BOTTOMLINE

[PROS]

◎メトロ内部の地下世界の雰囲気は抜群に良い
◎ライトやNVGが無いと良く見えない場所が大半を占めており、暗い中での戦闘が多いのは個性的
◎フィルター交換が必要というプレッシャー要素を、バランス調整の難しい中で上手く成立させている
◎圧縮空気銃を筆頭とするユニークな使い勝手の武器類
◎戦闘orステルス, 直進or探索, 戦闘or逃走といった自由度を持つ
◎二種類のスーツや多彩な武器を選択可能なので、リプレイ時の変化が大きい
◎探索によるアイテム収集の好きなプレイヤーには、脇道エリアが広い上にそれがかなり有利になるので楽しめる
◎ロシア語を含めて多言語の音声と字幕を独立して選択可能



[CONS]

×アーマーの効果が高過ぎる
×人間の敵の動作に一部変な動きが見られる
×原始的なAIのミュータントとの戦闘の方が遥かに多く、知能の高い人間との戦闘シーンが少ない
×終盤のチャプターがそれまでよりも簡単且つ短い
×地下で遭遇するNPCはほとんど話し掛ける事も出来ず、背景的な扱いでリアリティが薄い
×金銭に関わる要素の出来が悪い
△DLCの『Ranger Pack』が強制的に追加される仕様で、それによってゲームバランスが崩れる恐れがある



 最初からマルチプラットフォーム前提でデザインされた大衆向けのFPSとはまるで空気感が異なっており、PC専用でFPSが作られていた頃の雰囲気が漂っている。原作小説のファンだがゲームは得意では無いという層を考慮したのか、自動回復の採用やリーン動作は無しといった簡易化も含んでいるが、近年のカジュアル化された多くのFPSとは一線を画しているゲーム。ただしS.T.A.L.K.E.R.の様なハードコア路線でオープンワールド系のゲームでは無く、ああいうスタイルを期待すると外れる。探索可能な脇道は多いのだが、進行自体はスクリプト重視で一本道。そして現在の平均的なFPSに比較するとカジュアル感はずっと低いが、あのS.T.A.L.K.E.R.と比べるならもっとライトなゲーム性である。

 コンソール市場重視ならば「静と動」や「明と暗」を使い分けたり、もっと爽快に敵を倒せたりするスピード感のあるゲーム性にするのだろうが、このゲームはひたすら重苦しい雰囲気の中を淡々と進めて行くという風で、武器の使い勝手の悪さや視野の暗さもあって爽快感はほとんど感じられない。ガスマスクのフィルター交換やUCでの定期的な充電等のある意味面倒な作業も含まれるし、弾薬も少な目の設定なのでやり繰りが必要と、コンソール系に多い“プレイヤーに対して過剰に親切なゲーム”でも無い。言い方を変えるなら「売ろうという意志があまり感じられないゲーム」という印象で、その「好きにやってみました」というスタンスに個人的には好感を持った。

 完成度については幾つか粗も見受けられるし、戦闘が対ミュータントに偏り過ぎといった不満はあるが、世界観は優れているし個性的でもあるので、その問題点を考慮した上でも高得点をあげたくなるゲームである。自分の趣味・嗜好に合ったゲームと言っても良い。


 プレイヤーのタイプとしてはハッキリと探索が好きな人向けのゲームで、脇道など目もくれずに進めるタイプの人ほど楽しめないと思う。また高速で進めると10時間以下でクリア出来てしまうと思われるので、そういう方は難易度を上げてプレイした方が良いだろう。それとこれから始める場合には『Ranger Pack』が導入された状態になるので、その際にはバランス崩壊の注意点について読んでおいて貰いたい。

 ステルス要素は持っているが、何所でもステルスで進められる訳ではないし、実際にはそれが可能なエリアは全体からすると少ないので注意。逆にステルスを強要されるシーンは無いので、戦闘派のプレイヤーには問題は無い。

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