躍的に上がった年でもあり、その中で目立たなかったというのはあるかも。 |
SOUND |
サウンドはAAでもそうだったが特に重要とされている項目であり、その通りに力が入っていてクオリティも素晴らしい。前作同様にサウンド・システムにはMiles Sound Systemを使用しているのだが、EAX3を使用しての臨場感は相当な物で、広い場所でのエコーのエフェクトが綺麗で耳に残る。4SPでの周囲への定位感も見事で、音の位置によって周囲の位置関係は明確に掴む事が可能。 武器のサウンドは実銃のサウンドを収録してきて製作しているという話で、実際にどの程度似ているのかは分からないが迫力は出ている。Shellshockで耳が一時聞こえなくなる際の効果も良い。 もう一つ戦場の臨場感を高める為に導入されているのがAdaptive AI Dialogue。スクリプトではなく状況を判断して適応した台詞を自動的に喋ると言う機能であり、「Grenadeを頼む」、「右から来ている」、「マシンガンに注意しろ」といった言葉をAIが叫ぶようになっており、これは戦場の臨場感の向上に一役買っている。 BGMは荘厳なタイプの物が多く、基本的にプレイ中は鳴っていない事が多い。 クリアに英語力が必要というゲームではないのだが、今回は英語での指示やアドバイスが多くなっており、分かる方が楽しめるしヒントにもなるのは確か。 日本兵が喋る日本語の出来は極めて良い。クレジットにも日本人がいるので全て実際に日本人が喋っていると思われ、よく見受けられる発音や文法が変だったりというのは無く、こちらに気が付いていない時の世間話なんかも長い会話が淀みなく流れるようになっている。攻撃時の台詞も「天皇陛下万歳」、「御国の為に」といった物から、「白豚」、「死ねアメ公」とかいろいろと用意されており凝っているし、マルチプレイにおける日本軍用のコメントも相当な数の台詞が専用に収録されているのもポイントが高い。 |
MULTIPLAY |
MOHAAでは「あくまでもシングル中心のゲーム」としてサポート体制にも不満が出ていたマルチプレイだが、今回は非常に力を入れており、シングルと同等の比重を掛けて製作されている。その為に主なコンテンツの製作は時間と人員が必要となるので、専用に外部のTKO
Softwareに任せている。 まずコミュニティからの要望が多かった2つの点、「Cheatを何とかしてくれ」と「サーバー側のコントロールの拡張」に対してはちゃんと対策が打たれている。最初のCheatに関しては対策が一向に進まないとして相当に問題視されていたのだが、PAでは発売時点からFPS界では定番となった有名なPunkBusterの導入を行っている。サーバー側ではリモート・コントロールやコンソールからの操作の拡張。 それと今回はStats(成績)の採取機能が加わっているおり、EA Onlineのアカウント名とCDキーを元にしてプレイヤーの成績をマスターのサーバーに保管するというシステム。各プレイヤーは参加ゲーム数や勝利数といった基本的な成績、"kill-death ratio"、"team skill points"といったゲーム中の成績に応じて与えられるランキング(軍隊の役職)が保存される事になっている。 ゲームモードについてはFree For All, Team Deathmatchの他には、Invaderというモードが付け加えられている(Tug-Of-Warは廃止)。最大参加人数は32人。そしてクラス制を導入しており、内訳はInfantryman, Corpsman(Medic), Combat Engineer(爆薬の設置等), Ammo Tech(弾薬の供給とHeavy Weapon担当)の4種とシンプルな構成。サーバー設定でOFFも可能だし、所持武器制限や人数割合等も相当細かくサーバー側で設定が可能。 Invaderは攻守が完全に分かれて行われるタイプのゲームで、連続したObjectの達成と防御を争うゲームタイプ。基本的にはReturn to Castle Wolfenstein(Enemy Territory)と同じスタイルと考えて良い。各Objectは破壊タイプの不可逆性を持っているので、DF側が押し戻すという事は出来ない仕様。陣営としては米軍vs日本軍となり、マップによって攻防側は変化する。 Invaderの一つの特徴としてはRepawn回数の制限が加えられている点が挙げられる。チームに対してMap毎に復活数の制限が存在しており、それを越えてしまうと以後チームは復活不能となって、その後全員がMapからいなくなればその時点でどの様な状況であっても敗戦となる。復活可能数はサーバーにて(参加人数)x(設定値)といった形式で幅広く設定が出来る。 ただしCorpsmanが瀕死者(正確にはHPが0になって地に倒れた人間で、爆死等即死の場合も有る)を復活させる事が可能になっており、倒れた状態でCorpsmanを待って復活すればポイント(Spawn Pool)は減らない。その代わりに状況によっては復活が遅れてチームが不利になる可能性も含んでいる。よって残りのSpawn Poolを睨みながら、どちらを選択すべきかを決めないとならないという要素が加わっている。逆に敵チームは倒れた相手を銃剣等で止めを刺して強制的に復活させてSpawn Poolを減らしてやるという行為が可能となっている。 またDynamic Spawn Position(DSP)という機能も持っており、これは参加人数に応じて復活する地点を自動的に変更する機能である。少ない人数であれば復活地点を戦闘の中心地のより近くに移動させて、戦闘が人数不足で間延びしないようにする機能。 アイテムや武器関連はシングルとは若干異なり、地雷及び地雷検知器等のアイテムが追加。行うとされていたVehicleの追加は最終的には無くなっている。 実際のマルチプレイはどうなったかと言うと、これは全くという位に人気が出なかった。MoHAAが今でも相当な人気を集めている事を考えると大失敗と言うべき部類の結果である。2006/10月現在ではサーバーは幾らか残ってはいるものの、ピーク時でも100人集まれば良い方という感じで、通常は50人以下でプレイ可能な場所は1,2個しかなく、日本公式も既に無い模様。 まず大きな原因として初期バージョンではマウスのラグというFPSにおいては致命的なトラブルを訴える人が結構多く、ネットワークでのラグも問題となっていた。それとゲーム自体も最低環境が高いというのもあって重めだったので、それも人が来なかった原因の一つになるだろう。なおラグ関連については現在ではパッチで改善されているようだ。 次にDMやTDMにおいてはマップが広過ぎる。確かにDSPという機能で人を集中させる様にはなっているらしいが、最初は方向が分からないのでとにかく移動しても他のプレイヤーに遭わないという不満が多かった。サイズ的には32人対戦に適しているという物が多く、AAの人気からしてそれ位人は来るだろうという見込みだったのかも知れない。 私は当事者では無いので何とも言えないのだが、欧米に於いて日本軍という点に人気が無かったというのも有りそうだ。純粋に日本軍でプレイという点が面白く無いという考え方が一つ。そして武器類はリアルさよりもバランス優先でデザインされており、本来ならば日本側が劣る武器の性能に関しては公平になるようにしてあるそうなのだが、それでもあまり好んで使う人がいなかったというのもあったかも。 ゲーム性に関して言えば、売りとなるInvaderはかなりTacticalなゲーム性を狙ったと思われるのだが、インターネットでの自由参加ゲームに於いてはそれ程緊密なチームワークが取れる事は稀であり、Spawn Poolの戦略性も上手く機能しなかったようだ。マップが広いのでそれ程上手い具合にCorpsmanが来てくれる訳でもなく、そうなると死んだらすぐに復活する人ばかりというパターンに。通常は負ければそのまま止めを刺されて強制復活というケースも多いとなると、Spawn Poolの数を低くして戦略性を高めたサーバーでは、オブジェクトの攻防で決着が付く前に終わってしまうという敵を倒すのが第一目的のTDM風のゲームになりがち。増やせば解消はされるが、それだと独自性として組み込んだ機能の意味が薄れるという事になってしまう。 私自身は当初少しプレイしてみたのだが、どうもラグが感じられて問題があるのでパッチまで保留という感じにしてそのまま放置という形になってしまっていた。今回久し振りにプレイしてみたのだが、ラグについては解消されておりPing 200以上のサーバーとしては悪くないレベル。Invaderもこれだけ人が来ないレベルの詰まらなさだとは思えず、オリジナリティはそれ程感じられないがもっと人気が出てもおかしくはないゲーム性である。どうせならマルチプレイ部分だけ無料提供という形にしたらそれなりに人は集まりそうな気もする。 |